トップリーグ2011-2012特集 TOPプレビュー&TOPマッチレポート「今シーズンのトップリーグはここを見よ!
昨シーズンに引き続き、トップリーグホームページでは、スポーツライターとして活躍中の永田洋光氏と村上晃一氏による毎節の見どころと、両氏およびその他第一線で活躍する豪華執筆陣によるマッチレポートをお届けいたします!

リーグ戦 第9節(1/9)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
1/9(月) 12:00 Honda HEAT 7-48 東芝ブレイブルーパス 秩父宮
1/9(月) 12:00 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 18-26 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 近鉄花園
1/9(月) 13:00 パナソニック ワイルドナイツ 25-19 ヤマハ発動機ジュビロ 太田
1/9(月) 14:00 サントリーサンゴリアス 35-29 NECグリーンロケッツ 秩父宮
1/9(月) 14:00 NTTドコモレッドハリケーンズ 25-39 近鉄ライナーズ 近鉄花園
1/9(月) 14:00 福岡サニックスブルース 31-24 コカ・コーラウエストレッドスパークス レベスタ
1/9(月) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 27-31 リコーブラックラムズ 神戸ユニバー

マッチレポート

シーズン終盤へ向け成熟度を増すパナソニック快勝

昨季のトップリーグ覇者パナソニック ワイルドナイツが、4強入りを虎視眈々と狙うヤマハ発動機ジュビロを地元・太田に迎えた注目の一戦は、後半、修正能力の高さを見せたパナソニックが25-19で勝利を収めて1敗を守るともに2位の座をキープ。一方、今季4敗目を喫したヤマハ発動機は7位に後退し、プレーオフ進出に黄色信号が灯るかっこうとなった。

■パナソニック ワイルドナイツ 25-19 ヤマハ発動機ジュビロ(前半3-9)──1月9日

 
 

マン・オブ・ザ・マッチはSOデラーニ。効果的なキックと前に出る能力で味方のトライを演出した
photo by Kenji Demura (RJP)

 開幕戦でサントリーサンゴリアスに惜敗した後は7連勝。
 数字の上では前年王者として貫禄十分な数字を残してきたと言っていいパナソニック ワイルドナイツだが、昇格組であるHonda HEAT、そしてNTTドコモレッドハリケーンズに、ともにボーナスポイントを与えるなど、昨季優勝を争ったサントリーの盤石さに比べれば、中盤戦まではどこか不安定な戦いぶりが目立っていたのも、もう一面の事実ではあった。

 大黒柱トニー・ブラウンが引退し、NO8ホラニ龍コリニアシ、LOジャスティン・アイブスのジャパン組が長期戦線離脱。
 代わって、スーパーラグビーのハイランダーズやチーフスでプレーしていたSOマイク・デラーニに、シーズン途中からは超大物CTBジャック・フーリーも加わり、チームの顔が昨季とは変わりつつあるのも間違いないだろう。
 あるいは、攻めだけではなく、守りでの貢献度が抜群に高かったブラウンがいなくなり、超攻撃型と言っていいデラーニが指令塔に入ったことも影響しているのかもしれない。
 昨季レギュラーシーズン計13節で163だった総失点数を、今回はすでに第8節終了時点で上回ってしまってもいた(8節終了時点での総失点=170)。

「一番は1対1のタックル」
 年末年始の2週間の小休止期間に取り組んだ修正点に関して中嶋則文監督がそんなふうに語ったことからも、守りの面に課題があることはうかがえた。

 ワイルドナイツの強さのベースともえるディフェンス力は改善しているのかが注目すべきポイントのひとつだった一戦、前半はヤマハ発動機のいいところが目立つ内容となった。
「前半は休みボケじゃないけど、ミスが多かったし、動きが悪かった」(パナソニックFB田邉淳)
 セットでプレッシャーをかけ、パワフルなランナーが近場を突いてきたヤマハ発動機がボールキープ、テリトリーとも圧倒するかたちでFB五郎丸歩が3PGを決めて9得点。一方、パナソニックは田邉が1PGを返しただけの9-3というスコアで前半は終了した。

