トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第12節(1/28-29)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
1/28(土) 12:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 35-45 Honda HEAT 秩父宮
1/28(土) 12:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 28-33 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 近鉄花園
1/28(土) 14:00 NECグリーンロケッツ 19-28 NTTドコモレッドハリケーンズ 秩父宮
1/28(土) 14:00 近鉄ライナーズ 22-25 パナソニック ワイルドナイツ 近鉄花園
1/29(日) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 16-16 ヤマハ発動機ジュビロ ホームズ
1/29(日) 14:00 福岡サニックスブルース 22-61 サントリーサンゴリアス グローバル
1/29(日) 14:00 リコーブラックラムズ 14-39 東芝ブレイブルーパス 秩父宮

マッチレポート

悔しい敗戦を糧に「原点に立ち戻った」東芝、4位以内決める

トップリーグ第12節は、29日、残り3試合が行われ、東芝ブレイブルーパスがリコーブラックラムズを39-14と下して勝ち点を50と伸ばし、3位以上を確定させて6年連続6回目のプレーオフ出場が確定。一方、リコーのプレーオフ進出の可能性はなくなった。4位のNECグリーンロケッツ(勝ち点41)を猛追する神戸製鋼コベルコスティーラーズは、ヤマハ発動機ジュビロに16-16と引き分けて勝ち点37とし、わずかながら最終節での4位滑り込みに望みを残した。

■リコーブラックラムズ 14-39 東芝ブレイブルーパス(前半0-19)──1月29日

 
 

一人ひとりの前に出る意識で圧倒した東芝がプレーオフ進出を決めた(写真中央はMOMに選ばれたHO湯原)
photo by Kenji Demura (RJP)

 勢い、意気込み、気合い。
 そんな抽象的な言葉で語られがちなラグビーにおける精神的な部分を、東芝ブレイブルーパスは立ち上がりから具体的なプレーに還元して、秩父宮で披露した。

 前半1分。リコーブラックラムズが連続攻撃のなかでパスの呼吸が合わずにボールをこぼした場面で、東芝は、CTB仙波智弘が頭からボールに飛び込んでセービング。まったく躊躇のないプレーでボールを奪い返す。
 あるいは5分のマイボールスクラム。東芝は、迷わず押し込むことに徹して10メートル以上リコーFWを後退させた。
 このときボールがこぼれてリコーFL覚来弦に拾われ、大きくゲインされてピンチを招いたが、ラストパスを託されたリコーWTBマーク・リーを東芝FB松田努が落ち着いてタッチに押し出してトライを防ぐ。
 そして12分、その松田が、SOデイビッド・ヒルから短いパスを受けて抜け出した仙波を好サポート。41歳8ヶ月29日目に今季初トライを挙げて、自身が持つトップリーグ最年長トライ記録(=40歳7ヶ月25日=10-11年度第12節)を更新した。

「毎試合ジョン(松田の愛称)さんにトライしてもらいたいと思っていたから、あのトライでチームが勢いづいた」と振り返るのは、この試合のマンオブザマッチとなったHO湯原祐希。
 東芝は、その言葉通りに20分WTB伊藤真、27分湯原と連続トライをたたみかけて19-0とリード。勝利を不動のものにした。

「東芝は前に出る意識が高かった」(リコー・滝澤主将)

 実は、そのとき東芝フィフティーンが発した言葉は、「NEC戦を思い出せ!」。
 勝利への確信を語り合うのではなく、同じように前半22分に19-0としながら19-24と逆転されて悔しさに暮れた第6節の教訓を、全員で確認し合ったのだ。
「誰も負けたくはないけど、NECと神戸製鋼に負けた(第8節 19-22)ことで、チームがさらにレベルアップした」(WTB廣瀬俊朗)。それが、終盤の快進撃を支えているのだ。

 敗れたリコーのキャプテン、HO滝澤佳之は記者会見で、しみじみと「東芝は、一人ひとりの前に出る意識が高かった。強かったです」と潔く負けを認めて、こう付け加えた。
「スクラムで滑ったり押されたりしたときに、東芝はみんなが細かく話し合っていた。それに対してリコーは、自分たちのミスを気にするあまり、内向きになってコミュニケーションを取れなかった。自分自身も、ミスを気にして言葉をかけられなかったことを反省しています」

