トップリーグ 2016-2017 weekly preview:特別編「日本選手権 準決勝」

今季開幕カードの再現! ヤマハ発動機 – パナソニック
TL王者サントリーに大学王者・帝京大が最後の挑戦

text by Kenji Demura

21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で日本選手権準決勝2試合が行われる。

14日に最終15節が終わったばかりのトップリーグからはサントリーサンゴリアス、ヤマハ発動機ジュビロ、パナソニック ワイルドナイツの3強が日本選手権に出場。
大学選手権を制した帝京大学を加えた4チームにより、日本一が争われる。

第1試合(12:05)に登場するのは、トップリーグ2位のヤマハ発動機と同3位のパナソニック。
奇しくも今季のトップリーグ開幕カードの再現となる。

TL開幕戦ではヤマハ発動機がパナソニックに24-21で勝利。5ヶ月を経ての再戦において総合力で上回るのは? photo by Kenji Demura

TL開幕戦ではヤマハ発動機がパナソニックに24-21で勝利。5ヶ月を経ての再戦において総合力で上回るのは?
photo by Kenji Demura

「パナソニックに勝てなくて優勝ならば、パナソニックに勝って優勝できない方を選ぶ」

約5ヶ月前、清宮克幸監督がそこまで言い切った末にパナソニック戦勝利をものにしたヤマハ発動機。間違いなく、開幕戦で前年度王者を倒したことが若いチームに自信を与え、その後、クリスマスイブ決戦でサントリーに敗れるまで全勝を守る快進撃を続けた原動力になったことは間違いないだろう。

「昨年よりもチーム力が上がっていることをリーグ戦15試合で実感できた」(FL三村勇飛丸主将)
最終的に、優勝したサントリーとの勝ち点差はわずかに2。全勝対決で敗れた以外は、強さをアピールし続けたと言っていいヤマハ発動機としては、チームの成長ぶりを証明するにはこれ以上ない相手との大一番での再戦となる。

「開幕戦はスクラムを優位に組めた。5ヶ月も経っているので、お互い別のチームになっているが、ヤマハの強みは出していきたい。やはりセットプレー。ヤマハスタイルをしっかり出せれば勝てる」

日本代表、そしてトップリーグのベスト15にも選ばれるなど、強力なヤマハ発動機のスクラムを象徴する存在となったPR伊藤平一郎がそう宣言するまでもなく、ヤマハ発動機としてはFW戦で優位に立つことが、2年ぶりとなる日本選手権決勝へ駒を進めるための絶対条件になる。

ヤマハ発動機としてはスクラムの強さが際立った開幕戦の再現するような内容で2年ぶりとなる日本一へ王手をかけたい photo by Kenji Demura

ヤマハ発動機としてはスクラムの強さが際立った開幕戦の再現するような内容で2年ぶりとなる日本一へ王手をかけたい
photo by Kenji Demura

もちろん、連覇を目指すパナソニックとしてもFW戦で譲る考えは全くない。
「(ヤマハ発動機は)スクラム、モールでがんがんくると思うので、頑張ってファイトしたい。ポイントはFW戦、特にセットプレー」(HO堀江翔太主将)

今季のトップリーグでは、開幕戦でヤマハ発動機、第4節でサントリーと、前半戦で2強に敗れた以外は負けなし。
それも、PR平野翔平、HO坂手淳史、FL長谷川峻太、NO8ベン・ガンター、SO山沢拓也、SO/CTB森谷圭介、WTB福岡堅樹、FB藤田慶和など、多くの新人を起用しながら中盤戦以降は11連勝。
ヤマハ発動機サイドも認識しているとおり、開幕戦時とは全く異なるレベルのチームに仕上がっていることに疑念の余地はない。

「(イメージしているチームの仕上がりからすると)いまはまだ70%くらい。ケガ人とかメンバーの問題もあるので。最後に100%に上げていきたい。新戦力もチームに馴染んできているし、イメージはできてきた」(同主将)