精度の高いキックを起点に後半3トライ

「耐えて、耐えて、最後に逆転するのがウチらしい」
 そんなふうにワイルドナイツの戦い方を説明してくれたのは、この日、トップリーグ100試合出場を果たしたベテランPR相馬朋和。
 当然ながら、「前半はホットゾーンでゲインを切られ過ぎて苦しかった」(HO堀江翔太ゲームキャプテン)というパナソニックが、前半40分間の戦いを経て、ヤマハ発動機のアタックにどう守りで対処し、そこからどう攻撃を構築していくのかが後半40分間の最大の見どころであることは間違いなかった。

 結論から言うなら、パナソニックに類い稀なる修正能力があることを確認するための時間はわずか2分で十分だった。
「前半は中々敵陣に入れなかったので、まず敵陣に入って、ディフェンスでプレッシャーをかけていってから、ボールを継続していく」(中嶋監督)
 ハーフタイムに首脳陣からそんな指示を受けたパナソニックの15人は、後半開始早々、いとも簡単にヤマハ発動機ゴールを陥落してみせた。

 効果的なキックで敵陣深くに入ったパナソニックに対して、苦しい状況でボールをもらったヤマハSO大田尾竜彦ゲームキャプテンのキックは、はっきりタッチを狙ったものにはならずに、魅入られたかように22mライン付近のタッチライン内側で待っていた田邉の腕の中にスッポリ。
 田邉からボールを受けとったデラーニ、そしてフーリーという千両役者がヤマハ発動機ディフェンスを置き去りにしてゲインを重ね、パナソニックにこの試合初のトライが生まれた(田邉のゴールが決まって10-9と逆転)。

 パナソニックは16分に田邉がPGを加えた後、19分には自陣でのターンオーバーからカウンターを仕掛けて、最後はデラーニのグラバーキックを田邉が押さえて2トライ目(田邉のゴール失敗で18-9)。
 25分にヤマハが五郎丸のPGで3点を返したものの、パナソニックは30分に敵陣でいったんボールを失った後、再度のターンオーバーから田邉のキックパスを受け取ったWTB山田章仁が左隅に飛び込んで勝負を決めた(田邉のゴール成功で25-12)。

「そんなに難しくないキック処理のところでミスが出た。そこのところで相手の方が少しうまかった」
 ヤマハ発動機の清宮克幸監督は、試合後そんなふうに敗因を分析したが、確かに、勝負どころでのキックの精度とミスをしない集中力の高さはパナソニックに一日の長があったことは間違いないだろう。
「ディフェンスに関しては我慢しながら試合中にうまく修正できた」
 ゲームキャプテンを務めた堀江が、試合後、涼しい顔をしながらそう分析したとおり、ほぼ試合が決していた終了5分前にヤマハ発動機にモールからのトライを許したものの、後半はパナソニックの守りが破綻する場面はほとんどなかった。ことに、前半ゲインを切られていた近場周辺をしっかり抑えていたのが印象的だった。

「今年は若い選手が多くなって、ひとりひとりの特徴を理解し始めているところ」
 そう新生ワイルドナイツの現況を語ってくれたのは、6節以降、先発に定着しているFL西原忠佑。
 首脳陣も中心選手も変わって「今年は去年までとは違うチーム」(堀江)である新生ワイルドナイツがシーズン終盤に向けて成熟度をどんどん高めていく可能性を感じさせる、点差以上の快勝ぶりだった。

(text by Kenji Demura)

 

時間の経過とともにパナソニックDFが機能していったのが印象的だった(写真右下=FL劉、右上=FL西原、左=NO8バツベイ)
photo by Kenji Demura (RJP)

TL100試合出場を達成したパナソニックPR相馬は「あと10年プレーして、200試合出場を目指します」
photo by Kenji Demura (RJP)

 

ケガ人の多いヤマハは新人SH池町(左)が初先発。積極的なプレーでチームを引っ張る活躍ぶりを見せた
photo by Kenji Demura (RJP)

ハイボールを競り合うヤマハFB五郎丸(左下)とパナソニックWTB山田。ヤマハにとってはキック処理ミスも痛かった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

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NECとの極上フィジカルバトルを制し、サントリーが全勝守る

