ファーストステージ第4節 マッチサマリー(東芝 30-26 NEC)

東芝ブレイブルーパス
東芝ブレイブルーパス
30 合計 26
18 前半 10
12 後半 16
5 勝点 1
15 総勝点 7
NECグリーンロケッツ
NECグリーンロケッツ

東芝ブレイブルーパス 30-26 NECグリーンロケッツ

ファーストステージ・第4節 プールA
2014年9月12日(金)19:30キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場

4節連続で秩父宮のピッチに立った東芝ブレイブルーパス。LOに大野均が復帰したほか、右WTBにはセブンズ日本代表の豊島翔平が今シーズン初スタメン。前後半とも立ち上りに先制し、その後NECグリーンロケッツに追い上げられながら、一度もリードを奪われることなく4点差で逃げ切った。

秩父宮ラグビー場がある港区に本社を置く企業同士のチームによるダービーマッチ。勝者には港区長杯が贈られ、ハーフタイムを盛り上げるチアーもこの日は芝浦エンジェルス。両企業の社員サポーターも多数押しかけ、チャンスやピンチの度にスタンドが沸いた。

最初に歓声を上げたのは東芝サポーター。開始2分、NECのライン攻撃に対しCTB仙波智裕がビッグヒット。こぼれたボールをWTB大島脩平ゲームキャプテンが拾ってキック。冨岡鉄平ヘッドコーチが「自分が預かっている“才能"」と期待するFB夏井大輔がインゴールで押さえた。
18分には、開幕から好調を維持しているSH小川高廣が魅せる。右寄りのスクラムの左サイド(オープン側)が空いているのを見逃さずに抜け出す。パスダミーやステップでNECディフェンスを翻弄しながら、最後はロングパスを追走してきた豊島に通して東芝2つ目のトライを生み出した。

ここまではNECが前節まで3試合の総失点が94点とリーグ平均(62.6点)を大きく上回っている今シーズンの失点の多さを露呈していた。このまま崩れていきそうな流れを断ち切ったのは、FLニリ・ラトゥのプレー。相手ボールスクラムの球出しをNO8の位置からすかさずカットしてゴール前まで突進。トライにはならなかったが、そこからの前半残り10分、NECの時間に繋げた。東芝CTBリチャード・カフイがシンビンになったことも手伝って、NECが東芝ゴール前で攻め続ける。3点確実な位置でPKを得るがHO臼井陽亮がタップキックから速攻。WTB釜池真道、CTBニール・ブリューと渡って1トライを返した。前半終了直前にもSO田村優がPGを決めて、一時は18点離されたところを8点差まで詰める。

後半も先制したのは東芝。左右に大きく揺さぶり、後退したNECの反則を誘う。ゴール前PKから小川が速攻、スイッチしてきたカフイがトライを上げた。25-10と東芝がまた15点差まで引き離す。しかしその後は前半同様NECが盛り返し、田村が長短合わせ3つのPGを決めて6点差まで縮める。NECサポーターが「もう一つ(1トライ)!」と沸き立ったのだが、ここで東芝が試合を決めるトライを奪う。ラックから出たボール、SO廣瀬俊朗のクイックハンズで豊島へ。冨岡HCが「誉めて育てている(笑)」という豊島が、キレとスピード溢れるランでこの日2つ目のトライを上げたのだった。

冨岡HCは「今日は(リーチ)マイケル」と、随所で日本代表の主将FLリーチがボールを前へ運んだことを、この日最も評価した。NECでは同じく日本代表SO/CTBの田村が、キックやゲームメイクで八面六臂の奮闘。NECは最後、今シーズンのスーパーラグビーで大活躍したWTBネマニ・ナドロが東芝のパスをインターセプトして独走トライしたが、あと一歩及ばなかった。
(米田)


● 記者会見ダイジェスト ●

NECグリーンロケッツ

NECグリーンロケッツ
相澤総監督(右)、瀧澤キャプテン

相澤輝雄総監督

「NECを応援して下さる方々が大勢お見えになっている中で、どうにか勝利をと臨みましたが、負けて非常に悔しい思いです。選手たちは非常に努力してくれて、もう少しで勝てるところまできました。満足ではないが、日本選手権での優勝・日本一に向けて5カ月ありますから、これから巻き返したいと思います」

──ハーフタイムでは?

「今日は選手がそれぞれ問題点を指摘し合っていて、言うことはありませんでした。最初のトライでは、田村がパスすると、相手のWTBが良い上がりをしていたので、10番回りが開いて田村が仕掛けられるから、サイドでボールを貰おうと言いました。また、相手のFWにキーマンが多いので、どうつぶすか、走らせないかを話しました」

──前々節のヤマハ発動機戦から立て直してきたが?

「問題点は数多くありますが、練習を毎日してもスキルは劇的には伸びません。逆に練習をしっかりやる姿勢が選手に芽生えてきました。ヤマハ発動機戦で屈辱的な負けを喫したので、まだ課題は残っていますが、今日の試合のレベルを落とさないようにしたいと思います」

瀧澤直キャプテン

「今日の試合は結果として負けてしまいましたが、東芝さんのアグレッシブなパワーの肉弾戦に真っ向勝負してプレーヤー全員が楽しめたことに感謝したいと思います。自分たちのメンバーに誇りをもてる試合でした。苦しい時間帯もありましたが、最後にキックされるまで勝利を信じていた皆を誇りに思います」

──点が入らない時の攻撃は?

