トップリーグ2015-2016【LIXIL CUP2016】3位決定戦 マッチサマリー(神戸製鋼 22-26 ヤマハ発動機)

神戸製鋼コベルコ
スティーラーズ
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
22 合計 26
17 前半 5
5 後半 21
ヤマハ発動機
ジュビロ
ヤマハ発動機ジュビロ

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 22-26 ヤマハ発動機ジュビロ

トップリーグ2015-2016【LIXIL CUP2016】3位決定戦
2016年1月24日(日)11:40キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場

秩父宮・東京は前日の天気予報では夜から雪の予報が出され、関係者も雪かきを覚悟し、また関東地域の各大学ラグビー部よりも雪かき応援の声も頂いていたが、東京・秩父宮は朝から快晴となり、LIXIL CUP2016 決勝戦と3位戦は予定通り開催。当日は開場直前には神宮第2球場バックネット裏まで続く長蛇の列が続きチケットも完売、第一試合より2万2377人の熱いラグビーファンの見守る中で試合は開始した。

神戸製鋼のSO山中によりキックオフ。試合開始よりヤマハ発動機はボールをキープして神戸製鋼陣に攻め込むも、ディフェンスラインを突破できず両チームキックを取り混ぜたエリアの取り合いが行われた。
前半10分、神戸製鋼陣10m中央付近での神戸製鋼ペナルティ(オフサイド)によりヤマハ発動機はタッチにキック。神戸製鋼ゴールライン10m付近でのラインアウトで、神戸製鋼ノックオンによるヤマハ発動機ボールスクラムとして出たボールを、WTBピウタウが5mラインまで持ち込み連続攻撃を仕掛けたがラック内で神戸製鋼のノックオンにより再び5mスクラム。押し込むヤマハ発動機、スクラムより出たボールをSO大田尾、CTBサウと繋ぎ中央トライを試みるが届かず。続くラックより出たボールをNo8堀江がトライ(ゴール失敗)で0-5と先制した。

対する神戸製鋼はヤマハ発動機陣10m付近でのヤマハ発動機のペナルティ(オフサイド)よりFB正面が22m付近へキック。ラインアウトよりのモールをヤマハ発動機陣ゴール前10m付近まで押し込み、ボールを右オープンに展開しディフェンスラインの突破を試みるが突破できず。ラックより出たボールをLO中島が相手ディフェンスの裏にキックパスを行ったがヤマハ発動機SH矢富がしっかり戻り防ぎタッチ。続くラインアウトよりモールを押し込み、ラックから連続攻撃を仕掛けSHエリスがトライ(ゴール成功)を奪い逆転。

続く23分にはヤマハ発動機陣10m付近でのヤマハ発動機のペナルティ(ノットリリース)よりSO山中がペナルティゴールを成功。
その後も両チームの激しい攻防が続いた前半38分に、神戸製鋼はヤマハ発動機陣22m中央付近でのヤマハ発動機のペナルティ(ノットリリース)よりSHエリスが速攻でディフェンスの隙をついてゴール中央へトライ(ゴール成功)。17-5と神戸製鋼ペースで前半を折り返した。

後半も開始早々より両チームの激しい攻防が続く。
開始10分、ヤマハ発動機は神戸製鋼陣10m付近ラックよりのボールをWTBピウタウがヤマハ発動機のディフェンスの裏22m付近にキックし攻め込むも、神戸製鋼SHエリスが一歩早くボールをインゴールで押さえてヤマハ発動機の5mスクラムとなる。スクラムからのボールをヤマハ発動機は連続攻撃を仕掛け、ラックよりLO大戸がトライ(ゴール成功)。

後半16分、神戸製鋼はヤマハ発動機陣10m付近でのペナルティ(ノットロールアウェイ)によりSO山中がペナルティゴールを狙うが失敗。後半20分、神戸製鋼は自陣ヤマハ発動機ボールのラインアウトでのロングスローのボールを確保しSO山中、FL前川が敵陣深く走りこみNO8バンリーベン、LO中島、CTB今村、FB正面と繋ぎ敵陣ゴール前5m付近へ果敢に攻め込む。
ラックから出たボールに対しヤマハ発動機CTB宮澤が素早いタックル、こぼれたボールをヤマハ発動機は左オープンサイドに展開。CTBサウが95mを相手ディフェンスを振り切りトライ(ゴール成功)、17-19と逆転。

後半24分、神戸製鋼はセンター付近ラックよりSHエリスが敵陣10m付近にハイパント。ヤマハ発動機はラックよりボールを左オープンに展開したが、途中出場した神戸製鋼FB井口がインターセプトしトライ(ゴール失敗)、22-19と再び逆-転。

後半28分、ヤマハ発動機はリスタートのボールを神戸製鋼がノックオンし、センター付近スクラムよりボールを左サイドへキックパス。WTB・FB粟田と繋ぎラックよりの連続攻撃により相手ディフェンスを突破してトライ(ゴール成功)し22-26と逆転。