絶好調チーム同士の対戦となった注目のサントリーサンゴリアス-NECグリーンロケッツ戦はセットプレーで圧倒したサントリーがニコラスライアンの5PGが効いて35-29で勝利して首位をキープ。敗れたNECも終盤の猛攻で6点差に追い上げた上に、サントリーを上回る4トライを記録。ボーナスポイントの勝ち点2を獲得する有意義な一戦となった。
尚、サントリー-NEC戦に先立って行われたHonda HEAT-東芝ブレイブルーパス戦は8トライを奪った東芝が48-7で大勝し、首位サントリーとは勝ち点5差となる3位の座を守った。

■サントリーサンゴリアス 35-29 NECグリーンロケッツ(前半17-8)──1月9日

 
 

注目の一戦を制したサントリーが開幕9連勝で首位を死守(写真は世界最高峰の実力を見せたFLスミスとフォローするNO8竹本隼主将)
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

唯一全勝を守る昨季の日本選手権覇者サントリーサンゴリアスと、第3節から破竹の6連勝で突っ走るNECグリーンロケッツ。注目の対決を前に、サントリーはFBで出場予定だったエース小野澤宏時が風邪で離脱。当日朝になってルーキーの竹本竜太郎が先発。前節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦で尾崎章が負傷した左PRには5年目の小川真也が先発。公式戦デビューが2人のほか、SO野村直矢は2年ぶりの先発。フレッシュな布陣のサントリーに対し、NECは前節を欠場したHO臼井陽亮が復帰し、ほぼベストの布陣が揃った。

最初のハイライトは前半15分に訪れた。
サントリーがPGで3点を先行した直後のキックオフからだった。サントリー陣でのターンオーバーから、NECはWTBネマニ・ナドロ、FLニリ・ラトゥ主将が連続ゲイン。正面22mに、LO村田毅が持ち込んだラックから、クイックでボールを拾い上げたのがNO8土佐誠だ。サントリー防御が戻る前に抜け出し、独走でインゴールへ。しかし、インゴールにボールを置こうとする瞬間、後ろから追いすがって身体を滑り込ませたのが、サントリーに今季加入の元オーストラリア代表FLジョージ・スミスだった。グラウンディングしようとしたボールと地面の僅かな隙間に手をねじいれてトライを阻む。大槻卓レフェリーが「スクラム」と命じたとき、「?」の雰囲気が漂ったスタンドも、電光板にリプレイが映し出されると、110キャップ男の神業セーブに驚愕のどよめきをあげた。

ただし、NECも勢いだけで勝ってきたわけではない。
直後の5mスクラムから土佐がサイドを突き、南ア代表SHフーリー・デュプレアを外し、FL佐々木隆道を巻き込んで左へパス、ボールはSH櫻井朋広-SO田村優-CTB櫻谷勉とわたり、FB大東功一が右中間に飛び込んだ(実はこのトライにも、スミスはグラウンディングの瞬間に身体を滑り込ませている。エディ・ジョーンズ監督は、「日本のファンは幸せです。世界最高峰のプレーヤーと呼ばれ、31歳で今なお向上を続ける選手のプレーを生で見られるのですから」とコメントした…)。

しかし、試合は徐々にサントリーに傾いていった。NECはセットプレーが安定せず、ペナルティを重ねてはサントリーがじわじわとPGをチョイス。28分にはNEC陣で約2分半、14次攻撃までボールを継続し、WTB長友泰憲のゲインからCTB平浩二がチーム最初のトライ。前半は1T4PGのサントリーが17-8とリードした。

サントリーは後半も慎重な姿勢を崩さず、後半15分、17分と敵陣のPKでPGを選択。
「NECはとてもフィジカルで激しいチームで、ディフェンスのラインスピードが速く、ニリ(ラトゥ)はどこからでもチャージに現れて、有効な攻撃スペースがなかなか生まれなかった。点数は取れるときに取っておこう。まず15点差をつけようというゲームプランで臨みました」(ジョーンズ監督)

17分、5本目のPGをニコラスが決めて23-8。待望の15点差がついたところで、サントリーはアタックにシフト。するといきなり、相手キックオフからのリターンで、CTB平が60m独走トライ。30-8の22点差までリードを広げる。

