1節 マッチ&会見リポート(サントリー 9-19 三洋電機)

マッチリポート
サントリーサンゴリアス 9-19 三洋電機ワイルドナイツ
(week1/2008年9月5日 at東京・秩父宮ラグビー場)

  サントリーサンゴリアス 9-19 三洋電機ワイルドナイツ
三洋電機 強固なディフェンスは今年も健在
6シーズン目のトップリーグ開幕カードは、昨季のTLプレーオフ、日本選手権決勝を争った両雄の決戦。ワラビーズ元代表のSHジョージ・グレーガンの加入でさらに攻撃力をアップしたサントリーサンゴリアスが昨シーズンの雪辱を見せるのか、オールブラックス元代表のトニー・ブラウンとの対決も話題となり、秩父宮ラグビー場に14901人のファンが駆けつけた。

ナイトゲームとはいえ、まだ蒸し暑さが残るこの季節、汗でボールはすべり、キックの多い試合となった。三洋電機ワイルドナイツはトニー・ブラウンのキック主体に攻め込み、激しいチェイスからサントリーのミスを誘う。ロングキック、ハイパント、クロスキックとキックを次々と使い分け、しかもボールの回転数を自在に変えることでバックスリーを苦しめる。三洋のキックオプションは決して簡単に相手にボールを渡すことはなく、キッカーとそのボールを追うプレーヤーとの連携が、ランプレーに劣ることないレベルまで磨き上げられていた。
対するサントリーは今回もセットプレーでは圧倒。強烈なプッシュのスクラムは昨年以上に三洋FWを粉砕する。しかし、これを攻撃の起点として活用し得点に結びつけることができず、タレントぞろいのBKにとっても、スタンドのサントリーファンにとってもストレスの残る展開となった。

三洋は、前半2分にSH田中が密集をすり抜け、このゲーム唯一のトライ。この日の三洋はトニー・ブラウンのキックで前進し、サントリーのカウンターアタックには強烈なタックルで地域を譲らず、結果4PGを重ねて勝利を守った。昨年優勝の自信からか、15人がグラウンド全体に広がり、それぞれのフェイズで一人ひとりが確実な守備を繰り返す。単発のアタックには、強烈なダブルタックルで応戦し、激しくボールを奪い取った。試合中盤でのサントリーラインアウトへの強烈なシャローディフェンス(DF)は、この1年のさらに精進した三洋DFの強さを印象付けた。
サントリーはまだ目覚めてはいない。終盤になってSH成田、SO曽我部の登場から一気にテンポアップし、やっとボールをワイドに動かした。サントリーの攻撃力に期待するファンは、試験的実施ルール(ELV)で5m下がったDFラインに対し、日本代表ぞろいのBKがどう戦うかを見守ったが、この日のサントリーにはまだ三洋DFをブレイクする輝きはなかった。

今年のトップリーグは、各チームの戦力が充実し、一戦たりとも気の抜けないシーズンが予想される。各チームは勝利のためにDFの強化に取り組んでいるが、どこかセットプレーからのアタックに消極さを感じることがある。ELV導入で得た5mのアドバンテージを研究し、トップリーグにトライシーン溢れる試合が増えてくることをファンは望んでいる。シーズン終盤でこの両雄が再び戦うとき、そのときは胸のすくトライで決着がつくことを期待したい。(照沼康彦)

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会見リポート
サントリーサンゴリアス
清宮監督(右)、山下主将
清宮監督(右)、山下主将

◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「開幕戦、勝利を目指しましたが、勝てなくて残念です」

──交代は予定どおり?
「新ルールの下、ああいう替え方をしようと考えていたとおりでした。まあ、20点差で勝っていて、さらに点差を広げようというプランでしたが」
──試験的新ルールでゲームメイクは変わったか?
「まあ、状況に応じてバランス良くということですね。今日も汗でボールが滑ったので、もし、滑らなければ前半からジョージ(グレーガン選手)がもっとボールを動かしていたでしょうし」
──ブラウン選手のキックが有効だったが?
「蹴っただけでしょう。うちが処理できなかったというだけで」
──スクラムは圧倒したが?
「大人と子供のスクラムのようで完全に勝っていたと思います。まあ、反則を採ってもらえなかったりね。相手の反則なしでアタックすればサントリーの優位性を生かせたと思いますが」
──ジョージの出来は?
「点数を付けるほどの試合ではないと思います」

