13節 マッチサマリー(サントリー 32-28 神戸製鋼)

サントリーサンゴリアス 32-28 神戸製鋼コベルコスティーラーズ
【week13/2012年2月5日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

グラウンドの角にはまだ雪が残っていますが、寒波の狭間で幾分寒さも和らいだ今日はトップリーグ2011-12が開幕から3ヶ月あまりが過ぎ、最終節の第13節を迎えました。
この最終戦でもまだ順位が確定していないので秩父宮ラグビー場では熾烈な争いになりました。

第1試合は勝てばリーグ戦現在第1位のサントリーサンゴリアス(勝点52、1位)と勝てばトップ4に入りプレーオフトーナメント進出の神戸製鋼コベルコスティーラーズ(勝点37、5位)の戦いになりました。
両チーム、試合前のセレモニーが終わり、サントリー恒例のメンバー全員ダッシュからキックオフを迎えます。

前半は神戸製鋼のキックオフで試合開始。
2分、左右ワイドに広がったラインでパスを回すサントリーに対して神戸製鋼がゴール前でたまらずオフサイドのペナルティを犯して、ラインアウトからモールを持ち込みFL6元申騎選手が先制トライをあげる。CTB12ニコラスライアン選手のゴール成功により7-0。
8分、今度は神戸製鋼の攻撃でサントリーがハイタックルのペナルティでゴール正面のPGをSO10山本大介選手が決めて7-3。
10分、神戸製鋼のほぼ正面でのペナルティにサントリーCTB12ニコラス選手がPGを決めて10-3。
13分、神戸製鋼のスクラムの重圧にサントリーFWはコラプシングを犯してペナルティを貰い、30mPGをSO10山本選手が決めて10-6で神戸製鋼もしっかり離されずについていく。
17分、サントリーのパスミスを神戸製鋼が奪ってFB15正面健司選手がキックで敵陣深く攻め込んで2度のラインアウトのモールからPR3山下裕史選手がトライを取ってSO10山本選手がGを成功して10-13で逆転する。
33分、両チームに細かなミスがありながらなかなか膠着状態を抜け出せなかったが、敵陣ゴール前のわずかなミスをサントリーがモノにしてLO4篠塚公史選手がトライで再び逆転し、GもCTB12ニコラス選手が決めて17-13。
38分、サントリーボールを神戸製鋼がモールからジャッカルして左へ転回、CTB13フレイザー・アンダーソン選手がキックしたボールを自ら取り、FL7ジョシュ・ブラッキー選手にラストパスをして中央に回り込んでトライをして三度目の逆転で17-18で前半終了。

後半はサントリーのキックオフから始まる。
4分、サントリーはペナルティをもらい、正面25mのPGをCTB12ニコラス選手が決めて四度目の逆転で20-18。
10分、神戸製鋼のラインアウトをサントリーが奪って左から右へ転回し、右隅へSH9フーリー・デュプレア選手がトライをあげてCTB12ニコラス選手が難しいGを決めて27-18で神戸製鋼を突き放しにかかる。
14分、サントリーのコラプシングのペナルティからラインアウトでトライを狙う神戸製鋼にまたもコラプシングのペナルティにレフリーは認定トライを宣告し、SO15正面選手が正面のGを決めて27-25で追いすがる。
30分、神戸製鋼の逆襲にサントリーがオーバーザトップのペナルティを犯してSO15正面選手がPGを決めて5度目の逆転で27-28。
34分、右のラックから左に転回してサントリーの2対1の状態からWTB14長友泰憲選手が右隅にトライをあげて6度目の逆転で32-28でこのまま、サントリーが逃げ切って勝ちを収めた。
再三の目まぐるしい逆転の中で最後まで冷静にゲームコントロールをしていたサントリーに勝利の女神がほほ笑んだ。
この試合でサントリーのリーグ戦1位が決定したが、今後のプレーオフトーナメントにおいて戦術におけるチーム内での再確認が必要ではないかと思われた。
マン・オブ・ザ・マッチは最後にトライをあげたサントリーの長友選手になった。

今日の試合でトップリーグ2011-12のリーグ戦は終わりますが、これからもプレーオフトーナメント、ワイルドカードトーナメント、入替戦、トップチャレンジ、日本選手権、オールスターと3月25日(日)まで興味ある試合が続きますのでこれからも試合会場に足を運んでくださるようお願い致します。(奥山禎晴)

サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼
会見ダイジェスト
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
苑田ヘッドコーチ(左)、伊藤ゲームキャプテン
苑田ヘッドコーチ(左)、伊藤ゲームキャプテン

◎神戸製鋼コベルコスティーラーズ
○苑田右二ヘッドコーチ

「たくさんのお客様にご来場いただいて、このようなシチュエーションで試合できて選手は幸せでした。アウェイで神戸製鋼のプライドを持って、全国の皆様に勝利する姿をお見せしたかったのですが、残念です。4点差で負けましたが、この4点差をどう埋めるか、日本選手権に照準を合わせて練習し、日本一を狙いたいと思います」

──今シーズンの神戸製鋼の完成度は?

