12節 マッチ&会見リポート(リコー 17-20 九州電力)

対戦日においてトップリーグ(TL)順位が12位「九州電力」と13位「リコー」と、リーグ終盤戦となると次年度への生き残りが懸った対戦となったが、両チームともに日本の社会人ラグビーに歴史を刻んできた古豪チーム。日頃から交流(定期戦他)もあり、ある程度両チーム首脳陣はお互いの手の内もわかっていると思うが、この日は「勝利」に対する気迫に勝るものなしか。前半の当初は、この日両ロックに起用されたリコーNo.4遠藤、No.5田沼のベテランの動きもよく、ラックでのターンオーバーなど押し気味にゲームを支配して12分、右オープン攻撃でリコーNo.13金澤が右中間にトライ。No.10河野もゴール成功。ところが20分過ぎからリコーFW陣、特にフロントロー陣の足が止まりだす。31分九電の連続攻撃から元Aus代表選手No.12ナイサン・グレイが逆転トライ。38分リコーNo.10河野が再逆転Pに成功。10-8で前半終了。

後半は、風上の九電が7分に連続攻撃からNo.12ナイサンが個人技で抜け出し上手いタイミングでNo.15ピーターへパス。そのまま再々逆転トライ。20分リコーが攻め込んだ九電ゴール前のラックで、九電No.6松本へジュリアン主審から故意の倒れ込みでシンビンのジャッジ。数の均衡が崩れる。そのFWが1人減った隙の22分にリコーNo.10河野が上手いパス・ダミーで切り込み九電バックスの裏へ、そのままゴール・ポスト下へトライ。再々々逆転となる。ゴールも成功してスコアは、17-13。大熱戦である。その後の10分間は「一進一退」の攻防戦。ただしディフェンスの気力は、No.4吉上主将を中心に九電有利とみる。リコーは細かなミスを連発。特にチャンス時にゲイン・ラインを越えられなくなる。33分左オープン攻撃で九電No.14吉永がライン際をタックラー3人を振り切り右中間へトライ。No.15ピーターのG成功。再々々々逆転。両軍首脳陣・ベンチには「長い5分」の膠着状態が経過してノーサイドの笛。
歓喜の九電サイド。リコーサイドは、ベテラン選手が涙する敗戦。敗戦により、ほぼトップリーグ残留がむずかしい順位になる事は誰もが理解している。やはり首脳陣期待のベテラン・ロック陣を投入するも完敗のラインアウト戦が痛かった。来季は元Aus代表のスティーヴン・ラーカムの入団も発表されているが、イースト11でのプレーとなりそうである。(武田守久)

リコーブラックラムズ

佐藤監督(右)、伊藤キャプテン
佐藤監督(右)、伊藤キャプテン

リコー 17-20九州電力(1月26日)

◎リコーブラックラムズ
○佐藤寿晃監督

「今年、今まで応援してくださったファンの皆様に深く感謝いたします。トップリーグに来年出られないことが決まりましたが、1年で戻って来るしかないと考えています。今日はお互いに『負けたら自動降格』をかけた戦いとなりましたが、負けたという結果がすべてです。それ以上でも以下でもありません。伝統のあるチームに一つの汚点のようなものを残してしまいましたが、トヨタさんのように強く復活します」

――不振の原因は?
「バランスの取れた攻撃ができなかったことと、ディフェンスがうまく機能しなかったことです。中位チームとの対戦を残しているところでキャプテンが負傷で戦列を離れ、ラインアウトが確保できなくなってから悪いサイクルが始まったと感じています」
――変えていくところは?
「もっと忠実なプレーです。基本的なサポート、ブレイクダウン、すべてにおいてもっと基本をやっていくことです」

○伊藤鐘史キャプテン
「最後の最後まで、大勢の皆さんに応援していただき、感謝申し上げます。とにかく、現実を受け入れるまで時間を下さい」

――前半最後に正面からペナルティを狙ったのは?
「予想以上にセットプレーでプレッシャーを受けて自分を含めてパニックになりかけたので、少なくともリードを保とうと思いました」
――勝ち点は4点を狙っていたのか?
「最低でも、です」
――降格になってしまいましたが?
「個人個人の能力は高いし、ユニットの精度も徐々に上がったのですが、15人のかみ合いの部分がまだまだ不完全だったと思います」

九州電力キューデンヴォルテクス

神田監督(右)、吉上ゲームキャプテン
神田監督(右)、吉上ゲームキャプテン


◎九州電力キューデンヴォルテクス
○神田識二朗監督

「今日はリコーさんもうちも譲れない激しい試合になると分かっていましたので、ペナルティに気をつけることとテリトリーを取っていこうと指示しました。前半ペナルティが多かったのですが、集中力があって、選手たちがよくやってくれたと思います。今シーズンの、『最後まであきらめない』という気持ちが、最後のトライに結びついた気がします。リコーさんとは30年以上、練習試合をやってきました。ここ(トップリーグ)にいられるのも、リコーさんのおかげです。胃が痛くなりました。恩返しする意味で、結果として勝ったことを励みとして最終戦に臨みたいと思います」

――モールでトライを獲られなかったが?
「あそこがリコーさんの強みですので、うちもモール練習をしてきました。来るなら来いという感じで見ていました」
――勝ち点は?
「同点引き分けでも、勝ちに等しいと思っていました。必要があれば指示すると吉上には伝えてありました。」
――当初、目標の5勝が見えたが?
「目標の5勝、最後のチャンスがありますので、気を引き締めて、自力で残れるようにしたいと思います」

○吉上耕平ゲームキャプテン
「1週間、気迫と集中力が試合を決めると、毎日言ってきました。最後の1秒まで継続できたのが勝因です。それから、リコーさんはモールが強いので、1本も獲られなかったのも勝因の一つです。あと1試合、最後まで頑張ります」

――よく守ったが?
「前半はリコーさんはペナルティを狙わずに勝負をかけて来たと感じていましたが、最後に狙ったのは、うちが継続してモールから獲れないので戦術を変えて勝ちにきたと感じました。松本がシンビンでいなくなったところは、リコーさんは最後尾から外国人がサイドを突いて来ると分かっていましたので、7人の仕事量を増やして、リロードの意識を高めるよう声をかけました。ラインアウトも、キープレイヤーの遠藤さんが来ると思っていたとおりでした」
――リコーは勝ち点を狙ってきていたが、九電は意識していたか?
「選手の中でポイントを意識すると、ゲームはそんなに甘いものじゃないので、目標を変えずに集中することだけを言い続けました。意識していなかったと思います」

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