2節 マッチサマリー(リコー 20-26 サントリー)

リコー 20-26 サントリー   リコー 20-26 サントリー   リコー 20-26 サントリー

リコーブラックラムズ 20-26 サントリーサンゴリアス
【week2/2010年9月10日(金) at 東京・秩父宮ラグビー場】

ゴール前でのラスト5分間の攻防に大きな声援

バックスタンドの半分を埋め尽した黄色いタオル、悲鳴と歓声、ファンは総立ちで南側ゴールポストを見つめた。
後半45分、ゴールポスト前、幾度となく繰り返されたラックからのサイド攻撃も、リコーブラックラムズのノットリリースで終わった。抱き合って喜ぶサントリーサンゴリアスと座り込むリコーとが対象的だ。
後半20-19の1点差まで詰め寄ったサントリーは、35分敵陣中央10m付近のペナルティキックから速攻を仕掛け、中央を突破、13番平がトライし、20-26とした。

ここからの両者の戦い方が素晴らしかった。足の疲労も限界に来ていると思われたがサントリーの集散は早く、リコーには、責めるチャンスはないように思えた。39分頃、19番ハビリもシンビンから復帰しフルメンバーに戻ったリコーは、サントリーのハイタックル=ペナルティキックから攻守が逆転、息を吹き返した。最後の望みを賭けてタッチを狙いラインアウトから得点する戦法を取った。しかし、ゴール手前12mの左ラインアウトもまさかのキャッチミス、ボールがラインアウト後方で踊った。この時サントリーがノックオン=15mスクラムが宣言されたと同時に40分ホーンがなった。リコーは1つのミスも犯せない緊張の中、スクラムも1発で決まり5分間の連続プレーが始まった。

スクラムからサイド攻撃、ラックポイントを右にずらしながら、サントリーのディフェンスを突き破ろうとするが、堅いタックルで戻された。それでもボールはリコーに支配され続けた。ペナルティトライも想定されることからサントリーも不用意に反則はできない。あのラックボールは、防御側サントリーのバックラインからも、ゴールラインギリギリから飛び出すFW選手からも見えないだろう。左右どちらから出ても不思議ではない。サイド攻撃を続けるもラインに展開するもリコーのハーフの判断1つであったであろう。ゴールポストが揺れる度に悲鳴と歓声、あと1mのゴールラインは遠かった。

リコーはLOに外国人選手を起用、サントリーはハーフ陣に外国人選手を配置した。
前半の特徴は、両チームともスクラムが安定せず、コラプシングでチャンスをつぶした。攻撃パターンはWTBまで回し、勝負する展開が共通していた。特にリコーの長い飛ばしパス、ラインの隙間を狙い、ディフェンスライン後方に落とす低いキックや、ラインアウトのクイックスタートは、堅いディフェンスを破る効果が十分にあった。
得点としては、リコー10番河野は15m付近からDGを狙うなど積極的に攻めシンビンによるペナルティキックを含む2PGを決め前半6-0とリードした。しかしサントリーは29分に自陣から高いまっすぐなキックを上げ、競りながらもボールを支配。一気に22mまで押し込み最後は3人も余して15番小野澤がトライ。一方、先にトライされたリコーも39分にはペナルティキックから速攻でBKが左右に散らし、サントリーのBKを翻弄、13番キニキニラウが左隅にトライ。河野が正確な長いゴールキックを決め、13‐7で前半を折り返した。

