トップリーグ2012-2013特集 TOPプレビュー & TOPレビュー

こちらでは次節の各試合の見どころ、そして試合結果のサマリーと全体のレビューを、トップリーグ観戦をより楽しく、より興味深いものにしていただけるよう、毎週掲載していきます。

リーグ戦 第8節(10/27)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
10/27(土) 12:00 キヤノンイーグルス 25-36 ヤマハ発動機ジュビロ 秩父宮
10/27(土) 12:00 九州電力キューデンヴォルテクス 19-17 NTTドコモレッドハリケーンズ レベスタ
10/27(土) 13:00 東芝ブレイブルーパス 26-28 リコーブラックラムズ Ksスタ
10/27(土) 13:00 パナソニック ワイルドナイツ 23-20 近鉄ライナーズ 太田
10/27(土) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 48-14 NECグリーンロケッツ 高知陸
10/27(土) 14:00 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 23-24 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 秩父宮
10/27(土) 14:00 福岡サニックスブルース 19-42 サントリーサンゴリアス レベスタ

レビュー

小野澤が通算100トライを決めてサントリー圧勝
神戸製鋼も無敗キープし、初白星争いは九電に軍配

 
 

通算100トライを記録して記念ケーキを贈られるサントリーWTB小野澤。プレッシャーから「解放された」とも
photo by Aki Nagao

後半38分のWTBヘスケス(写真)など、"らしい"アタックも見せたサニックスだがボーナスポイント獲得はならず
photo by Aki Nagao

 今日は偉大な記録は生まれず、1ヵ月後に持ち越しか──?
 6,543人が観客席を埋めた福岡・レベルファイブスタジアムに、そんな雰囲気が漂いはじめた後半34分だった。
 この日も、前半15分のFB有賀剛のトライを生み出す快走を見せるなど「チームの為にプレーする」スタイルを徹底していたサントリーサンゴリアスWTB小野澤宏時が、最後の最後に千両役者ぶりを見せつけた。

 敵陣深くで味方がターンオーバーしたボールをいったん左ライン際で受け取り、しっかり前に出て生きたラックを形成。すぐに起き上がり、もう一度攻撃に参加して中央付近のラックサイドのスペースに走り込んだところに、ドンピシャのタイミングでSOピーター・ヒューワットからパスが出て、そのままインゴールに飛び込んだ。
「片側のWTBで100個トライをとれるようなゲームをしてくれたチームに感謝」と、本人が語るとおりに、味方FWが出してくれたボールを確実に生かしてチャンスを広げ、最後は自分の決定力でトライをものにするという、10年のトップリーグ経験の中で培ってきた筋金入りのプレーぶりで前人未到の通算100トライの金字塔を打ち立ててみせた。

 そんな大記録で試合を締めるかたちとなったサントリーは、前節のパナソニックとの大一番で「80分間、切れることなくゲインラインを目指してプレーしてくれた」と大久保直弥監督を喜ばせた好調ぶりを、この日もそのままキープ。
 試合開始6分のNO8竹本隼太郎の先制トライを皮切りに、攻撃の手を緩めることなく福岡サニックスブルース相手に計6トライを重ね、開幕からの連勝を8に伸ばした。

 一方、勝負という意味では福岡サニックス-サントリー以上に九州のファンを盛り上げたのは第1試合の九州電力キューデンヴォルテクス-NTTドコモレッドハリケーンズ戦だった。
 両チームとも、今季ここまで勝ち星なし。
 地元で是が非でも初勝利を挙げたい九州電力に対して、昨シーズン初昇格ながら厳しいトップリーグで生き残った"先輩格"としての意地を見せたいNTTドコモ。
 どちらが、トップリーグで戦っていくに相応しいチームなのか。そんなトップリーガーとしてのプライドを賭けた戦いは、前半、九州電力が先行したものの、後半NTTドコモがいったんは逆転。終了6分前に九州電力が再逆転して、そのまま2点差で逃げ切り、念願の今季初白星を挙げた。

