トップリーグ2012-2013特集 TOPプレビュー & TOPレビュー

こちらでは次節の各試合の見どころ、そして試合結果のサマリーと全体のレビューを、トップリーグ観戦をより楽しく、より興味深いものにしていただけるよう、毎週掲載していきます。

リーグ戦 第10節(12/8 - 12/9)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
12/8(土) 13:00 NECグリーンロケッツ 29-6 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス フクアリ
12/8(土) 13:00 サントリーサンゴリアス 15-14 東芝ブレイブルーパス 味スタ
12/8(土) 13:00 ヤマハ発動機ジュビロ 28-35 近鉄ライナーズ ヤマハ
12/9(日) 13:00 パナソニック ワイルドナイツ 65-7 NTTドコモレッドハリケーンズ 太田
12/9(日) 13:00 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 52-7 福岡サニックスブルース カンスタ
12/9(日) 13:00 キヤノンイーグルス 26-34 トヨタ自動車ヴェルブリッツ ポカスタ
12/9(日) 13:00 九州電力キューデンヴォルテクス 29-28 リコーブラックラムズ ベアスタ

レビュー

サントリー"府中ダービー"を1点差で制して全勝キープ
神戸製鋼も無敗を守り、パナソニックが3位に浮上

 
 

WTB小野澤のTL通算101個目のトライでサントリーが東芝に逆転勝ち
photo by Kenji Demura (RJP)

後半21分のCTB仙波のトライで勝利に近づいた東芝だったが、1点に泣く結果に。リベンジのチャンスは?
photo by Kenji Demura (RJP)

 第10節、最も注目を集めたのは昨季の覇者で今季も唯一全勝街道を走り続けるサントリーサンゴリアスと過去5回トップリーグタイトルを獲得してきた東芝ブレイブルーパスによる"府中ダービー"。
 毎年、因縁が残るような好勝負が繰り広げられる両チームの対戦だが、今季も期待を裏切らない熱い80分間となった。

 これも、半ば予想どおりとも言えたが、立ち上がりから東芝は強力FWにこだわった戦い方で主導権を握りにきた。
 開始早々に東芝がLO大野均の突破からチャンスをつくって、敵陣深くに攻め込んだ後、PK→ラインアウトから得意のモールでトライを取りに行く。
 7分にはFL中居智昭が密集でサントリーボールをターンオーバーして、再びチャンスをつかみ、今度はPGを狙う。
 立ち上がりの15分間はほぼサントリー陣内で試合は進んだが、「11月は1人1人のDFでの責任を突き詰めることをテーマにした練習を続けて、その部分は向上して、いい方向に進んでいる」(大久保直弥監督)というサントリーの好守が光り、東芝SOデイビッド・ヒルがPGを外したこともあって、無得点のまま立ち上がりの時間帯は終了した。

 試合が動いたのは前半18分。それまでほとんどアタックチャンスのなかったサントリーがワンチャンスをものにして先制する。
 自陣からFLジョージ・スミス、そしてWTB小野澤宏時が左サイドを大きくゲイン。ラックからSOトゥシ・ピシがギャップを突いて前に出て、FB竹本竜太郎からWTB長友泰憲とつないでトライラインを越えた。

 この時、最後のラックから素早い球出しをしてみせたのは直前に先発の日和佐篤に替わってSHのポジションに入っていた小野晃征。
 小野はSOピシに替わってフーリー・デュプレアが途中出場する後半14分まで慣れないSHのポジションでプレー。試合後、本人は「誰がどこでのポジションでもできるのがサントリーのラグビーでは大事だ」と胸を張ったが、「全く練習していないのに、あそこまでやってくれるとは思っていなかった」と、大久保監督を脱帽させるほどの完璧な代役ぶりだった。

 サントリーが先制した後も、FW戦での東芝優位の状況は変わらなかったが、「ゴール前まで行くことで、どこか満足している部分があった。意識の問題」(LO大野)という部分も影響したのか、東芝はトライラインを越えられない。
 29分にSOヒルがPGを返したが、前半終了間際にもサントリー陣深くでアタックし続けたものの、トライは奪えないままターンオーバー。時計はすでに40分を過ぎていたが、サントリーはタッチに蹴り出さずに自陣深くからアタックを続け、アッという間に敵陣15m付近まで前進。CTBニコラス ライアンが貴重なPGを決めて、10-3と再びサントリーがリードを7点に広げて前半を折り返した。

