トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第4節(11/19 - 11/20)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
11/19(土) 12:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 19-10 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 秩父宮
11/19(土) 13:00 東芝ブレイブルーパス 26-3 近鉄ライナーズ ニッパ球
11/19(土) 14:00 サントリーサンゴリアス 26-13 ヤマハ発動機ジュビロ 秩父宮
11/20(日) 12:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 20-27 リコーブラックラムズ レベスタ
11/20(日) 13:00 Honda HEAT 16-19 パナソニックワイルドナイツ 足利陸
11/20(日) 14:00 福岡サニックスブルース 15-32 NECグリーンロケッツ レベスタ
11/20(日) 14:30 NTTドコモレッドハリケーンズ 10-62 トヨタ自動車ヴェルブリッツ コカ・ウエスト

マッチレポート

正しきアグレッシブさを取り戻したNECがサニックスに快勝

20日、トップリーグ第4節の残り4試合が行われた。福岡レベルファイブスタジアムでは、リコーブラックラムズとNECグリーンロケッツが地元のコカ・コーラウエストレッドスパークスと福岡サニックスブルースをそれぞれ倒し、栃木・足利市総合運動公園陸上競技場では昨季のトップリーグ王者パナソニック ワイルドナイツが後半20分過ぎまで、昇格組のHonda Heatにリードを許す苦しい展開の末、19-16で辛勝。コカ・コーラウエスト広島スタジアムではトヨタ自動車ヴェルブリッツが7トライを奪う猛攻ぶりでNTTドコモレッドハリケーンズの挑戦を退けた。トップリーグは12日間の小休止を挟み、12月3、4日に再開される予定となっている。

■福岡サニックスブルース 15-32 NECグリーンロケッツ(前半10-13)──11月20日

 
 

中盤から後半戦に向けて期待を抱かせる内容でサニックスを破ったNEC(写真はMOMのCTB田村)
photo by Kenji Demura (RJP)

 前節で昨季4強のトヨタ自動車に地力勝ちして浮上のきっかけを掴んだ感じのあるNECと、毎試合胸のすくようなトライを奪いながらも、セットとDFが安定せずに連敗が続くサニックス。
 次週は1週間のショートブレークとなることもあって、中盤戦に向けてどちらのチームが勢いに乗っていけるかに注目が集まった一戦。
 結論から言うなら、トップリーグ初年度(2003-04年)にベスト8トーナメント(マイクロソフトカップ=当時)を制した経験もあるNECが、久しぶりにそのポテンシャルを生かし切る戦いぶりを披露して、前週のトヨタ自動車戦勝利がフロックではないことを証明してみせた。

 立ち上がりからボールをキープして主導権を握ったのは、地元で今季初白星獲得に燃えるサニックスだった。
 いつものように、どこからでも積極的に攻めるスタイルでNECのDF陣を翻弄しながら攻め続けて、6分にはゴール前に迫ったところでオフサイドを誘い、PGのチャンス。
 比較的簡単なプレースキックだったが、SO小野晃征がこれを失敗。サニックスとしては、先制点を挙げて一気にペースを掴みたかったところだが勢いに乗れずに、逆にNECにビッグプレーが出て、試合の流れは一気に変わることになる。
 キックオフからDFの時間帯ばかり続いていたNECは自陣深くで何とか獲得したボールをFLニリ・ラトゥ主将が強引とも言える突破に打って出る。
 網をかけてくるようなサニックスDFを強烈なハンマーで打ち破るように突き破って独走。抜群のキャプテンシーでチームを引っ張るスキッパー自らが示した前に出る姿勢で勢いを得たNECは、10分、16分と、敵陣でのスクラムでプレッシャーをかけてサニックスのコラプシングを誘い、連続PG。
 22分には、再びラトゥ主将が自陣から大きくゲインした後、ラックからHO臼井陽亮、WTB瀬崎隼人とつないで初トライを奪い、リードを13点にまで広げた(13-0)。
 サニックスも31分に、自陣深くでターンオーバーしたボールを回して、最後はSO小野がパスダミーで内側のスペースを切り裂くように走り抜けて反撃トライ。
 前半終了3分前にも、CTBタファイ・イオアサがトライラインを越えたが、インゴールノックオンでトライには至らなかった。しかしその直後のPGを濱里周作が慎重に決めて、13-10と点差を3点にまで縮めてハーフタイムを迎えた。

コカ・コーラWに快勝のリコーは4位に浮上

 昨季、試合の後半に登場(先発出場は13試合中3試合のみ)して計7トライを挙げたWTBカーン・ヘスケスの存在に象徴されるように、前半僅差で粘って後半に試合を引っくり返すのが、典型的なサニックスの勝ちパターン。
 その意味では、前半終了間際に追い上げて3点差でハーフタイムを迎えたことは、サニックスの思惑どおりに試合が進んでいたとも言えた。
 ところが、NECはハーフタイム前にミスから崩れた点を後半はほぼ完璧に修正。
「前半はボールキープはできていたのにイージなミスでボールを失うケースがあったので、とにかくボールキープをし続けていこうと。後半立て直せた点、特にDFに関しては評価できる内容だった」
 試合後、NECの岡村要ヘッドコーチがそう振り返ったとおり、後半2分から切り札ヘスケスも投入したサニックスのアタックを後半5分のNO8濱里祐介のトライ1本に抑える堅守ぶりを披露。 

