トヨタ自動車ヴェルブリッツ 10-32 三洋電機ワイルドナイツ
【プレーオフトーナメント セミファイナル/2011年1月23日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】
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三洋、完璧なディフェンスでトヨタに快勝、プレーオフトーナメントファイナルへ
トヨタ7-11三洋のスコアで後半に入った両チームだが、後半の最初の20分間は、どちらのチームにとっても次のトライでの得点が試合を大きく左右する、重要な攻防の時間帯だ。13分、中央付近のスクラムからのボールを受けたトヨタCTBイェーツが大きく抜け、WTB遠藤がコーナーフラッグめがけて走るが、三洋WTB山田がよく戻り、激しいタックルで遠藤をタッチに押し出す。その直後、三洋の大きなキックをキャッチしたトヨタがカウンター攻撃に出るが、トヨタが広くラインに回したところでボールを受けたNo.8菊谷を、三洋CTB霜村が執拗なタックルで止める。両チームを代表する選手たちの激しいブレイクダウンの連続でまさに息つく暇もない攻防だ。
17分、三洋のキックしたボールを取ったトヨタバックスがカウンター攻撃にでるが、すぐに三洋のWTB山田とFB田邉がタックルにいき、トヨタはほとんどゲインできないまま、トヨタ陣内でラックになる。ボールはすぐにトヨタサイドに出たが、三洋の選手が激しくプレッシャーをかけ、トヨタがこぼしたボールを三洋CTBノートンナイトが拾ってWTB山田にパス。山田がこれをうまくグラバーキックでゴール前にはこび、山田自ら、ゴールポスト下に押さえ、試合を左右する大きなトライを取った。ゴールも成功して、トヨタ7-18三洋。
三洋のフィフティーンは、ディフェンスの集中力が切れず、ターンオーバーで得たボールは確実に得点チャンスにつなげる。28分にもSOブラウンのミスキックを逆にうまく処理してチャンスにつなげ、最後は、よくフォローしていたLOヒーナンがトライ(ゴール成功)、10-25とリードを広げ、後半36分には、ゴール前のスクラムから三洋フィフティーンがFW・バックス一体となりよくつなぎ、三洋選手がゴールラインになだれ込み、最後の判定はTMOとなったが、LOアイブスがしっかり、ゴールライン上にボールを押さえてトライ(ゴール成功)。スコアを10-32として試合終了となった。
三洋は2週間前に行われたトップリーグリーグ戦のトヨタとの最終戦では、ベストメンバーではなかったとはいえ、トヨタにうまくゲームメークされ、1点差の敗戦となっていた。しかし、この日までの2週間で三洋は全くスキを見せない強いチームに、しっかり修正してきた。前半18分にもトヨタCTBイェーツのシンビンで一人減った時間帯に、すぐ、SOブラウンが左右に展開して、HO堀江の好フォローからFL劉がトライを取るなど、相手チームのスキを確実に、得点に結び付けて、後半の試合を決めるトライにつなげていった。
実力はトップリーグでも一番と誰もが認めるチームがまだ獲得していないトップリーグチャンピオンの座を、今年こそ、三洋がとれるのか? 三洋の今年のスローガン「臥薪嘗胆」が実を結ぶか? サントリーとのファイナルがとても楽しみになった。(正野雄一郎)
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朽木監督(右)、菊谷ゲームキャプテン
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◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木泰博監督
「日本協会、トップリーグ関係者の皆様にセミファイナルという素晴らしい舞台で三洋電機さんと試合をさせていただいたことに感謝申し上げます。強かったなあと思います、三洋さんが。やはり、自分たちがやろうとしているラグビーをグラウンドの中でやりきれなかったと思います。実力を出させてやれなかった監督の責任を感じています。
80分間、攻撃スペースの作り方のほか、あらゆる面で数秒ズレて、崩しきれなかったのが敗因です。それを上回る三洋さんのディフェンス力、判断力がすべてでした。
我々はリーグ前半で良いディフェンスの前に2敗し、やはりどれだけ強いディフェンスが来てもガンガン行けるよう練習して来ました。選手は良く成長してくれましたが、ここ一番で、ディフェンスを上回れるような攻撃を出せませんでした。残念ながら、それが今の実力です。今年は(準決勝の)壁をなんとしても越えたくて、トップリーグ一本に絞ってやって来ましたが、これでシーズンが終わるわけではないので、選手たちと今までのスタイルに自信を持って、次の日本選手権に向かっていきたいと思います。
三洋さんとサントリーさんには日本のラグビーのためにも(決勝で)レベルの高い戦いをやってほしいと願っています。ラグビーに携わる者すべての気持ちとして、4チームが先頭に立って日本のラグビーを作っていきたいと思います」
──実際に当たった三洋は?
