[part 3 <サントリー - 神戸製鋼>直前プレビュー 1月31日更新]
王者サントリーに絶好調の神戸製鋼がチャレンジ
どちらがボールキープするか、FW戦が試合を左右
今季も2戦2勝と神戸製鋼を圧倒したきたサントリー。WTB塚本は小野澤の穴を埋める活躍を見せることができるか |
勝ち方を知るメンバーが揃うサントリー。SHデュプレア、FLスミス(右)も健在だ |
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神戸製鋼がサントリーを追い詰めるためにはCTBフーリーの大車輪の活躍が絶対条件か |
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サントリー大久保監督も警戒する神戸製鋼の巨漢LOベッカー。セットプレーも勝敗を分けるポイントになる |
2月2日、東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフトーナメントセミファイナル第2戦、サントリーサンゴリアス - 神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦が行われる。
今季のレギュラーシーズンですでに2回戦って、サントリーの2勝。
歴史をひも解いても、トップリーグでの神戸製鋼のサントリーに対する勝利は05〜06年シーズンまで遡らなければならず(09〜10シーズンは24-24で引き分け)、ホームと言っていい東京・秩父宮で戦える点も含めて、データ的にはサントリー優位は揺るがない。
そのサントリーは、NO8にトップリーグ初先発の小澤直輝を抜擢し、WTBが村田大志から長友泰憲に入れ替わるなどの微調整はあるものの、基本的には大久保直弥監督が「平(浩二=CTB)、篠塚(公史=LO)、青木(佑輔=HO)、佐々木(隆道=FL)……。どこで仕事しなきゃいけないかわかっている、勝ってきた経験を持つ選手」と呼ぶ王者ならではの顔ぶれが並ぶ。
もちろん、サントリーでだけではなく、世界でも勝ってきた経験を誇るFLジョージ・スミス、SHフーリー・デュプレアの存在は格別なものは言うまでもなく、リーグ戦得点王に輝いたCTBニコラス ライアンも絶好調とくる。
ちなみに、1月25日に行われたNECグリーンロケッツとの練習試合ではFBとしてベテラン小野澤宏時もプレーしたが今回に関しては間に合わないと判断されたようでメンバー入りはならなかった。代わりにサントリーの11番を着ける塚本健太もリーグ戦で計11トライを奪うなど、小野澤不在を感じさせない活躍ぶり。
そんな隙を感じさせない王者サントリーだが、その一方で大久保監督が「今シーズン過去2度の対戦は、ベッカー(アンドリース=神戸製鋼LO)が出ていなかったし、参考にならない」と語るとおり、神戸製鋼がセカンドステージ第1節で対戦した時点とはかなり様相が異なるチームへと進化していることも間違いないところ。
神戸製鋼のメンバーに関しては、サントリー大久保監督が警戒する身長2m8cmの巨漢LOベッカーが先発出場すること、そしてFBだった正面健司がSOとしてプレーすることが過去2試合の対戦時と大きく異なる点だ。
セカンドステージ第1節でのサントリー戦敗戦の後、同第2節でもヤマハ発動機に完敗。一時は4強入りが厳しくなりかけたこともあって、「リスクをおかしてでもアグレッシブにアタックする」(苑田右二ヘッドコーチ)チーム戦術を徹底する必要が出てきたこともあり、攻撃センス溢れる正面を指令塔に据える決断がなされた。
正面がSOに定着してからの神戸製鋼は、パナソニックに32-31で敗れた試合も含めて、4トライ以上を取り続ける快進撃を続けて2年連続でのプレーオフ進出を決めた。
正面、攻守にソリッドなプレーができるインサイドCTBのクレイグ・ウィング、そしていまだに世界最高のアウトサイドCTBと言ってもいいジャック・フーリーというフロントスリーのマッチングも絶妙だ。
神戸製鋼の破壊力に関しては、「絶好調。ボールを与えると脅威」と、サントリーの大久保監督も警戒感を隠さないが、リーグ戦のトライ王に輝いたCTBフーリー対策も含めて、「相手を止めるというよりは、自分たちがいかにボールキープしていくか。FWがラインアウト、スクラムでプレッシャーをかけていくことが重要になる」との認識でいる。
一方の神戸製鋼の苑田ヘッドコーチも「アンストラクチャーな状況からトライも取れているが、よりアグレッシブにアタックするためには、セットプレーを修正していく必要がある」と、キープレーヤーとして「FW前5人」を挙げる。
