トップリーグ2010-2011特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
今シーズンより、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第13節(1/9 - 1/10)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
1/9(日) 14:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 61-7 豊田自動織機シャトルズ ホームズ
1/10(月) 12:00 三洋電機ワイルドナイツ 21-22 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 秩父宮
1/10(月) 12:00 ヤマハ発動機ジュビロ 47-52 リコーブラックラムズ 近鉄花園
1/10(月) 12:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 19-14 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス レベスタ
1/10(月) 14:00 東芝ブレイブルーパス 26-10 サントリーサンゴリアス 秩父宮
1/10(月) 14:00 近鉄ライナーズ 50-19 クボタスピアーズ 近鉄花園
1/10(月) 14:00 福岡サニックスブルース 8-47 NECグリーンロケッツ レベスタ

マッチレポート

ブレイクダウンで圧勝。東芝が2年ぶりの1位通過

東芝ブレイブルーパス ○26-10● サントリーサンゴリアス(前半12-0)──1月10日

列島をこの冬最強の寒波が包み込んだ10日の午後、東芝ブレイブルーパスがサントリーサンゴリアスを相手に演じたパフォーマンスは、まさにラックの教科書だった。

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ブレイクダウンで圧倒した東芝がサントリーに圧勝。後半16分にトライを奪ったNO8山本(写真中央)など、若手の活躍も目立った
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

象徴は前半29分の場面だ。東芝陣で果敢にボールを動かしたサントリーが、ラインアウトからの6次攻撃でCTBライアン・ニコラスを縦に突っ込ませる。そこへ東芝FL中居智昭がタックル。中居はニコラスの腰のあたりを堅くパックしたまま低い姿勢でレッグドライブ。ニコラスは倒されながらも丁寧にボールをコントロールし、腕を伸ばして味方側にボールを置く。しかしそれは徒労に終わった。LO大野均を先頭に、速やかに集結した東芝FWが、ボールを置いたニコラスの身体の上をブルドーザーと化して走り抜けたからだ。完璧なクリーンアウト。その迫力に、秩父宮のスタンドはどよめきを上げた。

「僕たちはブレイクダウンでジャッカル(相手のボールを腕で奪い取ること)を狙わない。あくまでも、相手を超えていく」と東芝の瀬川智広監督は胸を張った。この試合のターンオーバー数は、Jスポーツの集計でサントリーの1に対して東芝が8。前半17分にはトライラインまで数センチに迫ったサントリーSOピシをSH吉田朋生、WTB宇薄岳央のダブルタックルで止め、そのままターンオーバー。後半19分にはサントリーのエースWTB小野澤宏時をゴール前2mでCTB仙波智裕と宇薄のダブルタックルでタッチへ弾き飛ばし、22分にはトライ目前に迫ったサントリーPR畠山健介にLO望月雄太、FLベイツ、途中出場のSO吉田良平が殺到してボールを落球させた。ポゼッション(ボール保持時間)はサントリーが上回ったが、試合自体は東芝が支配。それは26対10というスコア以上だった。

2週間で進化できるか? サントリー

この試合でもうひとつ注目を集めたのが、東芝FB松田努のパフォーマンスだ。2007年度最終節のヤマハ戦以来、まる3年ぶりの先発出場。自身の持つTL最年長出場記録を40歳8ヶ月まで更新した元日本代表FBは、東芝の4トライのうち3トライに絡む活躍。それもパスで、速攻で、突進で、と多彩なプレーでトライをセットアップ。「最後は両足がつりそうだった」と言いながら、後半29分に退くまで、ブレイクダウンにディフェンスにワークレートもクオリティも高いプレーで身体を張り続けた。
「ジョンさん(松田の愛称)はピンチを作らない。早めに危ないところを摘み取ってくれるんです」と廣瀬俊朗主将。敵将エディー・ジョーンズ監督も「私が36歳で日本代表を指導したとき彼は26歳だった。今私は50歳で、彼は40歳だけど、彼は若々しい。彼のプレーを見ているだけで幸せになる。でも40歳だったら、髪の毛はちゃんと切った方がいいネ」とジョークを交えて称賛した。この日の秩父宮の観客は幸運だった。