セットプレーでの勝ち負けがそのまま試合を決めた印象もあったTL開幕戦とはひと味もふた味も異なる、両者の総合力が問われる試合となる。

ベスト15にも選ばれたパナソニックFL布巻。連覇を目指す王者にとってブレイクダウンでのキーマンとなる photo by Kenji Demura

ベスト15にも選ばれたパナソニックFL布巻。連覇を目指す王者にとってブレイクダウンでのキーマンとなる
photo by Kenji Demura

SH流主将は2年前の帝京大主将=サントリー
SO松田はU20では沢木HCの下で主将=帝京大

第2試合のサントリー – 帝京大学戦も、トップリーグ覇者と大学王者の一戦という単純な図式以上に、少なからぬ因縁のある同士の対戦でもある。

大学選手権8連覇。ここ数年、「打倒トップリーグ」(岩出雅之監督)という目標を掲げてきた帝京大に対して、サントリーも「帝京大学に対するリスペクトを持って、100%スマッシュしにいく」(沢木敬介監督)と、手綱を緩める気配は皆無。

今季、入部2年目ながら、沢木新監督の下、いきなり主将に指名され、見事にチームを4シーズンぶり4度目のトップリーグ制覇に導いたサントリーSH流大主将は2年前の帝京大学の主将でもある。
日本選手権での対戦が決まった後も、岩出監督とメールでのやりとりはしたという流主将は、今季の後輩たちの印象を次のように語る。

「アタックをする意識がすごくある。力也選手(=SO松田)がうまくキックを使いながら、ゲームコントロールしている」

母校との対戦を「素直に嬉しい」と語るサントリーSH流主将。「ベストゲームをする」とも photo by Kenji Demura

母校との対戦を「素直に嬉しい」と語るサントリーSH流主将。「ベストゲームをする」とも
photo by Kenji Demura

しかも、その帝京大のアタックを支える司令塔はサントリーの沢木監督が3年前にU20日本代表ヘッドコーチを務めていた時の同チームの主将。
沢木監督自身、現役時代は同じポジションでもあっただけに、帝京大の司令塔に対しては「強みも弱みも知っている」とも。

「大学生としてはずば抜けている」と、同監督は帝京大のフィジカル面での強さを高く評価するとおり、まずは大学王者がFW戦でどれだけ奮闘できるかが、ポイントになるだろう。

トップリーグ終盤戦、ヤマハ発動機にも、東芝にも、神戸製鋼にも組み勝ったスクラム、そしてラインアウト。あるいは、少ない人数でコントロールしていくブレイクダウン。
スペースを生かしたアタックに目を奪われがちだが、今季バージョンアップしたサントリーの“アグレシッブ・アタッキング・ラグビー”の土台を支えたのは、コンタクトエリアでの強さ。

大学選手権決勝では、東海大に対してFW戦では劣勢に回った面もある帝京大が、セットプレーやブレイクダウンでどれだけファイトできるかが試合の趨勢を決めそうだ。

昨年の日本選手権パナソニック戦での帝京大SO松田。打倒トップリーグの最後のチャンスに闘志を燃やす photo by Kenji Demura

昨年の日本選手権パナソニック戦での帝京大SO松田。打倒トップリーグの最後のチャンスに闘志を燃やす
photo by Kenji Demura

「セットプレーが大事になる。しっかりドミネートしていく」
サントリーのSH流主将もポイントになると指摘するFW戦で帝京大が健闘することができれば、2年前に同主将とハーフ団コンビを組み、さらにU20代表でも沢木監督(ヘッドコーチ)から直接指導も受けていたSO松田のゲームメイクにも余裕が出てくることになり、大番狂わせの可能性が高まることになる。

いずれにしても、大学王者がトップリーグ王者に対して「1年間積み重ねてきたものをぶつける」(帝京大学FL亀井亮依主将)最高の舞台となる。

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