共にアタックに重きを置くチームだけに、どちらがより多くの時間を自分たちのペースで攻撃することができるか、まずはFW戦の優劣が試合の流れを左右することになりそうだ。
(text by Kenji Demura)
[part 2 <パナソニック-東芝>直前プレビュー 1月31日更新]
SH田中もNZから戻りベスト布陣のパナソニック
2ヵ月ぶり復帰の廣瀬に指令塔タクトを託す東芝
2ヵ月ぶりに復帰の東芝・廣瀬は指令塔としてパナソニックSOバーンズ(左)と対峙することに |
東芝BKに欠かせない存在のCTBカフイ。三上(右端)と浅原(左端)のPRとは思えない運動量にも注目だ |
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NZから戻ったばかりのSH田中もパナソニックの先発メンバーに名を連ねた |
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ベテラン相馬(右)、新人・稲垣(左)のパナソニックPR陣がどんな仕事を見せるかも鍵になる |
2月1日、東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフトーナメントセミファイナル第1戦、パナソニック ワイルドナイツ-東芝ブレイブルーパス戦が行われる。
試合前々日にあたる1月30日には、両チームのメンバーも発表され、ボルテージは高まるばかりだ。
2週間前のレギュラーシーズン最終節とプレーオフの先発メンバー15人を比較した場合、パナソニックが一気に7人が入れ替わったのに対して、東芝はわずか2人の変更のみ(ポジション変更を除く)。
ただし、最大のサプライズは、わずか2人だけが入れ替わる東芝サイドからもたらされた。
セカンドステージ第2節以降6試合連続して欠場していた廣瀬俊明が2ヵ月ぶりに復帰。しかも、“古巣”のSOのポジションを任されることになったのだ。
ブレイブルーパスでも、主将を務める日本代表でも14番が定位置になっていた廣瀬がトップリーグで10番を背負ってプレーするのは07〜08年シーズンのプレーオフ以来となる。
「プレーオフには間に合わせます」と和田賢一監督が断言していたFLリーチ マイケル主将が結局、欠場となる現状からすると、FLスティーブン・ベイツ、CTBリチャード・カフイの2人の外国人選手が外せないのは当然と言っていい。
SOデイビッド・ヒルをリザーブに回した場合、指令塔を任せるに最も適任なのが廣瀬との判断ということになる。
ちなみに、東芝側のもうひとりの復帰はCTB増田慶介(仙波智裕がCTB→WTB、宇薄岳央がWTB→FBにポジションが変わる)。
廣瀬-増田-カフイと並ぶソリッドなフロントスリー(SO-CTB陣)がどんなハードタックルを見せて、どんなゲームメイクを見せるのか。
2ヵ月ぶりの復帰で大役を任されることになった指令塔に余裕を与えるためにも、リーチがベイツに入れ替わった以外はセカンドステージ第4節以降不動のFW8人が、セットプレー、ブレイクダウンで優位に立つことが重要なのは言うまでもないだろう。
一方、すでに2位以上を確定させていたパナソニックにとっての最終節はプレーオフに向けての調整を重視する面があったことは否めず、7人が入れ替わった今回こそがベストメンバーと言える構成。
セカンドステージ第4節に東芝に競り勝った試合(12月22日、14-12)のメンバーからはPRホラニ龍シオアペラトゥーが相馬朋和に入れ替わっただけ。
スーパーラグビーのハイランダーズでも活躍するSH田中史朗も「プレーオフまでには戻ってくる」という中嶋則文監督の言葉どおりにセミファイナルの先発メンバーに名を連ねた。
ハーフ団を形成するSOベリック・バーンズと共にゲームを読む力は抜群。
中嶋監督が「プレーオフのキーマン」に挙げるNO8ホラニ龍コリニアシの前に出る力を最大限生かせるのが田中であることも確かなだけに、東芝にとっては最も嫌なプレーヤーが戻ってきたことは間違いないだろう。
東芝の売り出し中の新人SH小川高廣との再度のマッチアップも楽しみだ。
一方、東芝の和田監督がセミファイナルの鍵を握るポジションに挙げるのはフロントロー(FW最前列の3人)。
三上正貴、浅原拓真のPR陣にHO湯原祐希というジャパン組が並ぶ東芝のフロントローに対して、稲垣啓太、相馬朋和の新旧のPR陣、そして「ジャパンのスクラムの進化は僕がレベルズ(スーパーラグビー)で進歩したから」との実感を持つHO堀江翔太主将と、こちらも強者ばかりが並ぶパナソニックの前3人がどう対処するのか。
