10節 マッチサマリー(ヤマハ発動機 19-23 NEC)

ヤマハ発動機ジュビロ 19-23 NECグリーンロケッツ
【week10/2012年1月15日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】

ニュージーランドで開催されたラグビーワールドカップ2011の影響で、例年よりかなり遅く10月末からスタートした今季のジャパンラグビー トップリーグも既に終盤第10節に入り、どのチームも一つでも順位を上げようとしのぎを削る。
近鉄花園での第1試合は、現在7位のヤマハ発動機ジュビロと4位のNECグリーンロケッツとの戦い。ヤマハ発動機は、昨シーズン入替戦に臨むといった苦境に耐え、今季は5勝4敗と勝越し、さらに上位を狙う勢い。一方のNECは緒戦の神戸製鋼戦を落としはしたものの、以後快調にペースを上げ、現在4強の一角を占める。ともにFW・BKのバランスのとれたチームだけに、インパクト・プレーヤーの活躍に勝敗の帰趨が左右される予感の漂う一戦。

試合は、NECのキックオフでスタートしたが、開始早々いきなり試合が動く。ヤマハ発動機ディフェンスラインのギャップを衝いてNEC10番 SO田村がいきなりラインブレイク、ヤマハ発動機陣に深く攻め込むと連続攻撃、ゴール直前ラックから9番 SH櫻井、ショートサイドの7番 FLキャプテン、ラトゥにつなぎトライ、5-0と先制する。
この後両チーム一進一退のこう着した状態が続くが、今度はヤマハ18分、ゴール前15m付近から右に展開、ライン参加した15番 FB五郎丸がオフロードで14番 WTB屋宜につなぎトライ、Gも成功し7-5と逆転する。さらにヤマハ発動機は23分、ハーフウエイ中央での相手のオブストラクションから15番 五郎丸がPGを狙い、見事に決めて10-5とリードを拡げる。

しかし、今度はNEC、25分にPGで8-10と差を詰めた後、34分10番 田村の長すぎるかに思えたキックパスを、11番 WTBナドロがまさにフィジアンズ・マジック、10mライン付近でジャンプしてワンハンド・キャッチ、そのままタッチ際を走り切りトライ。タッチ際の難しいGも10番 田村が決めて、15-10と逆転する。この後ヤマハ発動機も1PGを返して13-15、僅差でハーフタイムとなった。

後半もいきなり動きだす。ヤマハ発動機のキックオフをNECがリターンしようとして、オブストラクション。15番 五郎丸がPGを難なく決めて16-15と逆転。しかし、この後、両陣の10mラインの間でほとんどのプレーが行われるといった均衡状態が続き、ヤマハ発動機、NECと連続攻撃に耐えきれず相手が犯した反則で1PGずつを取りあい、19-18のまま後半最後の10分へと突入する。

そして、試合が決まったのは31分、ヤマハ発動機がマイボール・ラインアウトをターンオーバーされ、ディフェンスラインが半ば崩壊する隙をNECが衝き、ヤマハ発動機陣に深く攻め込むと、22mライン付近中央ラックから展開、7番 キャプテン、ラトゥから今度も11番 ナドロに繋がりトライ、23-19と再度逆転。NECはその後、ノーサイドまで確実に守り切って、薄氷の勝利を手にした。マン・オブ・ザ・マッチには攻撃の起点としてNECを勝利に導いた10番 田村選手が選ばれた。

今日の両チームの順位争い上、極めて重要な一戦、一見NECのナドロの2トライが勝敗を決したかのように見える。しかし、試合後の会見で、ヤマハ発動機の清宮克幸監督がいみじくも述べたように、ナドロのプレー以外の場所、セット・プレイで、ヤマハ発動機はすでにNECに守勢に立たされていた。この試合の結果、NECは4強の座を死守し、ヤマハ発動機は、8位と順位を下げることとなった。

