トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第7節(12/17 - 12/18)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/17(土) 12:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 34-24 NTTドコモレッドハリケーンズ 秩父宮
12/17(土) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 21-10 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 皇子山
12/17(土) 14:00 サントリーサンゴリアス 87-35 コカ・コーラウエストレッドスパークス 秩父宮
12/18(日) 13:00 NECグリーンロケッツ 50-21 Honda HEAT Ksスタ
12/18(日) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 8-21 東芝ブレイブルーパス ヤマハ
12/18(日) 13:00 近鉄ライナーズ 22-43 リコーブラックラムズ 西京極
12/18(日) 13:00 福岡サニックスブルース 17-78 パナソニックワイルドナイツ 宮崎陸

マッチレポート

"ノヌー効果"抜群のリコーが会心の内容で近鉄を一蹴

「ノヌー、ノヌー、ノヌー」。18日、そんなファンの歓声が響き渡った京都・西京極運動公園陸上競技場兼球技場ではリコーブラックラムズが近鉄ライナーズに43-22で快勝。リコーのNZ代表CTBマア・ノヌーは来日初トライも記録した。
宮崎総合運動公園陸上競技場では前年王者パナソニック ワイルドナイツが福岡サニックスブルースに78-17で大勝。好調NECグリーンロケッツも茨城・ケーズデンキスタジアム水戸でHonda HEATから50点を奪って5連勝とした他、静岡・磐田ヤマハスタジアムで行われた注目のヤマハ発動機ジュビロ-東芝ブレイブルーパス戦では東芝が21-8でヤマハ発動機をねじ伏せた。

■近鉄ライナーズ 22-43 リコーブラックラムズ(前半7-17)──12月18日

 
 

後半21分に来日初トライを奪った以外はまわりを生かすプレーに徹してリコーの快勝を支えたCTBノヌー
photo by Kenji Demura (RJP)

 "世界一"の選手をどう使うのか。
 今季、そんな壮大とさえ言えるかもしれないテーマに取り組んでいるトップリーグのチームがいくつかある。

 特異なアタッキングラグビーが魅力の福岡サニックスブルースは開幕から5連敗と結果が出ない試合が続いていたが、第6節ではあえてNZ代表LOブラッド・ソーンをメンバーから外して、トヨタ自動車に27-20と快勝。今季初白星をものにした。
 一方、やはり開幕から勝ち星のなかったNTTドコモレッドハリケーンズは、肩の負傷から復帰したNZ代表FBミルズ・ムリアイナが初先発した第6節の神戸製鋼戦で、昇格後、初白星を記録。
 もちろん、NZ代表だからといって、一人で試合の勝敗を決めるわけではないのだが、それでも前節起こったことからうかがえるのは、"世界一メンバー"の影響力の大きさだろう。
 ちょうどレギュラーシーズンの中間点でもある第7節。そんなふうに、大きな影響力を持つW杯優勝メンバーをチームとしてどう生かしていくのか、確かな答えを出して素晴らしいチームパフォーマンスを見せたのがリコーブラックラムズだった。

「ノヌー、ノヌー、ノヌー」
 12月18日、トップリーグ第7節、近鉄ライナーズ-リコーブラックラムズ戦の行われた京都・西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場では、この日は"オールブラック"ではない白基調のセカンドジャージに身をまとったドレッドヘアーの選手を呼ぶファンの声が、リコーの選手たちを乗せたバスが会場に着いてから会場を離れるまでの4時間以上に渡って、こだまし続けた。
 その歓声に応えるかのごとく、フル出場を果たしたリコーCTBマア・ノヌーは80分間、確かな存在感を示して、チームの完勝を支えた。

"絶対的な12番"の存在によって崩壊した近鉄ディフェンス

 立ち上がりは近鉄がリコー陣に攻め込む時間帯が多かったが、細かいミスやペナルティで得点には至らず、逆に17分にリコーがベテランの機転の利いたプレーで先制する。
 近鉄陣22m付近のスクラムから、今季初先発のSH池田渉がぽっかり空いたブラインドサイドを駆け抜けてトライ。
 22分に近鉄もSH金哲元の好走からFLレプハ・ラトゥイラがトライを返すが、リコーは29分にSO河野好光がPGを決めた後、34分には自陣22m付近で相手キックを処理したFB小吹祐介がカウンターから好走。LOカウヘンガ桜エモシがフォローしてタテにゲインした後、CTBノヌーから左タッチライン際にいたHO滝澤佳之主将にパスが渡ってトライラインに迫り、最後はラックから河野が相手ディフェンスのギャップをすり抜けて近鉄ゴールを陥れた。

 そのまま17-7とリコーがリードして前半は終了。
 経験豊かなハーフ団の好判断がトライにつながったかっこうだったが、その背後に(立ち位置的には横だったかもしれないが)ノヌーという絶対的な存在がいたことが伏線になっていたのも間違いなかった。
「ノヌーに体と意識が向かってしまったことで(他のリコーの選手にブレークされる前に)ディフェンスで立ち遅れることにつながった」
 近鉄FB高忠伸主将がそう語ったとおり、前半リコーが奪った2つのトライ共に、近鉄ディフェンスがノヌーの存在を強く意識したためにスペースができた面があったのは確かだっただろう。
「センターにノヌーがいて自分の前が空くとは思っていたので、思い切ってそこを突いた」(リコーSO河野)