過去5回の対戦のうち、前半だけ比べると2004シーズンはサントリー9‐0リコー(16-20)、2006シーズンはサントリー5-7リコー(43-14)、2009シーズンは、サントリー18-17リコー(38-22)の接戦であったことから勝敗のカギは後半にあると感じた。
その後半、戦略を修正したのか、ペナルティキックが勝負となると考えたか、1分にサントリーは敵陣10mからゴールキックを狙った。外したが距離は十分にあった。また、自陣からもハイパントで積極的に攻めるようになった。リコーは後半のはじめ、前半同様に早いパス、飛ばしパスの効果で7分に15番横山が左隅にトライ。(20-7)
突き放したようにも見えたが、お互いのターンオーバーや反則でチャンスが消えた。11分頃には中央付近のラック終了後、あわやシンビンかと思わせるようなレフリー注意がリコーに与えられた。サントリーは、ボールが滑るのか、ノックオンが目立った。それでも、12分のトライで20-14とした以降、逆転を賭けた攻めでは、30分シンビンからのペナルティキックを速攻、ヒューワット、平、小野澤らBKの活躍で左隅にトライ、ヒューワットのゴールキックが外れたときにはファンから大歓声が上がった。(20-19)
後半もリコーの反撃には勢いがあった。33分サントリー12番のダイレクトタッチの戻されたラインアウト、相手のミスを見逃さない攻め、キニキニラウから入替わった22番タマティのステップもきれいだった。しかし35分に、ノットリリースからのペナルティキックをクイックしたサントリーは、連続3Tで再逆転した。リコーファンからは悲鳴に似た声援が聞こえた。

グラウンド全面に走り周った選手たちは激しい当たりで体力を消耗しながら肉弾戦を見せてくれた。ファンは最後まで楽しめたでしょう。ノットリリースの笛の瞬間、両手を挙げ歓喜するサントリーの選手、崩れ落ちるリコー選手、ファンの大歓声、ノーサイドを思わせるようなラストシーンでしたが、ノーサイドの笛は、サントリーがペナルティキックをタッチに蹴りだした後に。また、真のノーサイドは、バックスタンドでファンの前に整列して感謝する選手、メインスタンド側でも選手に拍手を送り続け、待っていてくれた観客の皆様、それらのふれあいがあってノーサイドは完成されたでしょう。特に握手会に参加された方は今日の試合は絶対に忘れないでしょう。
それにしても、この試合は南スタンドが特等席でした。タイムキーパー制になって、試合時間45分は記憶に残る数字のひとつだと思う。45:36の電光板の数字が最後まで消えず、選手を静かに見送っているようにも見えた。(長澤 孝哉)

会見ダイジェスト
リコーブラックラムズ
ローデン監督兼ヘッドコーチ(右)、滝澤ゲームキャプテン
ローデン監督兼ヘッドコーチ(右)、滝澤ゲームキャプテン


◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン監督兼ヘッドコーチ
「すごく良い試合だったと思います。きれいなゲームではありませんでしたが、純粋な気持ちとして、フィジカルが強く、両チームともボールを回そうとして僅差のゲームになったと感じています。もちろん、勝ちたかったですが、今シーズンしっかり戦えると信じられる今日のゲームでした。最悪の時間帯にロッキーのシンビンがありましたが、残りの14人がしっかり戦って成長してくれたと思います。僕もリコーのファンになりました(笑)」

──悪かった部分の修正は?
「先週は僕の知っているリコーではありませんでした。そういう点で、アティテュードの話や努力の話をしました。リコーとしてはまったのは『考えすぎ』ていた面です。事実、昨シーズンは12位でしたので、どのチームにもチャレンジャーとして臨まなくてはなりません。チャレンジすれば相手を今日のように追い込めます」

──ラーカム選手が出なかったのは?
「37歳102キャップの選手です。体のことも考えてあげなければなりません。そのためにタマティをリクルートしたわけですから、うまくローテーションで回して行こうと思っています」

──ロスタイムのオプションは他になかったのか?
「最後のところはノーコメントです(笑)。もっと早くBKに出せればと思いますが、ハーフの判断でした。スペースがあったと思うが、後で話し合わなければなりません」

──軽い3列を配置した意図と評価は?
「軽めで走れる選手を使いました。覺来はラインアウトでもとても良いし、(川上)力也はディフェンスのスペシャリストです。バックローのパフォーマンスは本当にとても良かったと思います」

──ゲームキャプテンを代えたが?
「タキ(滝澤選手)は先週もバイスキャプテンを務めましたし、FWは少し燃える人が良いです。タキは前からリードしてくれるし、良いタイミングで一言出せる人です。うちは若い選手が多く、最後の場面でバックスに出せない判断力は経験の浅さから来ていると思います。今日負けて、選手は凄く悔しがっていました」

