4節 マッチサマリー(サントリー 26-13 ヤマハ発動機)

サントリーサンゴリアス 26-13 ヤマハ発動機ジュビロ
【week4/2011年11月19日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

サントリー 26-13 ヤマハ発動機   サントリー 26-13 ヤマハ発動機   サントリー 26-13 ヤマハ発動機
昨年度日本一、今年はエディー・ジョーンズ監督が独自のスタイル「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」に磨きをかけ連覇に自信をのぞかせるサントリーサンゴリアス。対するは昨年11位と苦しんだチームに前サントリー清宮監督を迎え、一気に上位への飛躍を狙うヤマハ発動機ジュビロ。この対戦は、このトップリーグ前半の大きな話題のひとつとなり、あいにくの雨にも関わらず4600を超える観衆が固唾を呑んで見守る秩父宮で行われた。

前半最初のキックオフ。ヤマハSO大田尾はFWと逆側への絶妙のキックからいきなりFB五郎丸を走らせ、この戦いにかけるヤマハの周到な準備をうかがわせる。しかし、サントリーのDFもぶれない。雨で濡れるボールが動くごとに的確にマークを抑え、小さなハンドリングエラーが起これば一気に逆襲に転じる構え。セットプレーでプレッシャーをかけて相手を崩したいヤマハ。そこに昨年日本一のサントリーがまずは耐えるという、予想を超えた激しい戦いが始まった。
スクラムで仕掛けたいヤマハ。8人が堅いパックでプッシュをかけるが、ぬかるんだ芝にスパイクが思うようにはかからない。しかし、ヤマハFWの闘志はサントリーの青木、畠山という日本代表クラスに真っ向からスクラム勝負を挑み、スタンドの観衆を沸かす。ラインアウトでは、エリアごとに細かくシステムを変えてサントリーを翻弄するが、キック以外ではサントリーも前進を許さない。

先制したのはサントリー。ニコラスが15分、PGを確実に決める。その後、最初のトライは26分、ヤマハのアタックミスをSOトゥシ・ピシが逃さず奪いゴール中央にトライ。
そして、ヤマハが強さを見せたのはここから。FB五郎丸のPGで追い上げた後の33分、サントリーのアタックに激しいタックルを連発。こぼれたボールをSH矢富がブラインドサイドに走り、WTB徐がタッチライン際を快走し見事なトライで前半を終えた。(10-10)
ここまで全くの互角。この季節の秩父宮に早くも緊張が走る。雨の音にグラウンドの音はかき消されているが、その緊迫はスタンドを支配している。

後半に向かう選手たちの中で、最初にグラウンドに現れたのはサントリーLO篠塚。雨が煙り暗くなったグラウンドで1人、開始を待ちきれずに闘志が白い湯気となる。
後半に入り、雨は時折激しく横殴る。互いが我慢の展開。しかし、ここから吹き荒れる風が微妙にゲームを動かしていく。
ヤマハはペナルティで前進したラインアウトから2回連続のノットストレート。ミスがゲームを支配し始めている。
ヤマハは16分、SO大田尾からのキックパスを受けたWTB田中がゴールに迫るがFB五郎丸に繋がらず最大のチャンスを失う。その直後、サントリーは速いテンポからアタックを展開し、SOピシとCTBニコラスライアンがクロスプレーからゴールに迫る。そこでヤマハNO8モセ・トゥイアリイがタックル後にボールを押さえ込んで痛恨のペナルティ。
ここからさらにサントリーの攻撃のペースは上がる。FLジョージ・スミスのラッシュ。ラックサイドをついたSH日和佐のパスを受けたPR畠山のビッグゲイン。疲れの出たヤマハにサントリーの確実な前進が始まる。雨の中でもスクラムを安定させ、ラインアウトをミス無くBKに展開。そして、27分、ラインアウトからSOピシが前でポイントを作り、逆サイドにFBヒューワットが走りこんで展開。CTBニコラスがクロスに走りこむSOピシとの間にギャップを見つけると、逃さず走りこんでトライ(26-13)。ここで勝負を決めた。

悔しさを隠せないヤマハ。相手の激しい闘志にもたじろがずに確実な勝利を掴んだサントリーの成熟した表情。何かが起こる気配を感じながらも、ランキングどおりの結果にほっと一息つくスタンド。冬に向かう雨にも関わらず、寒さを感じる間も与えずにこのゲームは終わった。
もう一度観たい。そう思わせる魅力ある勝負が今年のトップリーグに生まれつつある。(照沼康彦)
会見ダイジェスト
ヤマハ発動機ジュビロ
清宮監督(右)、五郎丸ゲームキャプテン
清宮監督(右)、五郎丸ゲームキャプテン


◎ヤマハ発動機ジュビロ
○清宮克幸監督
「今日の試合は古巣相手ということで、チームにとっても、個人的にも、勝って盛り上がる良い試合をしたかったのですが、まだ勝てるところまで行けていないなというのが素直な気持ちでしょうかね。今日は天候が悪く、できないプレーもありましたが、今後は、明らかに『ここはヤマハが勝つ』というところを作り直して、プレーオフまたは来年臨んでいかなくてはと思います」

