入替戦 マッチサマリー(ヤマハ発動機 12-10 九州電力)

ヤマハ発動機ジュビロ 12-10 九州電力キューデンヴォルテクス
【入替戦/2011年2月12日(土) at 静岡・ヤマハスタジアム】

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「結果が全て」 2点差の明暗。苦しんだ1年を輝かしい来季のスタートに

トップリーグのプライドか、それとも再昇格への意欲か。
来シーズンの戦う舞台をかけた「絶対に負けられない戦い」。リーグ戦とは違う独特な雰囲気漂う入替戦は、心配された天候も持ち直したヤマハスタジアムにて、トップリーグ11位のヤマハとトップチャレンジ1、4位の九州電力の試合が行われた。

前半、ヤマハFB五郎丸が比較的簡単なPGを外したのに対し、九電SO斎藤が正確なキックでPGを決め先制する。予想しない展開にスタンドはざわめくものの、ボールキープに最善を尽くすヤマハは、キックに頼らず自陣からでもSO大田尾が積極的に仕掛け、CTBサウ、WTB中垣を走らせるなどして、九電陣内でプレーを続ける。17分、反則の繰り返しによるシンビンでひとり少なくなった九電に対し、ヤマハはラインアウトモールを押し込み、今季、著しい成長を見せた2年目のFL河本がトライをあげ、ここでようやく逆転。FB五郎丸のキックも決まり7-3とする。34分にはFB五郎丸がディフェンスを引きずりながら左隅へ飛び込み12-3とリードを広げる。九電もチャンスはあるが、ヤマハディフェンスの鋭い出足にアタックが孤立しボールを活かすことができなかった。

ハーフタイム、「このままいこう」と声をかけあったヤマハ。
後半も攻め続けリードを広げたかったのだが、時間の経過とともにペースダウンしてきた。九電はヤマハのペナルティから得たPGを外すも、FL松本、LO吉上の突破でチャンスを広げる。しかし、ヤマハディフェンスの戻りが早く得点まで至らず。お互いに、一進一退の攻防が続く中で27分、九電が連続攻撃から足が止まってきたヤマハのディフェンスを切り裂き、待望のトライをあげる。Gも決め12-10とついに2点差まで迫る。

このトライで勢いをつけ全てのパワーと昇格への強い意思を前へと出す九電が、残り5分間猛反撃に出る。ペナルティもDGも許されないヤマハは、この場面で今季、チームの柱として掲げてきたディフェンスに力を結集。意思統一された低いタックルはスタンドから見守る観客の心を揺さぶり、「ヤマハ」、「キューデン」と両チームの背を押す熱い声援がスタジアムに響き渡る。息詰まる攻防の最後はヤマハの三角がボールを奪うと、そのままタッチラインを割りノーサイド。今季、苦しんだ試合が続いたヤマハは残留を決め、来季もトップリーグで戦う。敗れた九電は再び、昇格を目指す。終わりは始まり。来るシーズンに向け、戦いの準備は既に始まっている。也)

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会見ダイジェスト
ヤマハ発動機ジュビロ
堀川監督(右)、五郎丸ゲームキャプテン
堀川監督(右)、五郎丸ゲームキャプテン


◎ヤマハ発動機ジュビロ
○堀川隆延監督
「入替戦は、本来自分たちが目指してきたところではありませんが、とにかく今日の1試合、厳しいスコアでも成果として勝って終われたのはよかったです。前半、ボールキープをしながらも最後のフィニッシュができない苦しい展開となったことが後半をこういうゲームにしてしまった要因なのかと感じましたが、来年、トップリーグに残ってもう一度チャレンジできる。今年をしっかりレビューし、来季に繋げたいと思います。1年間、非常に厳しい中、耐えぬき最後の最後までよく戦ってくれた選手に対し、本当に感謝している。また、そんな彼らをサポートしていただいた家族、従業員、ファンの方々にも感謝の気持ちを持ち、来季いい成果を出せるようしっかりやっていきたいと思います。今日はありがとうございました」

○五郎丸歩ゲームキャプテン
「入替戦という僕らの目標と違うところへいってしまったのですが、昨晩から非常に緊張していて今日は個人的にミスが多く、ゲームを引っ張れなかったことは自分自身の反省点です。2点差でも勝ったことはチームにとって大きなことで、苦しい1年を乗り越えた財産。これが来季のスタート、とチームには伝えました。今日も社員の方々がたくさん、スタンドを埋めてくれ、本当に多くの方に支えていただき、心から感謝を申し上げたいと思います」