「安易なキックを蹴らずに、ボールを動かすラグビーを2年やってきて、成長しました。あと少し、インディビジュアルスキルにエラーがあります。例えば、ラインアウトのキャッチを競らずに取らせてしまったり、スクラムでマイボールを取られたりするところです。最後の10分、20分でトライを獲られて負けた試合が多く、ここの精度を上げないとトップ4に入れないことがよく分かりました。十分、戦えるところまで来ていますが、ポジティブに考えれば、こういう経験も重要です。以前は、毎回、40点、50点差をつけられた試合もありましたが、今はなくなりました。落ち着き払って、最後のプレッシャーに打ち克つプレーができないといけません。この教訓を日本選手権で生かさないともったいないですから、切り替えて、トップ4にチャレンジしたいと思います」

──ピーター・グラント選手を起用しなかったわけは?

「秩父宮のグラウンドが良くないと聞いていたので、今日は元気なプレーヤーを念頭に起用しました。最後にPGゲームになったら、重要なポイントでグラント選手を起用しようと考えていましたが、ターンオーバーされ、チャンスを失ったのは残念です。ここ数年、決勝のゲームを味わっていないために、選手の自信がちょっと足りないと感じます。今日のゲームのような経験をして、勝っていくことで力が付くと思います」

──日本選手権では?

「日本一が見えてきました。これだけトップ4と戦う力が付いてきています。あせらず、自信を持って戦うことが大切です」

──伊藤剛臣選手が初先発したが?

「清水佑選手がけがをしたこともあって、我々はギャンブル的なこともしていかねばならず(笑)、活気を与える仕事をやってもらいたいと、優勝経験のあるベテランを投入しました。前半から彼らしいプレーをして、他の選手を鼓舞してくれました。これからも、彼は選択肢の一つですし、良いコンディションでプレーしてもらいたいと思います」

○伊藤鐘史ゲームキャプテン

「ご無沙汰しています(笑・伊藤ゲームキャプテンはリコー所属の時にキャプテンで多くの会見を経験)。こんなに記者会見場がきれいになってびっくりしました。前日のNECさんが勝ち点なしでしたので、モチベーションが一気に高まりました。サントリーさんの順目のセットの速さ、テンポをブレイクダウンで止めることを狙いました。そして、こちらの持ち前のアタックで力比べをしようと臨みました。パナソニック戦、サントリー戦と戦って、一つ一つの小さなミスが勝負を分けると感じています。レベルが高いほどベーシックスキルの差が表れます。良い緊張感で試合できて楽しかったです」

──サントリーのプレッシャーは?

「FWの視点で言うと、ラインアウトでのミスから得点されたケースでは、相手のジャンパーがぼくらのサインの裏を読んだものでした。頭脳の駆け引きで、体も使うが、頭も使って非常にやりがいがあります。レベルの高い試合は楽しみです」

──ブレイクダウンでのターンオーバーが両チームとも多く見られたが?

「相手のジョージ・スミス選手はブレイクダウンでターンオーバーを狙ってくる非常にうまいプレーヤーです。しっかり相手をターゲットにしてオーバーしてからのターンオーバーされました。攻守の切り替えが速いゲームでした。イメージ的には相手の二人が残っているとき、こちらがビッグタックルをした時がターンオーバーのチャンスです。ラックの近くにいる個人の反応が大事です」

──残り7、8分で正面のPGを狙わなかったのは?

「あの場面でリードを奪って、というところでした。上位チームと追いつこうとするチームの違いは余裕だとヘッドコーチからも言われていました。勝ち急がない事が大事で、残り10分でも落ち着いていつも通りのプレーをして、アグレッシブに攻めていけました。ディフェンスも、そこそこ安定していたので、トライを獲りにいきました。エリアマネジメントで差し込まれていたのはありましたが、あそこが、今日、トライを獲られた直後に一番選手の活気があった場面でした。ギャンブルでしたので仕方ないです」

──伊藤剛臣選手が初先発したが?

