トップリーグ2012-2013特集 TOPプレビュー & TOPレビュー

こちらでは次節の各試合の見どころ、そして試合結果のサマリーと全体のレビューを、トップリーグ観戦をより楽しく、より興味深いものにしていただけるよう、毎週掲載していきます。

特別編「プレーオフトーナメント ファイナル」(1/27)

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試合結果

開催日 Kick Off Host   Visitor 会場
1/27(日) 14:00 サントリーサンゴリアス 19-3 東芝ブレイブルーパス 秩父宮

レビュー

[ファイナル]
東芝にトライを許さず、要所要所で効果的に3トライ
サントリーが激闘制して史上初の全勝での2連覇達成!

 
 

サントリーが19-3で東芝を倒してV2を達成。リーグ戦を含めての全勝優勝はTL史上初
photo by Kenji Demura (RJP)

プレーオフMVPこそSOピシに譲ったが、FLスミスは再び大舞台でチームを勝利に導く仕事をし続けた
photo by Kenji Demura (RJP)

セミファイナルでの反省を生かして、常にサントリーのテンポを意識して前に出続けたSO小野
photo by Kenji Demura (RJP)

前半34分、サントリーWTB村田が自身にとってこの日2本目となる貴重なトライを奪う
photo by Kenji Demura (RJP)

 27日、東京・秩父宮ラグビー場でプレーオフトーナメント ファイナルが行われ、東芝ブレイブルーパスの猛攻をしのぎながら、要所で効果的なトライを奪ったサントリーサンゴリアスが19-3で勝利。2季連続3度目のトップリーグ王者に輝いた。

「目の前のスクラム、ラインアウト、ブレイクダウンに100%の力を出して、コンテストしていく」(サントリー・大久保直弥監督)
「シンプルにフィジカル勝負。いかに立ってボールを動かしていけるか」(東芝・和田賢一監督)
 共に、ボールキープを続けながら自分たちのスタイルで攻撃していくことを貫こうとするチーム同士の対戦。
「サントリーさんとの対戦はいつでも意地の張り合いで熱い試合となる」(東芝NO8豊田真人主将)
 もちろん、お互いの手の内、というか相手の凄さも十分過ぎるほどわかってもいる。
 まずはセットプレー、ブレイクダウンでのフィジカルな闘いでどちらが優位に立てるかに注目が集まった。

 キックオフからの3分間、ボールキープをしながら東芝陣で攻め続けたことに象徴されているように、立ち上がり最初にペースをつかんだのはサントリー。
 6分にはSO小野晃征がタテに突破した後、右サイドをCTB平浩二が東芝ゴールに迫るが、ラックからSHフーリー・デュプレアが持ち出してFLジョージ・スミスに通そうとしたパスが少しだけ乱れて、スミスがまさかのノックオンでトライならず。
 間違いなく世界最高峰の選手である2人の名手がトライチャンスに顔を出しながらミスで得点を奪えなかったのは、東芝DFのプレッシャーが厳しかったことの裏返しとも言えた。

 ただし、同じ失敗を繰り返さないのも超一流の証し。2人がそのことを証明するのにそう長い時間は必要ではなかった。
 2分後の8分。
 東芝陣深くのPKのチャンスからデュプレアがショートサイドに持ち出し、ボールは再びスミスへ。豪州代表110キャップを誇り昨季のMVP2冠でもあるバックローは、東芝DFをあえて引きつけるように、2人、3人とタックルを受けながら時間と空間をつくり、大外で待っていたWTB村田大志へオーバースローでラストパス。
「ミスを恐れず、いつも通りのプレーをすることを心がけた」という、この日が今季6試合目の先発で初のファイナルの舞台だった24歳WTBが、身体能力と思い切りの良さを証明するかのようにギリギリのタイミングでコーナーフラッグの内側に飛び込み、サントリーが先制する。

「外国人をいかに抑えるか」(東芝NO8豊田主将)
 恐らく、それは東芝だけではなく、トップリーグ全チームがサントリーを倒すための大きなポイントでもあるはずだが、この日の東芝は立ち上がりの時間帯に早くも「外国人にやられた」痛い失点を喫することになってしまった。

