10節 マッチサマリー(パナソニック 31-27 トヨタ自動車)

パナソニック ワイルドナイツ 31-27 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
【week10/2012年1月15日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】

レギュラーシーズン9節を終え、開幕戦でサントリーサンゴリアスに敗れた後は8連勝し勝点39で2位につけるパナソニック ワイルドナイツ。対するトヨタ自動車ヴェルブリッツは3勝6敗勝点17で現在10位。昨シーズンまでトップ4の常連であったが今シーズンは主力に負傷者が多く勝ち星から見放されている。

前半、トヨタ自動車はキックオフの勢いを駆ってパナソニック陣内22mL付近で攻撃を続け、ゴール目前まで迫るもののパナソニックのディフェンスをなかなか崩すことができなかったが9分、22mL中央ラックから右展開。SOスティーブン・ブレットからライン際でタックラーをかわしながら内に走りこんできた左WTB久住辰也に絶妙のオフロードパスがつながり、このゲームの初トライがうまれ、0-5と試合が動き始める。続いてトヨタ自動車は14分、No.8菊谷崇がゴール前5m右中間ラックから力でトライをもぎとり、0-10とリードを広げる。トヨタ自動車は序盤今シーズン最高の躍動感ある試合運びを見せる。

一方のパナソニックは中盤の18分、10mL左ラインアウトからブラインドサイドにいた左WTB山田章仁がSO野口裕也のオープン側でパスを受けると絶妙のテクニックでライン裏に抜け、右WTB北川智規に飛ばしパスを決めて鮮やかにトライ。5-10と詰め寄る。続く26分にもFWがラインアウトモールを押し込み右FL西原忠佑がトライを奪い12-10と逆転。この後互いに得点を挙げ15-17とトヨタ自動車2点差リードで前半終了。両チーム、テンポの良いラグビーに後半への期待をつなぐ。

後半、互いにトライが奪えないなかPGで得点が推移。パナソニックはFB田邉淳が2本、トヨタ自動車はSOブレットが1本PGを決め、21-20でこう着状態が続く。28分、パナソニックSH田中史朗がトヨタ自動車ディフェンスの密集を、22mL付近まですり抜け、あと一人かわすとトライという場面で、トライを阻止しようとしたトヨタ自動車No.8菊谷がフォローについたパナソニック左WTB山田にノーボールタックルでシンビン。パナソニックはこの反則で得たPGをFB田邉が確実に決め24-20とすると、33分には自陣10mL右タッチからCTBマイク・デラーニが自らクイックスロー、ディフェンスの裏でつなぎ右FL西原がこの日2本目のトライを奪い31-20と突き放す。

トヨタ自動車は最後まで諦めず、37分、久住のトライ(ゴール)で31-27と追いすがったが、終盤での一時退場が響き、パナソニックが僅差の勝利を収めた。
マン・オブ・ザ・マッチはパナソニックSH田中が選ばれた。(大阪府協会 山林右二・蜷川善夫)

会見ダイジェスト
トヨタ自動車ヴェルブリッツ
朽木監督(右)、上野キャプテン
朽木監督(右)、上野キャプテン


◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木泰博監督

「トップリーグ機構、協会そして近鉄花園ラグビー場等の関係者の皆さまに、まず感謝を申し上げたいと思います。今季は苦しいシーズンを送ってきましたが、その中で昨シーズンのチャンピオン・チームに現在のトヨタ自動車の力をぶつけて、いい試合ができました。しかし、結果として勝ち切れませんでした。キャプテンをはじめとして、苦しい中で努力を重ねてきましたが、これが将来必ず良い結果に繋がると信じて、これからも努力をしていきたいと思います」

○上野隆太キャプテン

「勝てなかったことは、悔しいですが、トヨタ自動車らしいアグレッシブなラグビーを80分間できました。特に最後にトライを返せたことは良かったと思います。勝ち切れなかった原因は何かということをしっかりと見据えて、次に向けて修正をしていきたいです」

──先週からの改良点として、どうしたのか?

