トップリーグ 2016-2017 weekly preview:特別編「クリスマスイブ無敗対決レビュー/優勝&3位争いプレビュー」

80分間ハードワークを貫いたサントリーが快勝
セットプレー圧倒できずヤマハ発動機は一歩後退

text by Kenji Demura

24日、注目のヤマハ発動機ジュビロ対サントリーサンゴリアス戦が静岡・ヤマハスタジアム(磐田)で行われ、攻守に自分たちのスタイルを貫いたサントリーが41—24で勝利。
これで開幕からの連勝を13に伸ばしたサントリーは勝ち点を60として首位を奪取。
一方、地元で痛恨の1敗を喫したヤマハ発動機の勝ち点は57。同日、宗像サニックスブルースに55—14で快勝した3位パナソニック ワイルドナイツの勝ち点は52で、残り2節で全てが決まる優勝争いはこの3チームに絞られている。
また、すでにトップリーグ3位以内を決めたサントリーの日本選手権出場が確定。
25日の近鉄ライナーズ戦で勝ち点5を挙げた4位神戸製鋼コベルコスティーラーズには3強入りの可能性が残されている。

またしても違いを見せつけたサントリーFLスミス。何度も決定的な仕事をしてチームを勝利に導いた photo by Kenji Demura

またしても違いを見せつけたサントリーFLスミス。何度も決定的な仕事をしてチームを勝利に導いた
photo by Kenji Demura

「1位のヤマハにチャレンジャーとして向かっていくだけ。タックルして、すぐ起きて、動いて。ハードワークすることが僕らのプライド」(サントリーSH流大主将)

ともに12節を終わって12勝0敗。
勝ち点でわずかに「1」上回っていたヤマハ発動機と2位サントリーのクリスマス決戦。
「常に相手が先に動いていた印象」
80分間の死闘を終え、正直にそう語ったのはヤマハ発動機FL三村勇飛丸主将。同・清宮克幸監督は「自分たちの得意なフィールドに引きずりこめなかった」とも。

勝てばトップリーグ制覇に大きく近づく天下分け目の戦いで自分たちのスタイルを貫き通したのは、昨季9位に甘んじたこともあって今季はチャレンジャーとしての立場を明確にしながら、一戦一戦チーム力を積み上げてサントリーだった。

先制したのは、地元ファンの熱い声援に後押しされたヤマハ発動機。
風下でのスタートながら、得意のキックを生かしたアタックから、サントリーDFがハイパント処理にもたつく間にCTBヴィリアム・タヒトゥアからWTB伊東力とつないでトライ(前半4分)。
FBゲラード・ファンデンヒーファーがこの後のコンバージョン、さらに12分にPGを決めて、いきなり10点をリードした。

WTB伊東の先制トライで幸先いいスタートを切ったヤマハ発動機だったが、総合力でサントリーに屈した photo by Kenji Demura

WTB伊東の先制トライで幸先いいスタートを切ったヤマハ発動機だったが、総合力でサントリーに屈した
photo by Kenji Demura

あるいは、序盤の段階で割とあっさりと得点を重ねたことが、逆にヤマハ発動機から愚直に前に出る姿勢を削ぐ形になったかもしれなかった。

ヤマハ発動機が10—0とリードした直後、早くも試合の流れを決定づけた場面がやってくる。
サントリーがヤマハ発動機陣内深くに攻め込んでのファーストスクラム。
ボールを入れたのはヤマハ発動機SH矢富勇毅。
もちろん、スクラムこそ今季ヤマハ発動機が12連勝を続けてきた一番の原動力だったが、実際にこの8人対8人の押し合いからボールを持ち出したのはサントリーFLジョージ・スミスだった。
この百戦錬磨の世界有数のボールハンターが左ショートサイドを突破した後、ボールは大きく右サイドへ展開されてWTB中づる(雨冠に隹・鳥の順)隆彰へ。
トライ王への道をひた走るスピードスターが余裕を持ってヤマハ発動機ゴールを陥れ、SO小野晃征のゴールも決まって、アッという間にサントリーが3点差に試合を引き戻した。

「ちょっと受けてしまった」(ヤマハ発動機PR伊藤平一郎)
「自分たちが意図していた距離で組めた」(サントリーPR須藤元樹)

スクラムにおいて最も重要な役割を占めると言っていい右PRがそれぞれそんな印象を語ったファーストスクラムが明暗を分けた通り、その後、試合はサントリーペースになっていく。

