トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第2節(9/10 - 9/12)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
09/10(金) 19:30 リコーブラックラムズ 20-26 サントリーサンゴリアス 秩父宮
09/11(土) 17:00 クボタスピアーズ 3-15 NECグリーンロケッツ 秩父宮
09/11(土) 19:00 東芝ブレイブルーパス 33-28 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 秩父宮
09/11(土) 19:00 ヤマハ発動機ジュビロ 30-10 近鉄ライナーズ 鈴鹿
09/11(土) 19:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 50-5 コカ・コーラウエストレッドスパークス 金鳥スタ
09/12(日) 15:00 三洋電機ワイルドナイツ 54−0 豊田自動織機シャトルズ 足利陸
09/12(日) 15:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 19−27 福岡サニックスブルース 富山陸

マッチレポート

福岡サニックス、神戸製鋼に逆転勝ち

初昇格、昨季の下位チームが上位陣を苦しめる試合が続いた第2節は、締めくくりの日曜日に2試合が行われ、栃木県の足利では三洋電機ワイルドナイツが初昇格の豊田自動織機シャトルズを54-0で退けた。そして、トップリーグ初開催となった富山県では、昨季5位の神戸製鋼コベルコスティーラーズと、7位の福岡サニックスブルースが対戦。「走り勝つ」スタイルを貫く福岡サニックスと、今季、人もボールも動く「MOVING RUGBY」を掲げるアグレッシブなチーム同士の戦いは、後半、インパクトプレーヤーの登場によって大きく流れが変わることになった。

■神戸製鋼コベルコスティーラーズ 19-27 福岡サニックスブルース(前半12-3)──9月12日

80分間走りきるスタミナに絶対的な自信を持つサニックスの勝利へのイメージはいつだって明快だ。自陣からでもたくさんのパスを使ってボールを動かし続け、守っては失点を最小限に抑えて相手の攻め疲れを誘う。最後の仕上げにインパクトプレーヤーを投入し、爆発的な突破力でスコアをひっくり返す。果たして、試合の流れはシナリオ通りに進んだ。

前半3分、自陣からボールをつないで攻め続けたサニックスだが、神戸製鋼PR山下裕史が猛然とタックル。こぼれたボールを確保した神戸製鋼は、NO8パスカ・マパイカイトロの防御背後へ絶妙のキックでFB正面健司を走らせ先制トライ。続く6分には、モールを押し込みLO谷口到がインゴール右中間にボールを押さえて瞬く間に12-0とリードを広げた。

その後も神戸製鋼は自信のあるスクラム、モールで押し込み追加点を狙うがなかなか取りきれない。前半終了間際には、いったんインゴールに持ち込んだが押さえきれず。直後のマイボールスクラムで反則を犯すなど、追加点の絶好機を逸した。前半を終えて、神戸製鋼が12-3の9点差リード。しかし、神戸製鋼の選手に笑顔はない。手応えをつかんでいたのはサニックスのほうだった。

サニックス菅藤友キャプテンは言った。「前半を耐えれば、後半勝機があると練習中から言い続けてきました。トライをとられるならモール。スクラムの劣勢も想定内でした」。押し込まれて苦しんでいるかに見えたサニックスFWは、したたかに神戸製鋼が「押し疲れる」のを待っていたというわけだ。

「トップリーグで今までに感じたことのない衝撃」(大畑大介)というカーン・ヘスケスの登場

後半が始まる直前、フィールドに散ったサニックスフィフティーンの中に背番号22の姿があった。カーン・ヘスケス。ニュージーランド・オタゴ州代表の経歴を持つ新加入選手である。身長178㎝、体重98㎏のサイズは驚くには値しない。しかし、開幕節のコカ・コーラウエストレッドスパークス戦でのランニングは衝撃的だった。いったい何人のタックラーを弾き飛ばしただろう。そして、要注意選手として知れ渡ることになった男の爆発力は、この日の試合でも流れを変えてしまった。

後半開始のキックオフ。自陣22mライン内からヘスケスが走り始めた。大畑大介がタックルで押し戻す。「さすがに無理か」と思われた刹那、ヘスケスは身体を反転させると腰が地面に届きそうな重心の低い走りで抜け出し、一気に神戸製鋼陣まで駆け上がった。攻め込んだサニックスは、4分、前半のCTBからSOにポジションチェンジした小野晃征がPGを決めて、6-12と6点差に迫り、なおもアグレッシブに攻める。

15分には、ゴール前のスクラムからシンプルにヘスケスにボールを渡して右コーナーぎりぎりにトライ、小野が難しいゴールも決めて逆転。さらにヘスケスが2本目のトライをあげ、小野が自らのショートパントをキャッチしてLO秋田太朗のトライ(後半28分)を演出するなど、サニックスが3トライを畳みかけて一気に突き放した。後半に運動量を上げたサニックスに対して、神戸製鋼は足が止まった。

立っているだけでも汗が出てくる気候も禍したのか、全体にハンドリングエラーが多く、互いに目指す連続攻撃も途切れがち。けっして良い内容ではなかったのだが、ヘスケス投入後の鮮やかな逆転劇がすべてを帳消しにした感がある。「トップリーグで今まで感じたことのない衝撃。どうやって止めたらいいのか、分からなくなりました」。ヘスケスに対する世界のトライゲッター大畑大介の困惑も、試合の価値を高めていた。

(text by 村上晃一)

