5節 マッチサマリー(東芝 21-29 トヨタ自動車)

東芝ブレイブルーパス 21-29 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
【week5/2012年10月6日(土)/岩手・盛岡南公園球技場】

 

雲はあるものの、なんとか雨は降らずにいる空の下、4千5百人近くのラグビーファンが集まった盛岡南球技場。風下からトヨタ自動車ヴェルブリッツのキックオフ。
試合開始早々、いきなり突破をみせる東芝ブレイブルーパスPR浅原拓真。続いてSO吉田良平。慌てたヴェルブリッツの反則に速攻からLO梶川喬介がポスト中央にトライ。電光石火の攻撃でSO吉田良平のゴールも決まり、前半3分7-0とブレイブルーパスが先制。

気合の入るヴェルブリッツは、続くキックオフから相手陣になだれ込みペナルティからラインアウト攻撃。激しいブレイクダウンからラックボールをもぎ取ると、素早くバックスに展開しWTB久住辰也がトライ。ゴールは成らないが前半8分、7-5とヴェルブリッツが追い上げる。
キックオフに勢いを見せるヴェルブリッツフォワード。No.8菊谷崇が前に出てチャンスをつくりブレイブルーパスの反則を誘い、ゴール正面のショットをSOスティーブン・ブレットが確実に決めて前半16分7-8と逆転に成功。

その後もラインアウトモールで反撃に出るブレイブルーパスだが、あと一歩で攻めきれず、逆にヴェルブリッツが反撃。No.8菊谷からWTB小澤大へとつなぎチャンスを広げる。ブレイブルーパスもSO吉田が突破を見せ、ヴェルブリッツはCTBタウモエピアウ・シリベヌシがナイスタックルでターンオーバーするという、がっぷり四つに組んだフィットネスのぶつかり合い、見ごたえ溢れるナイスゲームが展開される。前半はそこからスコア動かずそのままハーフタイム。

後半ブレイブルーパスのキックオフをヴェルブリッツSOブレットがナイスタッチで陣地をとる。コンテストで競り勝ち、エリアマネジメントを上手く運ぶヴェルブリッツに対し、ブレイブルーパスもラインアウトでターンオーバーし、CTBオト・ナタニエラがナイスタックルでターンオーバーする展開で、どちらも譲らず。
しかしブレイブルーパスは、タックルから反則、すかさずヴェルブリッツSOブレットがショットでPGを決めて後半2分7-11に。
さらに後半4分にはライン参加したFLヘイデン・ホップグッドが相手ディフェンスをかわし走り抜けトライ。ゴールは成らないがヴェルブリッツが7-16と引き離しにかかる。

キックオフからのビッグゲインとモールドライブでどんどん調子を上げるヴェルブリッツに、ブレイブルーパスは替わったCTBニール・ブリューが気概をみせ、相手ボールをもぎ取って一挙に敵陣に走り込み相手ゴールを脅かす。
ヴェルブリッツは落ち着いてラインアウトモールをドライブ。どんどん前に出てNo.8菊谷がトライ。SOブレットのゴールも決まり後半15分7-23に。

このままでは終われないブレイブルーパスは次のキックオフで猛然とラッシュ。CTBブリューがチャンスを広げて一気にゴールポスト近くに迫る。キャリーバックのスクラムからSO吉田が相手をかわし技ありのトライ。ゴールも決めて後半18分、ブレイブルーパス反撃の狼煙で14-23と迫る。
しかし次のキックオフから激しい攻防が続く中、相手オフサイドで、ハーフウェイでペナルティを得たヴェルブリッツはショットを選択。SOブレットが55mの見事なロングキックを見せPG成功。後半23分14-26と引き離す。

このままヴェルブリッツペースかと思われたところ、さすがブレイブルーパスは自陣ラインアウトから右に左にオープン展開。さらにペナルティを得て速攻。再びのペナルティで相手ゴール前ラインアウトを得て、瞬間スローインが乱れて相手ディフェンスが乱れたところ、逆に有利となってNo.8豊田真人が抜け出しトライ。SO吉田のゴールも決まり、後半29分21-26とブレイブルーパスが相手を射程圏に捉える。
息を吹き返したかのような激しいアタックのブレイブルーパスに対し、絶対負けじとヴェルブリッツCTBシリベヌシが激しいタックルでターンオーバー。さらに三度ブレイブルーパスがターンオーバーと、まさに手に汗握る意地の攻防、タフなゲーム展開が続く。
しかし、得意のドライビングモールでリードするヴェルブリッツは、相手ゴール前のペナルティからSOブレットがショットを手堅く決めて後半32分21-29と安全圏に。ブレイブルーパスは最後まであきらめずアタックを続けるが、あと一歩及ばず、そのままノーサイドとなった。