 攻めても、後半開始のキックオフのボールを再獲得した後、CTB田村優のブレークから身長195cm、体重129kgの巨大WTBネマニ・ナドロが左サイドを駆け抜けてノーホイッスルトライを奪ったのを皮切りに、21分にLO浅野良太、28分に同・村田毅と3トライを重ねて、最終的には32-15にまで点差を広げて快勝した。
「先週のトヨタ自動車はFWの大きな力強さを持つチームで、今日のサニックスは状況に応じていろんなパターンで攻めてくるチーム。どちらにも自分たちのDFが対応できたことを嬉しく思う」と喜んだのは、苦しい時間帯にチームを鼓舞するような突破を見せたラトゥ主将。

 一方、前述の後半40秒でのノーホイッスルトライの場面以外にも、後半28分の村田のトライの際には相手DFのギャップをついてタテに抜けてアシスト役を果たすなど、決定的な仕事をしたことが評価されてマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた新人CTB田村も、「トヨタ戦で結果を出せたことで、自信を持ってボールキープし続けながらアタックできるようになってきた」と、自らとチーム全体の成長を口にした。
 ヒーローとなった2人だけではなく、フィールド上の15人がそれぞれ正しくアグレッシブに仕事をこなした印象だった、この日のNEC。
 ショートブレーク後の戦い如何では、6年ぶりのベスト4さえ視野に入ってくるような期待感も抱かせる快勝ぶりだった。

 尚、サニックス-NEC戦に先立って行われたコカ・コーラウエスト-リコー戦は、マア・ノヌー-タマティ・エリソンのCTB陣の活躍も目立ったリコーが27-20で快勝。まだまだ序盤戦とはいえ、3勝1敗の好成績で、東芝ブレイブルーパス、サントリーサンゴリアス、パナソニックワイルドナイツに次ぐ4位の好位置につけてショートブレークを迎えることに。
「ここまではまずまず満足している。セットやモールなどの精度をさらに上げていきたい」(山品博嗣監督)
 リコーにとっても、NEC同様、中盤戦以降が楽しみな内容でのアウェー戦勝利となった。

(text by Kenji Demura)

 

後半開始40秒、NECのWTBナドロ(右)が試合の流れを決定づけるノーホイッスルトライを奪う
photo by Kenji Demura (RJP)

後半5分に退いたものの、前半の苦しい時間帯にチームを鼓舞するプレーを見せたNECのFLラトゥ主将
photo by Kenji Demura (RJP)

 

NECのPR田中のタックルに止められるサニックスSO小野。NECのアグレッシブなDFにサニックスのアタックは不発に終わった
photo by Kenji Demura (RJP)

コカ・コーラW-リコー戦は27-20でリコーが勝利。注目のリコーCTBノヌーは自らの突破よりもまわりを生かすプレーに専念
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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サントリー、"美しくないラグビー"でヤマハ発動機の挑戦を退ける

19日、強い雨が降り続いた首都圏でトップリーグ第4節3試合が行われ、東京・秩父宮ラグビー場ではNTTコミュニケーションズシャイニングアークスが神戸製鋼コベルコスティーラーズに19-10、サントリーサンゴリアスがヤマハ発動機ジュビロに26-13でそれぞれ競り勝ち、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で行われた全勝対決は東芝ブレイブルーパスが近鉄ライナーズを26-3で退けた。

■サントリーサンゴリアス 26-13 ヤマハ発動機ジュビロ(前半10-10)──11月19日

 
 

激しい雨の中でのライバル決戦はリアリストに徹したサントリーに軍配が上がった(写真はCTBニコラスライアン)
photo by Kenji Demura (RJP)

11月19日、トップリーグ第4節2試合が行われた秩父宮ラグビー場は、朝から強い雨が降りしきっていた。加えて時おり突風が吹くという難しいコンディションだったが、4チームが死力を尽くし、拮抗した試合が展開された。第1試合では、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスが、神戸製鋼コベルコスティーラーズを相手にスクラムで圧力をかけ、SH鶴田諒、SOクレイグ・ウィング、FB栗原徹を軸にフィールドポジションを支配した。決勝トライは、CTBジェイピー・ネル。神戸製鋼はキックで陣地を取りながらも、目指す「ムービング・ラグビー」を遂行しようと自陣からも攻めてボールを奪われるなど、やや戦い方を絞り切れない印象だった。

第2試合のサントリーサンゴリアス対ヤマハ発動機ジュビロ戦は、昨季の準優勝チームと11位チームの戦いだったのだが、ヤマハ発動機を率いて一年目の清宮克幸監督が「手負いの狼となってチャレンジする」とコメントしたこともあって、一発勝負のトーナメント戦のような雰囲気が漂っていた。