○山下大悟主将
「とても残念です。二次防御の処理、ハイパントの処理がうまくいかず、ニコラスのブラインド攻撃もみんな三洋さんに知られていたようです。後半、10分から20分で勝負が決まったと思います」

──三洋は想像を超えた強さ?
「三洋さんの強さは練習で想定してきたとおりでした。こちらが、試合で力を出せなかったということです。練習中のことから、ちょっと悔いが残ります。キャプテンとして、チームの雰囲気をしっかりまとめきれなかった責任を感じています。一日一日の積み重ねが大事なことを改めて感じています」


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三洋電機ワイルドナイツ
飯島監督(右)、三宅ゲームキャプテン
飯島監督(右)、三宅ゲームキャプテン

◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「予想通り、サントリーさんのブレイクダウンは強かったです。80分、ディフェンスして強いサントリーさんからトライを獲られなかったのは良かったと思います。トニー・ブラウンのキック中心に攻めたのは、ボールが滑って回せなかったからで、臨機応変に選手が考えて試合を進めてくれたことに改めて感謝しています」

──ボールが滑ったようだが。
「もう少しフェイズの多いパスラグビーをしたかったのですが、汗でボールが滑ったことと、サントリーさんの強いタックルでブレイクダウンが厳しく、ああいう攻めになりました」
──気持ちの面で上回ったのか。
「両方とも強いライバル意識を持って、素晴らしい試合でした。得点としては勝ちましたが、気持ちの面では良い勝負だったと思います」
──トップリーグの監督は初めてだが。
「それほど緊張はしませんでした。選手の調子が良かったし、私が歳をとったということもあります(笑)」
──スクラムはやられたが。
「局地戦は負けたが、トータルで勝ったということです。だが、上昇しなくては。うちは幸い控えに強いフロントローがいますので練習しかないです。うちはスクラムに固執することはないですが、そこも勝ちたいですね」
──トニーのキックはハーフタイムの指示通りか。
「何も言っていません。ハーフタイムではブレイクダウンの所、選手の故障、予想以上に疲れていた選手のバテ具合を確認しただけです」
──今日の勝ち点は。
「おそらくサントリーさんとは終盤で競ることになります。相手を勝ち点0にしたのには倍の意味があります。マイクロソフトカップ、日本選手権もありますから、大きかったと思います」


○三宅敬ゲームキャプテン
「まず、開幕戦ということで、初のナイターをさせてもらい、感謝しています。バスも遅れ、コンディションづくりが難しい中、戦ってくれた選手を誇りに思います。厳しいゲームになるのは分かっていましたが、勝ったこと以上にサントリーさんのような素晴らしい選手が揃っているチームにトライを獲らせなかったのは良かったと思います」

──グレーガン選手について。
「最初は本当に第三者として、『わーっ、グレーガン選手や』と(笑)。でも、うちにもトニー・ブラウンがいて、素晴らしい選手には慣れていますので」
──トニーのキックの攻撃は。
「前半の20分くらいから、ちょっと風下かなと思ったのですが、踏ん張れば何とかなるかなと。リードして自信を持って後半に臨めたのも大きかったです。後半、風上になったので、風にも助けられたので良かったです。うちはトニーのキックが一つの武器ですので」
──トニーのキックは蹴っていただけなのか。
「蹴っていただけに見えるかもしれませんが、うちはキックのオプションは5,6種類持っていて、チェイス、プレッシャー、蹴り返されたときの捕球者など決まっています。ボールを離すリスクはあるかもしれませんが、マイボールにする意識はありますし、対応する選手も素晴らしいと思っています。」
──試験的新ルールについて。
「レフリーとのコミュニケーションの点が難しいですが、レフリーの皆さんも一生懸命やっていらっしゃるので、選手もしっかり理解してプレーしていくことが重要です」
──ノーパニックというかけ声は。
「パニックになったら自滅するので。3年くらい前のうちがそうでした。同じ負けるなら自分たちのラグビーをやって負けたほうが良いので、皆の意識を高める意味で使っています」
──グラウンドは。
「いい感じでした。シーズン通してほしいところです(笑)」

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