8節 マッチサマリー(リコー 26-29 トヨタ自動車)


リコーブラックラムズ 26-29 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
【week8/2010年11月27日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

現時点9位ながらも、得失点差がプラスを示している通り僅差の試合を展開してきているリコーが4位のトヨタにどのように立ち向かうかが見どころ。トップリーグで両チームは過去5回対戦し、トヨタの5勝となっている。

前半開始直後からリコーが積極的に攻撃。SO河野の効果的なキックで敵陣での勝負を続け、積極的に攻め込むがゴールラインはなかなか割れない。前半12分、SOアイイが縦に切れ込んだボールをCTBイェーツが左に持ち出し、WTB水野へラストパス。トヨタが先制することとなった。

17分、リコーゴール前5mのラインアウトからトヨタがモールを形成、そのまま押し込みトライ。0-14とトヨタが点差を広げる。

リコーも自陣からのBKラインの激しいディフェンスと連続攻撃でトヨタを攻め立てる。トヨタ陣内へ入りペナルティを得ると、迷わずショットを選択。SO河野が決めて3-14、32分にもPG追加で6-14と追い上げ、前半を終了。

後半になってもリコーの激しさは止まらない。自陣でのターンオーバーからFBエリソンが快走、キックもからめて大きくゲインし自らセービング。トヨタ陣22m付近中央から大きく左に展開し、最後はCTB金澤が左隅に飛び込んでトライ。難しい角度のゴールもSO河野が成功させ、13-14と点差を縮める。

先発FWの平均体重で13kgも勝るトヨタはモール攻撃に集中。14分にトライを挙げ、13-19と引き離しにかかる。

その後両チームともにPGを成功させ緊迫した試合が続いていたが22分、投入直後のリコーWTBキニキニラウが豪快にラインを突破し、ポスト真下にトライ、リコー遂に逆転に成功する(23-22)。さらにPGで点差を広げて26-22へ。

30分、リコー陣22m中央でペナルティを得たトヨタがスクラムを選択。一度左に展開した後、スペースのできた右に大きく展開、CTBイェーツがタックル二人を振り切って右にトライ。ゴールも成功し、26-29と逆転に成功、その後追いすがるリコーの攻撃を辛くも止め、苦戦の結果、勝利を手中に収めた。

会見ダイジェスト
リコーブラックラムズ
ローデン ヘッドコーチ(右)、滝澤ゲームキャプテン
ローデン ヘッドコーチ(右)、滝澤ゲームキャプテン


◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン ヘッドコーチ
「ラグビーの試合としてすごく良いゲームでした。リコーからすると平均で11cm高く12kg重いトヨタさんに対する戦いでした。昨シーズンは60点くらい差をつけられて(正確には52点差)春シーズンも40点くらい取られた相手です。今日は勝てる試合だったと思いますが、3点差にまで差をつめ成長したチームを誇りに思います。選手はよくやってくれました。私たちの仕事はチャレンジすることで、今日はそれができました。本当に見ていて私も楽しい試合でした」

──前半30分での交代は?
「うちの方がフィットネスは上だと感じていました。そこで、テンポアップを図りたいと考え、決断しました。トヨタさんのFWはかなり大きいので、アップテンポにしたかったのです。しかし、ゲート周りがルーズで、スローボールを作られてしまいました。その分、ペナルティが増え、ショットされてしまいました」

──去年より、コメントが優しいように聞こえるが?
「(苦笑)今日もラインアウトは良くなかったし、横から入るモールも気になりました。世界レベルで見るとディフェンスの練習はもっと必要です。ただ、前は60点差だった相手に3点差にしたことだけは選手に伝えたいと思いましたので」

──最後、攻めていて出たノックオンについて?
「(顔をゆがめて)顔はこんな感じでした(笑)。ボールを持っているときは危険なチームと思わせることができました。パスを放る必要はなかったかもしれません。そこも成長が必要なところです。その前にスローボールでアタックしたのも大きなトヨタさんには良くない選択でした。(日本語で)ヤバイ!と思いました」

