トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第5節(12/3 - 12/4)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/3(土) 12:00 リコーブラックラムズ 8-23 NECグリーンロケッツ 秩父宮
12/3(土) 13:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 29-26 近鉄ライナーズ 瑞穂
12/3(土) 14:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 6-45 東芝ブレイブルーパス 秩父宮
12/4(日) 13:00 NTTドコモレッドハリケーンズ 32-57 パナソニックワイルドナイツ 近鉄花園
12/4(日) 13:00 コカ・コーラウエストレッドスパークス 12-31 神戸製鋼コベルコスティーラーズ ニンスタ
12/4(日) 13:00 福岡サニックスブルース 0-59 ヤマハ発動機ジュビロ グローバル
12/4(日) 13:00 Honda HEAT 14-45 サントリーサンゴリアス KKウイング

マッチレポート

パナソニック、ディフェンスに課題残すも、ドコモに8トライを浴びせて快勝!

トップリーグは4日、4試合が行われ、2位のサントリーサンゴリアスはホンダヒートを45-14と破って勝ち点5を獲得し、総勝ち点を22に伸ばして2位をキープ。
前節でホンダに19-16と苦戦したパナソニック ワイルドナイツは、NTTドコモレッドハリケーンズに57-32で順当勝ちして、3位をキープ。注目のCTBジャック・フーリーも後半途中出場し、ハードタックルでトライピンチを救うなど攻守両面で勝利に貢献した。
また、九州勢は福岡サニックスブルースとコカ・コーラウエストレッドスパークスがそれぞれヤマハ発動機ジュビロ、神戸製鋼コベルコスティーラーズに大敗。共に今季初白星は次節以降に持ち越しとなった。
なお、この日、サントリーの小野澤宏時選手が、3日の東芝ブレイブルーパスの中居智昭選手に続いて2人目のトップリーグ100試合出場を達成した。

■NTTドコモレッドハリケーンズ 32-57 パナソニック ワイルドナイツ(前半13-21)──12月4日

 
 

前半8分、21分のFLツイ(写真右)の連続トライを皮切りに計8トライを奪ったパナソニックが57-32で勝利
photo by Kenji Demura (RJP)

 12月の近鉄花園ラグビー場には珍しい穏やかな晴天。ボールを動かしやすいコンディションのもとで、パナソニック ワイルドナイツが圧倒的な攻撃力を見せつけた。

 0-3とリードされた前半8分には、LOダニエル・ヒーナンが巧みなコース取りでSH田中史朗からボールをもらって防御ラインをブレイク。最後はWTB山田章仁がタッチに押し出されたが、連続攻撃でNTTドコモレッドハリケーンズのゴール前に迫った。
 このラインアウトでNTTドコモがノックオン。パナソニックは、スクラムからNO8ヘンドリック・ツイが単独でサイド攻撃を敢行。強さにものを言わせて、そのままインゴールに飛び込んだ。
 21分には、SHの位置からSOマイク・デラーニがハイパント。変則的なバウンドを拾ったパナソニックは、山田-HO堀江翔太とつないで大きくゲインして最後はふたたびツイがゴールラインを陥れ、14-3とリードを広げた。
 31分にもCTB霜村誠一がトライ(ゴール)を追加したパナソニックに対し、NTTドコモは自陣から積極的にボールを展開。チームスローガンの「スピードラグビー」でパナソニックに対抗する。
 37分には、左タッチライン際の狭いスペースにCTB中矢健がトップスピードで走り込み、最高のタイミングでパスを受けると、そのまま防御を置き去りにしてトライを返す。SOハミッシュ・ガードがゴールも決め、13-21で前半を折り返した。

NTTドコモも4トライで勝ち点1を獲得

 そして、後半のキックオフ。
 ここでNTTドコモに手痛いミスが出る。自陣22メートルラインの外でできたラックから供給されたボールを、直接タッチに蹴り出してしまったのだ。
 パナソニックはミスにつけ込んで、このラインアウトから連続攻撃。最後はPR木川隼吾が嬉しいトップリーグ初トライを挙げる。この間、わずかに67秒。
 さらに3分にもLO飯島陽一がトライを追加して、完全に勝負を決めた。

