10節 マッチサマリー(NEC 29-6 NTTコミュニケーションズ)

NECグリーンロケッツ 29-6 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
【week10/2012年12月8日(土)/千葉・フクダ電子アリーナ】

快晴ではあるが強風の吹き荒れる空の下、トップリーグ第10節、NECグリーンロケッツ対NTTコミュニケーションズシャイニングアークスのゲームはキックオフされた。
ホームチームのNECグリーンロケッツだが、ここまでリーグ11位と苦しい戦いが続いている。「日本選手権出場トーナメント」(ワイルドカードトーナメント)出場権の8位以内確保に向けて負けられない試合が続く。今シーズン好調なBKで勝負をしたい。絶妙のさばきを見せるSH櫻井からCTB釜池、田村へボールを集め、フィニッシャーであるナドロへボールを集めたいところだ。

一方のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスはここまで好調を維持し、現在7位につけている。こちらも同じく「日本選手権出場トーナメント」(ワイルドカードトーナメント)出場権の8位以内確保に向けて本日は負けられない試合だ。長身のFW陣で空中戦を支配し、SO君島のゲームコントロールから、CTBツイランギでペネトレイトし、決定力のあるWTB友井川にボールを回し勝負をかけたい。特に超大型BKナドロ vs ツイランギの対決は注目の的だ。
試合に先立ち熊谷俊人千葉市長のキックオフセレモニーが開催された。熊谷俊人市長からNECグリーンロケッツのチームマスコット「マルス君」への見事なキックパスが決まり、場内の大喝采を浴びた。

試合は強風の中、NECのキックオフで始まった。開始早々から激しいコンタクトでの密集戦が展開される。NECはCTB田村のビックゲインから試合を優位に進めるが、反則からペースをつかめず、なかなか得点を奪えない。その後、両チームともボールを大きく動かし、CTB間の突破からWTBでの勝負を仕掛けるが相手の好ディフェンスの前になかなかゲインができない。
その攻防の中、NTTコムは少ないチャンスを生かし、9分、18分とSO君島が長い距離のペナルティゴールを決め、6-0と試合をリードした。対するNECもすぐさま反撃を開始し、22分に待望のトライが生まれる。22m付近のラックからCTB釜池が好判断で相手ディフェンスを突破し独走トライ、CTB田村がゴールも決め7-6と試合を逆転した。その後、お互いにショートパントを巧みに使い突破を図るが、一進一退の攻防が続く。NTTコムは、30分、35分とペナルティゴールを失敗し、1点差のまま前半を終了した。結果的には強風に邪魔されたこのゴールの失敗が試合の明暗を分けるのだが、それ以上にNECの好ディフェンスの光る前半の戦いであった。

後半開始早々2分、NECが追加点を奪う。10m付近のラックから右オープンに展開し、SH櫻井が好スピードでオフロードパスを受け、相手ディフェンスを突破しビックゲインに成功する。その後のラックから、FLラトウが右中間にトライ、NTTコムを引き離しにかかった。
さらに攻撃の手を緩めないNECは、11分22m付近のラックから左オープンに展開し、WTBナドロがライン参加して相手ディフェンスを突破しトライ。直後の13分にはキックオフから左オープン攻撃を仕掛け、CTB田村からWTBナドロへの見事なキックパスが決まり、そのままWTBナドロが独走トライ。ほぼ勝負の趨勢を決めた。わずか数分間ではあるが相手に息をつかせぬ攻撃を仕掛けたNECの集中力は見事であった。対するNTTコムも必死に反撃を試みるが、NECのお家芸である鉄壁のディフェンスの前にゲインを切れない。逆に32分NECはWTBナドロがペナルティゴールを決め、勝利を不動のものとし、ノーサイドのフォーンを迎えた。

両チームの攻防は激しく素晴らしいものであった。NECは伝統のディフェンスの復活を大きく印象づける、「チームの強み」を存分に発揮したゲームであった。対するNTTコムは、前半戦躍進の原動力であった看板の個々のタックルが高く、ブレイクダウンでの劣勢が勝負の明暗を分けた結果となった。今後の立て直しに期待したい。(千葉県ラグビー協会 塚越康利)

会見ダイジェスト
NECグリーンロケッツ
クーパー ヘッドコーチ(左)、浅野キャプテン
クーパー ヘッドコーチ(左)、浅野キャプテン

■NECグリーンロケッツ
グレッグ・クーパー ヘッドコーチ

「今日の我々のプレーが喜ばしいものになったことは嬉しい。我々はディフェンスとともにアタックも機能した。前半の何度かのトライチャンスを逃したのは残念ではあるが、規律のある、試合全体を通したディフェンスは大変に良かった。ラックへの差し込みも含めて、ディフェンスからディフェンスへと規律ある試合運びは、試合全般的に見て、とても良い内容であった」

──4トライの奪取を含めてボーナスポイントも獲得できた試合ではあるが、「4トライ奪取のオフェンス」と「ノートライに抑えたディフェンス」のどちらを評価するか?