 九州電力は196cm、129kgのサイズを誇る超インパクトプレーヤーであるNO8マシュー・ルアマヌを今季初めて先発させた、攻撃的布陣が功を奏した。
 前半6分のLO浦真人の先制トライの後、同38分にはそのルアマヌが自陣からパワフルな突破を見せて敵陣22m内に入り、最後は左ライン際を好走したCTB黒木孝太からフォローしたFL松本允主将へとボールが渡り、前半を12-0で折り返す思惑通りの試合展開。
 後半、NTTドコモのFBミルズ・ムリアイナの個人技などでいったんは逆転を許したものの、33分にモールから最後はFL小原渉が腕を伸ばして同点トライを奪い、難しい位置からのゴールもSO齊藤玄樹が決めて19-17で逃げ切った。
「80分間熱い気持ちを切らさず戦おうと言って試合に臨んだ。逆転された時も焦らず、勝負どころでしっかりまとまれた。非常にうれしい」と、松本主将は09年1月以来となるトップリーグでの勝利に満面の笑み。
 前述通り12-0と九州電力がリードして終わった前半、圧倒的に攻めていたのはNTTドコモであり、その時間帯の攻防が最終的には2点差での勝敗を分けるかっこうとなった。

トヨタ自動車がNTTコムに1点差勝ち
好調リコーは東芝撃破で4連勝

 第7節終了時点で4位のヤマハ発動機ジュビロ、5位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス、7位ながら5位との勝ち点差3につけるトヨタ自動車ヴェルブリッツ。
 東京・秩父宮ラグビー場にはプレーオフ進出圏内である4強入りを狙うチームが集結した。
 第1試合に登場したヤマハ発動機はWTB徐吉嶺、CTBマレ・サウというエースランナーが2トライずつを重ねるなど5トライを奪い、前半で31-8と大きくリード。
 後半、キヤノンイーグルスの追い上げにあったものの、36-25で逃げ切って4位をキープした。
 続く第2試合は、最後の最後まで勝敗がどちらに転がるかわからない大接戦となった。
 前半終わって、仲良く2トライ2ゴールずつの14-14。
 後半はSO君島良夫の2PGでNTTコムが先行したが、トヨタ自動車も23分に「クイックに動かしてスペースにボールを運ぶトヨタらしいアタック」(廣瀬佳司監督)でCTBタウモエピアウ・シリベヌシがトライを奪うなど、逆転。
 粘るNTTコムは31分に君島が3度目のPGを決めて1点差に迫り、終了間際にはSH岡健二がインゴールに飛び込むが、グランディングが認められず、そのまま24-23でトヨタ自動車が貴重な勝ち点4をものにした。

 首位サントリーをそれぞれ1分、1敗で追う2位神戸製鋼コベルコスティーラーズと、3位東芝ブレイブルーパスにとっては、明暗を分ける休止前の最後の1試合となった。
 高知県春野総合運動公園陸上競技場でNECグリーンロケッツと対戦した神戸製鋼は、2トライずつを奪った両CTBクレイグ・ウィング、ジャック・フーリーの活躍もあって、48-14で大勝。無敗のまま残り5節を迎えることに。
 一方、茨城・ケーズデンキスタジアム水戸では、ここのところ3連勝して調子が上がっていたリコーブラックラムズに対してFW戦で圧倒できなかった東芝がトライ数で上回りながらも26-28で惜敗。2敗目を喫した。
 
 この結果、2位の神戸製鋼は勝ち点を35に伸ばしたのに対し、3位東芝の勝ち点は30となり、4位のヤマハ発動機(勝ち点28)に勝ち点2差にまで迫られるかっこうに。
 さらに、この日、地元(群馬・太田市運動公園陸上競技場)で近鉄ライナーズに23-20で辛勝したパナソニック ワイルドナイツが勝ち点25として5位に浮上。大接戦を繰り広げたNTTコムとトヨタ自動車が勝ち点23の6、7位、さらに4連勝と勢いに乗るリコーが勝ち点20で8位につけるなど、トップ4入りをめぐる争いは混沌としてきた。

