トップチャレンジ1 第3節マッチサマリー(キヤノン 17-68 九州電力)

トップチャレンジ1

キヤノンイーグルス 17-68 九州電力キューデンヴォルテクス
【トップチャレンジ1 第3節/2012年2月11日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

トップチャレンジ1(第3節)、第一試合での豊田自動織機シャトルズ(ウェスト1位)対クボタスピアーズ(トップチャレンジ2・1位)はクボタが24対58と勝利し勝点5を奪いこの時点で暫定2位(勝点9/得失点差+34)、豊田自動織機は(勝点1/得失点-65)と4位となり入替戦が確定しました。
第2試合は第2節終了時点ですでに2勝を挙げているキヤノンイーグルス(イースト1位)は来季トップリーグへの自動昇格を決め、本日の試合で勝利し日本選手権へ弾みをつけて挑みたい。
残り1つの自動昇格を懸けて九州電力キューデンヴォルテクス(キュウシュウ1位)は試合前時点で勝点4(得失点-4)と来季トップリーグへの自動昇格を決めるためには今日の試合は勝点5及び得失点+38以上と厳しい状況ですが是か非でも欲しい大切な試合です。

試合はキヤノンSO橋野選手のキックオフで始まりました。
開始早々の4分にキヤノンの九電陣22m付近でのペナルティ(オーバーザトップ)でチャンスを掴みFB和田選手がペナルティゴールを決めて先制(3-0)。9分には九電がジリジリと敵陣に攻め込みゴール前10m付近スクラムより出たボールをFL平田選手がトライ(GK成功/3-17)し逆転。
対するキヤノンは14分に敵陣22m付近ラインアウトから出たボールを左サイドに展開しWTB大居選手逆転トライ(GK成功/10-7)。続く18分には九電が敵陣ゴール前15m付近のスクラムより右に出たボールをCTBジェイコブス選手が敵ディフェンスをかわして再び逆転トライ(ゴール成功/10-14)。22分にはキヤノンLOティマニ選手が敵陣22m付近ラインアウトよりボールを繋ぎ敵のディフェンスを豪快に払いのけトライ(GK成功/17-14)と再び逆転した。しかし九電はその後も敵陣に果敢に攻め込み3トライ(3GK成功/17-35)を奪い前半だけで5トライとしボーナス点(1)を奪いトップリーグ自動昇格まで残り勝点4と得失点+21点とし後半に望みを繋げた。

後半に入り開始早々の3分に九電は敵陣ゴール前でのスクラムより(ノッコン)より右に出たボールをCTB早田選手がトライ(GK成功/17-40)と好スタート。続く5分にもキヤノン陣15m付近ラインアウトよりライン際を攻め込みFB荒牧選手がコーナーギリギリにトライ(GK成功/17-49)とキヤノンを引き離す。

トップリーグへの自動昇格まであと7点。会場内の九電応援団より「GO! GO! キューデン」「オセ! オセ! キューデン」と熱いコールが巻き起こる。九電選手はこの熱いコールにも後押しされその後3トライ(2GK成功)を奪い試合終了のホーンが場内に鳴り響き、結果試合は17対68と勝利し勝点5を奪いトータル勝点9、得失点+47としトップチャレンジにおいて2位となり自動昇格を決めた。
次年度のトップリーグでキヤノンイーグルスと九州電力キューデンヴォルテクスは再び戦うこととなりますが、今日のような観客を魅了し手に汗握るすばらしい試合を期待したい。
また、キヤノンは2月25日より始まる第49回 日本ラグビーフットボール選手権大会にてトップチャレンジ1位チームとして天理大学(大学選手権大会 準優勝チーム)と対戦する。(佐藤克則)

会見ダイジェスト
永友ヘッドコーチ(右)、宍戸キャプテン
永友ヘッドコーチ(右)、宍戸キャプテン

◎キヤノンイーグルス
○永友洋司ヘッドコーチ

「今日はどうもありがとうございます。たくさんのファンの皆様、社員の方の応援に感謝申し上げます。ゲームは九電さんが素晴らしいラグビーをされたことに尽きるかなと思います。キヤノンも選手はグラウンドで頑張ってくれましたが、それ以上に九電さんのトライを獲ろうという気迫を感じました。この借りは必ず返します。これから、この試合があったから、良かったと思えるように練習しなければならないと感じています」

──昇格も何も掛かっていない試合は難しいのか?

「私のセレクションなど、判断を誤った部分があったかと思います。こういうラグビーを経験して、チームは強くなると感じます。まだ、我々に足りないところがあります」

──日本選手権にプラスに働くのでは?

「トップリーグに来季入っても、このような点差をつけられるという危機感を感じています。覚悟して臨まなければなりません。日本選手権しかりです。天理大学さんという素晴らしいチームに、どう対抗していくか。長いシーズンですが、ここからどう立て直すかが大事です。今日はできなかったアタック、ディフェンスの自分たちの強いスタンダードをしっかり出し切ることがポイントです」

──危機感とは?