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後半途中出場し、2トライを奪う爆走でサニックスが逆転勝ちする立役者となったWTBヘスケス。新たなトップリーグのスターになりそうだ
photo by Kenji Demura(RJP)
隙あらばどこからでも攻めて来るサニックス。フィットネスでも神戸製鋼を上回った。写真は突破をはかるWTB濱里周作
photo by Kenji Demura(RJP)
今季で引退を表明したWTB大畑が力強い走りを見せる場面もあったが、神戸製鋼は後半サニックスのボールを動かすランニングラグビーに対応できず完敗
photo by Kenji Demura(RJP)

 

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ディフェンス力で初勝利。NECグリーンロケッツ

開幕第2節。前週に続くフライデー・ナイターではサントリーサンゴリアスがリコーブラックラムズのひたむきなプレーに苦しみながらも終盤トライを重ねて際どく逆転勝ち(26-20)。翌土曜日には4試合が行われ、東芝ブレイブルーパス、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、ヤマハ発動機ジュビロが2勝目を挙げる一方、NECグリーンロケッツがクボタスピアーズとの守り合いを制して、初勝利を挙げた。

■NECグリーンロケッツ15-3クボタスピアーズ(前半3-3)──9月11日

タックラーに対するノット・ロール・アウェー基準が厳しくなり、今季は攻撃力強化を表明するチームが多い中、NECの岡村要ヘッドコーチは開幕前から宣言していた。

「ウチは日本一のディフェンスを目指す」

まさに80分間、集中力を切らさなかったDF力で、NECが開幕初勝利を挙げた。

立ち上がり、先にペースをつかんだのはクボタだった。
開始7分にNEC瀬崎隼人が危険なタックルでシンビン退場。そのPGをSOシェーン・ドゥラームが決めて、3点を先制。
さらに、数的優位を生かす形で、クボタがNEC陣深くに攻め込む時間帯が続いた。
"スーパーブーツ"ドゥラームのPGで3点を刻むチャンスもあったが、クボタはあえてPKでもスクラムを選択して、試合の流れを一気につかみにいく。

8人対7人のスクラム。

それでも、1人多いクボタFWがスクラムでNECにダメージを与える場面は、とうとう見られなかった。

「1回押されたけど、あとはこらえられた」(PR土井貴弘)

セットで後手に回らなかったことは、NECにとってはDF面での余裕にもつながった。
オフィシャルなこのゲームのマン・オブ・ザ・マッチには後半10分から途中出場したSO安藤栄次が指名されたが、NECの岡村ヘッドコーチをして「(貢献度の高かった選手を挙げるなら)ブライス(ロビンス=SO)と、やはりキャプテン(ニリ・ラトゥ=NO8)。一番しんどいところでDFで頑張ってくれたし、チームを鼓舞し続けてくれた」と絶賛した外国人リーダーたちに引っ張られるかたちで、前に激しく出るDFでクボタのアタックを寸断。
「取るべきところでとれなかった」と、クボタHO荻原要主将を悔しがらせるかたちで、最初のPGによる3点のみで、序盤に訪れたピンチを乗り切ってみせた。

"日本一のDF"に手応え

前半のピンチを14人が集中力を切らさないDF力で乗り切ったグリーンロケッツは、後半、逆に一瞬の隙をつくかたちで2トライを奪い、勝負を決めた。

後半9分、ラック周辺に一瞬できたスペースに反応したFL土佐誠がいったん横に動き出した後、タテに走る方向を変えて、クボタDFを突破。さらに土佐からLO熊谷皇紀、熊谷からSH西田創へと、それぞれタックルを受けながらパスをつないで初トライ。

さらに、21分には再びラックから今度はSH西田が左サイドにボールを持ち出し、SOロビンスに短いパスをつないで大きくゲイン。最後はロビンスがオフロードでNO8ラトゥ主将につないで、試合の流れを決定づけた。

後半26分にはNEC陣深くに攻め込んだクボタが、10フェイズ以上連続して攻める場面もあったが、とうとうトライは許さず、目指す「日本一のDF」に向けて手応えを感じさせるシーズン初勝利となった。

クボタは大黒柱SOドゥラームが太ももに違和感を訴えて前半29分に途中退場。代わって入った新加入のスコット・ダルーダは、まだまだ周りとの意思疎通が十分でない部分もうかがえて、リズムをつくれなかった。

ゲームプランだった「DFでプレッシャーをかけていく」スタイルはある程度、うまくいっていたものの、後半「集中力が切れた時間があった」(佐野監督)ことが響いた。

お互い強固なDFを前面に出して戦った第1試合のNEC-クボタ戦に比べ、第2試合はNTTコミュニケーションズシャイニングアークスの攻める姿勢が際立ち、7533人のファンを沸かせた。

王者・東芝に接点で一歩も引かず、ボールを奪えばキックも交えながら積極的に展開。

WTB友井川拓の2トライなどで、後半20分まで21-19とリード。最後は東芝FWのパワープレーでの前に力尽きたものの、「王者と互角に渡り合えた。次につながる」(大沼照幸監督)と、初昇格ながら上位チームとも十分渡り合える実力があることを示すかっこうとなった。

(text by 出村謙知)

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クボタFL今野の突破を2人がかりで止めるNECのSOロビンス (左)とLO浅野。強固なDFは最後まで崩れなかった
photo by Kenji Demura(RJP)
後半9分、NECはFL土佐(左)の突破からLO熊谷(右から2 人目)がつないで、SH西田がトライを奪って逆転した
photo by Kenji Demura(RJP)
終了間際のFBジェラートのトライで5点差に迫り、ボーナスポイ ントを獲得したNTTコム。王者を苦しめ秩父宮の観衆を沸かせた
photo by Kenji Demura(RJP)

 

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