「次は、もっと速いリアクションから早く攻めてトライを取りにいくようにしたい」と大久保監督はさらなる高みも見据えているものの、圧倒的に攻め込まれながら守り切っただけではなく、自陣深くからアタックを続けて3点をもぎ取った前半最後の攻防に王者の底力が垣間見えた。

「100トライ男の101個目のトライ」で決着

 後半に入ると「FWはセットを含めて圧倒できた」(和田賢一監督)という東芝がボールキープする時間がさらに多くなる。
 13分に比較的簡単と思われたPGを外したものの、7分、16分とSOヒルがPGを決めて東芝が1点差に迫った後、22分には「各チームのDFシステムがしっかりしてくる中、どこかで前に出て面のDFを切っていくことが重要になる」(同監督)という東芝らしいアタックが炸裂。
 途中出場のFLマイケル・リーチ、SOヒル、WTB宇薄岳央、FB立川剛士などが密集近くのスペースでしっかりゲインを切った後、リーチ→WTB廣瀬俊朗→CTB仙波智裕と右サイドに細かいパスをつないで、とうとうサントリーゴールを陥れた。
 今季のトップリーグの中でもかなり印象深いトライとなりそうな、いいかたちでの逆転劇だっただけに、東芝が一気に勝利に近づいたと思われたが、王者の勝負強さはさらに上をいくものだった。

「お互い意地の張り合い。やり切れた部分もある」(東芝NO8豊田真人主将)という熱戦は、最終的には「100トライ男の101個目のトライ」で勝負が決することになった。
 後半27分、自陣からアタックを続けたサントリーが東芝陣22mを越えた地点のラックから左へ。ライン際でボールを持ったWTB小野澤に向かって東芝DF3人が襲いかかるが、「面で来たので、一気に3人抜いちゃおう」という意識でいたベテランWTBはドンピシャのタイミングでチェンジオブペースから内に切れ込み、さらに追走してきた2人のDFも外に振り切って、左隅に飛び込んだ。
 15-14とサントリーが1点リードのまま、残り時間も東芝が攻め続けたが、38分に途中出場のSO森田佳寿が狙った逆転PGが外れるなど得点には至らず、そのままサントリーが1点差勝利をものにした。

 この結果、サントリーは開幕からの連勝を「10」に伸ばすとともに勝ち点で5位ヤマハ発動機ジュビロとの差を「18」に伸ばして(サントリー=48、ヤマハ発動機=30)、残り3節を前にして4位以内を確定させてプレーオフ進出を決めた。
 一方の東芝はボーナスポイント「1」を加えて勝ち点は「35」。翌9日にパナソニック ワイルドナイツがNTTドコモレッドハリケーンズに65-7で快勝して、やはり勝ち点を「35」としたが、得失点差で上回るパナソニックが3位、東芝が4位という順位に。

 2位の神戸製鋼コベルコスティーラーズは福岡サニックスブルースを寄せ付けず52-7と大勝して、勝ち点を「45」に伸ばしてサントリーとの勝ち点差を「3」に縮めた。
 その他、4強入りに望みをつなぐトヨタ自動車ヴェルブリッツがキヤノンイーグルスに34-26で競り勝ち、勝ち点「28」の6位に。一方、近鉄ライナーズも難敵ヤマハ発動機にロスタイムのSO重光泰昌のトライで劇的な勝利を収め(35-28)、勝ち点「26」の7位に浮上した。

 NECグリーンロケッツに6-29で完敗したNTTコミュニケーションズ、そして、九州電力キューデンヴォルテクスに1点差負け(28-29)のリコーブラックラムズは共に勝ち点「23」(8位リコー、9位NTTコム)。4強入りは厳しい状況となった。

(text by Kenji Demura)

 

