序盤の4節を終えて全勝が東芝ブレイブルーパスとサントリーサンゴリアスの2チームに絞られたトップリーグ。第5節は勝ち点20でトップを走る東芝が上り調子のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスと激突。清宮克幸新監督率いるヤマハ発動機ジュビロは福岡で福岡サニックスブルースと対戦する。
粘りのブレイクダウンで東芝に挑むNTTコム
ここまで全試合で勝ち点5を獲得して首位に立つ東芝は昨季苦戦したNTTコムの挑戦を受ける(写真は東芝FLリーチ) |
一週間のインターバルを置いて3日から始まるトップリーグ第5節は、まず4連勝で首位を走る東芝ブレイブルーパスが、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの挑戦を受ける(3日秩父宮ラグビー場14時キックオフ)。
東芝は、これまで4試合すべてで4トライ以上のボーナスポイントを獲得。前節には近鉄ライナーズとの全勝対決も26-3で制して、現在もっとも好調なチーム。対するNTTコムも、前節で神戸製鋼コベルコスティーラーズを19-10と破って2勝目を挙げ、状態はいい。
単純に戦力を比較すれば東芝の優位は否めないが、NTTコムはセットプレーが安定し、ブレイクダウンでも粘り強く戦うチーム。東芝がこだわる「立ってオーバーするブレイクダウン」にどこまで対抗できるかが勝負のカギを握る。開幕戦でヤマハ発動機ジュビロに55失点したディフェンスも、第3節でサントリーサンゴリアスに10-17と食い下がって自信を取り戻した。
「もともとディフェンスでリズムをつかむチームですが、開幕戦でヤマハ相手に大量失点した。それが修正するいいきっかけになりました」と、大沼照幸監督は振り返る。
昨シーズン両者は第2節で対戦し、東芝のミスにつけ込んだNTTコムが28-33と食い下がって、その後の戦いに大きな手応えをつかんだ。東芝にすれば、今季はきちんと準備ができている分、力の差を見せつけたいところだが、果たしてそういう展開になるのか予断を許さない。
選手では、NTTコムのFL小林訓也に注目。FLマーフィー・ダレン、NO8フォトゥー・アウエルアと外国出身選手の存在が目立つ第3列で、地味だが渋い働きを見せてブレイクダウンでの強さを支えている。日本人らしいFLだ。
ルーキーのSH鶴田諒も、強力なFWに守られて東海大学時代より成長したゲームコントロールを見せる。
NTTコムが粘り強く戦って、東芝の連続ボーナスポイントを途切れさせるのか。それとも東芝がさらにパワーアップした姿を見せるのか。まさに注目の一戦だ。
サニックスVSヤマハは、セットプレーに注目
もう1試合、4日の福岡サニックスブルース対ヤマハ発動機ジュビロ(福岡・グローバルスタジアム13時キックオフ)も、好ゲームの匂いが漂う。
ヤマハは前節でサントリーに13-26と敗れて連敗。清宮克幸新監督は「第4節までの戦い方しか考えていなかった」と試合後に話したが、一週間のインターバルを置いて、リーグ戦中盤に向けてチームをどう修正したかがこの試合で見られるはず。
対するサニックスは、第2節でNTTコムに10-27と敗れるなど4連敗中で調子の波に乗れていない。現役オールブラックスのLOブラッド・ソーンが加入して課題だったセットプレーが安定したが、「今まではしのぐだけだったセットプレーが計算できるようになって、逆にどう攻めればいいのか迷っている」と藤井雄一郎監督。
ソーンがいる強みを発揮できるよう修正を施すが、ヤマハもセットプレーにはこだわりを持つチーム。FW戦では熾烈な駆け引きが見られそうだ。
ボールを獲得すれば、両チームともバックスに攻撃力があるのでダイナミックな展開戦が繰り広げられる。
上位浮上のきっかけを模索するチーム同士の戦いは、リーグ戦の今後を占う意味でも非常に興味深い。
