入替戦 マッチ&会見リポート(リコー 59-12 マツダ)

マッチリポート
リコーブラックラムズ 59-12 マツダブルーズーマーズ
【入替戦/2010年2月13日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

雪になりきれない雨がちらつき、ぬかるむ足元と、コンディションは厳しい秩父宮での一戦。
マツダは1月23日のトップチャレンジを地元広島で戦ったものの、豊田自動織機に敗戦し、自動昇格を逃し入替戦へと回ってきた。対するはリコー。昨年トップリーグに昇格したが、シーズンでは4勝9敗の成績を残しており、実力差は大きいとみられた。

前半4分 リコー陣10mリコーオフサイドの反則。マツダはすかさずPGを選択するが、惜しくも届かず先制のチャンスを逃す。
厳しい気候条件の中、キック合戦が続くが、細かなミスも発生し、膠着状態。試合が動いたのは12分。マツダ陣内22mのスクラムより出たボールをリコーSO河野がラインの裏へゴロパント、そのままチェイスしてゴールポスト下に自分で押さえてトライ。(7-0)

その後も体重こそほぼ同じものの、地力に勝るリコーFWがセットプレーとブレイクダウンにプレッシャーをかけ続け、試合を優位に展開させる。
26分マツダG前で得たペナルティでリコーはスクラムを選択。その直前のプレーでマツダNo.8マナコ・トンガを欠いているマツダFWをそのまま押し込んでスクラムトライを挙げる。(G失敗 12-0)
さらに33分マツダゴール前スクラムより右に展開。大外まで回し切ってWTB横山が右隅にトライを決める。(G成功 19-0)
そのままリコーが試合を支配するかと思われたが、36分リコー陣10m付近の密集際をするすると抜けだしたマツダSO三好がG前まで迫り、好フォローしていたHO小川にパス、ポスト横にトライ。ゴールも決まり、19-7で前半を終了。

後半3分マツダゴール前ラインアウトから、リコーはサインプレーで逆目へ展開。HO滝澤がゴールラインぎりぎりまで持ち込みラックからFL相が押しこんでトライ。(26-7)
その後もリコーは12分、出血のフェレラに一時交代したロッキー・ハビリ、18分にPR長江がトライを重ねる。さらに交代要員を投入、入ったロイ・キニキニラウがトライを挙げ、45-7と試合を決定づける。

一方、マツダもS0三好のアグレッシブな仕掛けなど意地を見せ続ける。後半34分にはリコー陣ゴール前で得たラインアウトよりNo.8マナコ・トンガがこじ開け、最後にはPR大木が押さえてトライ、一矢を報いる。(45-12)
が、反撃もここまで、36分にはマツダゴール前スクラムよりリコーFW電車道のスクラムトライ、39分インターセプトからロッキー・ハビリが60mを独走、最後はフォローのキニキニラウが受け継いでトライ。59-12のスコアでノーサイド。
かなり厳しいグラウンド条件の中、両チーム決して試合運びは万全ではなかったが、マツダが意地を見せたものの、リコーが実力差通りに危なげのない勝利を得た試合となった。

この試合をもって日本代表42キャップを誇る名LO、リコー田沼選手の引退が発表され、小雪に変わった秩父宮の中をチームメイトに同選手が胴上げされるシーンが本試合のフィナーレを演出していた。


会見リポート

坂本監督(左)、三好主将
坂本監督(左)、三好主将

◎マツダブルーズーマーズ
○坂本秀彰監督
「今年一年トップを目指して頑張ってきましたが、結果を出せずに残念です。選手に良い場を提供できなかったことを悔しく思います。今日の試合に臨む前のトップチャレンジで2試合ゼロ封だったが、今日は得点を挙げられました。但し、リコーのディフェンスに思うようなボールコントロールができませんでした。強い当たりにディフェンスが崩れたり、シンビンが3つ発生するなど、フィジカル、スキルでトップとの差を感じました」

○三好啓太キャプテン
「失うものはない、と臨んだ試合。明らかに格上の相手でした。去年81-0で負けましたが、今日は59点と失点は減り、トライもとりました。レベルアップはしている手ごたえがあります。来シーズンはその差をさらに縮めたいと思います」

──レベルアップの具体的な部分は?
「昨年は一方的にやられました。今年は得点力がつき、ディフェンスも1対1で止めることもできました」

──リーグ戦はレベルアップが難しいと思うが?
「リーグ戦は普通にやれば勝てる試合なので、『マツダラグビー』にこだわって戦ってきました。今日はそのひたむきさは出せたと思います」