さらに、山田章仁、北川智規という日本を代表するスピードスターが並ぶパナソニックの両翼に対して、仙波智裕、大島脩平という本職ではないWTBがどう対処するかなど、見どころに事欠かない、今季3度目となるパナソニック対東芝戦。
前述のセカンドステージでの対戦も含め、レギュラーシーズンではパナソニックの2戦2勝。それでも、「プレーオフに勝ち上がったチームはどこも対戦したくない相手ばかりだが、特に対戦したくないのが東芝」と、中嶋監督が吐露するように、パナソニック側にも1年前のセミファイナルで東芝に敗れた苦い記憶も残っているのも確か。
共に、プレーオフの場でこの相手にだけは絶対に負けたくない熱い気持ちがほとばしる、リベンジ戦となる。
(text by Kenji Demura)
[part 1 1月24日更新]
後期無敗のパナソニックは底力のある東芝と再戦
絶好調の神戸製鋼は王者サントリーにチャレンジ
一堂に会した4チームの指揮官。プレーオフで頂点を極めるのは…… |
リーグ戦首位通過のパナソニック。プレーオフではSH田中も再びチームに加わる予定だ |
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リーグ戦4位からの下克上を狙う東芝のキーマンになりそうな新人SH小川 |
1月18、19日に行われたセカンドステージ第7節をもって、今季のトップリーグのレギュラーシーズンは終了。
戦いの舞台は4強チームが頂点を目指して激突するプレーオフトーナメント、日本選手権出場を賭けた“もうひとつの日本一を目指す戦い”であるワイルドカードトーナメント、そして来季のトップリーグ残留を勝ち取るための入替戦へと移されることになる。
22日には、プレーオフトーナメントへの出場を決めた4チームの指揮官が一堂に会しての記者会見が行われ、13〜14年シーズンの日本ラグビー王者を争うラストバトルへの決意が熱く語られた。
今シーズン、初めてファーストステージ、セカンドステージという2シーズン制を取ったトップリーグ。計14節の長丁場に渡ったリーグ戦を経て、以下の4チームがプレーオフトーナメントに勝ち残った。
パナソニック ワイルドナイツ(リーグ戦1位通過)
サントリーサンゴリアス(同2位通過)
神戸製鋼コベルコスティーラーズ(同3位通過)
東芝ブレイブルーパス(同4位通過)
セミファイナルは、奇しくも昨年と全く同じ顔合わせのパナソニック対東芝(2月1日14時)、神戸製鋼対サントリー(同2日14時)という対戦カードで、東京・秩父宮ラグビー場で行われる。
「プレーオフに勝ち上がったチームはどこも対戦したくない相手ばかりだが、特に対戦したくないのが東芝。一発勝負をものにできる底力を持っている」
セカンドステージ全勝。東芝に対しても今季のリーグ戦で2戦2勝(40-22=10月19日、14-12=12月22日)。データ上は圧倒的に優位に立っていると言っていいパナソニックだが、中嶋則文監督はそんなふうに東芝に対する“苦手意識”を公言した。
あるいは中嶋監督の頭の中にあるのは、昨季のセミファイナルでの敗戦かもしれない。
立ち上がりから圧倒的に攻めながら、フィジカルな東芝DFを崩し切れずに、終盤の勝負どころで決定的なトライを奪われて力尽きた(8-20)。
そんな苦手意識を持つ東芝から今季3度目となる勝利をものにするための鍵として中嶋監督が挙げたのは「FWの頑張り」。
「FWが前に出ることでBKラインが生きてくる」
セカンドステージの対戦で2点差勝利をものにした際も、フロントローにジャパン組が並ぶ東芝に対してスクラムで崩されなかった点が勝因のひとつだったように、セットプレーの安定もポイントになる。
「セカンドステージに入ってキープレーヤーになっている」と中嶋監督が警戒する、東芝の新人SH小川高廣を自由に動かせないためにも、FWでプレッシャーをかけていきたいところだろう。
一方の東芝・和田賢一監督は今季の自分たちの戦いぶりを「東芝らしいラグビーができていない」と自己分析する。
ファーストステージでパナソニック、ヤマハ発動機ジュビロに完敗。セカンドステージでもパナソニック、サントリー、神戸製鋼という他のプレーオフ組との対戦でいずれも敗れた。
「今季の私たちのスローガンである『HIT Back』を成し遂げるために、どこで勝負するかと言ったら、やはりフィジカルということになる」と、和田監督は断言する。
鍵を握るポジションは「フロントロー」。前述のとおりリーグ戦時の対戦では優位に立てなかったスクラムを制することが、今季2敗しているパナソニックを大一番で倒す近道であることは間違いない。