レギュラーシーズンも終盤に入り、個人成績も気になるところだが、この日2トライを上げたNECのナドロは今シーズンのトライ数を16とし、2006-2007シーズンに三洋電機(現パナソニック)の北川智規が挙げたシーズントライ記録19の更新を視野に入れた。

会見ダイジェスト
ヤマハ発動機ジュビロ
清宮監督(右)、大田尾ゲームキャプテン
清宮監督(右)、大田尾ゲームキャプテン


◎ヤマハ発動機ジュビロ
○清宮克幸監督

「大一番、トップ4を狙うためには、負けられない試合でした。やはり、今のヤマハにはほんの少しだが足りないところがあります。試合中に、7、8割の力は出せているのですが、後の1割、2割、3割というところが発揮できないようであれば、今のヤマハ発動機の順位は相当なところだと思います。それから痛いところで、ミスが出ていたが、こういったところは次節に向けて修正して、チームの成長に繋げていきたいです」

○大田尾竜彦ゲームキャプテン

「今季非常に好調なNECとの試合ということで、いい準備ができて試合に臨んだのだが、キーマンに走られてしまいました。22mラインから入ったところでの得点力、集中力を欠いたのが敗因の一つです。次節はホームで負けられない試合ですが、まだまだシーズンは続くので日本選手権も見据えて、チームとして成長していきたいと思います」

──具体的に試合の中で問題だと思った点は?

○清宮監督
「先週も同じだったのですが、ここというところでのラインアウトのミス、それから前半最初のところでのディフェンスのミス等色々あります。あと少しで改善できると思うが、そこがトップ4との差なのでしょう」

──結果を見ると1トライだけ。どこが足りないのか?

○大田尾ゲームキャプテン
「今は、分析を踏まえずに想像で話すのですが、やろうとしたことの9割はできていたように思います。後は個々のプレイヤーの責任で、集中力が足りなかったのではないでしょうか」

──先週から変えたところは?

○清宮監督
「攻め方は変えていません。今日の試合は、強いて言うのならセットプレーで負けました。スクラムでも反則を犯したし、ラインアウトも取れなかった。2トライを挙げたNEC11番のナドロに目が行くでしょうが、それ以外のところでも負けていました。だから相応の敗戦だと思います」

NECグリーンロケッツ
岡村ヘッドコーチ(左)、ラトゥ キャプテン
岡村ヘッドコーチ(左)、ラトゥ キャプテン


◎NECグリーンロケッツ
○岡村 要ヘッドコーチ

「大阪の地まで多くのファンに来ていただきました。まず、このことに感謝したいです。試合はタフなものになるだろうと予想はしていましたが、実際、メンタルな面でも厳しい試合でした。このような試合で勝利をもぎとった選手たちの成長を強く感じました。最後までハートで戦った、素晴らしい試合だったと思います」

○ニリ・ラトゥ キャプテン

「今日は、NECにとって重要な試合と位置付けて準備をして試合に臨みました。ヤマハ発動機にとっても重要であることは、もちろん承知していたので、試合は、予想通り厳しい内容のものとなりました。しかし、我々はよりハングリーに試合で頑張りました。そのような選手たちを誇りに思います。試合の結果、課題も見つかったと思うので、その点修正して次の試合に臨みたいです」

──逆転してからおよそ10分、4トライのボーナスポイントを取ろうという考えはなかったのか?

○岡村ヘッドコーチ
「とにかく勝つということが、この試合にかけた最大の思いでした。ヤマハ発動機の逆襲も怖かったし、より確実にというキャプテンの判断は賢明だったと思います」

──今日の勝因と、今後に向けての決意は?

○岡村ヘッドコーチ
「今日の試合は、ハートで勝ちました。次節コーラとの試合も全力で必死に戦う、そうすることで次の2試合のいい結果につながると思います。要は力を緩めずに戦うだけです」
○ラトゥ キャプテン
「シーズンを通して、ハングリーに戦ってきました。残り3試合、相手もハングリーに来るでしょう。まず何よりも勝つこと、その結果、ボーナスポイント等がついてきたらそれは素晴らしいことだと思います」

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