プレーオフトーナメントファイナル TOPマッチプレビュー

今シーズンより開始した、特集「TOPマッチプレビュー・レポート」。
ワイルドカード、プレーオフトーナメントと、引き続き、スポーツライターの目から見る試合プレビューとマッチレポートをお送りいたします!!
佳境となった今シーズン。どこがトップリーグチャンピオンになるのか?
どこが日本選手権に出場するのか???
見どころ満載の試合をもっと面白く、楽しく観戦するために、必見です!

アタックのサントリーかDFの三洋か

プレーオフトーナメントファイナルは、三洋電機ワイルドナイツとサントリーサンゴリアスという、2007-2008シーズン以来の顔合わせとなった。3回連続でファイナリストとなりながら、いまだトップリーグの優勝がない三洋電機か、エディー・ジョーンズ監督の就任でアタッキングラグビーを磨くサントリーが3年ぶりに頂点に立つのか。ファイナルを徹底展望する一方、やはりクライマックスを迎えるトップチャンレンジシリーズにも目を向けてみたい。

(写真右)レギュラーシーズンの対戦ではサントリーが三洋電機に17-15で際どく逆転勝ち(写真)。ファイナルでも激しい戦いが繰り広げられることになりそうだ
  レギュラーシーズンの対戦ではサントリーが三洋電機に17-15で際どく逆転勝ち(写真)。ファイナルでも激しい戦いが繰り広げられることになりそうだ
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

サントリーが攻め勝つか、三洋電機が守り勝つのか。両者の特徴のどちらが勝るのかは最大のみどころ。
サントリーは、セミファイナルで昨季の王者・東芝ブレイブルーパスを下した。今季は、「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を掲げ、それを貫いて勝ち進んできた。東芝を相手に、攻撃起点であるブレイクダウン(ボール争奪局面)で一歩でも前に出ることを徹底し、LO眞壁伸弥、FLトッド・クレバーらが激しく前に出ると、2番手、3番手の選手が素速くこれを押し込んで、SH日和佐篤が自在に動き回ってスピードに乗って走り込んでくる選手達を生かした。
三洋電機に対しても同じように接点で一歩前に出られるかどうか。そこが勝利の鍵になる。

テンポいい球捌きでサントリーのアタッキングラグビーのキーマンとなるSH日和佐(写真右)。対する三洋の日本代表SH田中とのマッチアップも楽しみだ テンポいい球捌きでサントリーのアタッキングラグビーのキーマンとなるSH日和佐(写真右)。対する三洋の日本代表SH田中とのマッチアップも楽しみだ
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

三洋電機は、セミファイナルでトヨタ自動車ヴェルブリッツを破った。13節では敗れた相手を下せたのは、立ち上がりから果敢に攻めてトヨタを防戦一方に追い込んだことが大きい。ようやく負傷が癒えて万全になったSOトニー・ブラウン、CTB霜村誠一の復帰で守りの不安が消えたことも安定した戦いにつながった。
特筆すべきは、セミファイナルの後半17分、試合を決めたWTB山田章仁の値千金のトライである。タックルで相手を倒し、その後のブレイクダウンに参加して押し込んでボールを確保、すぐにサポートに走って自らキックを追ってトライするというビッグプレーだった。防御面でも山田の奮闘は光っており、「僕は決勝戦でトライするために三洋電機に来ました」という言葉の実現はなるのか。

分かりやすく書けば、勝敗はサントリーSH日和佐の動き次第。日和佐が快適に動くことができれば、サントリーが接点で前に出ているということであり、彼がパスすることだけで精一杯になるならば、三洋電機の圧力が勝っているということになる。もちろん、その中にハイレベルな技能が詰め込まれているのだが、勝敗を分けるのは、接点でどちらが前進するかに絞られる。見応えあるファイナルになるだろう。

サントリーとしてはブレイクダウンで互角以上に渡り合い、トライ王WTB小野澤(写真)など決定力のあるバックスリーが走り切る展開に持ち込みたい サントリーとしてはブレイクダウンで互角以上に渡り合い、トライ王WTB小野澤(写真)など決定力のあるバックスリーが走り切る展開に持ち込みたい
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

小野澤、山田ら、個人技にも注目

トップリーグは、シーズン全体のMVPと、プレーオフのMVPが分かれている。優勝に貢献する活躍をするのは誰なのか。個々の選手の動きからも目が離せない。

セミファイナルで勢いづく山田章仁はもちろん、三洋電機の中ではタックル数の一番多いHO堀江翔太の動きも魅力的。スクラム、ラインアウトで要になりながら、ボールを持てば必ずゲインし、味方を生かすパスも繰り出せる。LOダニエル・ヒーナンの激しいタックルとBK並みのスピードで駆け抜ける突進も試合の流れを変える威力がある。
サントリーでは、新人王の有力候補であるSH日和佐篤の素早いパスワーク、アメリカ代表キャプテンでもあるFLトッド・クレバーのアグレッシブな突進、そして、2年連続トップリーグ最多トライゲッター小野澤宏時のランニングにも注目したい。

