プレーオフ セミファイナル TOPマッチレポート(東芝 12-17 サントリー)

今シーズンより開始した、特集「TOPマッチプレビュー・レポート」。
ワイルドカード、プレーオフトーナメントと、引き続き、スポーツライターの目から見る試合プレビューとマッチレポートをお送りいたします!!
佳境となった今シーズン。どこがトップリーグチャンピオンになるのか?
どこが日本選手権に出場するのか???
見どころ満載の試合をもっと面白く、楽しく観戦するために、必見です!

プレーオフトーナメント
ブレイクダウンで返り討ち! サントリー、王者・東芝を沈める

22日、プレーオフセミファイナル第1試合、東芝ブレイブルーパス-サントリーサンゴリアス戦が行われ、2週間前のレギュラーシーズン最終節の対戦では完敗したブレイクダウンとセットプレーで優位に立ったサントリーが17-12で勝利。3年ぶりとなるファイナルへと駒を進めた。
一方、レギュラーシーズンを1位通過した東芝のリーグ3連覇はならず、日本選手権でのリベンジを目指すことになった。

  FW戦で圧倒してサントリーが東芝にリベンジ。自ら最後のキックを蹴り出したFL佐々木はド派手なガッツポーズで喜びを表した
FW戦で圧倒してサントリーが東芝にリベンジ。自ら最後のキックを蹴り出したFL佐々木はド派手なガッツポーズで喜びを表した
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

サントリーサンゴリアス ○17-12● 東芝ブレイブルーパス(前半12-0)──1月22日

レギュラーシーズン最終節で対戦していたことが、プレーオフでの再戦に微妙な影響を与えたことは間違いないだろう。
「ここまで来たら、手の内を隠しておいても意味がない」(東芝・瀬川智広監督)
そんなふうに、両者が互いに相手の力や戦い方を把握した中でのガチンコ勝負。
「(この2週間の練習では)ブレイクダウンしかやってない」(サントリーCTB平浩二)
前回の対戦で完敗を喫したサントリーが選んだのは、力負けしたポイントでもう一度勝負して、勝ち切ることだった。

攻守に激しいプレーぶりで、東芝とのフィジカルな戦いの先頭に立ち続けたFLクレバー(中央)。MOM級の活躍を見せた 攻守に激しいプレーぶりで、東芝とのフィジカルな戦いの先頭に立ち続けたFLクレバー(中央)。MOM級の活躍を見せた
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

「本当にタフでフィジカルな練習を続けて、それに耐え抜いたことで、ひとりひとりがいいスピリッツを持って戦えた」
試合後、80分間を通してチームメイトの先頭に立ち続けたことの勲章とも言えた泥々の顔をほころばせながらNO8竹本隼太郎主将が感慨深く振り返ったとおり、サントリーは東芝が絶対的に自信を持つエリアで正々堂々勝負を挑み、その接点の部分で驚くほど優勢に立って主導権を握った。
わずかに開始40数秒で自陣から「今までよりもアタックとキックのバランスに気をつけた」というSOトゥシ・ピシがあっさりエリアをとるキック。キックチェイスが機能してマイボールラインアウトに持ち込んだ後、CTBライアン・ニコラス、SOピシ、FB有賀剛と、BK陣が近場をタテに切っていくかたちで22m陣内に入り、ラックからPR畠山健介がゴールに迫った後、最後はピシが余裕もって東芝ゴールを陥れた。

「どこか人任せだった」東芝のDF

「終始、相手のペースだった」という東芝WTB廣瀬俊朗主将の言葉どおり、先制したサントリーはその後も試合を支配し続けた。
30分には、またもラインアウトからFLトッド・クレバーが突破した後、ラックサイドをSH日和佐篤が抜けて、最後はHO青木佑輔がトライ。
CTBニコラスのゴールキックが不調(2PGと1コンバージョンを失敗)だったため、得点自体は最初の40分間で12点にとどまったものの、キックも使いながら東芝のお株を奪うように近場でゲインを切っていくサントリーの今までとは異なるアタッキングラグビーばかりが目立つ展開が続いた。
ここまで、「蹴らない」ことばかりが強調されてきた面もあったサントリーだが、エディー・ジョーンズ監督によれば、そのアグレッシブなアタッキングラグビーの本質は「スペースを見つけ、そしてそのスペースを攻めること」。

新人ながら「ジョージが教え込んでいる」(ジョーンズ監督)という判断力で勝利に貢献したSH日和佐(写真左)。トライにつながるビッグゲインも 新人ながら「ジョージが教え込んでいる」(ジョーンズ監督)という判断力で勝利に貢献したSH日和佐(写真左)。トライにつながるビッグゲインも
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

東芝DFが横にまんべんなく広がる傾向があったため、背後へのキックも使いながら内側にスペースをつくり、突破力のあるランナーが一気に突き抜けていく。
狙いを近場に絞ったサントリーに対し、「DFでひとりひとりが人任せになってしまった面があった」(LO大野均)という東芝は、受けに回り続けるかっこうに。
後半8分に東芝FLスティーブン・ベイツのトライで追い上げられた直後にも、サントリーは相手ボールのスクラムを奪ってつかんだチャンスでラックをそのまま突き抜けるようにSH日和佐が大きくゲインした後、ラストパスを受けたPR畠山が左隅に飛び込んで突き放した。

3トライの起点となったセットプレー。
「2人目の寄りを早くし、人数をかけるようにした」(FL佐々木隆道)というブレイクダウン。
"世界一のSHジョージ・グレーガン"をお手本に判断力を磨いているというSH日和佐とSOピシのゲームメイク。
そして、何よりも「ひとりひとりの勝ちたい気持ち」(LO篠塚公史)。
すべての面で王者・東芝を上回ったサントリーが、「アグレッシブ、アタッキングラグビー」の進化した姿を印象づけ、3年ぶりの頂点に王手をかけた。

(text by 出村謙知)


どこか"らしさ"が足りない戦いに終始した東芝。本来の激しさを取り戻し、日本選手権でのリベンジを果たす可能性は? どこか"らしさ"が足りない戦いに終始した東芝。本来の激しさを取り戻し、日本選手権でのリベンジを果たす可能性は?
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

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