TOPマッチレポート特別編「入替戦」(2月9日)レビュー

再び入替戦での激戦を制してNTTドコモの残留決定
三菱重工相模原は3点差で6季ぶりの昇格ならず

9日、大阪・近鉄花園ラグビー場で来季トップリーグでプレーする権利を懸けた入替戦第2弾が行われ、後半36分のSOハミッシュ・ガードの逆転トライでNTTドコモレッドハリケーンズが三菱重工相模原ダイナボアーズを際どく退けて、辛くもトップリーグ残留を勝ち取った。

昨季は2点差、今回は3点差。2年続けてギリギリでTL残留を決めたNTTドコモ
photo by Kenji Demura (RJP)

 「今季通してそうだったように、立ち上がりが空回りして、波に乗れなかった」(高野一成ヘッドコーチ)
 NTTドコモにとっては、リーグ戦1勝12敗の成績で13位に沈んだシーズンを象徴するような厳しい一戦となった。
「セットが不安定だったし、ブレイクダウンで受けてしまった」(NO8箕内拓郎)
 立ち上がりからボールキープの時間自体はNTTドコモが上回っていたものの、ミスも多く、スコアには結びつかずに、逆に13分にワンチャンスをものにした三菱重工相模原が先制する。
 FWがモールで押し込んだ後、SO塩谷浩司が相手DFラインの裏に落としたキックに反応したFB大和田祐司が相手インゴールで押さえ、SH西舘健太のゴールも決まって7-0とリード。
 それでも、昨季もクボタスピアーズとの入替戦を29-27で辛勝してトップリーグ残留を果たした経験を持つNTTドコモとしても「(2月3日の入替戦で)サニックスが負けたことで、さらに気持ちを引き締めて臨んでいたし、苦しい展開は想定内」(箕内)。

NTTドコモWTB平瀬主将は自ら2トライを奪い、チームを盛り上げた
photo by Kenji Demura (RJP)
常に密集で体を張り続けた大黒柱NO8箕内の存在もNTTドコモには大きかった
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 24分には、「(レギュラーシーズン最終節の)サニックス戦からチーム状態が上向きだったし、前半もリアクションを上げて攻めていけば不安要素はないと思っていた」というWTB平瀬健志主将が、自らラックサイドを割ってインゴールに飛び込み反撃開始。
 この後、28分に三菱重工相模原がモールを押し込んで、一方のNTTドコモも35分にNO8箕内の突進から最後はPR許雄が飛び込み、それぞれ1トライずつを加えて前半は終了した(スコアはNTTドコモ12-14三菱重工相模原)。

両役者ウィリアムズの値千金のトライで
いったん三菱重工相模原が逆転したが……

 後半に入ると、「前半はボールキャリアとサポートの間がルーズになっていた」(高野ヘッドコーチ)という部分を修正したNTTドコモがシンプルに近場を前に出る場面が多くなる。
 12分にはNO8箕内、FL熊谷肇、途中出場していたHO緑川昌樹などFW陣でチャンスを作った後、再びWTB平瀬主将が逆サイドに走り込んで密集近くでドンピシャのタイミングでボールをもらう「内容の良かったトヨタ自動車との練習試合(=1月21日、22-14でNTTドコモが勝利)と同じパターン」(同主将)で三菱重工相模原ゴールを陥れて、とうとう逆転。

後半23分のWTBウィリアムズのビッグプレーで逆転した三菱重工相模原だったが、3点及ばず
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 リードした時間帯から言っても、このままNTTドコモペースになる可能性もあったが、23分に飛び出したワールドクラスなビッグプレーで三菱重工相模原が再逆転に成功する。
 敵陣22mラインの外側で相手キックを処理した三菱重工相模原がカウンター。右サイドでボールを受け取ったWTBシェーン・ウィリアムズが左サイドに流れながら、鋭いステップで相手DF3人を置き去りにしてゴールポスト下にトライ。SH西舘のゴールも決まって、三菱重工相模原が21-19と再び2点をリードした。

 3週間前のトップチャレンジ1最終節では控えスタートだった切り札WTBウィリアムズを先発で起用し、さらにSH西舘、SO塩谷など「自分たちでリズムをつくっていける選手を起用した」(高岩映善監督)という三菱重工相模原の攻める姿勢が結実しての再逆転に、約5000人のファンが埋めた近鉄花園ラグビー場はヒートアップ。
 すでに後半21分にNO8箕内、FBミルズ・ムリアイナという大黒柱が揃って退いていたNTTドコモはまさに追い詰められた状況だったが、いったんはヒーローになりかけた三菱重工相模原WTBウィリアムズが「相手の方が、高いレベルでの厳しい試合経験が上だったし、ネバーギブアップの精神もあった」と脱帽せざるを得なかったNTTドコモの粘りが、最後の最後に上回るかっこうに。
 トップリーグで2シーズンを戦ってきた総合力の差を見せつけるかのように、NO8イオンギ・シオエリ、CTBロコツイ・シュウペリなど、途中出場していたインパクトプレーヤーがラインブレークを繰り返して、最後はSOハミッシュ・ガードが左隅に飛び込み(後半36分)、熱戦に終止符を打った。

後半36分、逆転トライを決めて喜ぶSOガード。NTTドコモが三菱重工相模原を振り切りTL残留決める
photo by Kenji Demura (RJP)
NTTドコモの歓喜の横で落胆する三菱重工相模原の選手たち。悲願のTL復帰は来年以降に
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「3点差とはいえ、2シーズン連続で入替戦での厳しい戦いを経てトップリーグ残留ができたことはチームにとってはプラスになる。来シーズンこそ、今季以上に春から厳しいトレーニングを積んで、プレーオフ、ワイルドカード、日本選手権といった上のステージを目指していきたい」(NTTドコモ・高野ヘッドコーチ)
「内容的にも差はなかった。1年間でよくここまで成長できたし、選手は本当に一生懸命やってくれた。3点足りなかった分、来シーズンしっかり鍛え直して、必ず昇格を勝ち取りたい」(三菱重工相模原・高岩監督)

 確かに、勝者NTTドコモのみが来季トップリーグでプレーする権利を得ることになったわけだが、それぞれ今季のベストゲームと言える内容を見せただけに、共に来季の飛躍への筋道が見える素晴らしいラストゲームとなったことも確かだった。

text by Kenji Demura

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