TOPプレビュー特別編「トップチャレンジ1 第3節」プレビュー

キヤノンに続いて来季トップリーグへ参戦するのは?
クボタ、九州電力、豊田自動織機、3チームに自動昇格チャンス

12月11日、来季のトップリーグへの自動昇格チームを決めるトップチャレンジ1第3節が東京・秩父宮ラグビー場で行われる。

それぞれトップイーストリーグ Div.1、トップウェストAリーグ、トップキュウシュウAリーグを制したキヤノンイーグルス、豊田自動織機シャトルズ、九州電力キューデンヴォルテクスに、トップチャレンジ2を勝ち上がったクボタスピアーズを加えた4チームの総当たり戦で行われているトップチャレンジ1は先週までに第2節が終了。2戦2勝で勝ち点10のキヤノンイーグルスがすでに来季の自動昇格権を獲得。一方、残り3チーム全てに自動昇格の可能性が残されており、最終節でも来季のトップリーガーの座をかけた熱い戦いが繰り広げられることになる。

しつこいディフェンスでキヤノンのアタックを封じ、僅差の勝負に持ち込みたい九州電力(写真はミッドフィールドで核になるCTBスウィーニー)
photo by Kenji Demura (RJP)

 2月4日、福岡・レベルファイブスタジアムで行われたトップチャレンジ1第2節、キヤノンイーグルス対クボタスピアーズ戦。
 初昇格を目指すキヤノンは、昨季まで8シーズントップリーグで戦い続けてきた経験を誇るクボタを向こうに回し、終始攻める姿勢を前面に出しながら5トライを奪う快勝ぶりを見せた。
 キヤノンは第1節でも豊田自動織機から6トライを奪って46-24で勝利を収めており、共に昨季トップリーグで戦っていたチームに連勝して昇格を決めたことになる。
 しかも、クボタに対してはトップイーストでの対戦でも31-15で勝っており、完全に叩きのめしたかっこうだ。

 
来季入部予定の有望新人のためにも是が非でもトップリーグへの復帰を果たしたいクボタ(写真は身長2mの大型FLマクメニマン)
photo by Kenji Demura (RJP)

「昨シーズンまでトップリーグで戦っていたクボタさんや豊田自動織機さんに、内容的にもしっかりトライを取れて勝てた。そういう意味では力がついたのかなと思うし、満足しています」
 永友洋司ヘッドコーチが感慨深く振り返ったとおり、昨季のトップリーグ組に対する完勝ぶりは、初昇格がフロックではないことの証明と言っていいだろう。
 昨季はトップチャレンジでHonda HEATに5点差で敗れた後、入れ替え戦でもNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに敗れ、あと一歩で昇格を逃したが、その悔しい経験を生かして、「春からストレングス、コンディショニングなどをする裏方の人たちも含めて積み上げてきたものが出た」(同ヘッドコーチ)結果の初昇格であることは間違いないだろう。

 日本代表でもあるCTBアリシ・トゥプアイレイの突破力に頼りがちだった1年前に比べて、チーム全体でアタックを構築していく力は大幅にアップ。
 SO橋野皓介の距離の出るキックでエリアが稼げるのも大きいが、CTB守屋篤、FB田井中啓彰といった実績十分のランナーたちが、自陣からでも積極的に仕掛けていく。
 FW陣も前節のクボタ戦は欠場したものの、LOアルベルト・ヴァンデンベルグを中心にHO山本貢、FL竹山浩史など、こちらもトップリーグを経験済みのメンバーを中心に安定感は抜群。
「まだ、いまのFWの力だとトップリーグで勝っていくには苦しい」(小村淳FWコーチ)という冷静な自己評価さえ、謙遜しすぎではと感じさせる充実ぶりだ。

 最終節では九州電力と対戦するが(2月11日14時、東京・秩父宮ラグビー場)、すでにトップチャレンジ1の1位通過を決めているキヤノンは日本選手権出場権を獲得しており、2週間後に控える同大会1回戦でいいパフォーマンスを見せるためにも、手を抜かないアタッキングラグビーを見せてくれるはずだ。

何が起こってもおかしくない自動昇格第2枠争い

 一方、残り3チームのうち最上位になったチームに自動昇格権の残り1枠が与えられることになるが、最終節の結果次第でどのチームが勝ち上がるのか、まったく読めない状況だ。
 第2節終了時点でクボタ、九州電力が共に勝ち点4で、豊田自動織機は勝ち点0。
 ただし、豊田自動織機も最終節でクボタとの直接対決を残しており(2月11日12時、東京・秩父宮ラグビー場)、キヤノン-九州電力戦の結果次第では自動昇格権を獲得する可能性は残されている。
 いずれにしても、豊田自動織機としては、勝ち点5を手にしての勝利(あるいは、勝ち点4でも大差での勝利)が自動昇格権のための絶対条件となる。
 ここまで勝ち点0ながら自動昇格のチャンスを残している状況に関して、豊田自織機の田村誠監督は「自分たちのミスからリードを許して試合を進められてしまったが、やりたいことができてきた部分もある」と、最終節でのどんでん返しに前向きでもある。
 日本代表でもあるSOマリー・ウィリアムス、CTBジョセフ・ヴァカのBK陣に、FLマーク・ライトは昨季のトップリーグでも、その実力を証明済み。共に神戸製鋼からの移籍組でもある元日本代表コンビのNO8斉藤祐也、FB大門隼人も健在だ。
 第2節の九州電力戦では、キックチャージやパスインタセプトからトライに結びつけられるなど、ウィリアムスのやや雑なプレーが墓穴を掘った面もあり、指令塔の出来も勝敗を左右しそうだ。