2年前までサントリーを率いていた清宮監督は、サントリーの選手の特徴を知り尽くしている。長谷川慎FWコーチも、昨季までサントリーのスクラムを強化していた。一方、サントリーのエディ・ジョーンズGM兼任監督は、清宮監督時代にGMを務めていた。加えて、両チームには清宮監督が早稲田大学を率いた時代の教え子が多数含まれていた。幾重にも関係性が語れる興味深い試合だったわけだ。早大時代の教え子の一人である佐々木隆道(サントリーFL)は言った。「セットプレーで圧力をかけ、突破力あるNO8モセ・トゥイアリイ、CTBマレ・サウというヤマハ発動機の強味を最大限に生かしてくる。それが清宮さんです」

午後2時、ヤマハ発動機ボールのキックオフで試合は始まった。SO大田尾竜彦は、FWが並んでいるのとは逆方向にボールを蹴りあげ、FB五郎丸歩が走り込んでキャッチ。得点にはつながらなかったが、チャレンジャーとしての姿勢を見せた。4分、サントリーがスクラムでペナルティを犯し、ヤマハ発動機FB五郎丸歩がPGを狙うも失敗。サントリーCTBニコラスライアンにPGを決められた直後には、CTBマレ・サウが個人技でゴールに迫ったが、WTB田中渉太へのラストパスがつながらず、チャンスを逸した。このシーンに象徴されるようにヤマハは何度もディフェンスを崩しながら、その直後のミスが出た。

一方、サントリーのターゲットは、「プレッシャー・ラグビー」。スクラムはヤマハの自由にさせず、ラインアウトは196cmの長身LO篠塚公史を中心に圧力をかけた。前半26分、ブレイクダウン(ボール争奪戦)でファイトしてヤマハ発動機のボール出しを遅らせ、SO大田尾に対して、FLジョージ・スミスが激しく前に出てパスミスを誘い、これをSOトゥシ・ピシがインターセプト。約40mを走り切って10-0とリードを広げた。まさに「プレッシャー・ラグビー」の体現だった。PGを返されたあとの33分には、ヤマハ発動機WTB徐吉嶺にタッチライン際を走られて同点にされるのだが、サントリーの選手たちは万事落ち着いていた。

「第5節以降は違うストーリー」(清宮監督)

ハーフタイム。エディ・ジョーンズ監督はこう指示を出した。「アタックは3フェイズでキック。ディフェンスは規律を守れ」。その指示通り、サントリーは、徹底して相手陣で戦うことを意識し、長い連続攻撃は避け、早い段階でSOピシ、FBピーター・ヒューワットらが正確なキックを繰り出し、常にヤマハ発動機陣で戦うことに成功した。トゥイアリイがプロフェッショナルファールでシンビン(10分間の一時退場)になっていた後半27分には、ニコラスがヤマハ発動機の防御ラインの乱れをついてゴールラインに滑り込み、26-13として勝負を決めた。

エディ・ジョーンズ監督は笑顔で試合を振り返った。「FWのコンテストにも勝ったし、後半はフィールドポジションで圧倒できました。今季一番のパフォーマンスです。美しいラグビーはしたいのですが、きょうのコンディションではできません」。2節、3節は雨の中でアタッキング・ラグビーを意識しすぎてミスが多発した。その反省もあり、この一週間はボールを濡らして練習するなど雨中戦を想定して万全の準備を重ねた。10-10の同点時もチーム全員が冷静に対処できた。「点差以上の価値ある勝利です」。攻守に体を張った竹本隼太郎キャプテンの表情も明るかった。

敗れたヤマハ発動機の清宮克幸監督は「まだ勝てるところまで行っていない」と、力不足を認めた。「チャンスをものにできないところが、今のチームの力なのでしょう。とにかく、4節までしか考えずにここまできましたから、この先は違うストーリーを考えないといけないですね。ただ、大きな顔はできないけど、小さくなる必要もない。潜在能力の高さは見せられていると思います」。後半は、反則とミスで次第に勢いが衰えたが、前半は互角の勝負。5節以降も、このチームからは目が離せない。

(text by Koichi Murakami)

 

前半26分、サントリーSOトゥシ・ピシがインターセプトから独走トライを決める
photo by Kenji Demura (RJP)

ヤマハ発動機WTB徐にタックルにいくサントリーFLスミス(右から2人目)、CTBニコラス(中央下)、WTB長友(中央上)。厳しい条件の中、プレッシャーをかけ続けた
photo by Kenji Demura (RJP)

 

サントリーFBヒューワットのタックルを振り切るヤマハ発動機WTB田中。サントリーのプレッシャーにヤマハ発動機は1トライのみに抑えられた
photo by Kenji Demura (RJP)

NTTコミュニケーションズ-神戸製鋼戦は前に出るディフェンスが機能したNTTコミュニケーションズが19-10で勝利(写真は神戸製鋼CTBアンダーソンネーサンにタックルにいくFL小林訓也とSOクレイグ・ウィング)
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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