セミファイナルでは試合を決める活躍を見せた三洋WTB山田(写真右)は公言通りファイナルでもトライを決めて、三洋を頂点に導くことができるか? セミファイナルでは試合を決める活躍を見せた三洋WTB山田(写真右)は公言通りファイナルでもトライを決めて、三洋を頂点に導くことができるか?
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

また、ファイナル前日の29日には大阪・近鉄花園ラグビー場でトップチャンレンジ1最終節キヤノンイーグルス-ホンダヒート、NTTドコモレッドハリケーンズ-九州電力キューデンヴォルテクスの2試合が行われる。すでに前節までにNTTドコモの来季のトップリーグへの自動昇格が確定する一方、最終節のキヤノンーホンダの勝者が自動昇格のもう1枠を獲得することになる。
NTTドコモとしても最終戦にも勝って、トップチャレンジシリーズ1位に与えられる日本選手権出場を決めたいのは間違いなく、九州電力もいい内容のゲームをした上で入れ替え戦に臨みたいところだ。
2月から始まる日本選手権、そして来季のトップリーグを展望する意味でも、こちらも見逃せない試合となりそうだ。

(text by 村上晃一)

プレーオフトーナメントファイナル
注目のプレーヤー

アタッキングラグビーの要

  佐々木隆道選手
佐々木隆道選手

アグレッシブ・アタッキングラグビーの実現のため生命線になるのが、ブレイクダウン(ボール争奪戦)での素早いボール出しである。今季、その中心となって俊敏に動き回っているのが、佐々木隆道だ。

ライアン・ニコラス、平浩二らが縦に切り込んだポイントに素早く駆けつけ、連続攻撃の起点となる。春からの徹底したフィットネストレーニングで体も引き締まり、従来の素早く激しいプレーに加えて、体のキレが出てきた。
啓光学園高校3年時はキャプテンとして全国制覇。翌年、早稲田大学に進学。1年生からNO8でレギュラーポジションを獲得して優勝を果たした。在学中に3度大学日本一になるなど、佐々木の行くところ常に「優勝」の文字がついてまわった。2007年には日本代表としてワールドカップにも出場している。
しかし、昨年はキャプテンとしてサントリーを率いながら、セミファイナルで東芝に敗れ、自身のパフォーマンスも不本意なシーズンとなった。今季は心機一転、新監督エディー・ジョーンズのもと、一選手としてガムシャラにプレーしている。

自身のブログ「後悔なく生きる!」には、決勝戦に向けてこんなコメントが。
「今週も良い練習をしてメンバーに入って、しっかり王者・三洋にチャレンジするよ! そしてサントリーの勝利の文化を築く第一歩にしてみせる」
その熱いプレーから目が離せない。

佐々木隆道 佐々木隆道(ささき・たかみち)
◎啓光学園高校→早稲田大学→サントリーサンゴリアス。FL。1983年10月30日生まれ。184cm、97kg。
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)


注目のプレーヤー

チームメートの信頼厚い攻守の大黒柱

  霜村選手
霜村選手

今季のトップリーグ13節で三洋電機は2敗を喫した。レギュラーシーズンでの2敗以上は実に4年ぶりのこと。この2敗こそ、霜村誠一の存在感を痛感させるものだった。第10節のサントリー戦は前半終了時点で負傷退場。第13節のトヨタ自動車戦では控えにまわり後半から投入。両試合とも半分しかプレーしていない。そして、昨季のトップリーグ唯一の敗戦となったファイナルの東芝戦では欠場していた。

霜村は怪我の少ない選手であり、これらの結果は攻守の要である彼の不在が勝敗に直結する証なのである。
東農大二高、関東学院大時代から堅実なタックルと判断のいいパスワークは際立っていた。群馬県の桐生市の自然の中で育ち、小学校6年生まで自転車を買わず、友達の自転車の横を走って遊んでいたという生活が強靱な足腰の源である。日本代表活動期間にはなぜか怪我が多く、キャップ数は3に留まっているが、ともにプレーする選手達が認めるトップリーグ屈指のCTBである。

日本代表HO堀江翔太も、「ゲーム分析の数字を見れば分かりますが、霜村さんは本当に凄い。なぜ日本代表ではないのか分かりません」と首をかしげるほど。ボールを持てば確実にゲインし、ぎりぎりのパスを通し、タックルを受けてもすぐに倒れずにボールを生かす。
「僕はインターナショナルレベルでは軽いから、どうしても食い込まれるんです」と謙遜するが、トップリーグのプレーを見る限り、彼が弾き飛ばされるシーンは稀である。
キャプテン2シーズン目。その責任感あるプレーが、ファイナルでも三洋電機の軸になる。

霜村選手 霜村誠一(しもむら・せいいち)
◎東京農業大学第二高校→関東学院大学→三洋電機ワイルドナイツ。CTB。1981年9月20日生まれ。175cm、85kg。
(C)2011,JRFU(photo by Kenji Demura RJP)

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