──緊張は、いつもと違うものか?
○五郎丸ゲームキャプテン
「ピッチに立ったらやるだけなので、そこからは緊張しませんでしたが、80分で負けたら下のリーグに落ちる恐怖心は常にありました。すべての局面で圧倒しようとこの1週間、言い続けてきましたが、九電さんのいいアタック、ディフェンスに苦しめられた80分間でした」

──後半、最後のディフェンスの場面はどう見ていたのか。
○堀川監督
「今日は勝つことだけを信じていましたので、絶対に守りきる自信はありました」
○五郎丸ゲームキャプテン
「リアクションの速さであったり、後ろから見ている分には抜かれる気がしませんでした」

──プロ契約から社員選手となり、変化は?
○堀川監督
「これまでラグビーだけをやっていた選手にとって、会社へ行くことで従業員との接点が増えた。社会と接点を持てたことは人間として成長できる場を与えてくれたと思います。現に五郎丸を含め、昨年プロ契約だった選手はプレーにおいて大きく成長した1年だったと思います。
○五郎丸ゲームキャプテン
「社員に移行し働きながらラグビーをやってきた1年。ヤマハに対する忠誠心がより強くなったと思います。プロと社員、それぞれにいいところはありますが、プロを体験したあと、社員を体験できたことは、自分にとってすごく大きなことでした」

──この1年を振り返ってみると
○堀川監督
「36人でどうやって1年を戦っていくのか。それは、リスクとの戦いでした。いろいろなことを試しながらやってきましたが、しんどいというより、自分としてはいろいろ考えることができ、大きく成長できる1年だったと思います。ただ、やるのは選手。彼らがこの1年を乗り切ってくれたことは、本当に感謝しています」

──ヤマハの課題、来季に向けつなげたい部分は?
○堀川監督
「取りきる場面で取りきる強さを身につけることが課題。ヤマハは、全員がひとつの方向を向けばすごい成果を出せるチーム。最後、追い込まれた場面で何をしなければいけないのか、という意思統一ができれば力は発揮できる。その強みを認識し、来季に入ってくる新しい選手を加え、しっかり考えていければと思います」
○五郎丸ゲームキャプテン
「ゲームの80分間の中で、ゲームプランが変わったときのブレが選手にあったことは、今日の課題です」

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郷田監督(右)、松本ゲームキャプテン
郷田監督(右)、松本ゲームキャプテン

◎九州電力キューデンヴォルテクス
○郷田正監督
「トップリーグに上がることを目標にやってきて今日、まさに勝ってその目標を達成する、という強い気持ちで臨みましたが結果的に敗れてしまい、本当に残念な思いです。選手は最後の最後まで本当によくがんばってくれました」

○松本允ゲームキャプテン
「チーム目標のトップリーグ再昇格に向け、トップチャレンジ3戦の結果で今日の試合があるのですが、前の3戦をある意味忘れ、チームは純粋にチャレンジャーとして挑みました。勝敗は大事で、勝たなければ昇格はできないのですが、今日は持てる力を全部、このグラウンドに置いていこう、そう仲間と話をし、僕たちの力は、すべて出すことができたと思います。敗れはしましたが、選手ひとりひとり、そしてチームとして大きな財産を得ることができたのではないかと感じています」

──入替戦に向けこの2週間で修正した点と、試合後は選手にどんな声をかけたのか。
○郷田監督
「トップチャレンジの3戦の反省をふまえ80分間、ディフェンス、アタックのどちらも攻め続けよう、ディフェンスは前に出る、接点を激しくと修正しました。試合後の選手たちには、よくがんばった。何度でも、何度でもチャレンジをしていこう、そう話しました」

──出し切ったとお話されていましたが、トップチャレンジと何が違ったのか。
○郷田監督
「今回は1発勝負。選手たちは持てる力を出そうとしっかりした準備ができたし、そういうプレーをしてくれた。
○松本ゲームキャプテン
「技術的なこともあるでしょうが、グラウンドの人間としてはメンタルの部分が大きかったと思います。トップチャレンジ3試合は、勝たなければ、結果を残さなければといった強迫観念というか、プレッシャーで自分たちがやりたいようにできず、固くなっているところがありました。逆に今日の試合は、入りからいい意味で開き直り、勝ち負けの結果はあとでついてくるので、とにかく自分たちがやれることをやれるだけやろうと。試合に挑む心構えで、リラックスでき100%出せたと思います」

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