ワイルドカードトーナメント 2回戦 TOPマッチレポート(神戸製鋼 55-40 福岡サニックス)

今シーズンより開始した、特集「TOPマッチプレビュー・レポート」。
ワイルドカード、プレーオフトーナメントと、引き続き、スポーツライターの目から見る試合プレビューとマッチレポートをお送りいたします!!
佳境となった今シーズン。どこがトップリーグチャンピオンになるのか?
どこが日本選手権に出場するのか???
見どころ満載の試合をもっと面白く、楽しく観戦するために、必見です!

ワイルドカードトーナメント
リベンジ果たし、神戸が3年連続で日本選手権へ

23日、大阪・近鉄花園ラグビー場でワイルドカードトーナメント2回戦2試合が行われ、共にレギュラーシーズン上位チームの神戸製鋼コベルコスティーラーズとNECグリーンロケッツが、それぞれ福岡サニックスブルースとリコーブラックラムズを退け、日本選手権出場権を獲得。神戸製鋼はトヨタ自動車ヴェルブリッツと、NECは東芝ブレイブルーパスと同1回戦(共に2月6日、大阪・近鉄花園)で対戦することになった。

  レギュラーシーズンで敗れていたサニックスにリベンジを果たした神戸は日本選手権でトヨタと対戦することに(写真は先制トライを奪ったNO8伊藤鐘)
レギュラーシーズンで敗れていたサニックスにリベンジを果たした神戸は日本選手権でトヨタと対戦することに(写真は先制トライを奪ったNO8伊藤鐘)
(C)2011,JRFU(photo by Kozue Shinyashiki RJP)

神戸製鋼コベルコスティーラーズ ○55-40● 福岡サニックスブルース(前半22-7)──1月23日

勝負そのものを分けたのは、セットプレーの優劣だった。

神戸製鋼コベルコスティーラーズの先制トライは非常に象徴的だ。

SOピーター・グラントが福岡サニックスブルース陣内深くキックを蹴り込んで、サニックスボールのラインアウト。そこでサニックスが、ノットストレート。神戸製鋼は、このスクラムを一気に押し込んでボールを奪い、そのままNO8伊藤鐘史がインゴールに飛び込んだ。

エリアを取って、サニックス陣内深い位置でセットプレーに持ち込めば得点チャンス。そんなゲームプランが、明確に15人に共有されたトライだった。

FB濱島(写真中央)のハットトリックなど、サニックスのDFの穴をついて計8トライを奪う猛攻を見せた神戸 FB濱島(写真中央)のハットトリックなど、サニックスのDFの穴をついて計8トライを奪う猛攻を見せた神戸
(C)2011,JRFU(photo by Kozue Shinyashiki RJP)

一方、セットプレーでの不利は覚悟の上で臨んだサニックスも、7分にLOジェイク・パリンガタイがカウンターアタック。CTBタファイ・イオアサ→FB古賀龍二とつなぎ、トライを返す。

神戸製鋼はその後、FB濱島悠輔の連続トライなどでスコアを広げ、後半21分には41-21と大きくリードした。が、これがサニックスには安全圏の点差ではなかった。

サニックスは、リスキーなパスにチャレンジしながらも着実に攻撃を継続。後半24分から31分までの間に3連続トライを奪い(うち2本ゴール成功)、わずか10分間で20点差を1点差に縮めてスタンドを大いに盛り上げた。

攻めた後の穴をつかれたサニックス

防御のほころびの原因を、苑田右二ヘッドコーチはこう解説する。
「インサイドブレイクされないように、密集周辺のプレーヤーは動き続けるのがチームの約束なのに、足が止まって、ボールを見たり、棒立ちになる選手が出てきてしまった」

神戸製鋼は、35分にCTB今村雄太が鋭いステップでサニックス防御を切り裂いてトライ(ゴール)を追加。安全圏の8点差に逃げ込んだが、サニックスの猛攻にゴール前まで攻め込まれて反則を犯し、最後まで薄氷を踏む思いを強いられた。それでも、ホーンのあとでサニックスのノックオンから途中出場のWTB小笠原仁がトライを奪い、激闘にピリオドを打った。

終盤いったんは1点差に追い上げられた神戸だったが、後半35分の今村のトライ(写真)などで粘るサニックスを引き離した 終盤いったんは1点差に追い上げられた神戸だったが、後半35分の今村のトライ(写真)などで粘るサニックスを引き離した
(C)2011,JRFU(photo by Kozue Shinyashiki RJP)

反撃も一歩及ばず、無念の結末に終わったサニックスの藤井雄一郎監督は、こうシーズンを振り返った。
「今シーズンは、アタックを磨いてトライを取れるようにはなったけど、まだウチのアタックには穴が多過ぎて、攻めれば攻めるほどピンチを招く部分がある。それは来季に向けて修正したい。セットプレーやモール対策は、なんとか対応できるよう、工夫していきたい」

セットプレーを「強化」するのではなく「工夫」と言うあたりが、サニックスの真骨頂だ。

一方、クロスゲームを競り勝った神戸製鋼・苑田ヘッドは、「第2節で敗れていたので、絶対に勝ってリベンジを果たすつもりでいた。サニックスをトライ数で上回って勝ったことが何よりも大きい」と、勝利の手応えをかみしめた。

2月6日の日本選手権1回戦の相手は、トヨタ自動車ヴェルブリッツ。こちらも第3節に7-16と惜敗した相手だ。「ウチにとって最高の組み合わせ」とリベンジを誓っていた。

(text by 永田洋光)

大黒柱CTB小野(写真)が復帰し、後半5トライを奪って会場を盛り上げたサニックスだったが、守りの穴をつかれて失8トライでは勝ち目はなかった 大黒柱CTB小野(写真)が復帰し、後半5トライを奪って会場を盛り上げたサニックスだったが、守りの穴をつかれて失8トライでは勝ち目はなかった
(C)2011,JRFU(photo by Kozue Shinyashiki RJP)

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