好調のNECは、この点差にも動じない。
23分、トライ王を独走中のWTBナドロが右オープンに逆サイドから走り込んでCTB平、FB竹本竜のタックルを突破、さらに追いすがるWTB成田秀悦を蹴散らして右中間へ。NECが15-30の15点差に戻す。

ところがこの直後のキックオフを競った際、ナドロが足を強打し、しばらく芝の上に倒れるのだ。直後の28分、サントリーは自陣で相手パスをカットした長友がカウンターでNEC陣22m線付近まで前進。途中出場していたSH日和佐篤-PR畠山健介-SOピーター・ヒューワット-HO青木佑輔-平-LOダニー・ロッソウと軽快なパスが繋がり、WTB成田が左隅へ。残り10分強で再び20点差。勝負あったかに見えた。

残り1分で14点を返したNECは貴重な勝ち点2を獲得

「確かに、来週のヤマハ発動機戦のことを考えれば、ニリ(ラトゥ)、ナドロなど主力を下げる手もあったと思います。でも、コーチが先を見て、目先の試合を諦めてしまって、それが選手に伝わるのが怖い。それは、どこかのナショナルチームの例もあるし(笑)。ウチは行けるところまで全力で行くだけ。ナドロは、彼自身が『大丈夫だ、交代させないでくれ』と言ってきたし、打撲系の痛みだったので、替えずに行きました」(NEC岡村要ヘッドコーチ)

それが、残り2分で爆発した。
左サイドでボールを持ったナドロがサントリーの日和佐、竹本竜のタックルを特大ストライドで転がし、60m独走トライ。グラウンディングが79分30秒。SO田村のゴールが決まった直後にタイムアップのホーンが響いた。残りワンプレーでのキックオフ。
「そのまま蹴り出すんじゃなく、4トライのボーナス点を取りに行きました。ただ、本当に、このワンプレーで必ず取るんだという意志を確認する強さが足りなかった。だからチェイスも足りなかったし、ボールを取られたときのリアクションも良くなかった」(サントリー竹本隼太郎主将)

サントリーのキックオフをNECのNO8土佐がレシーブ。CTBアンソニー・ツイタヴァキの豪快ランで敵陣に入ったNECは、22m線付近でPKを得ると、スクラムを選択。右8-9のサインプレーのパスがやや浮いたことで、サントリーディフェンスに一瞬の間ができた隙を、SH櫻井→WTB瀬崎隼人のスイッチで攻略。WTBナドロのコンバージョンも決まり、ロスタイムの82分にNECが「4トライ+7点差以内」のダブルボーナスを獲得した。

「すごくビッグハートな選手達を誇りに思います。サントリーさんよりも1つ多くトライを取れたし、勝ち点ゼロを最後のワンプレーで2点に増やせた。本当に大きな2ポイント。次ぎに繋がるゲームだと思う」とNEC岡村ヘッドコーチ。

一方サントリーのエディ・ジョーンズ監督も「本当にタフなゲーム。今シーズン、一番フィジカルな試合だった。最後にトライを取られたのは残念だったけど、選手はタフにディフェンスしてくれた。急に出場の決まった新人の竹本竜太郎もいいプレーをしてくれた」
けが人続出の中で臨んだ難敵との試合に勝利したとあって、苦戦もポジティブに受け止めていた。

(text by Nobuhiko Otomo)

 

サントリーにとっては2トライを奪った平(写真)、6PG1ゴールを決めてMOMに選ばれたニコラスの日本代表CTBコンビの活躍も大きかった
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

好調チーム同士の対戦だったが、セットプレーの優劣も勝敗を分ける要因に(写真はサントリーのスクラムを支えたPR畠山)
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

 

NECの怪物WTBナドロはこの日も2トライを奪い、今季の総トライ数を14に伸ばしてトライ王街道を独走中
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

Honda-東芝戦は前半18分のFLリーチ(写真)のトライを皮切りに計8トライを奪った東芝が48-7で大勝した
photo by Hiroyuki Nagaoka (RJP)

 

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