試合終了まで残り1分で得点差4点、神戸製鋼は自陣ゴール前での相手ペナルティ(オブストラクション)より攻め込みヤマハ発動機陣深く攻め込んだがヤマハ発動機陣22m付近ラックでのこぼれたボールをヤマハ発動機が奪いタッチへ蹴りこみ試合は終了した。
逆転に継ぐ逆転で来場したラグビーファンを最後まで魅了したゲームはヤマハ発動機が勝利しシーズン3位、敗れた神戸製鋼はシーズン4位となった。尚、このゲームのマン・オブ・ザ・マッチはヤマハ発動機No8堀江恭佑が選ばれた。
(佐藤克則)


● 記者会見ダイジェスト ●

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

神戸製鋼コベルコスティーラーズ
クッツェー ヘッドコーチ(右)、伊藤ゲームキャプテン

アリスター・クッツェー ヘッドコーチ

「(日本語で)皆さん、こんにちは。(以下英語で)負けた後に会見はしたくないですね。もちろん、非常に残念です。この試合に向けてしっかり準備して来たので、なおさらです。常に3位決定戦は難しいですが、しっかりしたモチベーションがあったので、言い訳にはなりません。特に前半、しっかり向かって行って、スコアもできましたが、後半は、ミスが多くなってしまいました。今日はアタックの中で我慢できませんでした。
ただ、自分の1年目の仕事として、スコッドの層を厚くすることができました。その厚さが試されたシーズンでした。今日の試合では選手たちの努力が最後まで間違いなくありました。コーチがコーチングできないのは努力の部分です。ただ、ミスは修正したいと思います。
ヤマハ発動機さんにはただ素直に賛辞を送りたいと思います。こちらのミスを全て得点に結びつけたヤマハ発動機さんは良いラグビーをしました。両チームとも、トライを狙ってアタックしたことに観客の皆様も楽しんでいただけたのではないでしょうか」

──神戸製鋼に足りなかったものは?

「今年は平均的なシーズンでした。大きく改善するチャンスがあるシーズンでもありました。キャプテン、木津、ベッカー、佐藤、ウィングがいなくても層の厚さはポジティブでした。来シーズンはプレシーズンリーグがありません。今シーズンは少しピーキングが早かったかもしれません。来シーズンの神戸製鋼は楽しみです」

──エリス選手については?

「今年は素晴らしいプレーをしてくれました。今シーズン通してコアの選手です。今日に関してはBKの怪我人が多く、フーリーを出すため、シャッフルしましたが、若いスクラムハーフにも教えてくれてチームの中でリーダーシップを発揮してくれています」

伊藤鐘史ゲームキャプテン

「先週、プレーオフで負けて、一旦はガッカリしましたが、気持ち次第で消化試合にもなるし、3位を取りに行けば成長にもつながるとしっかりと切り替えて練習してきました。前半は神戸製鋼の時間帯が多く、良いゲームでした。しかし、ヤマハ発動機さんのしっかりしたディフェンスにペナルティを重ね、残念な結果になりました。後半の規律、我慢とかを成長させて、また来シーズンチャレンジしていきたいと思います」

──後半、崩れてしまったのは?

「点差もあって、ヤマハ発動機さんがアグレッシブに攻めてきて、ラインの裏に上手くキックを使われて、こちらはバックしてのディフェンスになったので、ヤマハ発動機さんは攻めやすかったと思います」

──大観衆の中だったが?

「今日に限らず、リーグ戦でも例年より2~3000人多く観に来てくださって、地方の方も応援してくださり、凄く嬉しいです。ラグビーの良さをパフォーマンスで見せたいと、互いのチームがやる気になりました。凄いやり甲斐があります。本当に今年を振り返ると、チャレンジしたと思います。来年こそ優勝目指して、飽くなき挑戦です」

──エリス選手は?

「僕がゲームキャプテンとして、ショットとかペナルティの使い方を考える間もなく、速攻してくれます(笑)」


ヤマハ発動機ジュビロ

ヤマハ発動機ジュビロ
清宮監督(右)、三村キャプテン

清宮克幸監督

「3位決定戦にあたり、我々には幾つかキーワードが出てきて、非常にまとまることができました。一つは『全力を尽くそう』で、太田レスリングコーチはオリンピックの銅メダリストですが、彼が言った言葉で、一つチームに芯を貰いました。次に『リベンジ』です。リーグ戦はヤマハスタジアムで神戸製鋼さんに大敗して、プライドを傷付けられた今シーズン一番悲しい試合でした。これだけでも十分なのですが、非常に高いモチベーションで良い準備ができました。
例年のように失敗しながらチームを作れればもっと上に行けましたが、今シーズンはこれで終わりで非常に残念です。2015-16シーズン、目標は果たせなかったけれど、胸を張って終われるシーズンでした。(三村)勇飛丸も顔にこういう傷が付いて、信頼できるキャプテンです」

──大観衆でしたが?

「会場入りがヤマハ発動機は100分前なのですが、神宮球場の脇を列が繋がっていて、見たことのない景色でした。選手一同、闘うぞ、勝つぞとモチベーションが上がったシーンでした」

──ハーフタイムの指示は?

