12節 マッチサマリー(NEC 34-0 キヤノン)

NECグリーンロケッツ 34-0 キヤノンイーグルス
【week12/2012年12月22日(土)/東京・秩父宮ラグビー場】

     

朝から激しく冷たい雨に濡れた12月22日(土)の秩父宮ラグビー場。第2試合が始まって間もなく雨はあがったが、芝は多く水を含んだ状態。NECグリーンロケッツ vs キヤノンイーグルスの対戦は、やはりキック主体の攻防で始まった。リーグ戦はこの後は1試合のみ(第13節=1月6日)。前節の時点でNECが10位、キヤノンが11位。両者とも10位以内に入り、日本選手権出場につながるワイルドカードトーナメントになんとしても進みたい。

始めに得点したのはNECだった。5分、キヤノンがNEC陣に攻め込んだところでノックオン、そのこぼれ球を素晴らしいリアクションで左に展開したあと、CTB田村が右奥へキックパス。それをWTB窪田がキャッチし右隅にトライ。5-0とした。
そして11分キヤノンにもチャンスが訪れる。敵陣に入ってのマイボール ラインアウトでNECが反則。しかしSOブルースが、さほど難しくないペナルティゴールをはずしてしまう。後から振り返ると、ここで3点が入っていれば、という場面だった。
片やキックパスでトライ、片やPGを失敗。足場の悪さは両チームに平等だ。この序盤の10分間の攻防が、そのまま前半から後半まで続いた、そんな印象の試合だった。

試合内容について、安易に精神論で片づけてはいけないと思うが、やはり「気合い」というものは、ラグビーの勝敗を決める、ひとつの要素であることは間違いないと思う。NECからはキックオフ開始から「気合い」が感じられた。キックやルーズボールの場面などで地道に相手にプレッシャーをかけていく。
一方のキヤノンは、どこかプレーがスマートに過ぎるのではという印象。ふだんの展開していくプレースタイルを天候の影響で制限されるという不利な条件もあるが、どうも「軽い」プレーが目につき、それがミスにもつながった。ラインアウトの出来の悪さもあり、結果としてほとんど敵陣に入れないまま時間が過ぎていく。

後半に入ってもキヤノンはリズムを変えられないまま、無得点で試合を終えた。後半はペナルティゴールの機会もなかった。スコアは34-0。もちろんNECグリーンロケッツの試合内容が素晴らしかったことがまずある。けれども、この12節まではプレーオフの可能性もあったトヨタ自動車と近鉄に、10節・11節と対戦し、敗れはしたものの接戦を演じたチームとは思えないパフォーマンスだった。
白地のジャージのNECのほうがどうしても汚れが目立つが、それを差し引いてもキヤノンのジャージの汚れが、心なしか少なく感じられた。(F)

会見ダイジェスト
キヤノンイーグルス
永友監督(右)、和田キャプテン

■キヤノンイーグルス
永友洋司監督

「今日は天候の悪い中、多くのファンの皆様が来場していただき、感謝申し上げます。お客様に対して、キヤノンのラグビーを見せられず、申し訳なく思います。もちろん、NECさんの素晴らしいラグビーが大前提ですが、非常にコーチング含めてふがいない試合でした」

──コーチング含めてとは?

「セレクションの問題です。正直、メンバーの中でどれだけベストを尽くしたか、そのうえで乗り越えられない壁があるなら、受け入れるが、その覚悟、取り組みを見せられない選手がいました。それは、その選手を選んだ僕らのミスです。あとは、NECさんのプレッシャーで、理解はできるが、準備していないプレーをしてしまう選手がいました。特にゴール前で徹底できませんでした」

──事前の想定と違っていたのか?

「それはないですね。こういう天候で、僕らのラグビーができないことは想定していました。底力が足りないのです。NECさんも、ナドロ選手が入って、モデルチェンジをして、5つのトライを獲り切っています。特別なことではなく、プレーの精度が高かったと思います。ただ、キヤノンはキャプテンの成長ととともに、伸びしろはどのチームよりあったと思います。今日、負けたことは、僕は負けるのは大嫌いですし、悔しいです」

和田拓キャプテン

「自分たちのラグビー、意図していたプレーをする時間が少なかったです。NECさんは凄いプレッシャーを掛けてこられて、自分たちのプレーの形をつくれませんでした。あと1試合に、今年積み重ねてきたものを見せたいと思います。キヤノンのラグビーを見せるため、頑張りたいです」

──ワイルドカードにぎりぎり届かなかったが?

「もちろん、決勝戦のつもりで、選手は共通に意識して臨みました。試合に入ってみて、NECさんが凄くプレッシャーを掛けてきて、うまく対応できませんでした。NECさんみたいに強いチームと対戦するとまだまだだと分かります。この経験を無駄にしないで、どうにか結果に結び付けないといけません。若い選手含めて、チーム全体ができないから負けているだけです。まだ、若い選手に足りない部分が多いので、全員がレベルアップすることが必要だと感じました」

     
NECグリーンロケッツ
クーパー ヘッドコーチ(右)、浅野キャプテン

■NECグリーンロケッツ
グレッグ・クーパー ヘッドコーチ

「すごい天候の中、選手は素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います。前半、トライチャンスがありましたが、こういう天候で獲り切れない時間が続きました。しかし、セットピース、特にラインアウトが良く、徐々にアタックが機能しました。キックオプションも、キャリーオプションにも判断の良さが観られて、トライが獲れ、次につながる試合でした」

──森田選手を10番、田村選手を12番に据えているが?

「去年は、田村選手がマッチメイクで貢献してくれました。ただ、本人はスペースを見つけ、パスの能力もラインブレイクする力もあります。12番の動きに合っていると思いますし、もちろん10番でも良いプレーをしてくれると思います。森田選手は安定したスタンドオフで、キックの判断もしっかりできるし、成長を始めていることから、二人のコンビネーションとして起用しています」

浅野良太キャプテン

「トップリーグ最後の秩父宮の試合ということで、悪天候の中、多くのファンが駆けつけてくださいました。苦しいところで応援してくださって、選手として嬉しく思いましたし、ロケッツファンに勝利を届けられて良かったと思います。NEC10位、キヤノン11位で、本来望んでいた場面ではありませんでしたが、何としてもワイルドカードを決めることが必要と臨み、僕らの良いパフォーマンスが見せられたと思います。先週はヤマハさんに、前半だけで34点取られましたが、今日は0点に抑えることができ、ディフェンスは非常に向上していると思います。年明けは福岡ですが、僕たちの目標は日本選手権で日本一になることですので、このメンバーで臨めるよう頑張っていきたいと思います」

──この季節にチームが強くなるが?

「(苦笑)本来であれば、トップ4、プレーオフを目指していましたし、それにふさわしいチーム作りをしましたが、前半節は非常に苦しい試合が続きました。しかし、何も考えずに戦うという意味では、勝ちに貪欲になれる部分もあります。一人一人の欲が出てくることも大切です。勝つことによって若い選手に自信を与えられますし、こういうゲームを重ねていくことによって、個人へのプラス要素になりますので、サニックス戦でもこういう試合をしたいと思います」

──ラトゥ選手がチームに勢いを与えているが?
「去年までキャプテンで、信頼の篤い選手です。ボールを前へ運ぶ力に長けています。縦にゲインできる選手がいると、横の動きも生きてきますので、僕らに合ったFWの選手です」

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