「今日、タケさん(伊藤剛臣選手の愛称)と公式戦で初めて一緒に出場しました。神戸製鋼レジェンドの選手のとおりで、気迫を感じました。スクラムで毎回声を出してくれて、良い雰囲気で試合ができました」

サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼   サントリー 32-28 神戸製鋼
サントリーサンゴリアス
ジョーンズ監督(右)、畠山ゲームキャプテン
ジョーンズ監督(右)、畠山ゲームキャプテン

◎サントリーサンゴリアス
○エディー・ジョーンズGM兼監督

「今日のパフォーマンスにはがっかりしています。結果は良かったですが。最後の10分間、落ち着いてプレーできましたし、明らかにサントリーが勝つと感じ取れました。まだ、我々はベストではないので、準決勝、決勝と進化していきたいと思います」

──ベストとの差は?

「特に今日のフェイズパフォーマンスの精度が低いですね。パスもシャープでないですね。それを修正したいと思います。今シーズンはメンバーをミックスさせてきましたが、これからはベストメンバーを選んでいきます。コンビネーションもフィットせず、トゥシ・ピシ選手とニコラス・ライアン選手も小さいところがうまくいっていませんでした。良いこととしては、やり続けて、良い結果が得られたことですね」

──上回った部分は?

「得点が取れたことだけ(笑)。最後のセットプレーは良かったですね。60分くらいからスクラムも押されなくなったし、ラインアウトも同じです。いつもラグビーの試合を本に例えるのですが、最初と最後が大事です。神戸製鋼さんは中盤が良かったけれど、途中が良くても最後が良くなければ、そんな本は捨ててしまいますよね」

──やりたいラグビーができないグラウンドコンディションでは?

「グラウンドは問題ですが、選択肢がありません。今日は東芝戦のときよりは良かったです。試合の展開が遅くなるのは、日本のラグビーのためには良くないですね」

──選手のコンディションは?

「金井健雄選手がもうすぐ復帰するし、小野澤宏時選手、竹本竜太郎選手と重要な選手が戻ってきます。剛(有賀選手)も復帰して3試合目ですから、良いパフォーマンスをしてくれるでしょう。今シーズンは本当にタフなシーズンです。5試合連続で行うのは日本初ではないでしょうか。選手のマネジメントが大変です。今日は良い感じで試合を終えることができました」

──リーグで1位になるとセミファイナルの1試合目、2試合目を選べるオプションがあるが?

「日曜日、14時からプレーしたいですね。温かい天候になるのを願っています。二週間後、25000人の方が来て下さることは分かっています」

──東芝に負けてチームで変わったことは?

「我々の態度が変わりました。今シーズンは、いろいろと試しながらやってきましたが、さらにサントリーの強みを生かしたボールキープとボールを動かすラグビーをしていきます。福岡サニックス戦で自信を得ることができました」

○畠山健介ゲームキャプテン

「勝ったことだけが良かった試合でした。内容は満足できてはいません。セミファイナルまで頑張ってベストのパフォーマンスを引き出せるよう修正したいと思います」

──神戸製鋼はベスト4になれなかったが?

「ボーナスポイントを取れば、神戸製鋼さんがトップ4になることはもちろん分かっていました。特別視することなく、こちらのアグレッシブ・アタッキングラグビーを心がけようと臨みました。神戸製鋼さんが大きなFWでプレッシャーをかけてくることは分かっていましたので、我々がやりたいラグビーをやろうとしました」

──モールを押し込まれたが?

「大きいFWで神戸製鋼さんがそれを生かしてくるとミーティングでも話し合っていました。だが、思った以上にプレッシャーを受けました。グラウンドも悪かったけれど、修正しなくてはいけません」

──攻め込んだチャンスでターンオーバーされたのは?

「僕らがパフォーマンス的に出し切れていないために、チャンスにターンオーバーされてピンチになりました。ブレイクダウンで外に出せていれば得点できるケースでしたが、相手も必死です。ターンオーバーされるのは、出し切れていないせいです」

──ディフェンスの出来は?

「(頭を打って)よく覚えていません(笑)。仲間が相手チームにトライをさせないセーブを何回も見せてくれています。フーリー・デュプレアやジョージ・スミスが良いお手本を見せてくれているので、若手にも刺激になっていて、そういうスピリットが根付いてきています。ハードワークですが、ピンチの時にしっかり戻る意識は僕が入ってきたときはなかったので、タフなチームになってきたと思います」

RELATED NEWS