2試合で11トライを挙げている攻撃力が持ち味のキヤノン( 写真はロングキックと積極的なランニングでチームを勢いづかせるSO橋野)
photo by Kenji Demura (RJP)
豊田自動織機、クボタに連勝してトップリーグ初昇格を決めたキヤノン。九州電力戦でトップチャレンジ有終の美を飾れるか
photo by Kenji Demura (RJP)

 最終節でその豊田自動織機と対戦するクボタ(勝ち点4/得失点差0=第2節現在)も、FLヒュー・マクメニマン、NO8トマシ・ソンゲタ、CTBカトニ・オツコロなど外国人のインパクトではひけをとらない。
 前節ではキヤノンの総合力に常に後手後手にまわり、試合中一度もリードを奪えないまま完敗。
「早い球出しのラグビーを追求してきたが、接点でプレッシャーを受けてしまった」というのが、佐野順監督の敗因分析。
「セットプレーでは戦えた」(同監督)だけに、ブレイクダウンでいかに優位に立てるかが、ポイントになりそうだ。

 コカ・コーラウエストレッドスパークスのトップリーグからの降格が決まっただけに、九州勢として何としても昇格を果たしたい九州電力(勝ち点4/得失点差-4=第2節現在)には、今季、元NZ代表で67キャップを誇る大物LOクリス・ジャックが加入。
 第2節のクボタ戦でもラインアウトで圧倒的な制空権を示し、ブレイクダウンでもジャッカルを連発するなど大活躍。やはり、80分間フル出場してチームを鼓舞し続けた36歳の大ベテランFL吉上耕平とともに、「ふたりとも他の選手たちと同じように練習して、同じだけ走ってきたから、ベテランという捉え方はしていないが、試合の中では大事な場面でしっかり仕事してくれた」と、平田輝志監督も脱帽の働きぶりを見せた。

 BKにはスーパーラグビーのチーフスでプレーしていたCTBドウェイン・スウィーニーや関東学院大出身のFB荒牧佑輔など、インパクトあるプレーを見せる新加入選手もいるが、チーム全体の方向性としては、しっかりした守りからリズムをつくっていくのが特徴。
 前節では、前述のようにアタック力のある選手が揃う豊田自動織機を1トライに抑える攻守を見せた。
 最終節で対戦するキヤノンは、「この1年で伸びたのはアタック力」(永友ヘッドコーチ)と、豊田自動織機、クボタという昨季のトップリーグ組から共に勝ち点5を奪うなど攻撃力を誇るチームだが、当然ながらまずは持ち前のディフェンス力で失点を最低限に抑えることが、3年ぶりのトップリーグ昇格への鍵となる。

text by Kenji Demura

第2節を終わって勝ち点0から奇跡の昇格を目指す豊田自動織機にとって、日本代表SOウィリアムスの出来もポイントになりそうだ
photo by Kenji Demura (RJP)

────注目のプレーヤー────

クリス・ジャック(九州電力キューデンヴォルテクスLO)
日本で若々しく蘇る大物オールブラック

 確かに"元"はつくが、LOとしてのNZ代表キャップ数では歴代2位。
 実績で言うなら、ブラッド・ソーン(福岡サニックスブルース)、アイザック・ロス(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)という今季日本にやってきたトップリーガーたちよりも上とも言える大物オールブラックスである。
 すでに33歳。ただし、九州電力の平田輝志監督をして、「走る量も若い選手たちと変わらないし、動き自体はベテランとは思えない。大事な場面での仕事ぶりは流石ですけど」と脱帽するとおり、そのプレーの切れ味はオールブラックス時代からほとんど後退していない印象だ。
「キュウデンの仲間たちと毎日しっかりトレーニングしているからね。コンディションは凄くいい」と本人も認めるほど、それほど重厚かつシャープなプレーは際立っている。

 NZ代表としてプレーしたのは07年W杯準々決勝"カーディフの悲劇"が最後。その後、多くのオールブラックス同様、欧州(イングランド1部サラセンズ)にプレーの場を求めたが、キック中心で相手にプレッシャーをかけるイングランドスタイルは肌に合わなかった模様。
「日本に来て、もう一度ラグビーの楽しさを味わっている。テンポが速いし、ボールを良く動かすところはNZのスタイルに似ているから、自分に合っていると思う」
 九州のファンはすでに体感済みだろうが、11日に秩父宮ラグビー場に駆けつけられるファンは、4年前に欧州行きの決断をせずにNZに残っていれば、昨秋のNZのフランスに対するリベンジ=24年ぶりのW杯制覇の一助になっていた可能性も低くなさそうな元オールブラックの年齢を感じさせないイキイキとしたプレーに驚嘆することになるはず。ラインアウトでの圧倒的な制空権とブレイクダウンでの仕事人ぶりに注目だ。

クリス・ジャック◎LO 1973年9月5日生まれ。202cm、112kg。シャーリーボーイズ高→カンタベリー大(NZ)。クルセイダーズ(S15)、サラセンズ(イングランド)などでプレー。NZ代表67キャップ。

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