「後半の立ち上がりは、しっかりエリア(地域)を取って反撃しようと考えていたのに、ミスキックで逆に相手にエリアを与えてしまった。あの立ち上がりの2トライが痛かった」とドコモの平瀬健志キャプテンは悔やんだが、それでも11分にはFWが積極的に前に出て、FLスティーブン・セテファノのトライで反撃。
 さらに18分、29分とトライを追加して、ボーナスポイントを獲得した。
 開幕節で同じ昇格組のホンダヒートと引き分けたものの、第2節から今節まで前年度トップ4と連戦して全敗したNTTドコモの高野一成監督は、それでも「4トライ取って1ポイント獲得できたのは一定の成果。今後につながる」と、後半の反撃を評価した。

 一方、合計8トライを奪ったものの、相手の良さも引き出してしまったパナソニックは、「危機を察知しても動かないプレーヤーがいる」(中嶋則文監督)と、前節のホンダヒート戦(19-16)に続いて課題を残した。
 FWリーダーの堀江が言う。
「ホンダ戦は、チームでラグビーをするのではなく、個々の力でトライを取りに行ってしまった。今日はその分、チームとしてどうスペースを作り出して相手を崩せるかにこだわった。その点では良かったんですが、ディフェンスでコミュニケーションが取れていなかった。もっと危機感を持たないと……。でも、それだけまだ伸びしろがあるということでしょう」
 パナソニックは、NO8ホラニ龍コリニアシ、FLジャスティン・アイブスが負傷で戦列を離れた穴をツイとバツベイ シオネで埋めているが、アタック面では遜色がなくても、防御に回るとまだ若さを露呈する。それがシーズン終盤に向けての「伸びしろ」なのか、それとも「弱点」として残るのか。
 第6節は、しつこいFW戦が持ち味のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスが対戦相手だ。

(text by Hiromitsu Nagata)

 

大阪出身のパナソニックHO堀江(写真右)もノビノビとプレーし、MOMに輝く活躍を見せた
photo by Kenji Demura (RJP)

注目の南ア代表CTBフーリーは後半13分に負傷した霜村主将に代わってトップリーグ初出場を果たし、パナソニックの勝利に貢献
photo by Kenji Demura (RJP)

 

今季、ブラウンに代わってパナソニックの指令塔を務めるSOデラーニ(写真右)はスキルフルなプレーで攻撃にアクセントをつけ続けた
photo by Kenji Demura (RJP)

前半37分のCTB中矢のトライ(写真)など4トライを奪ったNTTドコモもチャンピオンチームから貴重な勝ち点1を獲得した
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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ロスタイムのSOオレニ・アイイの決勝PGでトヨタが近鉄に辛勝

3日、1週間のショートブレークを経て、トップリーグが再開した。共に好調チーム同士の対戦となった東京・秩父宮ラグビー場での第1試合では、前後半共に犯したペナルティが2個ずつという堅実な戦いぶりを見せたNECグリーンロケッツがリコーブラックラムズを23-8で下して3連勝。同・第2試合では首位を走る東芝ブレイブルーパスが計7トライを奪ってNTTコミュニケーションズに完勝し、勝ち点を25に伸ばした(45-7)。
一方、名古屋市瑞穂公園ラグビー場では、26-26の同点で迎えたロスタイムにSOオレニ・アイイが決勝PGを決めたトヨタ自動車ヴェルリッツが際どく近鉄ライナーズを退けて、3勝目を挙げた。

■トヨタ自動車ヴェルブリッツ 29-26 近鉄ライナーズ(前半18-10)──12月3日

 
 

ハイボールを競い合うトヨタ自動車CTBスティーブン・イェーツと近鉄CTB大西将太郎。ペナルティ数が計24とややブツ切りの試合となったが、両チームともアタックでは魅せた
photo by Kenji Demura (RJP)

 「これもラグビー」
 "信じられないような敗戦"に打ちひしがれながらも、多くの近鉄ライナーズの選手たちは、試合後悔しさを押し殺すように同じようなフレーズを口にした。
 終了2分前に飛び出した、近鉄にとってこの日3本目となるHO太田春樹の右中間へのトライで26-26。
 それまでも自陣からでも積極的にボールを動かすラグビーを続けながらも、勝負どころでのセットプレーなどでのミス、そして何よりも計13個取られたペナルティで中々チャンスを生かしきれなかった近鉄が、最後に力づくとも言えるトライをもぎ取ったことで、試合はそのままアウェーチームの勝利で落ち着くものと思われた。

