今シーズンより開始した、特集「TOPマッチプレビュー・レポート」。 |
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TL初制覇へ一体感を加速させ、三洋電機がファイナルへ
23日、プレーオフセミファイナル第2戦が行われ、完璧なDF力とチャンスにトライを取り切る決定力を見せつけた三洋電機ワイルドナイツがトヨタ自動車ヴェルブリッツに32-10で快勝。
レギュラーシーズン最終節で1点負けしていたリベンジを果たすとともに、4年連続となるファイナル進出を果たした。
これで、30日に予定されているファイナルは共にセミファイナルでレギュラーシーズン上位チームを破った三洋電機とサントリーの顔合わせで行われることになった。
(写真右)勝負を決めるトライなど、攻守に圧倒的な存在感を披露したWTB山田。新スターと共に三洋は悲願の頂点へ駆け上がれるか?
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(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
三洋電機ワイルドナイツ ○32-10● トヨタ自動車ヴェルブリッツ(前半11-7)──1月23日
トップリーグ最終節での対戦では、とにかく攻め続けたトヨタ自動車が三洋電機の追撃を振り切り、1点差で勝利(22-21)。
攻めるトヨタ、守る三洋──。
2週間を経ての再戦でも、立ち上がり攻める時間帯が多かったのはトヨタ。
ただし、前回の対戦では自分たちのリズムで攻撃を続けて前半だけで3トライを取り切ってみせたのに対して、この日トヨタが前半に記録したトライは、相手のパスミスをSOオレニ・アイイが足にかけて約70mを走り切った1本だけ(前半28分)。
「前回の試合でDFが崩れた」(CTB霜村誠一主将)という反省から、1次DFとブレイクダウンでのスキルと判断を再確認して再戦に臨んだ三洋は、ほぼ完璧にトヨタのアタックを封じ込んだ。
10分に三洋がFB田邉淳のPGで先制した後、14分にトヨタがハイパントを再確保して敵陣深く攻め込む。モールからNO8菊谷崇が抜け出してトライラインに迫ったが、三洋はNO8ホラニ龍コリニアシとSOトニー・ブラウンがダブルタックルのようなかたちで日本代表主将からボールを奪い返して守り切ってみせた。
「最終節の対戦ではファーストフェイズのところで崩せていたのが、今日はなかなか崩せなかった。その結果、あらゆる局面で数秒ずつ余計に時間がかかり、三洋DFに余裕を与えることになった」(トヨタ自動車・朽木泰博監督)
なかなか攻めきれないことでフラストレーションを感じていたことも影響したのか、17分にトヨタ自動車CTBスティーブン・イェーツが危険なタックルでシンビン退場。ここから、試合の流れは一気に三洋側に傾いていくことになる。
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立ち上がりのトヨタの攻撃をしっかり止めた後、18分にFL劉がトライ(写真)を決めるなど、三洋は前半から自分たちのペースで試合を進めた
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
勝負を決めた新スターのビッグプレー
三洋は直後のマイボールラインアウトからLOダニエル・ヒーナンが鋭角的な走りで内側に入ってきて大きくゲインした後、ラックから出たボールをSOブラウンが大外のHO堀江翔太に飛ばしパス。トヨタゴールに迫った堀江が相手DFを引きつけながらラストパスを通してFL劉永男が左隅に飛び込み初トライ。
この後、前述のアイイのトライで追い上げたトヨタだが、FL中山義孝主将(前半34分)、SH麻田一平(後半0分)というキープレーヤーが負傷のため交代するという不運も重なり、三洋ペースとなった試合の流れはハーフタイムを挟んだ後半、さらに加速することになる。
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トヨタHO上野にタックルにいく三洋SOブラウン(左)。CTBノートンナイトと共に攻守にゲームコントローラーとして存在感を見せつけた
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |
勝負を決めたと言っていいビッグプレーが三洋に飛び出したのは後半17分。
主役を演じたのは、今季スター街道をばく進中の三洋WTB山田章仁だった。
トヨタ陣10m付近で突破を図ったトヨタWTB水野弘貴をタックルで倒し、ラックになったところをPR相馬朋和とともにオーバーして味方ボールにした後、抜け出したCTBサム・ノートンナイトをフォロー。自らキックしたボールをゴール前でスピードを落とさずに拾い上げて、そのままポスト下に飛び込んだ。
「間違いなく勝負の分岐点は山田のトライ。たまたまなのか必然なのかそこに山田がいて、たまたまなのか必然なのか(山田が取りやすいように)バウンドもうまく上がった。三洋の強さを感じた」と、トヨタ・朽木監督は脱帽。
主役を務めた本人も、勝負の分岐点になったという敵将の意見に「僕もそう思います」とビッグマウスな賛同。さらに、「どんな球でも取るのはウイングとして当たり前。たまたまじゃなく必然です」と胸を張った。
自身のトライにつながる一連のプレーの前のトヨタのアタックの際には、三洋ゴールに迫ったトイ面の日本代表WTB遠藤幸佑を激しいタックルでタッチに出してピンチを救っており、山田の攻守にわたる活躍が三洋の勝利につながったことは間違いない。
そんなド派手な新スターの活躍もあったが、何よりも「1次DF、ブレイクダウンでのスキル、ジャッジメントの見直し、エリアマネージメント」(飯島監督)という2週間前に出た課題をすべてクリアしての完勝だった点に三洋電機の底力は示されていた。
この2週間の間に、餅つきやソフトボール、プレゼント交換までして一体感を高めたという三洋が、三洋電機ブランドの誇りをかけて悲願のトップリーグタイトル穫りのためのファイナルに臨むことになった。
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三洋WTB北川智のタックルに止められるトヨタCTB難波。トヨタはキープレーヤーの負傷も響き、攻めきれなかった
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP) |