MSC準決勝 マッチ&会見リポート(三洋電機 25-21 東芝)

トヨタ自動車ヴェルブリッツ
ここ秩父宮ラグビー場で行われたプレイオフトーナメント セミファイナルは、今シーズンのトップリーグ13戦全勝の三洋電機ワイルドナイツとマイクロソフトカップ2005・2006を連覇し3連覇を目指す東芝ブレイブルーパスによる、12,330人の熱いラグビーファンが見守る中での対戦となりました。今シーズン、トップリーグ(第7節)での直接対決では三洋電機ワイルドナイツが"41-0"で圧勝しています。
試合は三洋電機SOブラウン選手のキックオフで開始されました。
前半開始早々の1分、三洋は東芝陣25m付近での反則よりSOブラウン選手がペナルティゴールを成功し先制(3-0)した。前半風上の東芝はキックを多用し三洋陣で試合を進め再三ゴール前まで攻め込むものの三洋の厚いディフェンスに阻まれて突破できず、しかし東芝は前半30分に三洋のゴール前の反則よりWTB吉田選手がペナルティゴールを成功(3-3)、続く34分には三洋陣ゴール前5m付近のラインアウトよりモールを押し込みLOホルテン選手がトライを奪い(3-8)逆転し試合を折り返した。

後半、三洋は開始早々の3分に東芝ゴール前での反則よりSOブラウン選手がペナルティゴールを成功(6-8)、続く6分には攻める東芝のボールを後半より出場のLO川口選手がインターセプトしWTB北川選手にボールを繋ぎトライ(ゴール成功)し逆転(13-8)。その後、東芝はWTB吉田選手がペナルティゴール、CTB冨岡選手のドロップゴールと続け再び逆転(13-14)、後半29分には三洋のスクラムから出たパスボールを東芝SO廣瀬選手がインターセプトして60mの独走トライ(ゴール成功)し試合が決まったかに見えた(13-21)。しかし三洋は残り10分を最後まで諦めず、後半35分にはWTB北川選手がトライを奪い(18-21)、続く40分には東芝ゴール前でのラックよりSOブラウン選手が左隅に飛び込み逆転トライ(ゴール成功)を奪い三洋電機ワイルドナイツが大接戦の熱い戦いに勝利した。
三洋電機ワイルドナイツは次週(2月24日)秩父宮ラグビー場で花園会場勝者のサントリーサンゴリアスとファイナルに挑みます。(佐藤克則)
三洋電機 25-21 東芝   三洋電機 25-21 東芝   三洋電機 25-21 東芝
東芝ブレイブルーパス

瀬川監督(右)、廣瀬キャプテン
瀬川監督(右)、廣瀬キャプテン

三洋電機ワイルドナイツ 25-21 東芝ブレイブルーパス(2月17日)

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督

「トップリーグ最高峰のラグビーで、4強に残れて、たくさんのお客様の前でこのような試合ができたことを喜んでいます。前回、ブレイクダウンで思い通りにいかなかったが、長いトップリーグの間に修正してきたアタックで、今日は前半風上でキックを有効に使い、良い形で折り返せました。残り時間が少ないなかで、三洋さんが同点、逆転目指してきたとき、東芝は少し守りに入ったのかなと思います。もう一度チャンスがありますから、しっかり準備したいと思います」

──後半、ミスから獲られたが?
「勝っているとき、負けているときのゲームプランをしっかり選手に落とし込めなかった僕の責任です。去年のサントリーさんも、選手に聞くと、勝っているのに負けている顔をしていたそうです。自分たちの強みを出せば、内容的に十二分に勝っている部分がたくさんありました。スコアを争う勝負にこだわるチームをもう一度つくっていきたいと思います」
──連覇が途絶えたが。
「今年の目標として連覇を掲げていましたが、タイトルを獲れなかったということに関しては、非常に残念です。今年は廣瀬中心のチームで一つ一つ成長してきましたが、勝負へのこだわりが昨年度のチームにはありました。今年、もう一度一からそういうチームをつくっていきたいと思います」

○廣瀬俊朗キャプテン
「前回のリーグ戦では42対0で負けたのにも関わらず、応援に来てくださった大勢の東芝ファンの皆様に感謝して、良いパフォーマンスができました。負けたけれど、今シーズンのベストゲームができました。内容は満足、勝敗だけがうちに来ていない試合でした。トニーのキックをマイボールにしたとき、うまく時間を使おうとしたのですが、ノータッチキックで相手ボールにしてしまったのがまずかったです。あれは蹴った選手のミスでなく、チームの意思統一ができていなかったミスでした。最後のシーンは『ユーズ・イット』がレフリーからかかったので仕方ないかなと思います」