独走ダメ押しトライのSOピシがプレーオフMVP

「前半アタックできなかったのが全て」
 和田賢一監督の言葉どおり立ち上がりからDFの時間帯が多かった東芝だが、村田のトライでリードされてからは、絶対的な自信を持つFWプレーを軸に主導権を握りにかかる。
 18分にSOデイビッド・ヒルがPGを決めて2点差に迫った後、ラインアウトからのモールを押し込みインゴールへ。さらに、スクラムでもプレッシャーをかけてサントリーが反則を繰り返す。
 それでも、34分までスコアボードの数字は動かなかった。
「ファイナルになればDFが第一ということを選手がわかっている。タックルを繰り返しできる能力はサントリーに分があった」
 そう大久保監督が胸を張る強固なDF力で、サントリーは東芝にトライを与えない。

 しかも、「サントリーのトライをさせない、ゴールへのプライドが上回った」(東芝LO大野均)だけではなく、守り切った後は自分たちの“アグレッシブ、アタッキングラグビー”に立ち返ってトライを取り切る、王者が王者である理由を見せつけることにも成功する。
 前半34分に得点に変動があったのはサントリー側だった。
 サントリーらしい連続攻撃の後、SO小野が東芝ゴール右コーナーフラッグ際に絶妙なキックパスを落とし、再びWTB村田が東芝DFに競り勝って貴重な追加トライ。
 トライを導いたSO小野は1週間前のセミファイナルでは前半33分で退く“失態”を演じていたが、肝心のファイナルでは見違えるようなパフォーマンスでチーム全体が常にサントリーのテンポでラグビーをする原動力となった。
「シンプルに特別なプレーはしないことを心がけた」という小野がこの日、唯一見せた特別なプレーが村田のトライにつながるキックパスだったかもしれない。
 そのまま、前半は12-3とサントリーのリードで終了した。

 最初の40分間は東芝もDFで粘りながらもサントリーが2トライを挙げ、東芝はノートライ。
 前半のトライ数の差でさえ、攻めている時間帯に比例しているとは言えなかったが、後半に入ると「攻める時間帯とトライ数」の関係は全く比例しないもの──むしろ反比例とさえ言えるような関係性を有していくことになる。
 後半、ほぼ攻め続けたのは東芝。
 2分に前半のヒーロー、サントリーWTB村田が反則の繰り返しでシンビン。21分にはSHデュプレアが故意のオフサイドでイエローカードを出された。
 当然のごとく、東芝は自信があるモールでトライを取りに来たが、「下に入ったり、割ったりして、モールを解消させることを考えた」(LO真壁伸弥主将)というサントリーの好DFにとうとうトライを奪えず終い。
 この日の東芝のアタックは、いつもよりも外側のスペースを攻めるケースも目立ったが、32分にようやくWTB伊藤真がサントリーゴール右隅に飛び込んだが、最後のパスがスローフォワードの判定でノートライ。
「もう少し東芝らしい真っ向勝負でいった方が良かったかもしれない」(PR浅原拓真)
「チャンネル0、1ではなくチャンネル2、3ぐらいを攻めたことで、FWとの距離が空いて連動性を欠いた面があった」(CTB仙波智裕)

 2度に渡るシンビンによる数的不利の状況下でも「やるべきことは一緒」(WTB小野澤宏時)と、全くパニックにならずに東芝のアタックを受け止め続けたサントリーは、終了5分前に自陣深くに攻め込まれながら、お馴染みFLスミスのブレイクダウンでのターンオーバから、途中出場していたSOトゥシ・ピシが約90mを走り切るダメ押しトライで東芝の息の根を止めた。

「どちらが勝ってもおかしくなかった。ひとりの人間としてファイナルに相応しい素晴らしいゲームだったと思う」
 就任1年目でトップリーグ史上初のシーズン全勝での完全優勝を果たす偉業を成し遂げたサントリー・大久保監督はそんなふうに80分間の死闘を振り返った。
 確かに、どちらが勝っていてもおかしくはなかったが、サントリーがなぜ勝ち続けられるのかが凝縮されていたファイナルでもあった。

(text by Kenji Demura)

東芝は途中出場のFLリーチがサントリーゴールに迫るシーンもあったが、最後までトライは奪えなかった
photo by Kenji Demura (RJP)

3年ぶりのトップリーグ制覇はならなかった東芝。日本選手権でのリベンジを目指す
photo by Kenji Demura (RJP)

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