東芝FLリーチの突進を3人掛かりのタックルで止めるサントリー。DFの勝利でもあった
photo by Kenji Demura (RJP)

パナソニックはWTB山田の3トライなどでNTTドコモに快勝。終盤戦に向けて調子を上げてきた
photo by Kenji Demura (RJP)

 

NTTドコモFBムリアイナを引きずりながらトライを決めるパナソニックFLバツベイ。堀江、田中、SBWの不在を感じさせない完勝ぶり
photo by Kenji Demura (RJP)

若手中心の思い切ったメンバーでパナソニックに挑んだNTTドコモだったが、初勝利は挙げられず
photo by Kenji Demura (RJP)

 

速報サマリー

[12月9日]神戸製鋼、パナソニックが快勝。九州電力は劇的な1点差勝ちで今季2勝目

9日、第10節の残り4試合が行われ、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、パナソニック ワイルドナイツの上位陣が順当勝ちした。

岡山・kankoスタジアムでは2位神戸製鋼が福岡サニックスブルース相手に計8トライを奪う猛攻ぶりを見せて52-7で圧勝。無敗のまま勝ち点を45に伸ばし、首位サントリーサンゴリアスとの差を「3」とした。

群馬・太田市運動公園陸上競技場では、地元・パナソニックがNTTドコモレッドハリケーンズに65-7で大勝。勝ち点を35に伸ばし、前日にサントリーに敗れた東芝ブレイブルーパスに替わって3位に浮上した。

「軽いプレーもなかったし、選手たちは80分間集中力を切らさずに戦ってくれた」と、前節のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦に次ぐ快勝ぶりに中嶋則文監督も終盤戦に向けて手応えをつかんだ様子。
この日、3トライを奪ったパナソニックWTB山田章仁がシーズン通算トライ数を16に伸ばし、NECのWTBネマニ・ナドロを1トライ上回って、再びトライ王に浮上した。

徳島の鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムでは、トヨタ自動車がキヤノンイーグルスに34-26で競り勝つ一方、佐賀・ベストアメニティスタジアムでは、地元・九州電力キューデンヴォルテクスが試合終了間際に飛び出したFL松本允主将のトライとCTBドウェイン・スウィーニーのゴールでリコーブラックラムズに29-28と劇的な逆転勝ち。昇格後2勝目を挙げた。

(text by Kenji Demura)

3トライを奪う荒稼ぎで、再びトライ王争いで首位に立ったパナソニックWTB山田
photo by Kenji Demura (RJP)

[12月8日]WTB小野澤の逆転トライでサントリーが東芝に1点差勝ち

8日、第10節3試合が行われ、東京・味の素スタジアムの"府中ダービー"ではサントリーサンゴリアスが後半27分のWTB小野澤宏時の逆転トライで東芝ブレイブルーパスに15-14で1点差勝ち。開幕からの連勝を「10」に伸ばし、早くもプレーオフ圏内である4位以内を確定させた。
FW戦で後手に回ったこともあって、「よく勝てたなという試合」とサントリー大久保直弥監督。
一方の東芝・和田賢一監督は「一発のタックル失敗の怖さを思い知らされた」と、守りでのミスを嘆いた。

静岡・ヤマハスタジアム(磐田)では、後半36分にヤマハ発動機ジュビロがLOトーマス優デーリックデニイのトライ(FB五郎丸歩ゴール成功)で28-28の同点に追いついたが、ロスタイムに飛び出したSO重光泰昌の決勝トライ(CTB大西将太郎ゴール成功)で近鉄ライナーズが35-28で競り勝った。近鉄は暫定6位に浮上。勝ち点でも5位のヤマハ発動機との差を「4」とし、4強入りの可能性が見えてくるかっこうとなった。

千葉・フクダ電子アリーナのNECグリーンロケッツ-NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦は、後半WTBネマニ・ナドロの2トライ1PGなどで引き離したNECが29-6で快勝。NECは暫定ながらワイルドカード出場圏内である10位に順位を上げた。

(text by Kenji Demura)

後半27分、小野澤選手が逆転のトライ
photo by Kenji Demura (RJP)

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