──後半38分のペナルティを狙わなかったのは?
「風上だったら狙っていました。風下で3点差、入っても6点差、しかもトニー・ブラウンということで、最悪でも(ラインアウトから)マイボールにできるだろうと。そこのラインアウトが取れなかったのはFWの判断でしたから、気にしていません。中居(副将)に聞いてください(笑)」
──相手ラインアウトボールは取れていました。
「毎試合、しっかり研究してくれています。一週間空いて中居中心に研究してくれたので、楽に戦えました」
──最後にトライされた瞬間の気持ちは。
「まさかと思いました(笑)。全然見えませんでした。ただ、レフリーの判断ですから、言うことはありません」
──三洋の強みは?
「最後の最後まであきらめず、集中力をもっていました。強いです。今までの三洋さんじゃない。今日はビッグチャンスだと思っていましたが、東芝のミスで三洋さんに勝ちを譲ったと感じています」
──手応えは?
「一つは勝つチームの雰囲気が出てきたことです。トップリーグで感じなかった一番の良さです」
──連覇が途絶えたが。
「僕らは瀬川さんとつくってきた今年のチームです。今年勝てたとしても、結果としての連覇だと考えていました」

三洋電機 25-21 東芝   三洋電機 25-21 東芝   三洋電機 25-21 東芝   三洋電機 25-21 東芝
三洋電機ワイルドナイツ

宮本監督(右)、榎本主将
宮本監督(右)、榎本主将


◎三洋電機ワイルドナイツ
○宮本勝文監督

「今日の試合は1位で通過、4位で通過とは全然関係なく、本当にガチンコで死闘を繰り広げた良いラグビーだったと思います。最後の最後、我々に集中力があったということです。紙一重の差、これがトップリーグです。ラグビーの醍醐味を、最後までお客様は感じてくれたと思います」

──ここで負けると三洋らしいとおっしゃったそうだが。
「僕はそんなこと言っていませんよ(笑)。僕らのときはそうだったということで、今の選手がそういうことはないと思います。やっぱり1位ですけれど、トップ4にはそう簡単に勝てません。東芝さんも三洋も、こういうタイプの展開になることは分かっていました。たとえ、負けても、立て直そうと思って見ていました。予想外というか、やってみないと分からない、これが本当の心境です。前半、風下の割には頑張っているなと思いましたが、ラインアウトの失敗、スクラムでのミス、インターセプトされてトライなど、これでよく勝てたなと。これもラグビーなので仕方ないです。自分が行って選手の代わりにやれるわけではないですから」
──交代がうまくいったが。
「彼らの能力でしょう。川口と吉田のスピードは敵から見たら脅威です」
──サントリー戦に向けて。
「サントリーさんはセットプレイをしっかり組んできます。ちょっと厳しい。セットがもつかな。そこがポイントでしょう」
──最後のトライのシーンは?
「めちゃくちゃ嬉しかったですよ。今まではそれをやられる方だったけれど、女神さんが降りてきてくれたのかと(笑)。めちゃくちゃ嬉しかったですね。決勝戦はどう転がるか。選手は最後まであきらめないでやってくれると思います。試合なので、勝ちもあれば負けもあると思いますが」
──良かったのは?
「とにかく、平常心を失わずに『まだ時間がある』と選手がやれたことです。逆に東芝さんの方に守らなければという心が生まれて、それまで我慢していた東芝さんの穴をこちらが突けたと思います」
──残り5分で。
「多分、三洋にはもう捨てるものがないと、開き直れて、ボールを動かし始めたんですね。そこで、東芝さんの足が止まったし、穴も見つかったと思います」

○榎本淳平主将
「今日の試合は、前半から本当に激しくて、最後の最後まで分からなかった試合でした。前半、風下で苦しかったけれど、集中を切らさず、気持ちの面で勝つんだ、ということで勝てた試合だったと思います」

──最後のシーンは?
「吉田尚史が持ち込んで、ぎりぎりFWがピックして、トニーとオライリーがモールみたいに持ち込んでトライです。おそらくほとんどスペースのない、1mもなかった狭いところをもぐり込んだプレーです。あんまり嬉しくて涙が出ました」
──ブラウンが外して3点差のときは?
「まだ、残り4分くらいあって、僕はあせるなと言っていました。最後は21対21でも僕らの勝ちかなと吉田が言っていたけれど(横から、宮本監督が『延長戦や』と助け船)。それでいいと言ったんですが、キックが来て、結局、最後の最後までトライを獲りに行くことになったと思います」
──ブラウンのキックは不調だったが。
「前半の途中からレフリングと合わず、トニーは冷静さを欠いていました。それがキックに出たと思います」
──東芝は?
「ベスト4になると大差ありません。東芝さんのこの試合にかける気持ちが僕らを上回っていて、多少、受けてしまったところがありました」
──試合前の心境は。
「正直、火曜日くらいから緊張していたというか(笑)。出さないように出さないようにしていたんですけれど、昨日から落ち着いてきて、今日は落ち着いて最後までできました。(横から宮本監督が、『今日は榎本はバスに非常口から乗ったんですよ(笑)。バスが止まって出発できなかった』と暴露)そうだったかもしれません(笑)」
──点差が開いたときは?
「パスからインターセプトされてトライ獲られて、選手がうつむいていたので、顔を上げろと声をかけました。ブザーが鳴るまで分からない、前へ行こうと確認しました。僕は何も焦っていませんでした。やることが雑になっていたので注意したくらいです。残り10分でも獲れると思っていました。インターセプトで獲られたところから15人の集中力が高まってスイッチがさらに入りました。さらに一つ締まった感じでした」
──去年とどう変わったのか。
「絶対的な自信はないですが、チームとして一丸となってやってきて、結束力、信頼ができてきたと思います。同じ社会人なので、他のチームとそんなに個々の力の差はないと思います」

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