 ところが、それまで50m近い距離のPGも含めて安定したキックで4本のプレイスキックを決めていたSO重光泰昌が、さほど難易度が高いとは思えなかったゴールキックを失敗。
 試合は同点のままロスタイムへ突入し、試合時間終了のホーンの後で近鉄が自陣10m付近でPKを得る。
 タッチへ蹴り出して試合を終わらせれば、引き分けで勝ち点2を得られた近鉄だったが、FB高忠伸主将は攻め続けることを選択。
「ホーンが聞こえなかった」(同主将)というのも、最後のアタックに賭けた理由のひとつではあったようだが、「攻める意思表示だったと思うし、選択としては間違っていない」と、前田隆介監督がその選択を支持したとおり、それまで近鉄が見せていたどこからでも攻め続ける姿勢から言って、ラストワンプレーから勝ち点5を取りにいったのは、自然なことのように思われた。

 ところが、最後の最後にまたも近鉄は自分たちのミスとペナルティで、逆にトヨタ自動車に勝ち点5を献上することになる。
 プレッシャーをかけてきたトヨタ自動車ディフェンスの圧力の前にボールを失い、ディフェンスで反則。
 重光とは逆に、この日さほどキックが安定しているとは思えなかったトヨタ自動車SOオレニ・アイイが決勝PGを決めて、試合終了。
 近鉄にとっては、何ともやりきれない結末になってしまったのだ。

「いいラグビーを見せることができた」(近鉄CTB大西)

「フラストレーションが溜まる試合だった」
 試合後の記者会見での高主将の総括は、 近鉄の選手、スタッフ、そしてファンに共通する思いだっただろう。
 試合開始3分に重光のPGで先制し、8分には敵陣深くのDFでプレッシャーをかけて、相手のミスを誘ってボールを獲得。一気にワイドに攻めて、高主将のブレークで相手ゴールに迫った後、LOトンプソンルークがトヨタ自動車ディフェンスを切り裂いてトライ(重光ゴール成功)。
 開始10分で10-0とリードする完璧な立ち上がり。
 後半も2分のFLレプハ・ラトゥイラのトライ、4分の重光のPGで試合を振り出しに戻すなど、前後半とも申し分ない“入り"を見せながらも、前述のとおりミスと不運な面も多かったペナルティでリズムを失い、結局、近鉄がこの日得られた勝ち点は7点差以内での敗戦に対する「1」のみ。

 それでも、「トヨタ自動車対策という面もあった」(重光)というワイドに振るアタックと重光自身のキックによるゲームコントロールとのバランスは絶妙で、この日、瑞穂ラグビー場に駆けつけたファンとしても勝敗が逆になっていても意義を唱える人はいなかったはずだ。
「ディフェンス面で徐々に食い込まれてしまった。大きな課題が残った」(トヨタ自動車HO上野隆太主将)
「勝ちを拾っちゃいましたね」(同NO8菊谷崇)
 そんなトヨタサイドのリアクションも、この一戦がどんな内容だったかを物語っていると言っていいだろう。
「獲得できたポイントは1点だけだったけど、いいラグビーを見せることができた。もっと僕たちのやりたいボール動かすラグビーの精度を上げていきたい」(近鉄CTB大西将太郎)
 近鉄にとっては、敗れたとはいえ、開幕から3連勝を飾ったのがフロックではないこと、そして昨季のベスト4のトヨタ自動車を追いつめたことで、シーズン中盤以降もトップリーグを盛り上げていきそうな存在であることをアピールするには十分な一戦となったことは間違いない。

 一方のトヨタ自動車にとっては、序盤戦での課題だったセットプレーに関しては、「意図するところで取れたし、非常に良かった」(朽木泰博監督)と、収穫もあったが、「昨季でき上がりつつあったものが、まだ戻っていない」(菊谷)と、まだまだチームとして仕上がっていくには時間がかかりそうな状況。
 それだけに、「上を目指していく上で、非常に大きな勝ち点5」(朽木監督)になったことも事実ではある。

(text by Kenji Demura)

 

後半21分にトライ(写真)を奪うなど、トヨタの勝利に貢献したLO杉本晃一がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた
photo by Kenji Demura (RJP)

攻守に近鉄を引っ張ったFB高忠伸主将(写真中央)
photo by Kenji Demura (RJP)

 

最後のPGをSOオレニ・アイイが落ち着いて決めて、トヨタにとっては非常に意味のある勝ち点5を獲得した
photo by Kenji Demura (RJP)

開始8分のLOトンプソンルークのトライ(写真)で幸先のいいスタートを切った近鉄だったが、ミスとペナルティに泣かされて勝利を逃した
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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