「ディフェンスだ。敬意を払える相手からトライを4つとれるアタックも嬉しいのだが、今日のディフェンスのプレスは良かった。少し前からディフェンスは少しずつ良くなった。キュウデン戦では相手に背中を見せてトライをとられたが、今日は背中を見せずにゴールラインを死守できた」

──今年から外国人選手の起用が3人から2人になった。ニリ・ラトウ選手についてはどう考えるのか?

「彼は強力なボールキャリアーであるし、ボールハンターでもある。前半は不用意なペナルティが多かった。ブレイクダウンや再開での反則が多かった。彼は献身的なプレイヤーでもあるし、規律の向上と熱心さをコントロールしたい」

──ニリ・ラトウ選手とキャメロン・マッキンタイヤー選手については、キャメロン選手復帰後はどう考えるのか?

「キャメロンの怪我により我々はとてもつらい時期を送った。キャメロンはしっかりとゲームをコントロールできる選手だ。今は森田と田村がしっかりとゲームをコントロールしている。キャメロンの復帰によってチームのオプションは増える。キャメロンは現在リハビリ中だ。今は森田が良いし、田村も成長している」

浅野良太キャプテン

「ホームで多くの方々に暖かい声援をいただいたことに大変感謝している。風の強い環境の中、いかにゲームをコントロールするかが、ポイントであった。前半は反則が多く、ゲームをコントロールできなかったが、前半のうちに逆転できたことは良かった。後半はエリア獲得、得点奪取も含めて全てが良かった」

──リーグ前半戦は残念な結果が多かったが、休止期間を経て、ディフェンス、アタック力とも向上したように感じる。どう修正したのか?

「1対1のタックルにフォーカスを当てて練習してきた。また同時にオフェンスはラインスピードを上げることを行った。今日のゲームに出ていたと思う。アタックは強いボールキャリーを目的にした。それが良かった」

──前半最初の田村のラインブレイクを生かせなかったことについては? 今まではトライをとれずにいるとディフェンスも悪くなるという悪循環であったが……。

「全体を通して練習ではストラクチュアを構築することとプラスして1対1のタックルを併行してフォーカスした。ゲームを通して80分間できていたと思う」

──前半攻めながらトライをとれずにリードされて嫌な感じはしなかったか?
「結果的には逆転した後、ペナルティゴールを2つ外してくれたことが大きかった。リードして前半を終えられたのは良かった」

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
林監督(左)、友井川キャプテン
林監督(左)、友井川キャプテン

■NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス
林雅人監督

「本日はありがとうございます。試合は我々の『強み』であるディフェンスを持ちながらアタックしようとして試合に臨んだのだが、柱であるディフェンスがぶれてしまい、多くのトライをとられた。セットが売りのチームがスクラムでは反則をし、後半は入りのラインアウトが4つも失敗してしまい、流れを失ってしまった。スポーツなのでスキルの不足が結果を招くのだが、この1ヶ月で流れを失ってしまった。自分の責任を感じている。柱のディフェンスを意識して立て直したい」

──ディフェンスが売りでリーグ前半は好スタートを切ったが、この試合の入りの部分で田村選手にラインブレイクをされた。どこが変わってしまったのか?

「試合の入りの悪さは感じている。トヨタ戦や前節のゲームでも最初に得点されている。全て振り返るとタックルミスなのだが、入りの悪さは今回も出てしまった。修正に臨んでいるのだが、スキル、メンタル両方に問題がある。フォーカスすればもっと修正できるのであろうが、スキルは急にダメにはならないと思う。もって行き方にも問題はあるのだろうが、このまま入りの悪さが続くような気がする。ウォーミングアップを変えるとか、100メートルダッシュをするなど、副交感神経を高めることも必要なのかもしれない。質問に対してのダイレクトな答えにはなっていないかもしれないが、何らかの策を講じたい」

──今、選手達に伝えるべき言葉は?

「今は自分たちの『強み』を磨くことだ。全てがダメになっている。リコー戦は1トライしかとれなかったが相手をノートライに抑えて勝利した。4連勝もした頃のゲームはそんな試合だった。あのアタックを直すよりもディフェンスを取り戻したい。タックルがとにかく高い。足へのタックルが65-75パーセントならば良いのだが、今日は明らかにできていない。接点でことごとくNECの前進を許した。自分たちの長所を高めることだ。短所を直すよりも長所を磨きたい」

友井川拓キャプテン

「会場の多くのファンを失望させてしまって大変に悔しい。接点の局面では、アタックでもディフェンスでもNECの前進を許してしまった。これではゲームの支配のしようがない。接点にこだわるディフェンスを修復したい」

──今、選手達に伝えるべき言葉は?

「もともと上手いラグビーはできない。相手よりひたむきにタックルするしかない。スキルもあるが意識の問題だと思う。原点回帰を目指そうと選手に話したい」

──とはいえ、前半あれだけ攻められながらも先制できたことは好感触を得たのでは?
「あれだけ攻められながらもよく戦えていたと思う。前半はよく戦ったが、後半はセットプレーの強みを出せなかった。今言っても仕方がないが、良いタイミングでナドロ選手にトライをとられてしまったことは悔やまれる。前半の戦いは確かに悲観することはない。攻められてもペナルティゴールでリードするのは自分たちのペースだ」

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