○滝澤佳之ゲームキャプテン
「今日、集まってくださった会社の方やファンの皆様に感謝します。先週は開幕戦と言うことで固くなって負け、悔しさがありましたが、この試合は勝ち負けより、リコーらしさを出そうと臨みました。あと一つのところまで追い詰めて逃したのは悔しいです。でも、これを一つの糧にして、来週、良い練習をして次週の試合に臨みます」

リコー 20-26 サントリー   リコー 20-26 サントリー
サントリーサンゴリアス
ジョーンズGM兼監督(右)、竹本キャプテン
ジョーンズGM兼監督(右)、竹本キャプテン


◎サントリーサンゴリアス
○エディ・ジョーンズGM兼監督
「(日本語で)ちょっとギリギリ(笑)。(英語で)ブレイクダウン、ラインアウトでやられました。けれど、良いアタックもありましたし、最後にやり通せたので嬉しく思っています。ブレイクダウンはリコーさんが強かったですが、このゲームから自信を得ることができました」

──最後の場面はリコーにラックから出されたら嫌だったのでは?
「たぶんね(笑)。フィジカルが強いので、そこでトライしたいと思ったのでしょう。やはり、ボールを出されたらディフェンスは難しかったと思います。5分もボールがどこにあるか見えないなんて、つまらないゲームでした。ただ、もちろん、リコーさんが悪いという意味ではありません」

──技術的な部分で先週から修正した点は?
「今日のプレーはあまり良くなかったので、準備ができたとは言えないですね。アタックをメインにやっていますが、素晴らしいトライもありました。暑く、ボールが滑り、ハンドリングが良くない環境でプレーをするのは雨の中でプレーしているのと同じです。ただ、最後のトライは美しいトライでした。日本の13番は平だと示したプレーで、JK(ジョン・カーワン日本代表ヘッドコーチ)にも見てほしかったプレーです」

──トヨタに負けて苦しいチーム作りは想定内か?
「やはり長い旅の始まりです。ステップ・バイ・ステップです。新しいキャプテンが良くやってくれています。今日は可能性の大きいルーキーを2人出場させたし、チームにとっても良かったと思います」

──見た目にはFWが痩せてスクラムやブレイクダウンの迫力がなくなっているようだが?
「良い質問です。今は選手に1kgから2kg筋肉を付けるよう言っています。アタッキングラグビーにはスキルが必要ですが、上達には時間がかかります」

──自陣からの攻撃でキックが多かったが?
「今日はクリーンボールを獲るのは難しい試合でした。良い状況でボールを獲るのには良いキックが必要です。今のオールブラックスは本当に良いアタッキングチームですが、トライネーションズで一番ボールを蹴っているのはカーターです。良いキックをしなければ良いアタックにつながりません」

○竹本隼太郎キャプテン
「先週の敗戦から、皆で変わろうと言って前半から行きましたが、リコーさんの激しいディフェンス、アタック、ラインアウトに自分も初めてシンビンを受けました。しかし、選手はずっとキレることなく、後半の苦しいところでも人が来てくれて結果を出してくれた80分でした。チームの成長を感じます」

──どんなところが反省点か?
「相手のプレッシャーと味方のコミュニケーションです。サントリーに在籍していたプレーヤーのプレッシャーも凄くありましたが(笑)。練習のほうがキツいので、最後の時間帯も守りきる自信はありました。最後は守っていて時間を忘れていました。気がついたら5分30秒経っていました」

──最後は守っていて楽しかったか?
「楽しくはないですよ(笑)」(横でエディも『見てても楽しくない(笑)』と一言)

──フィットネスでプライドもあったと思われるが?
「こちらもフィットネスは自信がありましたが、リコーさんもああいう形(クイック)でボールを入れたりして、お互いにフィットネスはあるなと感じていました。その中で相手の足が止まったとき、攻撃してトライが獲れたのは本当に良かったと思います」

RELATED NEWS