ファーストステージ・第7節 マッチサマリー(NEC 3-23 トヨタ自動車)

NEC
グリーンロケッツ
NECグリーンロケッツ
3 合計 23
3 前半 7
0 後半 16
0 勝点 4
25 総勝点 22
トヨタ自動車
ヴェルブリッツ
トヨタ自動車ヴェルブリッツ

NECグリーンロケッツ 3-23 トヨタ自動車ヴェルブリッツ

ファーストステージ・第7節 プールA
2013年10月26日(土)13:00キックオフ/千葉・柏の葉公園総合競技場

台風27号の影響を受け生憎の雨の下、トップリーグファーストステージ第7節、NECグリーンロケッツ対トヨタ自動車ヴェルブリッツのゲームはキックオフされた。

ホームチームのNECグリーンロケッツは、ここまでプールA2位と好調を維持している。今シーズンは伝統の鉄壁ディフェンスが再構築され、素晴らしいプレーを見せている。1対1での強さに、ブレイクダウンでの「組織」の強さが加味されている。「痛い」練習を積み重ねてきた証拠だ。そして、今シーズンはオフェンスにも力を見せる。主将の浅野良太が統率する強力フォワードは健在で、NO8土佐誠、FLニリ・ラトゥがボールを強烈に前へ運び、SH櫻井朋広とSOウェブ将武のHB団の巧みなゲームコントロールと、CTB釜池真道、田村優からフィニッシャーであるWTBネマニ・ナドロへボールをつなぐアタックは秀逸だ。ベテランFB大東功一の復帰も心強い。

一方のトヨタ自動車ヴェルブリッツは、第5節で強敵の神戸製鋼コベルコスティーラーズを下してから、こちらも好調を維持している。シーズン当初は苦戦したが、前節までの連勝でプールA5位につけている。セカンドステージグループA進出に向けて、本日は負けられない試合だ。NO8菊谷崇を中心としたフォワードでNECにプレッシャーをかけ優位に立ちたい。「和製ジョージ・スミス」FL吉田光治郎のジャッカルも健在だ。さらに長身のLO陣とFLジェローム・カイノで空中戦も支配したい。SH滑川剛人の素早い捌きからSOキャメロン・マッキンタイアーにボールを運び、こちらもフィニッシャーWTB彦坂匡克にボールを集めたい。WTB彦坂は前々節の神戸製鋼戦では一人で5トライを奪うなど絶好調だ。超大型バックス・ナドロVS彦坂匡のフィニッシャー対決は注目の的だ。

試合は降りしきる雨の中、トヨタ自動車のキックオフで始まった。開始早々から激しいコンタクトでの密集戦が展開される。NECはファーストプレーからのハイパントを再獲得するが痛恨のノックオン。一気に敵陣に入るチャンスを逃す。逆に4分トヨタは前半唯一のチャンスから見事にゴールラインを陥れる。NECのキックをチャージしゴールラインに迫ると、その後の連続攻撃からSH滑川がゴール前へ絶妙のゴロパント、追走したWTB彦坂匡が押さえ、左中間にトライ。難しいゴールキックもこの日の「マン・オブ・ザ・マッチ」に選ばれたSOマッキンタイアーが決め、7点を先制した。

対するNECも地元の大きな声援を受け反撃に転じる。SOウェブのキックを中心に試合を優位に進めるが、反則からペースをつかめず、なかなか得点を奪えない。17分にSOウェブが48mのペナルティゴールを狙うが失敗。22分にはNO8土佐の突破からチャンスを掴むがやはり得点には至らない。特に勝負所でのラインアウトを3回スチールされたのが痛かった。対するトヨタ自動車はSH滑川、SOマッキンタイアーが効果的なキックで、ピンチをしのぐ。ようやく前半終了間際にSOウェブがペナルティゴールを成功させ、3-7とし、後半に望みをつなげた。

後半開始早々、NECは持ち味の密集近場のアタックからリズムを掴んで反撃に転ずる。敵陣ゴール前5mのマイボールスクラムのチャンスを得るが、ここで痛恨のペナルティを犯す。その直後にミスからエリアを失い、8分にトヨタ自動車SOマッキンタイアーにペナルティゴールを決められ、逆にリードを広げられた。

この得点でリズムを掴んだトヨタ自動車は、11分に試合の趨勢を決定づけるトライを奪取する。連続攻撃のあと、SOマッキンタイアーからWTB水野弘貴へ見事なキックパスが渡り、水野が独走、ゴール前でサポートしたLOトーマス優デーリックデニイにラストパスが通り、そのままトライ。難しいゴールもマッキンタイアーが決めて、17-3と大きくリードを広げ、試合を決めた。対するNECも地元の熱い声援を受け、必死の反撃に転ずる。出来の悪かったラインアウトをショートラインアウトに変えて修正し、ラトゥ、ナドロらのランナーをラインに入れゲインを図るが、トヨタ自動車必死のタックルの前に次々にハンドリングエラーを犯し、リズムを掴めない。逆にトヨタ自動車はNECのミスから、24分、37分とペナルティゴールを決め、23-3と大きくリードを広げ、勝利を不動のものとし、ノーサイドのホーンを迎えた。

