ラグビーをもっと楽しみたいから村上晃一さんに訊くシリーズ「教えて! おすすめの観戦場所は?」

ラグビーに関心を持ち始めたばかりの人に、よく聞かれることがある。「客席のどの場所が見やすいのですか?」。当然のことながら答えは一つではない。人それぞれ好みもある。だから今回は僕の子供の頃からの経験をご紹介しておきたい。

京都で生まれた僕は、ラグビー好きの父に連れられて、幼いころから京都市の西京極球技場や東大阪市の花園ラグビー場に通った。昔の西京極球技場は今の秩父宮ラグビー場を一回り小さくしたようなスタジアムで、とにかくグラウンドと観客席が近かった。最初は父の隣にちょこんと座っていただけだが、小学校も高学年になると好きな選手を近くで見たくて、できるだけスタンドの前のほうに行っていた。

高校生の頃に好きだった場所は、ハーフウェーラインから10メートルのところの点線「10mライン」の位置に座ること。ここでは両チームのキックオフでのぶつかり合いを間近に見ることができた。高校一年生の冬、日本代表と関西代表の強化試合が西京極で行われた。後に日本代表になる大八木淳史さんが関西代表のロックで、日本代表のロックは林敏之さん。同志社大学の2人が目の前でぶつかり合った。「バコッ!」、「ドスンッ!」音にすればこんな感じ。キックオフのボールを競り合って2人がぶつかり、バランスを崩した大八木さんが背中から芝生に落ちた。怪我したかな?と思ったら、ムクッと起きあがってすぐにスクラムを組んだ。これぞラグビーの肉弾戦。その迫力にしびれた。

選手との近さを求めるならバックスタンドの最前列。ロッカールームから覚悟を決めて飛び出してくる選手の姿や、ハーフタイムや試合終了後に引き上げていく表情を見たければメインスタンドの真ん中がいい。ラグビーがよく分かってくると今度は少しスタンドの上に行って、ラグビーを立体的に見たくなった。ど真ん中より、左右どちらかにずれたほうが両チームのフォーメーションが見やすい。選手の表情は見えにくくなるが、向こう側のタッチライン際の攻防も見渡すことができる。その後、ラグビーを取材する立場になり、秩父宮ラグビー場、花園ラグビー場ともに記者席はグラウンドを正面に見て右中間の上段に作られていると気付いた。グラウンドで起こる様々な情報が最も手に入りやすい場所だと言えるかもしれない。

僕はJSPORTSで解説をすることが多く、その放送席も左中間か右中間の上段にある。解説が無いときは、たいがいゴールポスト裏から眺めている。ディフェンスの穴がよく見えるし、そこを抜け出した選手がトライに向かって走ってくるスピード感が好きだからだ。それも、少し角度が欲しい。縦のグラウンドを上から見られるスタンドといえば、花園ラグビー場の正面入り口にあるサイドスタンド。柱など視線を遮るものが何もなく、快適に観戦できる。ただし、遠い側のトライはどうなっているか、さっぱり分からない。

指定席、自由席、どちらがいいかと問われれば、キックオフ直前に行ってゆったりと見たい人には指定席、仲間と集まって楽しく観戦したい人には自由席ということになる。トップリーグのバックスタンドの応援席(自由席)は企業色が強いが、応援しているチームがあるのなら多くの同志と一緒に見るのが楽しい。自分にとって何が楽しいのか。どんな瞬間を見たいのか。そんな観点で選ぶしかないのかもしれない。ラグビーを好きになったばかりの皆さんには、いろんな角度からラグビーを楽しんでいただきたいと思う。

スタンドへ上がる、芝のグリーンが目前に広がる、この瞬間がたまらない

RELATED NEWS