プレーオフ ファイナル マッチサマリー(サントリー 47-28 パナソニック)

プレーオフトーナメント

サントリーサンゴリアス 47-28 パナソニック ワイルドナイツ
【プレーオフトーナメント ファイナル/2012年2月26日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

リーグ1位サントリーサンゴリアスと3位パナソニックワイルドナイツの対戦。昨年と同一カードとなった。過去のプレーオフでの直接対決では、サントリーサンゴリアス1勝・パナソニックワイルドナイツ(三洋電機ワイルドナイツ)2勝で、いずれも1-2トライ差の好ゲームとなっている。また、今季も含めたリーグ戦では、ともに通算4勝4敗1分で並んでいる。

    

パナソニックのキックオフ、早々にサントリーのきつい攻撃が続き、4分にはパナソニック陣の右コーナーポストの根元にボールが触れてテレビ判定に持ち込まれた。各角度からの映像が流れ、どよめきと落胆の歓声が上がった。結果はドロップアウトで再開。5分には果敢にDG(10番トゥシ)を仕掛けるも不発。それでもサントリーのアタックに耐え切れずパナソニックは適所で反則。PG2つを献上せざるを得なかった。

最初のトライは パナソニック。19分スクラムからSH田中が被られSOにパス出来ず、やむなくスクラム右サイドの突破を試みたがサントリーFLに捕まった。その瞬間スピードに乗った13番フーリーが擦り寄り好パスを受け取りそのまま中央ゴールポスト下にトライ。(サ6-7パ)続けてパナソニックはPG2をお返し。31分のPGは約45mの飛距離を見事に決めた。(サ6-13パ)

しかし、パナソニックの前半の得点はここまで。サントリー6番スミス・10番ピシ・12番ニコラスらの華麗な動きでパナソニックの攻撃は思うようにはいかない。両チームの防御は堅く、受けたタックルにノッコンを誘発、攻守が変わる展開となった。
32分サントリーはラックからのこぼれ玉を14番長友が拾い上げ7番佐々木にパス、一気に防御ラインの裏側に出て、ゴール前でフォローに付いた9番デュプレアに渡し余裕でトライ。さらに前半終了前、オフサイドのPKをタッチキックしてラインアウトからモールに持ち込み、もみ合いながら6番スミスがトライ。(サ20-13パ)
前半は、両チームともキックの攻めは少なく左右ラインに展開し4次5次のアタックを仕掛けた。パナソニックの10番デラーニ・13番フーリーの動きも良く、ロングパスやスイッチプレーを見せてくれた。FWはモールに絡まずサイドを固めた。しかしFWの集散とボールさばきはサントリーがやや上回り、ターンオーバーの回数はサントリーが多かった。

後半1分、サントリーは中央34m付近でPGを決め突き放した。(サ23-13パ)
その後、2-3分間プレーが切れない継続プレーが続き、17分頃攻めるサントリーに12番キャプテン霜村がインターセプトしたがフォローが遅れ、直ぐにターンオーバーされた。ボールはゴール前に蹴り込まれパナソニックは辛くもタッチに逃げたが、この展開を見逃さず攻め方を修正、ラインアウトからのモールに持込み21分トライを奪った。(サ30-16パ)

ここで、パナソニックには先週の東芝戦での粘りを見せて欲しかったがサントリーはそれを許さなかった。
24分セットスクラムからポイントをずらしラック、出て来たボールを一瞬の隙を突き6番スミスがゲット、ゴールに飛び込んだ。(サ37-16パ)

25分過ぎからサントリーは7名入替え、パナソニックも4名送り込み総力戦に。時間は過ぎ30分、パナソニック13番フーリーが自陣22mでインターセプト、ライン際を約90mの独走、右隅へのトライを見せ反撃の機会を待ったが追いつくことはできなかった。パナソニックは最後まで守り攻め続け、サントリーは耐えた。
ホーンが鳴ってからも3分あまりサントリーにプレーを切らせず、6番バツベイが渾身のトライを奪いノーサイド。サントリーは4年ぶりにプレーオフで優勝。プレーオフ制に移行してから、過去2度東芝が成し遂げた、リーグ戦1位とプレーオフ優勝の言うなれば「トップリーグ完全優勝」を達成した。そして日本選手権で勝利し2冠、真の王者を狙う。パナソニックはリベンジして来季10年目のトップリーグにつなげるか。2011-2012ラグビーからは、まだ目を離せない。