両チームの攻防は時折降る激しい雨の中でも、実に見応えのある素晴らしいものであった。NECは立ち上がりの思わぬ失点が痛く、終始リズムを掴めない不完全燃焼のゲームであった。対するトヨタ自動車は、「絶対に負けられない」という意欲がヒシヒシと伝わる戦いぶりであった。選手・スタッフ一丸となった気持ちが生んだ今日の試合内容であった。ファーストステージ前半戦のつまずきを考えると、今日の躍進は素晴らしいものである。これから始まるセカンドステージでの活躍を予感させるゲームであった。対するNECはミスから自滅する典型的な試合であった。今後の立て直しに期待したい。
(千葉県ラグビー協会 塚越康利)


● 記者会見ダイジェスト ●

NECグリーンロケッツ

グレッグ・クーパー ヘッドコーチ

「今日の我々の敗戦は非常に残念だ。ここまで準備したものを披露できずに残念でならない。得点差ほど内容に開きはなく、勝負所でのプレーにおいて、トヨタが成功し、我々が上手くいかなかったことが今日の得点差であった。特にキックオフ直後のハイパントを再獲得したのにもかかわらず、エリアをとらずにミスを犯したことが残念であった。相手にプレッシャーをかけられず、結果だけを見れば、我々のHB団のゲームコントロールが上手くいかなかったことになる。さらにマイボールラインアウトのミスも痛かった」

──WTBナドロの先発起用の意図は? 今まではニール・ブリューの先発であったが?

「ニール・ブリューはアキレス腱の不安を抱えていた。また先週セカンドステージ進出を決定できたことも要因の一つであり、WTBナドロのハードワークを評価したのも一因だ」

──WTBナドロのパフォーマンスをどう評価するか?

「前半はラインアウトが獲得できず、彼を使うことができなかったが、後半は彼の強力なボールキャリー能力を引き出すことができ、効果的なゲインがあったと考えている」

浅野良太キャプテン

「ホームで多くの方々に温かい声援をいただいたことに大変感謝している。NECは柏の葉でのゲームを非常に重要だと考えている。我孫子市の皆さん、そして多くのスクールの子供達、そして柏市の皆様に支えられプレーができていると実感できる競技場である。そんな会場で残念な結果になり申し訳ない。やはり、立ち上がりの失点はゲームを苦しくしたポイントであった。このような天候の中、キックの多い我慢比べとなったがエリア取りも上手くできたと思っているが、22mの中に入れなかったのは反省したい。セカンドステージでは頑張りたい」

──前半に3回ラインアウトをスチールされたがその要因は? なぜ修正できなかったのか?

「ラインアウトは読み合いの部分もあるが、自分たちのジャンパーとリフターの精度が100パーセントでなかったことも事実だ。雨のせいもあったが…。後半修正できたと思うが、ラインアウト起点のアタックがだめだった」


トヨタ自動車ヴェルブリッツ

廣瀬佳司監督

「本日はありがとうございます。勝たないと上のステージへ行けないという状況の中、『攻め』の姿勢を80分間貫いてくれた選手に感謝したい。今後も上のステージでも戦えるようにチーム力をアップしていきたい」

──「攻め」の気持ちが勝利の要因と語ったが、それはどういう意味か?

「選手の『勝ちたい』という気持ちが見えたのが大変に嬉しい。今日の天気もシンプルに攻めることが意識できて良かったようだ」

──ラインアウトが勝利の要因だと思うが、どうか?

「リーグ戦の前半に比べ、成長しているように感じている」

──9月のリーグ戦前半に比べ、尻上がりにチームの調子が上がっているがその要因は?

「リーグ戦の前半は攻めている時間が少なかった。いかにボールを獲得するかがチームのポイントであり、セットプレーの安定が大きい。それが要因だ」

──セカンドステージへの修正点は何か?

「得点力のアップ。攻撃面を修正したい。ディフェンスについては、今は上手くいっている」

上野隆太キャプテン

「チーム全体の意志統一ができたことが大きい。試合をしている者、試合に出ていない者、すべてが今日のためにまとまることができた。天気も天気なのでエリア獲得ができたのが大きい。セットプレーの安定が大きかった。セカンドステージに向けて今後も頑張りたい」

──前半、相手ボールのラインアウトの3本のスチールが大きかったと思うが、その要因は?

「事前によく分析できた。リアクションも今日は良かった」






マン・オブ・ザ・マッチはトヨタ自動車ヴェルブリッツ、キャメロン・マッキンタイアー選手

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