 後半に入ると、"絶対的な12番"を周りの選手たちがうまく生かしてアタックする、新たなリコースタイルはさらに機能していくことになる。
 いったんは、恐らくは日本人指令塔としては、河野と共にリーグ1、2の実力を争う存在と言っていい近鉄SO重光泰昌の気の利いたプレーで連続トライを奪われ逆転を許したが、後半14分に出たWTBロイ・キニキニラウのトライ以降は一方的なリコーのペースとなる。
 すでにノヌーの存在に惑わされて内側のスペースを破られていた近鉄ディフェンスは、飛ばしパスを受けた192cm、108kgの巨漢WTBの豪快な走りで完全に崩壊。
 17分にも、またもノヌーからの飛ばしパスを受けたFB小吹の快走からWTB小松大祐がトライ。
 そして、21分には、とうとうこの日周りを生かすプレーに徹していた千両役者ノヌーが初めて自ら仕掛けるかたちで相手のタックルを次々に吹き飛ばして来日初トライを奪って、近鉄に引導を突きつけるかっこうとなった。
 最終的には、29分、試合後マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた河野がダメ押しトライを加え、43-22の大差でリコーが4強入りを狙う第2グループ同士の戦いで貴重な勝ち点5をものにした。

「(ノヌーとの)コミュニケーションはどんどん良くなっている」(FB小吹)
 そんな証言どおり、シーズン当初とは比べものにならないほど、お互いのプレーに関する理解が進んだ上で、ノヌーという絶対的な存在をチームとしてどう生かすかの意思統一と戦い方の整理ができてきた印象のリコー。
 次節は上位進出への試金石パナソニック戦となる。
 ノヌーという派手な存在もあって、アタック面ばかり脚光を浴びがちだが、前節でのサントリーへの善戦(24-26)でもベースとなった「ディフェンスとディシプリン」(SH池田)が王者へのチャレンジへのポイントとなりそうだ。

(text by Kenji Demura)

 

安定したキックとノヌーの存在を最大限に生かして自ら2トライを奪ったリコーSO河野(中央)がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた
photo by Kenji Demura (RJP)

後半14分、リコーWTBキニキニラウが右タッチライン際を豪快に駆け抜けて奪ったトライも効いた
photo by Kenji Demura (RJP)

 

リコーの6トライは全てBKによるものだったが、NO8ハスケル(中央)などFW陣が激しく前に出てチャンスをつくった
photo by Kenji Demura (RJP)

前半22分のFLレプハのトライ(写真)など3トライを挙げた近鉄だったが、この日は攻守にどこか淡白な戦いぶりに終始した
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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神戸製鋼がトヨタ自動車とのサバイバルマッチに快勝

ベスト4戦線に生き残るのはどちらか─。17日、共に負ければプレーオフ進出が絶望的となる状況で行われた神戸製鋼コベルコスティーラーズ-トヨタ自動車ヴェルブリッツの一戦は、後半、風下に立ちながら圧倒的なボールキープを見せて攻め続けた神戸製鋼が逆転勝ち。3敗を守って4強入りへの望みをつなぐ一方、敗れたトヨタ自動車は4敗目となり、上位進出は厳しくなった。
その他、注目の"NTTダービー"は先輩格のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスが34-24でNTTドコモレッドハリケーンズに競り勝ち、サントリーサンゴリアスはコカ・コーラウエストレッドスパークスから13トライを奪う猛攻で勝ち点5を奪い首位をキープした。

■神戸製鋼コベルコスティーラーズ 21-10 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(前半5-10)──12月17日

 
 

コンタクトエリアを制圧した神戸製鋼が上位戦線への生き残りに成功した(写真はトヨタ自動車FB久住を激しい当たりで潰すCTBアンダーソン)
photo by Kenji Demura (RJP)

 共に、前節で下位チームに足元をすくわれ、リーグ前半戦にしてすでに3敗。
 プレーオフ進出のためには、もう1敗もできない状況での対戦となったサバイバルマッチ。
 この日、滋賀県では明け方まで雪が舞うなど冷え込み、会場となった皇子山総合運動公園陸上競技場は芝こそいい状態に整えられていたものの、冷たい強風が吹き続ける難しい条件での生き残りをかけた戦いとなった。
 そんな厳しい試合環境が影響した面もあったのだろう。
 立ち上がりはお互いにハンドリングエラーを連発。
「風でパスが流れることはあったけど、ハンドリングエラーは環境のせいじゃない。自分たちの問題」
 ミスの多さは、あくまでも未熟さの表れとしたのは、前半、風下で戦うことを余儀なくされたトヨタ自動車HO上野隆太主将。