ターンオーバーからのカウンターアタックで一気にトライを取り切る能力の高いパナソニックに対して、フィジカルで圧倒しながらボールキープを続けたいところだ。
パナソニック中嶋監督同様、和田監督が警戒する選手に挙げたのもSHのポジションで圧倒的な存在感を見せる田中史朗。
新旧どちらのSHが持ち味を出せるのかも、FW戦でどちらが優勢かに影響される面も大きいだけに、まずはセットプレーやコンタクトエリアでの攻防が注目される。
全チーム、ベストコンディションでの戦いへ
圧倒的な高さを誇る神戸製鋼LOベッカーの存在はサントリーにとって脅威となる |
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ジャパンの指令塔でもあるSO小野はサントリーを3年連続となる頂点に導けるか |
4チームの中で、リーグ戦終盤戦で最も調子を上げたチームは神戸製鋼だろう。
セカンドステージ1、2節で連敗し、一時はプレーオフ進出に黄色信号が灯ったが、同3節以降、いずれも4トライ以上のボーナスポイントも加えながら、同6節でパナソニックに1点差で敗れた以外は白星を重ねた。
最終節でも立ち上がりから東芝を圧倒して4強最後の一枠へのサバイバルに成功(リーグ戦通過順位は東芝を上回り3位に)。
終盤に調子を上げたこともあって、苑田右二ヘッドコーチは自信満々の表情で「目標は日本一」と宣言する。
「(リーグ戦終了時からセミファイナルまでの)2週間で選手、スタッフ全員で同じ方向を向いて最高の準備をしてダイナミックな面白い試合を見せたい」
4強入りのためには毎試合勝ち点5を獲得していく必要があったことも影響して、「リスクをおかしてでもアグレッシブに攻める」スタイルで勝ち続けた神戸製鋼。苑田HCはプレーオフでも、「アグレッシブに攻めて行くスタイルを貫く」と明言した。
12月22日のキヤノン戦からはそれまではFBで起用していた正面健司をSOに上げ、CTBにクレイグ・ウィングとジャック・フーリーを並べる攻撃的布陣が完全に機能している神戸製鋼だが、苑田HCはプレーオフを勝ち抜くためのキーマンとしては「FWの前5人」を挙げる。
セカンドステージ最終戦でも、スクラムが安定していれば、東芝に対してもっと楽に勝てていた(38-36)という認識もあり、サントリーに対してプレッシャーをかけていくためにも、フロントファイブのセットプレーと仕事量が大事になるという認識でいるようだ。
「(東芝戦などでは)アンストラクチャーからトライを取ることができたが、よりアグレッシブにアタックするためにもセットプレーを修正する必要がある」(同HC)
対するサントリーの大久保直弥監督も要注意選手にLOアンドリース・ベッカーを挙げるなど、当然ながら神戸製鋼のセットプレーを警戒している。
今季のリーグ戦では2戦してサントリーが2勝しているが、「ベッカーが出ていなかったし、参考にはならない」と同監督。
昨季は全勝でシーズンを終え、完全制覇を果たしたサントリーだが、今季はファーストステージでNECグリーンロケッツに、セカンドステージでもパナソニックに敗れるなど、絶対的王者という位置づけとはやや異なる状況でのプレーオフ入りとなる。
パナソニックのWTB山田章仁の11トライに次いで、日本人としては2番目の10トライをリーグ戦で記録したWTB塚本健太に代表されるような新戦力の台頭もあるが、その一方で大久保監督はプレーオフでは「どこで仕事をしなきゃいけないかわかっている、勝ってきた経験を持つ選手が働く」との認識も持っている。
神戸製鋼の苑田HCが警戒するFLジョージ・スミス、SHフーリー・デュプレア以外にも、ここ一番の大勝負をものにしてきた選手が揃うだけに、「(プレーオフを迎えるまでに)今週、来週といい経験を積んだ上で、チームのバランスを考えて選手起用を判断する」というあたりは、V3を目指す王者の余裕か。
その大久保監督自身が挙げるプレーオフにおけるサントリーのキープレーヤーはSO小野晃征。
「ジャパンの欧州遠征で厳しいプレッシャーの中でプレーする、いい経験を積んできた」という指令塔がどれだけいいプレー選択をしてくれるかがポイントだと大久保監督は期待するが、そのためには「FWがどれだけ小野にいい選択肢を与えられるか」というのが前提になるのも確か。
「ボールを与えると危ないチーム」という神戸製鋼に対して、ボールキープしながらアタックし続ける王者らしさを取り戻した時、3年連続となる頂点が見え始めることになる。
22日の時点では、4チームの指揮官はコンディション等でプレーオフに出場できない登録選手はいないと断言。
頂点を目指す場に相応しいベストコンディションでの戦いとなりそうだ。
(text by Kenji Demura)