 サントリー、神戸製鋼、トヨタ自動車、リコーなど、勢いに乗るチームは好調ぶりを維持できるのか。そして、東芝、パナソニックなど、やや躓いた面もあったチームは1ヶ月の間にどうチームを立て直してくるのか。
「1ヵ月空いた後は弱いチームからみればチャンスが増える」(NTTコム林雅人監督)
 じっくりチームを鍛え直し、そんなアップセットも期待できる第9節は、12月1、2日に行われる予定となっている。

(text by Kenji Demura)

 

FL松本主将(中央)、NOルアマヌ(左)などFWの頑張りもあって九州電力は初勝利をものにした
photo by Aki Nagao

トヨタ自動車は後半23分のCTBシリベヌシのトライ(写真)などで際どく逆転勝ちを収めた
photo by Kenji Demura (RJP)

NTTコムは試合終了間際、SH岡がインゴールに飛び込むがグラウンディングが認められず、逆転トライとはならなかった
photo by Kenji Demura (RJP)

 

速報サマリー

[10月27日]小野澤が通算100トライ達成! サントリー、神戸製鋼が無敗守る

 サントリーサンゴリアスのWTB小野澤宏時(34歳)がトップリーグ通算100トライの偉業を達成した。
 福岡・レベルファイブスタジアムで行われた福岡サニックスブルースとの一戦。小野澤は後半34分、ゴール前中央ラックからの展開にタイミングよく走り込み、インゴールへダイブした。
「体のメンテナンスをしてくれたスタッフや、一所懸命ボールを出してくれるFW、片側のWTBで100個トライをとれるようなゲームをしてくれたチームに感謝」と、前人未到の大記録を成し遂げた本人は感慨深げに語った。
 チームはこの試合を42-19で制し、8勝0敗(勝点39)で首位をガッチリとキープ。

 同会場で行われた九州電力キューデンヴォルテクス-NTTドコモレッドハリケーンズ戦は地元・九州電力が逆転勝ちで今季初勝利を挙げた。
「最後は勝負所でFWがしっかりまとまった。非常にうれしい」
 試合後にFL松本允主将が振り返ったとおり、5点を追う後半33分、モールから最後はFL小原渉が腕を伸ばして同点トライを奪い、難しい位置からのゴールもSO齊藤玄樹が決めて19-17で逃げ切った。

 高知・春野総合運動公園陸上競技場では、2位の神戸製鋼コベルコスティーラーズが7トライを挙げ、48-14でNECグリーンロケッツに快勝。7勝1分(勝点35)で首位サントリーをピッタリ追走している。一方、茨城・ケーズデンキスタジアム水戸でリコーブラックラムズと対戦した3位の東芝ブレイブルーパスは、7点を追うロスタイムにWTB伊藤真が執念のトライを奪ったものの、SO森田佳寿のゴールが外れ、26-28で痛い黒星を喫した。

 4強争いへ負けられないパナソニック ワイルドナイツは、ホームの群馬・太田市運動公園陸上競技場で近鉄ライナーズに競り勝った。後半20分にいったんはリードを許したが、終盤にFB田邉淳がPGを2本決めて23-20で逆転勝利を収めた。

 東京・秩父宮ラグビー場では、前半だけで5トライを奪ったヤマハ発動機ジュビロが後半キヤノンイーグルスに追い上げられたものの、36-25で順当勝ち。続く、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス-トヨタ自動車ヴェルブリッツは最後まで勝敗の行方がわからない大接戦となったが、トヨタ自動車が24-23で辛勝。4強入りに向けて貴重な勝ち点4をものにした。

 なお、今節では三宅敬(パナソニックWTB)と大田尾竜彦(ヤマハ発動機SO)がトップリーグ通算100試合出場達成。
 また、今季トップリーグの総入場者数が216,717人(1会場平均5,285人)に達し、2008-2009シーズン以来2回目の8節目での20万人突破となった。
 トップリーグ第9節は、代表活動を優先するウィンドウマンスによる1ヵ月の休止期間を経て、12月1日に再開される予定となっている。

(text by Kiyoshi Takenaka)

WTB小野澤のトップリーグ通算100 個目のトライなどで計42点を奪ったサントリーが全勝を守った
photo by Aki Nagao

24-23という大接戦の末、NTTコムを退けたトヨタ自動車。4強入りに向けて大きな1勝となった
photo by Kenji Demura (RJP)

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