 試合はそのトヨタ自動車が19分に2試合連続でSOとして先発した文字隆也のPGで先制。直後の21分には、相手のノックオンからのカウンターに転じてブレット・ガレスピー、スティーブン・イェーツのCTBコンビでチャンスをつくった後、WTB松下馨が相手ディフェンスを振り切ってトライを奪い、10-0とリードした。
 前述のとおり、厳しい条件の風下での戦いということを考えるなら、トヨタ自動車にとっては上出来のスタートとも言えたが、立ち上がりから今季なかなか安定しないセットやキックでのミスが目立っていたのも事実。
 立ち上がりリードできたのも、「この試合に勝ちたい気持ちではこちらが上回っていた」(神戸製鋼PR平島久照主将)というように、気合いが空回りした面もあった神戸製鋼のミスに助けられた結果でもあった。

 神戸は右PRに腰を痛めていた山下裕史が復帰し、ここ数試合、大学以来だという「3番」としてプレーするケースの多かった平島主将が本来の左PRに戻ってスクラムは安定。
「この1週間、コンタクトエリアを制圧した方が勝つという意識を徹底してきた」
 苑田右二ヘッドコーチが強調する接点部分でも、本来強力なはずのトヨタ自動車FW相手に対等以上に戦っている印象だった。
 そんな神戸製鋼に初トライが生まれたのは31分。今季アウトサイドCTBに起用されるケースが多いフレイザー・アンダーソンが相手ディフェンスを引きずるように強引に前に出て、左タッチライン際のWTB大橋由和にオフロードでつなぎ、大橋がタックルを受けながらもタッチ押し出されずに内に返して、フォローしたNo.8マパカイトロ パスカが飛び込んだ。

 結局、前半は10-5で風下のトヨタ自動車がリードして終了。
 それでも、「前半からいいアタックができていたし、風上でも風下でも自分たちのやることは変わらない。前半の終わりに取れたトライが自信になった」(苑田ヘッドコーチ)と、風下でリードを奪ったトヨタ自動車よりも風上でリードされた神戸製鋼の方が後半に向けて勢いづいてハーフタイムを迎えることになった。

後半戦ムービングラグビーで上昇気流に?

 後半は、ハーフタイム前の流れのままに、風の影響を全く感じさせないほど、神戸製鋼の一方的な試合内容となった。
 いきなり4分に相手のノックオンからのボールをBKに回してFB正面健司が大きくゲインして敵陣22m内に。SOピーター・グラントがラックサイドを破ってゴール前に迫り、もう一度ラックサイドをSH佐藤貴志がもぐってトライラインを越えた。
 直後のコンバージョンをグラントが決めて神戸製鋼が逆転。

 結局、このトライが後半40分間で両チーム唯一のトライとなったが、恐らくは7、8割方ボールキープして攻め続けた神戸製鋼が10分、26分、31分と要所要所でPGで加点。
 復帰したPR山下が「スクラムが安定して、No.8やスクラムハーフが楽にボールを持って攻められたと思う」と振り返ったとおり、セットは不安視されていた新人HO木津武士のスローイングも含めて(立ち上がりこそブレる場面もあったが)安定。ブレイクダウンでも、"そこ"が命綱であるはずのトヨタ自動車を圧倒していた印象だった。
「今日ぐらいFWがボールを出してくれれば、余裕を持ってゲームができる」と語った指令塔のグラントをはじめ、アンダーソン、正面など、ラインブレイク能力のあるBK陣が相手ディフェンスの穴を見つけてどんどん前に出ながらボールをつないでいった後半のスタイルこそ、苑田ヘッドコーチが目指す「ムービングラグビー」の理想型に近いものだっただろう。

「まだ強い相手との対戦が残っているので、そこに勝っていけば上に行けるチャンスも残っている」(同ヘッドコーチ)
 過去2シーズン、4強に勝ち残ったチームのレギュラーシーズン敗戦数は3敗以下。
 すでに3敗している神戸製鋼にとって、厳しい状況が続くことに変わりはないが、苑田ヘッドコーチが指摘するとおり、上位陣との対戦を残しているということはそれだけチャンスが残っているのも事実ではある。
 序盤戦、どこかチグハグな戦いが続いた神戸製鋼が、後半戦、一気に勢いに乗ってリーグを盛り上げる─。そんな可能性を十分に感じさせる「ムービングラグビー」を披露して、神戸製鋼が昨季ベスト4のトヨタ自動車を押し退けてのサバイバルに成功した。

(text by Kenji Demura)

 

古巣トヨタ自動車相手にマン・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せた神戸製鋼FB正面。たびたびのビッグゲインで勝利に貢献した
photo by Kenji Demura (RJP)

腰痛から復帰して神戸製鋼のスクラムを支えたPR山下。セットが安定したことでBK陣が余裕を持ってプレーする好循環につながった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

FB正面とともに何度もトヨタ自動車のディフェンスを打ち破ってチャンスをつくったSOグラント。後半、強風の中、プレイスキックを成功させたことも大きかった
photo by Kenji Demura (RJP)

神戸製鋼ディフェンス陣の激しいプレッシャーを受けるトヨタ自動車SO文字(右)。トヨタ自動車にとっては上位進出が厳しくなる4敗目となった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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