神戸製鋼に快勝したNTTコムの粘りあるプレーはどこまで東芝に通用するか。FWが獲得したボールをSH鶴田(写真)がいかに生かすかにも注目だ |
清宮新監督率いるヤマハ発動機は福岡でサニックスと対戦。安定したセットからのボールをWTB徐(写真左)などの決定力あるBKで生かしたい |
LOソーンもチームに馴染んできたサニックスは強力なセットプレーを誇るヤマハ発動機と地元・福岡で対戦。今季初白星を狙う |
4戦全勝ながら、いまひとつ不安定な戦いが続くサントリーは熊本でHondaと対戦。"トライ王"WTB小野澤(写真)もそろそろトライを重ねたいところ |
田村 優
(NECグリーンロケッツ SO/CTB)
◇勝利を呼び込む、いぶし銀の司令塔
田村 優(たむらゆう)◎1989年1月9日生まれ。身長181cm。体重87kg。國學院栃木→明治大学→NECグリーンロケッツ |
外国出身選手が目立つトップリーグのSOで、入社1年目のルーキーながら抜群の活躍を見せているのが、この田村優だ。
開幕戦の神戸製鋼コベルコスティーラーズ戦では、3-28とリードされた後半開始から登場。それまで攻めあぐんでいたチームを長いパスと積極的なランニングで前に出し、わずか1分51秒でWTBネマニ・ナドロのトライに結びつけるなど、攻撃的なセンスを遺憾なく発揮した。
第2戦のパナソニック ワイルドナイツ戦では先発SOで出場。前半こそキック中心のゲームプランで臨み、パナソニックFBサム・ノートンナイトの卓越したフィールディングに戸惑い気味だったが、大きくリードされた後半は積極的にボールを展開して水を得た魚のように動き回った。
結果、チームは4トライを奪ってボーナスポイントを獲得。すっかり信頼を得た。
第3節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦では、先発出場したものの背番号は「12」。SOに入ったキャメロン・マッキンタイアーと“ダブルSO”のような役割を果たして、29-26とトヨタを撃破。同じ布陣で臨んだ第4節の福岡サニックスブルース戦も、32-15で勝ち点5をゲットした。
ディフェンシブな戦い方が特徴だったNECを、積極果敢な攻撃が特色の魅力あるチームへと変えたのが、田村なのである。
「パナソニックに負けたあとで、コーチング・コーディネーターの(グレッグ・)クーパーさんから12番か15番は出来るかと聞かれました。そこにアンソニー(・ツイタヴァキ)のケガが重なってCTBをやることになった。今まで1回もやったことはなかったんですけどね(笑)」
といっても、いわゆるCTBというよりは、NZで言う第1ファイブエイス的な動きでゲームをコントロールするのが持ち味。SOのマッキンタイアーとは主に「アイコンタクトで」コミュニケーションを取る。それが自在なライン攻撃を可能にしているのだ。
明治大学時代はU20日本代表の候補に選ばれながらもディフェンスが課題とされて落選したが、身体に厚みも増して課題を克服。ピッチの上ではルーキーらしからぬ存在感を漂わせる。
「でも、パナソニック戦の前半は、悪いキックを蹴っているつもりは全然ないのに、ノートンナイトにほとんどダイレクトでボールを処理された。それが怖かったというか、ああ、これが世界のレベルなんだと痛感しました。ただ、チームメイトがみんな、ミスをしても声をかけて励ましてくれる。それが嬉しいし、のびのびプレーできる要因になっています」
元フィジー代表で、田村とともに今季のNECの攻撃の要となっているナドロが言う。
「優はスーパーラグビーでも活躍できる素材。将来はジャパンだろうね」
将来はともかく、今季どこまで力を発揮し、厳しくなる相手のマークをかいくぐって存在感をアピールできるか。強さではなく、パスやランで相手のギャップをつくのが得意な、日本人らしさが持ち味の大型バックスに今季は注目だ。
(text by Hiromitsu Nagata)