ところで、この日の秩父宮には、すでにプレーオフ進出を決めている4チームが集結。2週間後のセミファイナルで再対決する可能性も見据えての戦いだった。
「戦うにあたって、今さら隠すことは何もなかったけれど……2週間後までに、何か新しいアイデアを考えてきます」(サントリー・ジョーンズ監督)
「ゲームプランはブレイクダウンで圧倒しようということだけ。サントリー用の戦術も戦略もなかったし、次もブレイクダウンをやりきるだけです」(東芝・瀬川監督)
両者とも、現時点の力を出し切ることに専念したようだ。

1月23日のセミファイナル。同じ秩父宮での再対決で、両チームはどんな進化した姿を見せてくれるだろう。

(text by 大友信彦)

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3年ぶりの先発となった東芝の大ベテランFB松田はブレイブルーパスが奪った4トライ中3トライに絡む活躍を見せた
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
東芝の激しいタックルに止められるサントリーLO眞壁。ブレイブルーパスの完璧なDFの前にサンゴリアスの超攻撃ラグビーは不発に終わった
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
ブレイクダウンでは東芝がサントリーを圧倒。接点での優越がそのまま勝敗を分けるかっこうとなった
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

 

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トヨタ、1点差で三洋との前哨戦をものにする

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三洋相手に80分間攻める姿勢を前面に出して勝利をもぎ取ったトヨタ。FL中山主将(写真)を筆頭に自信を深めてプレーオフに臨む
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

10日、トップリーグ最終節6試合が行われ、東京・秩父宮ラグビー場ではトヨタ自動車ヴェルブリッツが三洋電機ワイルドナイツに22-21で際どく勝利する一方、東芝ブレイブルーパスは"府中ダービー"でサントリーサンゴリアスに完勝。
この結果、東芝のレギュラーシーズン1位通過が確定。以下、2位三洋電機、3位トヨタ自動車、4位サントリーとなり、プレーオフは最終節と同じ東芝-サントリー(22日、東京・秩父宮)、三洋電機-トヨタ自動車(23日、同)の組み合わせで行われることになった。
また、大阪・近鉄花園ラグビー場では、リコーブラックラムズがヤマハ発動機ジュビロとの死闘を52-47で制し、近鉄ライナーズはクボタスピアーズに50-19で圧勝。福岡・レベルファイブスタジアムではコカ・コーラウエストレッドスパークスがNTTコムシャイニングアークスに19-14で競り勝ち、NECグリーンロケッツが福岡サニックスブルースから7トライを奪って47-8で勝利を収めた。
日本選手権出場権をかけて争われるワイルドカードトーナメント1回戦にはレギュラーシーズン7位リコー、8位サニックス、9位近鉄、そして10位に滑りこむかっこうになったコカ・コーラウエストが進出。11位のヤマハ、12位のNTTコムは入れ替え戦に回ることになった。

トヨタ自動車ヴェルブリッツ ○22-21● 三洋電機ワイルドナイツ(前半7-15)──1月10日

勝っても負けても、2週間後に控えるプレーオフセミファイナルでの再戦の可能性が高い状況での戦い。
両チームのレギュラーシーズン最終戦に臨むスタンスには微妙な差があった。
それは、先発メンバーを見ても明らかだった。

リーグ戦では圧倒的とも言っていい強さを見せつけながら、プレーオフで敗れるシーズンが続く首位・三洋は、故障上がりのSOトニー・ブラウンや霜村誠一主将といった主力をベンチに置く、「次にいい目が残るように考えたメンバー」(飯島均監督)でのスタート。
一方、前節終了時点で4位、三洋には過去3年間勝っていないトヨタは、ケガを抱えていたNO8菊谷崇やここ3試合欠場していたCTB難波英樹も先発させるなど、「とにかく勝ちにこだわった」(朽木泰博監督)布陣。
目先の勝利への欲求では明らかに上回っていたと言っていいトヨタは、1ヵ月前の東芝戦(34-28で勝利)同様、チャンレンジャーらしく、トスに勝って前半風上を選択。