リコーブラックラムズ
ローデン ヘッドコーチ(右)、池田キャプテン
ローデン ヘッドコーチ(右)、池田キャプテン

引退する田沼選手
引退する田沼選手

◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン ヘッドコーチ
「無事仕事を終えられました。グラウンドコンディションが悪く、ランニングラグビーがスローになってしまいましたが、このコンディションで8トライはまぁOKだと思います」

○池田渉キャプテン
「もう少し取りたかったですが、しっかりと勝利できましたので問題ありません」

──最終戦に向けてどのように立て直したか?
○池田キャプテン
「技術的には特になにもしてません。ただ、チームが結束して表現できればよいと思っていましたので、ラグビーじゃないアスレチックや頭を使った練習などに取り組みました」

──やろうとしていたスタンダードの何%出せたか?
○池田キャプテン
「このコンディションで8つとれたので十分です。リコーは本来は今日のような展開をするチームではないのですが、今日のところは良いと思います」

──来年トップリーグで戦うが、どのへんを強化したいか?
○ローデン ヘッドコーチ
「今シーズンのレビューをしっかり行いたいです。09年シーズンはTOP6チームにも圧力はかけられましたが、ゲームプランの遂行が弱かったかと思います。(LO、ペナルティなど)100%の内、90%はできていますが、残りの10%が欠けてます。チームが強くなるにはつらいシーズンを乗り越えることが不可欠です。 『今年は一番ハードなシーズンになる』とシーズン最初に言ってきて、しっかり戦ってきたつもりでしたが、上位6つのチームと12位のチームの違いは、10%の部分だと思います。来年はまた違ったリコーをお見せできると思います」

──引退する田沼選手へ贈る言葉は?
○ローデン ヘッドコーチ
「いい選手なので、さみしくなります。引退後はあの有名なお母さんと、二人で応援してくれると思います(笑)。このような素晴らしい選手と会えて光栄ですし、コーチをしていてなかなか得難い機会です。たとえるなら忠実な本当のサムライです。皆が尊敬できるいい選手です、本当に感謝しています」


田沼選手 引退会見インタビュー
「思い出を語ったら、一日以上かかります。このような会見をさせてもらうことが光栄です。タヌママに花束もあり、後輩に胴上げもされ、大変うれしかったです。最後の試合もフルタイム出場できましたし、本当に幸せです。言うなれば人生そのものが幸せですね。
ラグビーの選手としては引退しますが、ラグビーを引退するわけではありません。自分がここまでなれたのもラグビーに出会えたおかげです。戦った相手、一緒に戦った仲間、いまは天国にいってしまった仲間もいます。さらにこのように囲んでもらえる記者さんたちなどに『すごい選手だね』と言ってもらうこともありましたが、周囲の皆さんにすごい人間にしてもらえました。」

──まだまだできそうだが、なぜ引退を決めたのか?
「昨シーズンTOPから落ちた時に引退を考えました。リコーはTOPにいるべきチーム。TOPに戻るまでは一緒にいて戦おうと思っていました。トッドHCに出会い、厳しい練習で自分を取り戻すことができました。しかし、シーズンを戦うなかで、トップリーグの中でトップのLOとしてはプレーできていないことを気づかされました。グラウンドに立つ、試合に出る、というわけではなくてTOPの中でTOPを目指さなければならないと思うのですが、自分のイメージの中ではそのレベルに達していないと気付かされました」

──具体的にこの試合の後、というのはあったか?
「特に具体的なきっかけがあったわけではありません。シーズン後半に入ってきてラインアウトなどでイメージしたプレーができませんでした。控えにも回り始めたので、判断いたしました」

──現役時代の一番の思い出は?
「大学3年。U21に呼ばれたときの日本代表のABマッチです。代表が怪我し、幸運にも体がデカイので呼ばれました。人生のキーポイントのひとつでした。その時のチャンス、チャレンジした! という自分の気持ちを今でも覚えています。下から這い上がってきた、ということは覚えてますね。
あと2回のW杯、出た試合も出なかった試合も思い出ですし、リコーでのTOPリーグから落ちた九州電力との試合も記憶に残ってます。言い出すと思い出は多すぎるので、一つには決められませんね(笑)」

──今後やりたい仕事ってありますか?
「ラグビーは人を育てるスポーツと感じてます。少しでもラグビーを色々な人に知ってもらうことを続け、ラグビーの良さを伝えたいです。日本で開催するW杯も何かお手伝いできるといいですね」

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