相手がブレイブルーパスだけに、ヴェルブリッツは真正面からフィジカル勝負。キックオフリターンとエリアマネジメントのキックで勝り、最後はモールコントロールも素晴らしかったヴェルブリッツに軍配が上がった。
マン・オブ・ザ・マッチは当初のプラン通り的確なキックを駆使し、ゲームメイク・エリアマネジメントをこなしたSOスティーブン・ブレットが受賞。
なお試合終了後、この試合でトヨタ自動車ヴェルブリッツSH麻田一平選手が、トップリーグ通算100試合出場達成、記念セレモニーが開催された。

 
 
会見ダイジェスト
東芝ブレイブルーパス
和田監督(左)、豊田キャプテン
和田監督(左)、豊田キャプテン

■東芝ブレイブルーパス
和田賢一監督

「まずは今年もこの盛岡で試合ができた事がうれしいです。ファンの方にもたくさん見に来ていただいた事に感謝します。今日の試合のテーマはフィジカルの戦いを制して、すべてを出し切る事を掲げて臨みました。しかし、すべてにおいてトヨタさんの方が勝っておりました。今日はご覧の通り完敗です。しっかりと敗因を分析し次節までに修正したいと思います」

豊田真人キャプテン

「3年連続ここ盛岡で試合ができた事に感謝します。監督が言った通りフィジカルでトヨタさんに負けないように頑張りました。身体をしっかりと当てて東芝のリズムをつくろうとしたが、トヨタさんの粘っこいタックルと冷静なエリアマネジメントを狙う作戦にやられました。すべてにおいてトヨタさんに負けたと思います。今日の反省をしっかりと次の試合に活かしたいと思います」

──開始早々簡単にトライが獲れた事でちょっと油断してしまったのか?

和田監督
「油断はなかったと思います。相手はフィジカルが強いトヨタさんなので、とてもタイトな試合になる事は想定・覚悟しておりました。気合いを入れてスタートしたのに対し、あっさりとトライが獲れたのでちょっと拍子抜けというかリズムが狂ったのかもしれません。
でも今日のトヨタさんはとても良かった。2人目3人目のサポートも早く、ブレイクダウンでかなり優位にたたれました。ターンオーバーも多かったはずです。低くて粘っこいタックルに合い、東芝のスタンディングラグビー、繋ぐラグビーをさせてもらえませんでした」

──岩手出身の渡邉太生選手が今年ブレイクした要因は何かを教えてください?

和田監督
「今日は地元での試合という事でいつも以上に気合いが入っていたと思います。東芝に入って3年目ですが、一番彼を変えたのはメンタル面だと思います。結婚を機に練習に取り組む姿勢も変わり、向上心・モチベーションがかなり上がりましたね。彼が持っているポテンシャルは高いので、今の現状に満足する事なくもっともっと上を目指して日々鍛錬して欲しいと思います」

 
 
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
右から廣瀬監督、上野キャプテン、麻田選手
右から廣瀬監督、上野キャプテン、麻田選手

■トヨタ自動車ヴェルブリッツ
廣瀬佳司監督

「東芝さんはフィジカルが強いので接点で負けないように、しっかりと身体を当てる事を意識させました。立ち上がり早々の失点が逆にチームをひとつにさせてくれたと思います。当初のプラン通りキックを有効に使いエリアマネジメントをしっかりできた事が良かったと思います。後はモールでしっかり押し込めた事が良かったと思います。今日は『ギャップ・スペースをつくプレー』『ダイレクトプレー』などプラン通りの展開に持ち込めたと思います。また次節もトヨタらしい試合を見せられるよう頑張りたいと思います」

上野隆太キャプテン

「フィジカル勝負で互角に戦えた事。東芝さんの強い当たりに負けなかった事です。セットプレーも安定していたので、チャンスが来たらプラン通りPGを狙おうと思っていました。エリアマネジメントもうまくできたし、トータルで今日はナイスゲームができたと思います」

──トップリーグ100試合出場の麻田選手は、今日の試合に臨むにあたり、何か特別な思い入れはありましたか?

麻田一平選手
「100試合達成という個人の思いは特別にありませんでした。試合終了後のセレモニーで知ったので、試合中は勝つ事だけを考えてプレーしていました。相手が東芝さんで本当に良かったと思います。強い相手なのでかなり気合も入りましたし、是が非でも勝ちたいと思いました。今日の1勝は今後に繋がる大きな勝利だと思いますし、自分にとっても自信になりました。100試合というメモリアルを勝利で飾れてうれしいです。これも家族をはじめファンの皆様、社員の方、チーム関係者の皆様の支えがあってこその結果だと思います。100試合はあくまでも通過点ですので、これからも1試合でも多く戦っていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました」

 

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