──うまくいったところは?
「試合に向けて週の半ばで取り組んだことはほとんど雨のために出せなかったと思います。うまくいったところ‥‥。教えてください(笑)。セットプレーはもっと勝てると思っていました」

──後半途中まで13対13は予定通りか?
「今日は終盤までヤマハがリードして、最後はサントリーさんが攻めるところをタックルで止めるというのがシナリオでした。勝ちきる力が足りないなと思います。得点が足りないですね。リードして折り返すことで、相手が力を発揮できなくなると想定していましたが。少ないチャンスをモノにできないのが今のチームの力です」

──第4節までがポイントと、かねてからおっしゃっていたが?
「第4節までしかまったく考えていませんでした。この先は違うストーリーを考えていかないと。(2勝2敗は)良くも悪くもないですね。今シーズンはヤマハが引っ張ると言うか、ヤマハが旋風を起こそうと挑んで来ました。そういう意味では風が少ないですね」

──トップ4になる手ごたえは?
「大きな顔はしていられないが、小さくなる必要はないなと思います」

○五郎丸歩ゲームキャプテン
「どちらが勝ってもおかしくない試合だったと思います。後半、点数を離されず行けたのですが、キックパスからのチャンスで自分がノックオンしてしまい、キャプテン自らがミスするとこういう試合になるということを痛感しました。チーム云々の前に、自分がしっかりしないと、と思うゲームでした」

──サントリーは余力があったか?
「どうですかね。お互いに余力を残した試合だったと思います。お互い展開するチームなので、BKは余力が残ったと思います」

──照明が点かなかったが?
「観客席より、グラウンドの方が見えていたと思います」

──ゲームプランは?
「雨というのは天気予報で分かっていましたので、2、3日前からキックを多くする練習をしてきました」

サントリー 26-13 ヤマハ発動機   サントリー 26-13 ヤマハ発動機   サントリー 26-13 ヤマハ発動機
サントリーサンゴリアス
ジョーンズ監督(右)、竹本キャプテン
ジョーンズ監督(右)、竹本キャプテン


◎サントリーサンゴリアス
○エディー・ジョーンズGM兼監督
「(日本語で)厳しいですね(笑)。(英語で)今日のパフォーマンスは良かったです。FWでも勝てたし、後半、フィールドポジションも圧倒できました。我々、サントリーのパフォーマンスとしては今シーズン一番でした。スクラムコンテストでも勝ったし、自信になると思います。これから2週間練習して、次のホンダ戦に備えたいと思います」

──準備は?
「天気予報は雨でしたので、ボールを前に動かすこととランニング、キッキングを練習してきました。試合前には(勝つ)自信がありました」

──前年11位のチームに勝つことが自信になるとは?
「ヤマハさんは『決勝』のつもりでサントリー戦に臨んできました。また、NTTコミュニケーションズ戦でも大勝していましたし、そのNTTコミュニケーションズさんが神戸製鋼さんに良い感じで勝っていましたから。今シーズンはトップリーグに良いチームが集まってきていると感じます」

──ヤマハの変化は?
「外国人選手に頼るチームになったことが変わった点です。80%のボールキャリアが外国人選手です。昨年に比べてフィットネスも上がっています。今日はトゥイアリィ選手をうちのバックローが良く止めました」

──収穫は?
「すごくタフなゲームができました。FWで圧倒することが向こうの望んでいたことだと思いますが、最後はサントリーが圧倒できました。それが昨年から積み上げてきた部分です。さらにタフなラグビーをしていきたいと思います」

──ハーフタイムでの指示は?
「2つのポイントです。アタックでは3フェイズ成功させてパスすること。今日は何フェイズ重ねてもうまくいかないですからね。ディフェンスではしっかり切ること。達成できました。この天候での13点差は、晴れているときの30点差と変わらないと思います」

──清宮監督になって?
「彼は素晴らしいコーチです。対戦できて楽しかった。彼は選手、キャプテン、監督を務めたサントリーファミリーの一人です」

○竹本隼太郎キャプテン
「今シーズンはボールが濡れていたり、地面がぬかるんでいたりする試合が多いです。ボールが滑り、お互いにミスもありましたが、パニックになることなく我慢して気持ちをコントロールして良いパフォーマンスができました。すごく収穫になるゲームでした」

──準備は?
「天気予報では雨で、滑ることが分かっていましたので、パスがつながることはあり得ないと考え、ボールキープをすることを中心に練習してきました」

──気持ちのコントロールとは?
「いつも、ミスの後などはすごく雰囲気が悪くなるものです。今日の試合では僕のミスでトライを獲られたのですが、『気にするな』とか『次のプレーだ』とか言ってくれて、選手が集中して戦ってくれました。点差以上に価値のあるゲームでした。我慢して、我慢して、最後に勝つ気持ちが持てて、後半のヤマハさんは前半よりおとなしい感じがしました」

──清宮監督と試合する気分は?
「清宮さんも、FWコーチの長谷川さんもお世話になったコーチです。対戦を楽しみにしていました」

──4トライを目指さなかったのか?
「もちろん、一番は4ポイントを取ることです。あわよくば(4トライ獲って)5ポイントですが、今日は接戦になることが分かっていましたので、結果として良い試合だったと思います」

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