前半10分に三洋HO堀江翔太に先制トライを許したものの、その後は今季のトヨタが追求してきた攻撃的ラグビーを前面に出して、前半だけで3トライ。
強風の影響もあったのか、SOオレニ・アイイのゴールキックが決まらず、スコア自体は15-7と8点差にとどまったものの、前半は明らかなトヨタペースで40分間を戦い終えた。

"プレーオフモード"三洋の堅守も健在

ハーフタイムをはさみ、サイドが変わってからも、「攻めるトヨタ、守る三洋」という基本的な図式は変わらなかった。
後半10分。三洋の先制トライにつながるタックルミスなど、守りの面でやや精彩を欠いていたトヨタNO8菊谷が汚名返上とばかりに突破をはかってオフロードでパスをつなぎ、WTB水野弘貴が自身このゲーム2本目となるトライを決めてリードを広げる(22-7)。
この時点でトヨタは計4トライとなり、ボーナスポイントを獲得。
前節までの勝ち点は首位だった三洋が54で、4位のトヨタが50。このまま三洋にボーナスポイントを与えずにトヨタが勝てば両者の順位は入れ替わり、トヨタが地元に近い大阪でセミファイナルを戦う可能性が高まった(レギュラーシーズン1、2位のチームがセミファイナルの会場=秩父宮か花園=を選ぶことができるため)。

ところが、トヨタ主将のFL中山義孝をして、「勝者の文化がある」と認めざるを得ない常勝軍団・三洋は、直後のキックオフからNO8ホラニ龍コリニアシのロングゲインの後、WTB山田章仁が左サイドを走り抜けて追撃。5分後の17分にも再びNO8ホラニの突破でチャンスを作り、最後は途中出場していたSOトニー・ブラウンからLOダニエル・ヒーナンとつなぎ、連続トライ。
アッという間に試合は22-21と1点差に。ただ、それでもトヨタの攻める姿勢は最後まで貫かれた。

「セットの部分で踏ん張ることができた」(FL中山主将)
「エリアマネージメントは良かった」(LO北川俊澄)
1点差となってからの最後の20分間も一方的に敵陣に居座って攻め続けたトヨタだったが、SOブラウン、さらにはCTB霜村誠一主将も途中出場を果たし、プレーオフモードに変わっていた三洋DFを完全に破るまでには至らず、そのまま22-21でタイムアップ。

「日本のトップチームにどれだけ通用するか。自分たちが貫いてきた攻撃的なラグビーにこだわりを持って戦ってこそ、見えてくるものがある」(朽木監督)
トヨタにとっては、とにかく攻め続けて勝利をものにしただけに、「プレーオフに向けて自信になった」(FB松下馨)のは間違いないだろう。
一方、終盤プレーオフモードになった三洋も、攻められ続けられながらトライを許さなかったあたりに、その強さの真骨頂はうかがえた。
「プレーオフに向けて不安はない」というCTB霜村主将の言葉も強がりではないはずだ。

この日に限っては、目先の勝利への欲求の部分でトヨタが三洋を上回ったことが1点差勝利につながったが、両者がそれぞれの強味では譲らなかっただけに、2週間後、同じ場所での再戦が一層興味深くなる前哨戦でもあった。

(text by 出村謙知)

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4試合ぶりの先発ながら、前半18分にトライを奪うなど活躍を見せたベテラン難波(写真下)。イェーツとのCTBコンビで何度も三洋DFを突破した
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
後半13分にCTB霜村主将が3試合ぶりとなる途中出場を果たしてからは、ミッドフィールドが引き締まり、本来の堅守を取り戻した三洋
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)
トヨタWTB遠藤(中央)にタックルにいく三洋CTB入江(右)とSO野口(左)。「攻めるトヨタ、守る三洋」の図式はセミファイナルでも?
(C)2010,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

 

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