ワイルドカードトーナメント1回戦 TOPマッチレポート[1]

今シーズンより開始した、特集「TOPマッチプレビュー・レポート」。
ワイルドカード、プレーオフトーナメントと、引き続き、スポーツライターの目から見る試合プレビューとマッチレポートをお送りいたします!!
佳境となった今シーズン。どこがトップリーグチャンピオンになるのか?
どこが日本選手権に出場するのか???
見どころ満載の試合をもっと面白く、楽しく観戦するために、必見です!

攻め続けたサニックスが近鉄破り、2回戦へ
──ワイルドカードトーナメント1回戦マッチレポート[1]

16日、ワイルドカードトーナメント1回戦2試合が福岡・レベルファイブスタジアムで行われ、福岡サニックスブルースとリコーブラックラムズが、それぞれ近鉄ライナーズとコカ・コーラウエストレッドスパークスを破り、2回戦に勝ち進んだ。
2回戦は23日に大阪花園ラグビー場でNECグリーンロケッツ対リコーブラックラムズ、神戸製鋼コベルコスティーラーズ対福岡サニックスブルースの組み合わせで行われ、勝者が日本選手権出場権を獲得する。

  80分間攻め続けて近鉄を圧倒。自分たちのラグビーを貫いて2回戦進出を果たしたサニックス
80分間攻め続けて近鉄を圧倒。自分たちのラグビーを貫いて2回戦進出を果たしたサニックス
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

福岡サニックスブルース ○30-22● 近鉄ライナーズ(前半17-10)──1月16日

この日の福岡地方の天気予報は暴風雪だった。
雪こそほんの一瞬、パラパラっと舞っただけで済んだものの、肌に突き刺すような横殴りの風が吹き荒れ、体感気温は間違いなく氷点下。
「雪だったら、もっとキックを使うオプションも考えていた」
試合後そう語ったのは、今季CTB小野晃征とともにサニックスのキッキングゲームを取り仕切ってきたFB古賀龍二。
あるいは、古賀にとっては"相棒"と言ってもいい小野が、レギュラーシーズン最終節のNEC戦で頸椎を強打して、この日は欠場した影響もあったかもしれない。
何とか雪だけは降らなかった──そんな厳しいコンディションの中、サニックスは立ち上がりからとにかくボールを動かして攻め続けた。

70m独走トライで近鉄を沈めたサニックスWTBヘスケス。攻める姿を取り戻したブルースの次なる標的は神戸製鋼 70m独走トライで近鉄を沈めたサニックスWTBヘスケス。攻める姿を取り戻したブルースの次なる標的は神戸製鋼
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

「最初からガンガン行けと言ったけど、ガンガン行き過ぎ」(サニックス藤井雄一郎)
味方の指揮官さえ戸惑わすほどのイケイケモードのサニックスを、冷静にいなすように2分に近鉄SO重光がDFラインのギャップを突いてトライを奪い、ライナーズが先制する。
あるいは、これがサニックスのイケイケぶりに拍車をかけたのかもしれなかった。
この後、試合はサニックスのいい面ばかりが出る時間帯が続くことになる。
いずれもカウンターアタックからLOジェイク・パリンガタイ、FB古賀などがチャンスを広げた後、SH原田航路(前半11分)、CTBタファイ・イオアサ(同19分)がトライを重ねて逆転。
さらに、小野に代わってゴールキッカーを務めたSO田代宙士が難しい位置からのものも含め、確実にゴール、PGを決めていったことも、サニックスが勢いづく要因となった。

イケイケモードで熱くなるメンバーが多い中、冷静な判断でサニックスを勝利に導いたベテランFB古賀(右) イケイケモードで熱くなるメンバーが多い中、冷静な判断でサニックスを勝利に導いたベテランFB古賀(右)
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

気持ちとエネルギーで上回れなかった近鉄

そして、勝負を完全に決めたのは、やはりあの男だった。
後半22分。自陣22m付近でキックをキャッチしたWTBカーン・ヘスケスがそのまま70mを独走。
この日は通常とは異なるメンバー構成だったことも影響して、後半18分という、いつもより遅い時間からの投入となったが、余計に蓄えられていたかもしれないエネルギーを一気に爆発させたような走りで、近鉄に引導を渡した。

「こういう試合は気持ちの部分で決まる。我々はエネルギーが足りなかった」(近鉄ピーター・スローンヘッドコーチ)
確かに80分間を通して、「自分たちは攻めるしかない」(サニックスCTB濱里周作)という一体感を発散させ続けていたのはサニックスの方だった。
近鉄は終盤、モールを中心とするFWのパワープレーに絞ったアタックで2トライを返したが、正直な印象としてはとてもトライ数が同数とは思えないほど一方的にやられた感が漂う終戦となった(最終スコアは30-22)。

「ここ数試合、自分たちらしさ出し切れていなかった」(FL管藤友主将)という反省から、とにかく原点に戻って攻める姿勢を取り戻したサニックス。
「小野が抜けてチームが崩れたら、これ以上は上に行けない」(藤井監督)という状況も、前述のSO田代、CTB濱里などが、レギュラーシーズン全試合出場し続けた大黒柱の穴を十分に埋める活躍をみせて乗り切った。
2回戦で、すでに大畑大介を失った神戸製鋼が待ち受けるのは、そんな輝きを取り戻したサニックスである。

(text by 出村謙知)

終盤FWのパワープレーで追い上げたが、内容的には完敗だった近鉄。LOトンプソン主将(写真上)は「自分の責任」 終盤FWのパワープレーで追い上げたが、内容的には完敗だった近鉄。LOトンプソン主将(写真上)は「自分の責任」
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

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