表彰式では、サントリー6番ジョージ・スミス選手がプレーオフMVPに選ばれた。また、試合前には、将来のトッププレーヤーになるべきジュニア(小6)による「トップリーグ FOR ALL ミニ・ラグビーフレンドリーマッチ」3試合が行われた。選ばれた中鶴ラグビークラブ(九州ブロック代表)、吹田ラグビースクール(関西ブロック代表)、高崎ラグビークラブ少年部(関東ブロック)の少年少女たちには、このファイナルゲームはどんな風に映っただろうか。同じ日、同じピッチでプレーできたことは一生の思い出になるだろう。(長澤 孝哉)

サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック
会見ダイジェスト
パナソニックワイルドナイツ

◎パナソニック ワイルドナイツ
○中嶋則文監督

「お疲れ様です。先週に引き続いて前へ出るディフェンスを試みたのですが、サントリーさんのアタックが素晴らしく、止めきれずに反則からスコアされて後手、後手に回ってしまいました。しかし、最後のトライもそうですが、80分間、選手は良くやってくれました」

──モールから奪われたトライは?

「モールで来るのは想定していました。もっと東芝戦のように止められるかと考えていましたが、選手の怪我もあり、できませんでした」

──序盤、前へ出るディフェンスが不発だったが?

「グラウンドコンディションもあると思いますが、東芝戦のように前へ行けませんでした。ただ、前半の中盤からは機能したと思います」

──チャンネル0を突破されたが?

「我々のディフェンスが揃う前を、オプションとして用意されていたと感じます。あそこまで近いポイントは想定していませんでした」

──東芝戦の疲れが残っていたのか?

「最終節の東芝戦ほどは疲れていなかったと思います」

──日本選手権の戦い方は?

「ある程度、映像を見て修正したいと思います。もう一度やれるチャンスがあるので、しっかり準備したいと思います」

○霜村誠一キャプテン

「お疲れ様です。80分間通じてサントリーさんの一つずつのプレーが、少しずつ我々の上を行っていたことが、この結果になったのかと思います。しかし、これでチャレンジが終わりではなく、どうすればあのアタックにディフェンスし続けることができるか、全員で考えてやっていきたいと思います」

──止められなかった原因は?

「自分たちのサポートの遅さと、そこに適確に絡むサントリーさんの選手が多かったと思います。ディフェンスで前へ出ようとして、少しずつ食い込まれて、前で止めきれない悪循環にはまってしまったことが原因です」

──ゲインラインを越えられないことが多かったのは?

「やろうとしたことはできたのですが、それ以上にブレイクダウンでスローダウンされ、なかなかテンポを作れませんでした」

──タックルも不十分だったわけは?

「相手が走り込んで来るスピードもあるが、しっかり倒せなかったのが何でかは、ちょっと分かりません」

──サントリーのメンバー変更について?

「実際に代わったのを直前まで知らなくて、あれ、浩二(平選手)は? と思いました。岸和田選手はアタックも凄くアグレッシブで、ディフェンスも凄く効いていたので、サントリーさんとしては問題なかったのではないでしょうか」

──表彰式を見て?

「悔しいですよね。素直に。去年はあそこに居たんだなあと思いました。まだ、チャレンジし続けていきます」

サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック   サントリー 47-28 パナソニック
サントリーサンゴリアス

◎サントリーサンゴリアス
○エディー・ジョーンズGM兼監督

「(日本語で)素晴らしい!(以下、英語で)このような形で勝つことを目指していました。良く勝てたと思います。パナソニックさんはとても良いチームで、攻撃的なアタックがあり、ディフェンスラインを凄く上げてきたので、こちらのアタックを変えて、狭いところでプレーしました。本当に良く勝てたと思います」

──どこが素晴らしかったのか?

「アタックをコンディションに応じて、良い形に修正できたことです。去年は速いテンポで回すだけでしたが、今年は柔軟性があり、もっとフィジカルなチームになったと思います」

──柔軟性とは?

