4節 マッチサマリー(神戸製鋼 22-25 近鉄)

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C:2010, JRFU(Photo by A. HASEGAWA)

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 22-25 近鉄ライナーズ
【week4/2010年10月3日(日) at 兵庫・加古川運動公園陸上競技場】

最初に結論を述べるならば、ラグビーに於ける1人のプレーヤーは、1/15以上の意味を持つことがあることを痛感させられたゲームとなった。

悪天候でスリッピーな状況にもかかわらず、序盤からキックに頼らず積極的に仕掛ける両チーム。ブレイクダウンで人数をかけず展開攻撃をみせる神戸製鋼が、開始早々のPGチャンスをモノにし、3点リードでペースを掴む。
近鉄は久々の先発SO大西が積極的な動きで、神戸製鋼の流れを押し戻すなど、両チームとも果敢にボールを動かすも、肝心な場面でノックオンを繰り返す。ここ数試合にみられるディフェンスのコミュニケーション不足が神戸製鋼に露呈した28分、ゴール前ラックからNO.8田中が持ち出したボールをWTB14森田に繋がれトライを許す(G不成功3-5)。
失敗を恐れず仕掛ける神戸製鋼は、33分SOグラントが中央突破したプレーから、近鉄22m付近で形成されたラックのボールをターンオーバーされるも、SH佐久間のキックをチャージしたCTB13大畑がチャージダウン、こぼれ球を拾いトライ(G成功10-5)。
両チームとも悪天候下のゲームながら、不安定さを残したまま前半を終える。

雨が激しくなった後半、キックによるエリアマネジメントに切り換えた近鉄は、42分に得たPGチャンスを確実に決め10-8。"MOVING RUGBY"にこだわる神戸製鋼は、47分敵陣ゴール前5mスクラムからラッシュをかけターンオーバー、FL6マパカイトロが左サイドを突破、トライに繋げる(G成功15-8)。リズムの出てきた神戸製鋼は、マパカイトロ、大畑、WTB小笠原のランで近鉄を圧倒。53分近鉄陣ゴール前ラックからSH22佐藤が強引に突破しトライ、突き放しにかかる(G成功22-8)。

その一方ディフェンスでは近鉄のゴール前での執拗なアタックを、反則という"劇薬"を使いながら喰い止めてきた神戸製鋼は、70分にFB正面をシンビンで失うと、扇の要を失ったかの如く瓦解する。73分WTB22田中のトライ(G不成功22-13)から、堰を切ったようにアタックを繰り返す近鉄に対し、あまりに真正面から受けた神戸製鋼は途中交替のSO重光に翻弄され、77分トライを奪われる。(G成功22-20)
終了間際ラッシュを繰り返す近鉄に、反則を恐れ思い切ったディフェンスができなくなった神戸製鋼。フォーンが鳴ったラストプレーは、失敗を恐れなかった近鉄の左ラストパスを受けたWTB松井が左隅に押さえ、1988年関西社会人リーグ以来の劇的な逆転勝利(G不成功22-25)。
1/15以上の"ワンピース"を失った神戸製鋼は、シーズンの方向性を失いかねない敗戦となった。が、昨季まで課題であったフィットネスが切れなかったことは一筋の光明。"阪神ダービー"はあまりにも鮮明に明暗が分かれた結果となったが、両チームの巻き返しに大きな期待が持てるゲームでもあった。(廣島 治)

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会見ダイジェスト
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
苑田ヘッドコーチ(右)、大橋ゲームキャプテン
苑田ヘッドコーチ(右)、大橋ゲームキャプテン


◎神戸製鋼コベルコスティーラーズ
○苑田右二ヘッドコーチ
「大雨の中たくさんのファンにご来場いただいたことに、感謝しています。残り7分で3トライを奪われ、非常に悔しい。(FB正面の)シンビンで、ゲームコントロールができなくなったことが原因のひとつ」

○大橋由和ゲームキャプテン
「神戸製鋼所の工場がある加古川で行われた、初の試合であり、是非とも勝ちたかった。気持ちで負けていたわけではないが、近鉄の動きが素晴らしく、堪えきれなかった」

──後半失速の原因は?
○苑田ヘッドコーチ
「シンビンで14人になってから、3トライとられている。現時点では分からないこともあるので、ビデオをチェックしたい」

──連敗が続いているが、今後どう戦うのか?
○苑田ヘッドコーチ
「目前のゲームに良い準備をして、勝つことしか考えられない」

──全体を通してのゲームプランについてはどう考えるのか?
○苑田ヘッドコーチ
「細かいゲームコントロールミスはあるが、ボールはよく動いていた。しかしフィニッシュまで持っていけない。今回は非常に痛い敗戦です」

──前半1分で早々に、なぜPGを狙ったのか?
○大橋ゲームキャプテン
「先制点が欲しかった。いい位置であり確実に得点できるという判断で選択した」

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近鉄ライナーズ
スローン ヘッドコーチ(右)、トンプソン キャプテン
スローン ヘッドコーチ(右)、トンプソン キャプテン


◎近鉄ライナーズ
○ピーター・スローン ヘッドコーチ
「ラグビーは非常に面白いスポーツです。何とかボーナスポイントだけはとってくれと祈っていたが、数分後には勝ってしまった。久しく勝ち星がなかった神戸製鋼に勝てて非常に嬉しい。また、雨のなか来ていただいたファンには感謝している。次の試合まで6日しかないが、まずは喜びたい」

○トンプソン ルーク キャプテン
「私も非常に嬉しく思っています。会社にとっても選手にとっても良い試合となった。今日の選手のパフォーマンスを誇りに思います」

──オープン戦でも戦っているが、正直試合前にどれぐらいの確率で勝てると思っていたか?
○スローン ヘッドコーチ
「勝つ可能性は充分にあると思っていた。何人かケガで出場できなかったが、その分若い選手が活躍してくれた。
セットプレーをしっかりとし、ワイドにボールを振ったら、良い試合となった。自チームの試合をしっかりと分析して、きちんと対応した結果」

──松井選手は良いパフォーマンスだったが、今後の起用は?
○スローン ヘッドコーチ
「松井選手は良く頑張ってくれた。ケガでしばらく出場できなかったが、よく復帰してきた。若い選手が頑張ったので、ベテラン選手はさらに頑張らないといけない」

──なぜこれまでの試合とHB団を変えたのか?
○スローン ヘッドコーチ
「佐久間選手は基本が良くできている選手。今日は基本をきちんとしたかった。彼はシンプルにプレーする選手だ」

──残り5分で仲間にどういう声をかけたのか? 神戸製鋼に何か変化はあったのか?
○トンプソン キャプテン
「息をするだけで苦しくて、大きく声を出せなかった。ただ『最後まで続けていこう』と声をかけた。神鋼の15番がシンビンで退場してから、流れが変わった。そのあたりから、クイックボールが出だした」

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