5節 マッチサマリー(東芝 54-20 ヤマハ発動機)


東芝ブレイブルーパス 54-20 ヤマハ発動機ジュビロ
【week5/2010年10月10日(日) at 岩手・盛岡南公園球技場】

やや向かい風の中、キックオフをマイボールにする気迫のこもる立ち上がりのヤマハ発動機ジュビロに対し、FLスティーブン・ベイツのターンオーバーで受けてたつ東芝ブレイブルーパスが、早くも敵陣に攻め込む。モールトライが得意技の東芝は、ヤマハのペナルティから敵陣ゴール前ラインアウトに持ち込み、2度目のモールチャレンジで見事にFLベイツがトライ。SOデイビッド・ヒルの角度のあるゴールも決まり、前半4分に早くも先制し、7-0。
続くヤマハのキックオフで、勢いあまって、ハイタックルの反則を犯してしまった東芝。ヤマハFB五郎丸歩が狙った相手陣10mライン付近の距離のあるゴールキックは惜しくも外れたが、再び東芝のキックオフ再度の反則から、ほぼ同じ位置のPGを決めて、7-3と反撃に出るヤマハ。次の東芝のキックオフが一旦は相手ボールとなったのを、ヤマハがターンオーバーしてバックスに展開。CTBマレ・サウが相手ディフェンスの裏に出て、東芝の反則を誘い、またもFB五郎丸がPGを決めて7-6と、前半15分まで均衡のとれた立ち上がりとなった。

仕切りなおしのキックオフを制した東芝は、畳み掛けるような攻撃を仕掛ける。防戦に回ったヤマハはLO大野均を果敢に押し出すディフェンスなども見せたが、ブレイクダウンで立っているプレーヤーの多い東芝に生きたボールが出て、攻撃がリズムよくつながる。ヤマハはチャンスにWTB徐吉嶺がオープンに走り抜けるシーンもあったが、東芝の攻勢が優り、相手LOの続けざまのオフサイドを誘発し、ヤマハのシンビンでパワープレーとなったところで、ラインアウトからラックサイドをFLベイツが鮮やかにトライ。SOヒルのゴールも決まり、14-6とリード。

続く10分間も東芝優勢の中、中盤のラインアウトから右に左に連続攻撃を仕掛け、PRもラインに参加して、全員がつなぐ展開ラグビーの末、WTB廣瀬の連続トライ、そして、SOヒルも連続ゴールを決め、28-6と引き離す。
ヤマハの攻撃チャンスも、東芝の面のディフェンスに、じりじりと後退し、パスの乱れがターンオーバーにつながり、万事休すかと思う矢先に、自陣ゴール直前まで押し込まれたモールからボールを奪って抜け出したヤマハWTB徐が、走りに走り、追いすがる東芝ディフェンスを振り切って98メートル(推定)の独走トライを決めた。難しい位置からのゴールもFB五郎丸が決めて、28-13と一矢報いたヤマハ。しかし、その後のキックオフでバックス展開するもミスが出て、ターンオーバーされたボールをFLベイツにそのままトライされ、SOヒルのゴールも決まり、35-13。東芝が突き放したところでハーフタイム。

風が止んだ後半、東芝キックオフからペナルティキックを得たヤマハが敵陣ラインアウトに持ち込む。早い仕掛けからNO8モセ・トゥイアリイが相手の裏に出て、ラックから展開。東芝は大きくリードして迎えた後半だったが、その分、2人目のディフェンスがやや緩んだような雰囲気の中、ヤマハに突破を許し、マレ・サウがヤマハ2本目のトライ。五郎丸がゴールも決めて35-20。しかしヤマハの反撃もここまで。東芝はこの後さらに3つのトライをあげ、54-20と試合を決定づけた。
最後まで攻め続けるヤマハに対し、緩まずディフェンスする東芝。キックの少ない攻防に緊張感を保ったままスコアは動かず、ノーサイド。
面のディフェンスと1対1で勝負した東芝。ランニングラグビーに徹し、力の限りディフェンスを繰り出したヤマハ。点差は開いたものの、見ごたえある攻防が繰り広げられた盛岡南球技場だった。

