7節 マッチ&会見リポート(サントリー 21-16 クボタ)

マッチリポート
サントリーサンゴリアス 21-16 クボタスピアーズ
【week7/2009年10月24日(土) at東京・秩父宮ラグビー場】

前節のホンダ戦後に中5日でサントリーと対戦するため、しっかりコンディションを整えて臨んだクボタ。試合前の選手の表情に内に秘めた熱い思いを感じた。緊張はピークに達しクボタの選手の表情にも硬さがあった。

試合開始から3分にサントリーの見事な展開から、この日も好調CTBライアン・ニコラスが、クボタディフェンスラインの上がりの早さを見て、左のコーナーに見事なグラバーキック。完全にクボタディフェンスと入れ替わるかたちになったサントリー左WTB小野沢宏時が、左中間にボールをおさえて見事な先制トライ。

そのままの勢いを維持していくかに見えたサントリーだがクボタのしぶといディフェンスに苦戦する。今シーズン、トップリーグ14チームの中で最多のトライ数を誇り、圧倒的な攻撃力を持つサントリー。その爆発的な攻撃力を上手く引き出しているのが元オーストラリア代表(ワラビーズ)のSHジョージ・グレーガンである。この日はスタンドに、10月31日に国立競技場で行われるブレディスローカップ、オールブラックス vs ワラビーズの試合に参加する一部メンバーが秩父宮ラグビー場に来場しており、元同僚のサントリーSHジョージ・グレーガンのプレーを観戦。場内アナウンスで観戦に来ていることが紹介されると、多くの観客から拍手でむかえられ、場内は盛り上がりを見せた。

そのサントリーSHジョージ・グレーガンのテンポの良いボール捌きで、波状攻撃を仕掛けるサントリーだが点が取れるところまではいかなかった。
対するクボタは、我慢のディフェンスを続け、数少ないチャンスを点に結びつけていく。前半12分、守勢から転じて積極的な攻勢が実を結びクボタLO鈴木がトライ。ドゥラームのゴールキックもきまりクボタが5-7でリードする。

その後は、双方共に点数を重ねていく。圧巻だったのは、前半終了間際にクボタのSOドゥラームが決めたDG(ドロップゴール)だった。
後半の展開に期待を持たせ、11-13の状態で前半を終了。

後半は、一進一退を続ける。クボタの一人一人のタックルが見る者を釘づけにした。チーム名のスピアーズの名の通り、一人一人が踏み込んでタックルに入る様子は、まさに槍のごとく。サントリーの選手に刺さるようなタックルを連発。キャプテンHO萩原・WTB柴原のタックルは味方を勇気づける素晴らしいタックルだった。

国内リーグ屈指の攻撃力を誇るサントリーも、ところどころでチャンスの芽を摘み取られるかたちで、攻めあぐねる。

均衡が崩れたのは、後半11分クボタのNo.8マイケル・ブロードハーストのシンビンによる一時退場から、クボタのディフェンスが序々に綻び始める。それでも、クボタは一人少ない状態で頑張った。しかし、後半19分に日本代表スコッドにも選ばれた、絶好調の眞壁がいいサポートからボールを受けて、クボタのゴールラインに切り込んでトライ。ライアン・ニコラスのゴールキックも決まり18-13とする。

その後は、双方に決定的チャンスが巡ってくるも、トライまでいかない。
後半34分にクボタの反則から、サントリーのライアン・ニコラスがペナルティーゴールを決めて21-13となった。
クボタが終了間際にクボタらしさを発揮し、サントリー陣内に攻め込むと、サントリーの反則から、キックの名手クボタのSOシェーン・ドゥラームがペナルティーゴールを決めて21-16と追い上げる。
クボタ、後半最初の得点に、僅かな残り時間に最後の望みをかけて、攻め込む。
サントリーゴール前まで迫る。もう少しでサントリーゴールを落とせるところで、ラックから出たボールは、SOドゥラームに渡る。ドゥラームは、左すみのコーナーを狙ってキックパスを選択。
クボタメンバーの希望を乗せてボールはコーナーめがけて飛んでいく。

しかし、無情にもボールをキャッチしたのはサントリーのFLウェイン・ファンニエルデンだった。
タッチに逃げて、ノーサイド。21-16でサントリーの勝利。負けはしたが、クボタのディフェンスが光った試合だった。(今泉 清・元日本代表)