○滝澤佳之ゲームキャプテン
「まず、集まっていただいたリコーファンの皆様、会社の方々に感謝申し上げます。チャレンジャーとして、昨シーズンよりどれだけ近づけるかと臨みましたが、内容としてはできたところが多かったです。勝負どころで、ペナルティを犯したこと、警戒していたモールでも2本獲られたことなど、課題としていたことができず、悔やむことも多い試合でした。しかし、自信にもなりましたので、これから一つになって修正していきたいと思います」


トヨタ自動車ヴェルブリッツ
朽木監督(右)、中山キャプテン
朽木監督(右)、中山キャプテン


◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木泰博監督
「本日、日本協会をはじめ、トップリーグ運営にご尽力いただいた皆様に感謝いたします。前半戦は5勝2敗で、非常に良い滑り出しをしながら勢いを持続できず、この1ヶ月は特にアタックに重点を絞って練習してきました。リコーさんは非常に接点が強く、前半戦の後半から調子を上げてきたチームで、タイトな試合になると予想していました。試合の入りは意図するクイックボールと人のリンクがあるラグビーをしてスコアできました。その後、チャンスがありながらスコアに繋げられず、反撃を受け非常に苦しい試合になりました。しかし、凄く攻撃的に80分戦えたことは前進だと思います。もちろん、ミスはありますが、大きく攻撃できなければ自分たちの目標は達成できません。ミスをより少なくするか、もっと攻撃的に試合を進めないと、次の東芝戦には通用しないと感じています」

──(7人制代表としてアジア競技大会に参加した)山内選手は?
「和田と一緒にアジア大会で金メダルを獲ってくれました。ただ、約1ヶ月チームとともに練習できていないことと、山内が合流したのが木曜日で、我々としては最終の調整時期に入っていたことから、リザーブに入れました。今日は難波とイェーツのパフォーマンスが良かったので、コンビで80分戦ってもらいました」

──1ヶ月練習した攻撃は何割くらいできたか?
「攻撃全体を考えると7割です。勝負の世界ですので、スコアできなければいけません。特に、前半、何回もラインブレイクしながら獲れないのはよくありません。ただ、クイックボールが出せたのは良い点数をつけられると思います」

──簡単に中央を突破されたが?
「今日の原因は明確ですので、それほどネガティブには受け止めていません。攻めてのターンオーバー、真ん中はゴン(中山キャプテンの愛称)のタックルミスです(笑)。(横から中山キャプテンが『しっかりタックルに入れるよう頑張ります』と消え入るようなコメント)」

──東芝戦に向けて?
「リコー戦が一つのヤマと考えていましたが、しっかり超えられましたので自信になりました。東芝戦のカギはどちらが攻撃を長くできるかにかかっていると思います。東芝さん以上に攻撃できるよう頑張ります」

○中山義孝キャプテン
「リコーさんの個人の強さ、特にバックス一人一人の強さに苦しんだ試合でした。しかし、80分アタックし続けることができましたし、トライを4つ獲れましたので良かったと思います。次の東芝戦を見据えたときに、アタックの中でのミスボールに対する処理が課題で、このままでは通用しないと思います。しっかり修正して、気を引き締めて臨みたいと思います」

──70分過ぎ、ゴール前ペナルティでスクラムを選択したのは?
「もちろん、ショット、ラインアウトという声もありましたが、全体的なバランスを考え、選択しました。偏らない攻撃です。敵陣ラインアウトだけだと対応してきますので、目線を変える意味でも、同じ攻撃でなく、今年自信のあるスクラムから崩そうとしました。アイイは狙いたいと言っていました(笑)」

──スペシャルプレーは不発だったが?
「(意外そうに)そんなことありません。エキストラがラックにしてからの右への展開は予定通りです」

──東芝戦に向けて?
「どのチームもそうですが、特に東芝さんは団結力、一体感、結託力があります。80分根負けしないように、スキルもそうですが、精神力が試合を決めると思いますので、高めていきたいです」

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