○朽木泰博監督
「シーズンを通してブレイクダインにこだわって来ましたが、優位性がなかなか出せていません。何かチームとしてかみ合わず、自分の力以上のものを試合で出そうとしているところがあります。したがって、今日はシンプルに前に出ることを課題としました。それが功を奏した局面もあったと思います。トヨタ自動車らしさが出せる時間帯が試合中確かに増えてきたとは思いますが、まだ、出しきれていません。そこが勝ちきれない原因の一つです」

──今日SOにブレットを起用した理由は、またその評価はどうか?

○朽木監督
「そもそも彼は、トヨタ自動車に来ていなければワールドカップの決勝に出ていたかもしれないレベルのプレーヤーです。ただし、トヨタ自動車のラグビーに馴染んでもらう必要があるのでインサイドCTBとして使ってきました。しかし、負傷したりして、十分な時間がなかったのですが、トヨタ自動車のラグビーを良く理解してくれました。今日のパフォーマンスについては良かったと思います」

──結局、今日の敗因として何を挙げるか?

○朽木監督
「もとより簡単に勝てるような相手ではないのですが…一番大事なノーサイド間際の10分、シンビンで14人で戦わざるを得なくなったことでしょう。今のチームの状態ではこれはきつかった。15人でフル80分を戦いたかったというのが正直なところです」
○上野キャプテン
「相手陣で長くプレーできた時には得点できました。しかし、相手のエリアマネジメントが上手く、自陣で戦う時間帯ではやはり失点してしまいました」

パナソニックワイルドナイツ
中嶋監督(左)、堀江ゲームキャプテン
中嶋監督(左)、堀江ゲームキャプテン


◎パナソニック ワイルドナイツ
○中嶋則文監督

「トヨタ自動車は、今シーズン余り調子が良くないようですが、トヨタ自動車との試合は、毎年接戦になります。だから、前半から相手を倒していこうとしたのですが、前半はエリアも上手く確保できませんでした。しかし、我慢しながら得点を重ねてくれました。この点を評価したい。ボールに対する執念に関してはトヨタ自動車の方が上回っていたように思いますが、粘り強くディフェンスしてくれたことが勝利につながったのだと思います」

○堀江翔太ゲームキャプテン

「トヨタ自動車は、例年パナソニックには強いので、前半からリードしていきたかったのですが、先発メンバーもいつもと違い相手の動きが見きれずに、仲間頼りになって後手に回ってしまいました。しかし、攻め込まれても我慢してディフェンスできました。これからのいい反省材料になった試合でした」

──ハーフタイムでの指示は?

○中嶋監督
「ボールの争奪でまずボールキープを心がけること、それとキックディフェンスなどでコミュニケーション不足が散見されたのでその点修正するよう指示しました」

──前半2トライ先行されて精神的にはどうだったのか?

○堀江ゲームキャプテン
「少しディフェンスが他人任せになったところがあったように思います。ただチームの雰囲気として焦りはなかったし、修正できると思いました。ただ、ぼく自身は無茶苦茶焦るんですよね(笑)」

──今日は、フロントローを変えてきたが、その意図は?

○中嶋監督
「相馬ではなく川俣を使ったのは、まず、若手を育てたかったからですが、川俣は先週の練習でもいいスクラムを組んでいました。確かにフィールドでは、相馬のほうが動きがいいのですが、川俣は自信を持ってプレーできていないように思いましたので、経験を積ませたかった」

──結局のところ、今日の勝因は?

○中嶋監督
「落ち着いてディフェンスできたことかな。ただし、キック・リターンなどもっとチャレンジングに攻めて、なおかつ、争奪戦でマイボールをきっちりキープすることが必要です。小さなことのように見えるが、小さなことの積み重ねが大事だし、そこができていないと上位チームは必ずそこを衝いてきますから」

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