「小さなミスがあって、修正したのですが、最後にトライまでもっていかれたのは運の悪い部分もありました。攻撃の選択は悪くなかったと思います。18点差が開いた時も、ディフェンスで大きく崩されていないし、インゴールで原点に戻ってやろうと伝えていました」

──ニリ・ラトゥ選手のインターセプトは?

「後半の40分で、自分たちの流れが来るし、プレッシャーで相手に流れが傾くときもあるだろうけれど、自分たちの時間が来ることを信じてやろうとコミュニケーションがとれていました。良いスクラムも何本かあって、ニリがインターセプトしたスクラムでは、左サイドをアップして僕がかなりプレッシャーをかけました。ニリの好判断もスキルもあったと思いますが、あれは僕のインターセプトだと思っています(笑)。言いすぎでした(笑)」


東芝ブレイブルーパス

東芝ブレイブルーパス
冨岡ヘッドコーチ(右)、大島ゲームキャプテン

冨岡鉄平ヘッドコーチ

「遅い時間までお疲れ様です。先週も良い準備をしましたが、秩父宮に入ってからの時間の使い方が、私も含めて不甲斐ないという反省がありました。選手がやるべき一つ一つの仕事は、イメージしながらいく選手もいればそうでない選手もいて、指導者の悩みどころです。ミスするとロッカーでレゲエなど好きな音楽を掛ける選手もいれば、ヘッドホンしている選手もいて、すごく大事な時間です。現役の時は大事にしていたのですが、指導者になって忘れていた部分もありました。今日もスタート前の時間を大事にしました。先週は涙をぬぐうことになりましたが、今日勝てたのは準備の部分が良くなったからです。大勝したい、徹底的に相手は東芝には勝てないと思わせたいのですが、今日のNECさんは良くファイトしていて、誉めるべきだと思います。真っ向勝負で勝ててうれしく思います」

──相手の嫌がる痛いプレーは?

「(マン・オブ・ザ・マッチの)豊島が一番痛いプレーをしていません(笑)。せめて、誰かに身体をぶつけないと。15人制でスルーされるなんて信じられません(笑)。でも、最後の2対1の所を自分で行った強い気持ちが出たのは良かったです。しっかり、自分でフェイクを踏んで行きましたね。3戦まで最低の状態でしたが、今日はマイケルが、今日の仕事は前へボールを持って走ると宣言した通りの仕事をしてくれました。マイケルのプレーが日本のスタンダードです。ジャパンのキャプテンを4月からやってきて、だいぶ精神状態はタフになっています。今日も外国人にドンドン仕掛けてくれました。彼に付いて14人が期待したプレーをしてくれたと思います」

── 一瞬の隙を突くトライがあったが?

「東芝はペナルティからタッチキック、ゴリゴリ、モールで押して10人で獲るトライだけではありません。これからトップリーグファイナルにも、日本選手権にも進みたいと思います。ボールがスリッピーでなくなる季節が来て、ボールが動くので、これが勝てるラグビーだと評価していただけると嬉しいです」

──夏井選手は?

「夏井をもっと記事にしていただければ、もっと良くなる選手です。僕は彼の才能を預かっているととらえています。つぶしたくないですね。188cmあって、スピードもステップもキックもあり、パスもディフェンスもできます。足りないのは経験値とメンタルだけで、凄い選手になります。15人制代表になってほしい選手です」

大島修平ゲームキャプテン

「先週は苦しい時間帯のミスが続き、敗戦しました。今日も苦しい時間帯がありましたが、後半に、グラウンドにいた15人が苦しい時も目がギラギラしていて、メンタリティを80分間持続させることができたと思います。先週は正直、切れていました。苦しい時間はやっていても辛かったです。スキルにこだわり、自分たちの強い部分を失っていました。今日はマイケルを筆頭に、FWが前へ出てくれて、自分たちが、相手が嫌がるプレーとは何かを理解してきたと思います。本当に自信につながる試合でした。5ポイント取れる試合を続けていきたいと思います」

──NEC戦ではどんな点が良かったのか?

「前半はFWが前に出てくれたおかげで、BKはトライを獲りに行って、18-0まで差がついても息が上がっていませんでした。少ないチャンスをモノにするラグビーができていたと思います。ゲーム中ではどうしようもないミスもありましたが、マインドチェンジを大事にして、凹まず切り替えて、ディフェンスをきっかけにしてアタックしていくよう言って、先週に比べれば力を発揮できたと思います」

──ヘッドコーチの仕切りは?

「今年の東芝は、デュアルマネジメントと言って、選手とスタッフの共存を掲げています。ヘッドコーチは僕たちリーダーの声をよく聞いてくれます。言いやすいですし、僕もシーズン初めは遠慮していましたが、森田も物怖じしないので、もっと言っていきましょうよと言ってくれて、コミュニケーションが良くなりました。カリスマ性のあるヘッドコーチです」








マン・オブ・ザ・マッチは、東芝ブレイブルーパスの14番 豊島翔平選手

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