「前と外と後ろのスペースを上手く使って行くことを意識しなさいと。前半は前へ前へと行って、こじ開けられなかった部分がありましたね。後半もヤマハ発動機のミスから神戸製鋼さんがチャンスをつかみ、さらにそこでミスが出てしまいました。五郎丸がインターセプトされる前に、しっかりセーフティリードを取っていればとも思いますが、あれが勝負のアヤというシーンでしょうか」

──粟田選手の活躍は?

「FWにモセを使いたかったのが一番ですが、そこでチャンスを得た粟田君が非常に良い仕事をしてくれました。彼は関西学院大学ではCチーム、Dチームにいた選手ですが、縁があってヤマハ発動機に入り、努力して身体の中身も本当に入れ替わった選手です。ロッカールームでマン・オブ・ザ・マッチの堀江のトロフィーを粟田にプレゼントして来ました(笑)。チームにとっても非常に大きく、ヤマハ発動機はリクルートでも苦しいので、選手を育成してトップに立たせるチームカラーが証明できて、非常に嬉しいです。これまでもヤマハ発動機の選手はチャンスを貰って力を発揮して来ましたが、非常に満足しています。今日は浜松に帰って、ちょっとした宴を催すのですが、粟田には色んな芸を披露して貰います(笑)」

三村勇飛丸キャプテン

「シーズン当初の目標は達成できませんでしたが、2年連続してトップ4に残ることができました。あと少し足りないですが、選手に良くやってくれてありがとうと伝えたいです。また、会場にいらっしゃったファンの皆様に感謝申し上げます。ラグビーの良さを日本代表の選手たちも発信してくれていますが、とても大切なことで、僕ら国内組も発信することができたのではと思います」

──大観衆でしたが、前半からトライを狙ったのは?

「この試合に限らず、観衆の皆様がたくさん来て下さって感謝しています。前半、やはり、全力を尽くすというチームとしてのテーマがありましたので。自分たちの選択として、攻撃的なプレーを意識しました」

五郎丸 歩選手


──今シーズン最後のゲームで五郎丸選手への応援も多かったが?

ヤマハ発動機ジュビロ
五郎丸 歩選手

「この最終ゲームだけでなく、ワールドカップ以降、多くの選手たちが良い流れを継続させようとしてきました。今年は日本のスーパーラグビーチーム(ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ)もオリンピック(セブンズ日本代表が男女とも出場)もあります。これからも注目されるように選手もやっていきたいと思います」

──最初のキックを外したが?

「キックが入ろうが入るまいが、関係なく力を出せれば。ブレなく、しっかり得点できるところでヤマハ発動機らしく得点できたのではと思います」

──このシーズンを振り返ると?

「ここまで日本のラグビーが皆様に注目して貰えるとは思っていなかったので、本当に幸せなシーズンだったと思います」

──新しい発見はありましたか?

「ないです(苦笑)。責任というものが、歳を重ねてのしかかって来ました」

──ワールドカップ後のトップリーグを以前と比較して?

「お客様が増えて、選手としては単純に嬉しいです。続けて成長することが大切です」

──物足りない部分は?

「自分一人にフォーカスされ過ぎと感じます。入りとしては仕方ないですが、ラグビーのラの字も知らない人が会場に足を運んでくれて、ラグビーの本来の良さを知って貰えたらと思います」

──2019年のベスト8は難しいとエディーさんが言っているが?

「4年後とは言え、すぐに来ますから。2012年からエディージャパンに呼ばれて、本当に4年間はアッという間でした。単純に選手だけでなく、協会だけでなく、ファンの応援だけでなく、本当に良いパフォーマンスをしていかないと」

──パスをインターセプトされた時は?

「ポカしても仕方ないと、すぐに切り替えました。80分通してのゲームで、一つのプレーで一喜一憂するとかはないです。味方が助けてくれてラグビーらしい試合でした」

──今シーズンは?

「目標を達成できず、非常に残念です。ただ、チームとしては、しっかりできたと思います。パナソニックさん、東芝さんが一枚上手でした。今年は静岡で4試合やれましたが、ワールドカップも静岡で開かれるし、ラグビーの新しい風が吹いて来たと感じます」

──清宮監督が、お客様の列を見て気が引き締まったと言ったが?

「お客様の数はもちろん多ければ多い方が良いですが、僕らはチームのためにできることをやっていくだけです。今日は、前半、風下で色々難しかったが、しっかり後半はエリアを取るキックができたと思います」

──すぐに新しいシーズンが始まるが?

「ワールドカップが終わったら、一旦落ち着くかと思っていましたが、逆に忙しく、エディーさんから(スーパーラグビーの)レッズの話をいただき、乗っかっちゃって(苦笑)、あまりシーズンの終わりとかはないですね」

──大変なシーズンになるのでは?

「言葉も通じず、文化も違う。人生で初めてのチャレンジで、プレッシャーもストレスもかかります。そういう環境に行くから、試合に出ようが出まいが、一つでも成長できる部分があると思います」








マン・オブ・ザ・マッチはヤマハ発動機ジュビロNO.8、堀江恭佑選手

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