ヤマハ発動機のアタックに対しては、ブレイクダウンで人数をかけず、しかも前述のようなひとりひとりのハードワークで常に自分たちのDFシステムを崩さずに対応。

逆に自分たちがアタックする場面では、人数をかけずにボールリサイクルできる優位性を最大限生かして外側のスペースを有効に使い、ヤマハ発動機DFをズタズタにした。
「外側にスペースがあったので、そこを早く攻めることを心がけた。FWフェイズをこだわるよりは、BKスペースが空いていると思っていたので、そこに早くボールを回すことを意識した」(SH流主将)

32分のCTBスティーブン・ドナルドのトライも、40分のFLツイ ヘンドリックのトライも、最終的には内側に返してトライラインを越えることになったものの、外側で大きくゲインしたことが決定的なチャンスにつながった。

ヤマハ発動機は37分にモールを押し込んでペナルティトライを奪ったものの、ここまでは圧倒的な優位性を維持してきたセットプレーで後手に回る場面も。

「いくつかのシーンで、マイボールのスクラムとラインアウトが取れなかった。そのことが非常に大きく試合に影響を与えた」(清宮監督)

全員が仕事をして優勝に一歩近づいたサントリー。残り2節、東芝、神戸製鋼という骨のある相手との対戦が続く photo by Kenji Demura

全員が仕事をして優勝に一歩近づいたサントリー。残り2節、東芝、神戸製鋼という骨のある相手との対戦が続く
photo by Kenji Demura

2強+パナソニックにトップリーグ制覇の可能性
3強入りしての日本選手権出場を目指す神戸製鋼

前半は21—17とサントリーが4点リードで折り返し。
「DFは10点満点の2、3点。前半はやろうとしていたDFが全くできていなかった。後半は少し良くなった」
清宮監督は後半、ヤマハ発動機の守りに改善が見られたと語ったが、相手の弱点をしっかり研究していた感もあるサントリーは後半に入っても12分にPR石原慎太郎、試合終了間際にFB塚本健太と2トライを加えて計41得点。
2mの長身LOジョー・ウィラーがラインアウトで次々に相手ボールをスチールし、FLスミスのジャッカルも効いたサントリーは、ヤマハ発動機のアタックの分断にも成功。
最終スコアは41—24でクリスマスイブ決戦を制した。

この結果、全勝を守ったサントリーの勝ち点は60となり、痛恨の1敗を喫した2位ヤマハ発動機(勝ち点57)との勝ち点差は3に。
勝ち点52で3位につけるパナソニックも含めた3強に優勝の可能性が残される一方、勝ち点47で現在4位の神戸製鋼には3強入りの可能性も。
今季は3位までのチームに日本選手権出場権が与えられるため、この3位争いも熾烈になりそうだ。

現在3位のパナソニックにも優勝の可能性は残されている。FB藤田など新戦力もすっかりチームに馴染んでいる photo by Kenji Demura

現在3位のパナソニックにも優勝の可能性は残されている。FB藤田など新戦力もすっかりチームに馴染んでいる
photo by Kenji Demura

ちなみに、残り2節の4強の対戦カードは以下のとおり。

<サントリー>
vs東芝(1/7 東京・味スタ)
vs神戸製鋼(1/14 兵庫・ノエスタ)

<ヤマハ発動機>
vs近鉄(1/8 大阪・金鳥スタ)
vsトヨタ自動車(1/14 静岡・ヤマハ)

<パナソニック>
vsトヨタ自動車(1/7 愛知・パロ瑞穂ラ)
vs東芝(1/14 東京・秩父宮)

<神戸製鋼>
vsクボタ(1/8 大阪・金鳥スタ)
vsサントリー(1/14 兵庫・ノエスタ)

東芝、神戸製鋼という骨のある対戦相手を残すだけに、サントリーとしても全く安心できない状況。
「ヤマハ戦勝利の価値を出すためにも、残りの2試合しっかり勝てるように、いい準備をしてサントリーらしいラグビーをしていきたい」(サントリー沢木敬介監督)

一方のヤマハ発動機も当然ながらまだ優勝を諦めたわけでは全くない。
「トップリーグの優勝には、あと2戦、負けていられない。日本選手権にもつなげていきたいので、切り替えて、あと2戦しっかり準備していきたい」(ヤマハ発動機FL三村主将)

新年の残り2節。熾烈な優勝争い、そして3位争いを続ける4強を中心に、まだまだトップリーグの熱い戦いから目が離せない。

ヤマハ発動機には完敗も近鉄に大勝し3強入りの可能性を残す神戸製鋼。最終節はサントリーをホームで迎え撃つ photo by Kenji Demura

ヤマハ発動機には完敗も近鉄に大勝し3強入りの可能性を残す神戸製鋼。最終節はサントリーをホームで迎え撃つ
photo by Kenji Demura

RELATED NEWS