本日のマン・オブ・ザ・マッチには勝者東芝のFLスティーブン・ベイツが選出され、マッチコミッショナーの岩手県協会の鷹羽理事長よりトロフィーが授与された。

会見ダイジェスト
ヤマハ発動機ジュビロ

◎ヤマハ発動機ジュビロ
○堀川隆延監督
「前半のミスやペナルティによって、相手に攻め込まれてしまった。自分たちがやろうとすることが単純にできていない。チームとして、どうこう言う前に、個人としてやるべきことができていないのが残念。それも同じ選手が繰り返しペナライズされる点は、帰ってミーティングをやる必要がある。原点、初心に帰って反省し、次節の神戸製鋼戦に活かしたい。ミス・ペナルティに対する考え方をどうするか至急対策を練りたい」

○五郎丸歩ゲームキャプテン
「東芝さんとはブレイクダウンの強さ、プレッシャーに差がある。ヤマハは寝ているプレーヤーが多い。ペナルティからの攻撃が特にプレッシャーを受けた。キック戦術を減らしてアタックを続けたことはチームとして、評価できると思う。監督も言ったが、一からやり直し、"1対1の攻防"、"ブレイクダウンの攻防"を強化し、次節へ臨みたい」

──ペナルティが多かったのは、ルール改正の問題か?それとも対応力の問題か?」
○堀川監督
「ペナルティの多くはノットロールアウェイです。同じペナルティの繰り返し。ゲーム中に修正、対応ができなかった。ブレイクダウンのジャッカル対応はある程度できていると思います。気持ちの問題なのか、スキルの問題なのか、わからない」
○五郎丸ゲームキャプテン
「東芝さんの激しいディフェンス、プレッシャーが原因です。こっちが点を取った後すぐに点を取り返されるパターンだった。ゲームメーク、マネージメントという点でキャプテンとして反省が残る。そこの課題をしっかり分析して次節頑張りたいと思います」


東芝ブレイブルーパス

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「東芝らしいアタックができたことは良かった。途中ヤマハさんのペースで試合を運ばれた点、振り回された点はもう1回、ディフェンスの課題として反省する必要があると思う。今日はしっかりと"勝点5"を獲れたことは良かった」

○廣瀬俊朗キャプテン
「2年連続で盛岡で試合をすることができました。天気にも恵まれ、素晴らしいグラウンドとファンの声援の中、試合ができてよかった思います。昨年の盛岡でのリコー戦が悪かったので、"絶対今年は東芝らしい試合"を見せようと頑張りました。その点では良い試合ができたと思います。反省としてはディフェンスが後手に回ったことだと思います」

──ディフェンスが上手く機能しなかった理由は?
○瀬川監督
「ブレイクダウンでの個々の判断がまだまだできていないことです。チームの約束としてディフェンスを"面"で押し上げることにしているが、その辺がまだまだ徹底されていない。前半は良かったが、後半になるとバラつきが出てきた。"面としてのディフェンス"にはこれからも、とことんこだわっていきます」

──前半に独走トライをヤマハに与えた理由は何か?
○廣瀬キャプテン
「あの時は、ボールキャリアが相手に腕を叩かれて、ボールをファンブルしてしまいターンオーバーされた。こっちが崩されて獲られたトライではないので、全くショックはなかったです」

──東芝が目指す継続ラグビー、スタンディングラグビーを岩手の子どもたちに教えるには、何を意識して教えればいいですか?コツがあれば教えてください。
○瀬川監督
「1対1の局面で相手に勝つことが大切です。アタックの時にはディフェンスラインの裏に出る意識が大事だと思います。"裏へ出る意識"が必要です」

──今年の新入団の岩手県出身、渡辺選手の近況を教えてください。
○瀬川監督
「彼の良さはCTBとしてのディフェンスの良さです。今日もご当地選手ということでチームに帯同させようと思いましたが、前日の練習で怪我をしたため、連れてきませんでした。これからの選手として大いに期待しています」

──今日は全部で8つトライを獲りましたが、その中でも東芝らしいトライはどれ?
○廣瀬キャプテン
「ヤマハさんがシンビンで1人少ない時にきっちり獲れたトライです。今日の試合は、全体的にボールをうまく動かしてトライを獲れたと思います」

──地元の釜石シーウェイブスがトップリーグに昇格するためのアドバイスを。
○廣瀬キャプテン
「今年、釜石さんの試合を見ていないので、何も言うことができません。ただ、僕ら東芝の選手は"自分たちの形"を信じてプレーしています。"常に信じること"が大切だと思います。個人的には、元チームメート、現釜石シーウェイブスの佐々木天晃選手に期待しています」

RELATED NEWS