「相手のディフェンスのいないところを攻撃しに行ったところです」

──ターンオーバーの半分くらいをジョージ・スミス選手が行ったが?

「今年は、サントリーとの試合では相手のチームがキックをしてこなくなりました。ジョージのタックルコンテストが上手だからです。隆道(佐々木選手)も上手になり、ターンオーバーからのアタックが上手く行くようになったと思います」

──キックを多用したのは?

「そこは修正した点です。今日はスペースがあまりなかったので、スペースを、キックを使って空けたかったからです」

──モールでトライを2本獲ったが?

「サントリーがモールで2回もトライを獲るのはとても珍しいです。モールの後ろに相手が参加してこなかったので、それを選手が良く読んだと思います。モールの練習は1週間に10分程度なのですが(笑)」

──パナソニックは会見で前に出られなかったと言うが?

「パナソニックさんはラッシュ・ディフェンスをしてくると思っていました。去年に比べて、先週までのディフェンスはあまり良くなかったと思います。東芝戦では勝ったので、同じディフェンスシステムでやってくると思っていました。竹本キャプテンやバイスの剛(有賀選手)の流れを読む能力が素晴らしく、修正して対応できました。試合中、コーチはほとんど何もできませんからね。レフリーに叫ぶぐらいしかできません(笑)」

──サラリーマンのキャプテンについて?

「44名の選手がいますが、プロはその内の11名だけです。それでも、44名全員がプロみたいな練習をしています。太一(田原選手)に、今日の試合前に、6時からの朝練習を何回やってきたか聞いたら『200回くらい』と答えてくれました。社員の選手が、仕事とラグビーを両立させています。竹本キャプテンも、朝6時から練習し、7時半にはコンピュータに向かっています。キャプテンが社員の代表として戦ってくれています。それも竹本をキャプテンに指名した理由の一つです」

──ジョージ・スミス選手の優れたところは?

「オーストラリア代表ワラビーズ110キャップの選手です。ブランビーズでも100キャップ、このままだとサントリーでも100キャップ行けますね。ここまでの成績の選手に言うコメントはありません。一番大きな点は、本当にグラウンド外でバックローの選手にいろいろと教えてくれていることです。選手の見本、先生になってくれています。もっともっと良い選手になってくれると思います」

──今後の目標は?

「東芝さんはトップリーグのチャンプに5回なっていて、サントリーは2回です。これから3回勝って、キャッチアップしないと。東芝さんはクラブとしての強みがあります。まだ、私も東芝さんには1回しか勝っていません。この前の試合終了間際5分間での逆転負けがありますので、リベンジしたいと願っています」

──今日の試合で、日本代表につながるものは?

「勝つことです。本当にサントリーの選手はどれだけ勝ちたかったことか。日本代表も、たとえ相手がオールブラックスでも、勝つという強い意志とプライドを持ってプレーすることです」

○竹本隼太郎キャプテン

「試合中は、プレッシャーを感じながらプレーしましたが、みんな正確なプレーができたと思います。一人一人が頼もしく、良い集中を続けることができました。目標の1冠を獲れて嬉しく思います」

──ジョージ・スミス選手について?

「練習後にジョージがスキルの指導をしてくれます。隆道のスキルが上がったと思います」

──直前の故障者で動揺はなかったのか?

「少しは動揺したと思いますが、今年はノンメンバーのレベルアップを感じています。同じラグビーができることを代わりに出た二人が証明してくれたと思います」

○ジョージ・スミス選手(プレーオフトーナメントMVP)

「素晴らしいチームの一員としてプレーできて嬉しく思っています。他の選手が、我慢し続けることと集中力を切らさずにプレーすることをやってくれたおかげで、MVPを戴けて、嬉しく思っています」

──大事なゲームだったが?

「今は、自分の役割をしっかりやることにフォーカスしています。今日は3トライしましたが、その内の2回はモールからのトライです。3トライともセットピースからのトライですので、選手みんなが、自分の役割を果たして、この1週間練習してきたことを試合でも出せて、今日のチームとしての良いパフォーマンスになったと思います」

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