 シーズン途中で喫した敗戦を見つめ直した結果、東芝は、複雑なことをするのではなく、常に「自分から一歩前に動く。シンプルに前に出続ける」(NO8豊田真人キャプテン)という原点に立ち返った。それが、和田賢一監督が言う「原点に戻れる強さ」なのである。
 次節は宿敵・パナソニック ワイルドナイツとの"最終決戦"(2月5日 秩父宮ラグビー場14時キックオフ)。12試合で総失点148という堅守を誇る東芝が、昨季の日本選手権準決勝で21-33と敗れた借りを返せるか。レギュラーシーズン最後の大一番は、プレーオフの行方を占う上でも重要な意味を持っている。

(text by Hiromitsu Nagata)

 

試合開始早々、東芝ゴールに迫ったリコーFL覚来に41歳のFB松田が渾身のタックルを決めてピンチを救う
photo by Kenji Demura (RJP)

東芝FWの圧力の前に突進を止められるリコーPR長江。切り札CTBノヌーもこの日はプレッシャーを受けてのミスが目立った
photo by Kenji Demura (RJP)

後半21分、東芝WTB廣瀬を振り切ってトライを奪う、途中出場のリコーWTBキニキニラウ。リコーファンが沸くシーンは少なかった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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Honda、NTTドコモの連続アップセットで残留争いは熾烈の極みへ

実力伯仲、戦国リーグを象徴するような番狂わせが立て続けに秩父宮を襲った。28日、共に昇格組で激しい残留争いを続けるHonda HEATとNTTドコモレッドハリケーンズがNTTコミュニケーションズシャイニングアークスとNECグリーンロケッツに快勝して、それぞれ2勝目を挙げた。この結果、NTTドコモが勝ち点14で12位、Hondaが勝ち点13で13位、そして同日、トヨタ自動車ヴェルブリッツに敗れたコカ・コーラウエストレッドスパークスが勝ち点10で14位となり、どのチームが自動降格を免れる12位に滑り込むのかは最終節の各チーム結果如何という全く予断を許さない状況が続くことになった。

■NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 35-45 Honada HEAT(前半7-24)──1月28日

■NECグリーンロケッツ 19-28 NTTドコモレッドハリケーンズ(前半12-7)──1月28日

 
 

古巣との対戦に燃えたベテラン勢の活躍もあってNECに快勝したNTTドコモ(写真はPR久冨)。最終節での残留争いの行方は?
photo by Kenji Demura (RJP)

 ド

そのパフォーマンスは、とてもとても共に昇格組で、自動降格を免れるための争いを続けるチームのそれではなかった。
 Honda HEATがNTTコミュニケーションズに43-35。NTTドコモレッドハリケーンズがNECグリーンロケッツに28-19。
 それぞれ、今季上げ潮にある強豪チームに対して勝ち点5を取り切る快勝ぶり。
 今季のトップリーグの戦いがいかにレべルが高く、苛酷なものであるかの象徴とも言えた、HondaとNTTドコモの会心のゲーム内容に関して、順を追って見ていこう。

 2チームのうち、前夜までの雪がグラウンド周辺に残っていた秩父宮ラグビー場に先に姿を現したのはHonda。
「凍ってますよね」(WTB上田泰平)
 試合前には、そんなふうにピッチの状態を心配する声さえあったが、いざキックオフの笛が鳴ってからは、そんなコンディション不良などお構いなしと言っていいような、実に野心的なアタッキングラグビーを披露し続けた。
「グラウンドのことを考えるならリスクもあったが、どのチームも近場のディフェンスは強いので、思い切って外を攻めていかないと活路を見出せない」
 そんなふうに上野三四郎監督が思い描いていたとおりに、自陣からでもボールをどんどん動かしていく攻撃スタイルで、NTTコミュニケーションズディフェンスを翻弄。
 6分に外側のスペースをFL中田晃司が突破した後、こぼれ球を手にしたNO8川添学が相手DFを3人振り切って先制。
 10分にNTTコミュニケーションズにトライを返されたものの、13分にはSO小西大輔の絶妙のショートパントをうまく拾ったWTB鎌田哲郎からCTBブライス・ロビンスへとつないで2トライ目。
 23分には敵陣ゴール前のラインアウトからFWでえぐった後、SO小西、CTBポンギ タプオシ虎渡とタテにNTTコミュニケーションズディフェンスを切り裂き、35分にはLO塚本篤志のインターセプトから最後はWTB上田からの3人飛ばしパスでFL中田が左隅へ。
 早くも前半だけで4トライによるボーナス勝ち点を獲得する電光石火ぶり。