クボタスピアーズ

会見リポート
クボタスピアーズ
山神監督(右)、荻原キャプテン
山神監督(右)、荻原キャプテン


◎クボタスピアーズ
○山神孝志監督
「ちょっと、あの‥‥。非常に悔しいなと‥‥。非常にたくさんの方々に応援していただき、凄く良いゲームでした。選手一同、よくやってくれたと思います。これで終わりでなく、まだまだ行けるという手ごたえのあるゲームでした。勝ち続けるのは難しいです。今日は勝つことに集中できる相手で、準備してきたとおり、サントリーさんのつなぎのラグビーをなんとか分断して戦えば、まとまりでスピアーズが勝てると思っていました。選手は良くチャレンジしたが、勝ちきることができなかったのは、サントリーさんが上だったと思います。この悔しさを乗り越えていく中で、自分たちのやるべきことを見つめてやっていくしかないです。戦略もラインアウトもしっかりできたし、ブレイクダウンも頑張ったし、一つ一つを自信にしていきたいです。コンスタントに、それをやって行けるチームにしないとサントリーさんには勝てないと思います」

──ケフ選手の起用は?
「どこに入れるか難しかったが、インパクトを与えるため、少し早めに入れました。結果論だが、あのタイミングでよかったと思います」

○荻原要キャプテン
「非常に悔しいです。自分たちは去年、日本選手権でサントリーさんに負けてから、あの悔しさを晴らすためにやって来たので、今日の試合は重要でした。しかし、セットピースで後手を踏んでしまいました。1ヶ月、しっかりやって後半に備えたいと思います」

──悔いが残るとしたら?
「前半の頭のノックオンがあるが、積極的なミスなので構わないです。後半、イエローで人数の少ないときにペナルティゴールを入れられたのが敗因です」

──その10分間の守りはよかったが?
「非常にタイトなディフェンスで、体力的な部分で『来て』いました。でも、やっていて、みんな楽しい顔をしていました。常に声をかけて、楽しんでやろうと言い合って、選手は生き生きとやってくれました」

──サントリーの攻めを分断する作戦とは?
「サントリーさんの強みをつぶすために、ニコラス選手のオフロードを警戒したのと、FWが走りこんでくるので、間隔を作って前に出るディフェンスを意識しました」




サントリーサンゴリアス
清宮監督(右)、佐々木キャプテン
清宮監督(右)、佐々木キャプテン


◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「僅差の勝利で、紙一重で勝利を拾ったという感じです。クボタさんのディフェンス、ブレイクダウンのところのパフォーマンスが、終始変わらず良かった印象です。サントリーもマイボールをあれだけ持っていたにしては、さほど失ってはいないし、ペナルティも犯していないので、まあまあ、合格点です。つまり、今日のゲームではお互いが、そこそこ、このような点差の関係にあるということが分かった試合でした。特別なことはしないで臨みましたが、次はクボタ用にしっかり策を用意しようと思います」

──グレーガン選手の起用時間が長かったが?
「あと1本獲ったら、獲ったら、獲ったら‥‥で、ずっと行った感じです。5点差で、ディフェンスのキーマンのジョージをはずすのに躊躇しました」

──トライが二つなのはしょうがないか?
「不満ですよ、そりゃ。獲ろうと思うが、まあ、今日はラッキーだったということです。もちろん、不満です。なっ(とキャプテンに同意を求める)」

──三洋と勝ち点差は2点だが?
「開幕戦のドローがなければ、本当に思ったとおり試合ができています。勝ち点2点差は引き分けだったからしょうがないですね。直接対決で勝てばよいという位置にいられれば」

──去年との違いは?
「なんでしょうかね。キャプテン、選手ですかね」

○佐々木隆道キャプテン
「本当に相手は強かったですし、今まで対戦した相手の中で一番、ブレイクダウンでファイトしてくるチームでした。その相手に攻めて、後半、ちょっとずつサントリーの形になったトライも生まれました。しっかりチャンスをものにしたから勝てたと感じています。これから1ヶ月、チームをしっかり強くできるよう、もう一回、作り直して行きたいと思います」

──後半のトライは?
「ボールキャリアーが一人一人前へ出られて、トライのシーンで言えば、僕がちょっと前に出て、野村が抜けました。ああいうチームには、ちょっと前に出ることが大事です」

──点数よりトライを狙ったのは?
「相手はあまりトライを獲れないだろうと、取られても3点だし、攻めてトライが獲れる匂いがしたので‥‥」

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