「最終節で勝たせていただいたが、三洋さんは日本選手権優勝チームであり、もちろんこちらも受けてたつ立場でなく、チャレンジャーとして準備してきました。昨日の試合もそうでしたが、レベルの高い試合では、細かいところに勝利の神が宿ると思います。小さなミスを得点にする三洋さんが強かったと思います。想定外といえば、ブラウンとノートンナイトのコンビは、これまで数少なかったと思います。また、思ったよりグラウンドコンディションが悪く、二人に良いように中盤でボールを動かされました。対応はできたが、思ったよりボールが横に動いた印象です」
──ゲームの分岐点は?
「山田選手のトライです。トヨタは非常に良いリズムで攻めていて、スペースもあり、チャンスが一杯あるフェイズでしたが、唯一、薄くなったブレイクダウンのところで、三洋さんは獲れると判断してプレッシャーを掛けてきました。そこに居たのが、たまたまなのか、必然なのか山田選手で、手にすっぽり入ってしまいました。トヨタと三洋さんの関係から、今日の勝負ここにあり、と感じました」
○菊谷崇ゲームキャプテン
「本日は関係者、日本協会の皆様、三洋電機の皆様、ありがとうございました。特に、トヨタのファンの皆様には遠くまで足を運んでいただいて、点差が開いても最後まで声を掛けてくださって感謝しています。簡単なミスから点を与えてしまったのが、三洋さんの強さで、修正できなかったのが敗因です。三洋さんのディフェンスの力、判断力に何度もボールを獲られてしまいました。日本選手権に向けて改善していきたいです。三洋さんは本当に強かったと思います。試合のレビューを見て、悔しさが出て、初めてそこで日本選手権に向かう気持ちが湧いてくると思います。心から三洋さんの勝利をお祝いしたいと思います」
──早々に中山キャプテンと麻田前キャプテンが負傷退場したが?
「うちのキャプテンは口数が多いほうじゃないけれど、プレーのところでキツいところにいてくれます。いなくなれば辛いです。ただ、(交替した)杉本もそれなりにやってくれて、FWとしてはカバーできました。和田耕二は‥‥、まだまだかな?(笑) 厳しい目線ですが、まだ捌き切れていない、もうちょっとですね」
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◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「先々週、負けた相手との再戦ということで、チームとしてエネルギーがあり、ディフェンスではブレイクダウンで良いカウンターラックができて、アタックではボールをつないで狭い範囲でスピーディな試合ができました。先々週、良い試合をされて負けたのが(今日勝てた)大きな要因でした。トヨタさんは強いチームで、実際の力よりも点差が開いたと思います。ただ、これで終わりではなく、サントリーさんにもリーグ戦で負けていますので、リーグのすべてのチームに勝つことを目指して決勝に臨みたいと思います」
──どこにフォーカスしてきたのか?
「前の試合では一次ディフェンスが非常に悪かったので、トヨタさんは速いブレイクダウンを取られると良いランナーがいるので、そこのスキル、やり方、ジャッジメントにフォーカスしました。エリアマネジメントでも負けていたので、そこも対応した布陣を敷きました」
──勝因は?
「エリア(マネジメント)も良いし、アタックもボールを前に動かしていました。ノートンナイトもコミュニケーションが取れてきて、積極性も出てきて良い動きをしてくれました。(交代で出場の)入江もそうですが、二人のスタンドがいるので、トニーをサポートできたのが良かったと思います」
──山田選手のトライは?
「山田にナイストライと声を掛けたら、菊谷選手にタックルしてすぐ起き上がってターンオーバーしたプレーが良かったと返ってきました。私の横でJKが見ていましたが、あれで山田を日本代表に選ばなかったらなあ(笑)と思いました。彼のひらめきと言うか、トライにしてしまう能力は高いです。また、三洋に一つ上の力がついたと感じます」
──4年連続の決勝だが?
「例年は『全部勝たなくては』という、チームが疲れてしまう感じがありましたが、今年は若い選手も出て、コンディションの上では過去2年よりよいと思います。層も厚いので、コミュニケーションをとって選手を決めますが、必ず優勝したいと思います」
○霜村誠一キャプテン
「おお疲れ様です。トヨタさんに負け、そこからプレーオフに向けて自分たちの準備を大切にして、その結果が出た試合でした。前の試合ではディフェンスが崩れたので、改善し、アタックもトニーのコントロール中心に凄く前へ行けたのが勝因です。次の試合にも、この2週間やってきたことをやって臨みたいと思います」
──シンビンで1点差になった嫌な時間帯は?
「まず、小さなことをしっかりやって、パニックにならないようにと、これは練習中からミスが出ても自分たちのプレーをやろうと言って来ているので、向こうの圧力はありましたが、意思統一されていたので崩れなかったと思います」
──いよいよ決勝だが?
「もちろん、優勝です。この後、1週間でどれだけ良い準備ができるかだと思います。去年はいろいろあったが、まず、その舞台に立てるチャンスを貰ったので、最後はみんながまとまって良いラグビーをしたいと思います」
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