 サイドが変わった後半も、積極性は衰えず、NTTコミュニケーションズに4トライを奪われながらも、しっかり3トライを重ねて、意義ある勝ち点5を獲得した。
「どれだけボールキープできるか、意識を高めた結果の勝利」
 PR田中貴士主将が試合後の記者会見で胸を張った時点では、いったんはNTTドコモとの勝ち点差を4とし、Hondaのトップリーグ残留の可能性が大いに高まったかに思われたのだが、第2試合でさらなるドラマが待ち受けていた。

元NEC組を中心にFW戦で圧倒したNTTドコモ

 対戦相手の前節までの順位で比較するなら、第1試合でHondaが破ったNTTコムが9位だったのに対して、第2試合でNTTドコモが対戦したNECグリーンロケッツは4位。
 第2試合のアップセットを予想していた人の数は、第1試合よりもさらに少なかったかもしれない。
 実際、試合展開も前半で4トライを奪っていたHondaに比べて、NTTドコモはハーフタイムでは5-12と7点のビハインドを追っての折り返しとなった。
 ただし、40分間を戦い終えたNTTドコモの選手たちが確かな手応えを感じていたのも事実だった。

「FWが自信を持っていた」
 そう代弁してくれたWTB平瀬岳大主将の言葉どおり、後半2分に敵陣深くのラインアウトからのモールで逆転(SOハミッシュ・ガードのゴール成功で14-12)。
 さらに8分にも、NECゴール正面でPKのチャンスを得たNTTドコモはPGを狙わずタッチへ。モールは崩れたものの、前半7分にも同じようなかたちで先制トライを奪っていたFLスティーブン・セテファノがNECのLT村田毅を吹き飛ばしてリードを広げた(SOハミッシュ・ガードのゴール成功で21-12)。

「ゲームプランどおり、セットとブレイクダウンでプレッシャーをかけていくことができた」
 とは、このところ5試合ゲームキャプテンを務めながら、チームを勝利に導けていなかったNO8箕内拓郎。試合後、「"持っていない"んですよ」と嘆く素振りも見せていたが、この箕内をはじめPR久富雄一、HO水山尚範という、いずれも日本代表キャッパーでもある元NEC組の選手たちが最前線でプレッシャーを与え続けたことが、古巣を追い込んでいったことは間違いないだろう。
「もちろん気持ちが入っていたし、スクラムでもモールでも勝てた。仕事をした実感がある」と久富が語ったとおり、勝負どころでセットを安定させられなかったNECのフロントローとの対比が浮き彫りにもなった。最終的に、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのが、トライを記録していない水山だったことが、この試合の内容を象徴してもいるだろう。

 試合終了6分前には、シンビンで数的に不利な状況の中、前述の箕内から「持っている」と称されたWTB平瀬主将がNECのBK陣のパスを読み切って自陣深くでインターセプト。100m近くを独走してボーナスポイントを手にする4トライ目を決めて金星を確かなものにした。

この連続アップセットの結果、残り1節を前に勝ち点14のNTTドコモが12位、同13のHondaが13位、同じ日にトヨタ自動車ヴェルブリッツに敗れたもののボーナスポイント2点を獲得したコカ・コーラウエストレッドスパークスが勝ち点10の14位で最終節を迎えることに。
このうち、自動降格を免れられるのは1チームのみ。
最終節の3チームの対戦カードはNTTドコモ-福岡サニックスブルース(2月4日12時 大阪・近鉄花園)、ヤマハ発動機ジュビロ-Honda(2月5日13時 静岡・ヤマハスタジアム磐田)、コカ・コーラウエスト-NTTコミュニケーションズ(2月5日13時 福岡・レベルファイブスタジアム)。
3チームの関係者、ファンにとっては胃がキリキリ痛むような80分間の戦いがそれぞれ繰り広げられることになる。

(text by Kenji Demura)

 

コンディションの悪さをものともせず、積極的な攻撃ラグビーを披露したHondaは7トライを奪う快勝ぶり(写真は回りを生かすプレーも光ったWTB上田)
photo by Kenji Demura (RJP)

NTTドコモはセットプレー、モールを起点としたアタックでNECの守りを打ち破った(写真は2トライを奪う活躍を見せたFLセテファノ)
photo by Kenji Demura (RJP)

 

NECのLO浅野にタックルにいくNTTドコモNO8箕内。かつて同じチームで戦った仲間同士が火花を散らした
photo by Kenji Demura (RJP)

密集回りのDFが強いNTTコムに対して、HondaはFL中田(写真)など外側にパワフルなランナーを置いて突破口を切り開いた
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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