「すべてにおいて覚悟していくことだと思います。多分、トップリーグに上がっただけで満足している選手がいると思いますが、トップリーグで戦うにはその舞台に飛び込んでいく勇気が必要だということを選手に伝えたいです」

○宍戸要介キャプテン

「本日はありがとうございます。たくさんのファンの皆様に応援していただき、代表としてグラウンドに立ちながら、このような結果になったのは、申し訳ない思いで一杯です。九電さんの勢いに、受けに回ってしまったと思います。試合が続くので、この思いを必ず次に生かしていきたいと思います」

──試合の入りから飲み込まれたのか?

「試合の入りは、いつもと変わりませんでしたが、やはり九電さんのプレッシャーを受けてしまい、ディフェンスも簡単にトライを獲られるなど、ボールを回させてしまいました」

──天理大との試合は?

「今から新しいことはできないので、やってきたことを出すだけです。キヤノンにとっては、日本選手権は初めてですので、何が起こるか分かりません」


平田監督(右)、齊藤ゲームキャプテン
平田監督(右)、齊藤ゲームキャプテン

◎九州電力キューデンヴォルテクス
○平田輝志監督

「今日、うちは高いモチベーションで臨みました。1試合目の結果で、しなければならないことが明確になりました。正直、この得失点差はプレッシャーでした。このプレッシャーを楽しんで、この舞台で力を出せた選手を本当に誇りに思いますし‥‥感無量です。今年一年間、ここに来るまで、決して平坦な道のりではありませんでした。大きく会社が揺れ動いている中で、ラグビーをやれる幸せと、その使命の大きさ、それ以上にトップリーグ昇格が大きな課題であると受け止めて活動してきました。正直、本当にキツかったです。選手もキツかったと思いますが、そういう中で昇格を決めることができたことを素直に喜びたいと思います」

──どんな指示を?

「春から監督に就任し、私の経験が浅く、自分だけでのノウハウではチームを変えられないと思いました。そこで、先ず、監督としての仕事は、発する言葉が選手に響かなくてはいけないと思ってやってきました。例えば、クボタ戦の前は、『クボタ戦に勝つことだけがすべてだ』と言ってきました(笑)。負けたら、ロッカールームで『もう、忘れた。自然体で頑張ろう』と選手にアプローチしました(笑)。昨日、ジャージを渡すときに『キヤノンには覚悟の差で勝つ、1年やってきたことだけでなく、ラグビー人生を賭けろ』と言いました」

──九電全体が揺れ動き、練習などに影響はなかったのか?

「照明関係です。会社が節電を呼びかけている中、夜、煌々と電気を点けて練習するわけにはいきません。全員がサラリーマンラガーで、明るい内から練習できませんので、練習を組み替えて、努めて照明の管理をしました。これも監督の仕事です。近隣の皆様のご理解も得られて、ありがたかったです」

──クリス・ジャック選手については?

「スイッチが入るとグラウンドの雰囲気を変えてしまう選手です。普段は物静かな選手ですが、表情一つで他のメンバーを変えてしまいます。クボタさんに負けて、織機戦は絶対に勝たないといけなくなったとき、彼が前に出てきましたね。本物だなと思いました。トップ九州では、物足りないと思ったファンの方もいたかもしれませんが、私の彼への信頼はまったく揺るぎませんでした。私が言うまでもなく、練習から相当なものがありました」

──今日はスコアラグビーだったのか?

「そういう、くくりが一番良いですね(笑)。本当にスコアラグビーでした。正に、シナリオどおりです」

○齊藤玄樹ゲームキャプテン

「キヤノンさんはトップリーグ昇格を決めていて、クボタさんと織機さんの結果次第で、多少、戦い方を替えなくてはと思って臨みました。第1試合の得失点差が大きく、正直、プレッシャーがあったからこそ、締まって、僕たちの気持ちの方が勝ったのかなと思います。しっかり、あわてず、トライを獲り急ぐことなく、フィールドポジションを取っていった結果、勝てたのかと思います。まだ、信じられませんが、支えて下さったファンの皆様、会社関係者、スタッフ、チームメイトを誇りに思います。今日は本当にありがとうございました」

──後半、これが入れば昇格圏内というコンバージョンを失敗したが?

「プレッシャーがありました(笑)。時間も早かったので、そのスコアで終わるとは思っていませんでしたが‥‥、ちょっと滑りました(笑)」

──頑張ったことは?

「試合を通じて、グラウンドの中で獲り急ぐなと言っていました。どうしても、気持ちがはやるFWが多いので、多少、無茶なことや、いつもはしないことをします。そうすると、リズムが崩れます。安全圏内に入るまでは同じ事をやれと伝えました。僕自身も、フィールドポジションを取りに行こうとしたし、結果、それが良かったのだと思います」

──クボタの大差での勝利に、無理かもと思わなかったか?

「正直、思いました。過去、キヤノンさんと去年やって負けていましたし、トップチャレンジ2戦を通じて38点以上差をつけたチームもいませんでした。個人的に厳しいと思ったけれど、それは出しちゃいけないし、さりとて、39点取ろうとは、みんなには言えませんでした。勝つことだけを考えようと言いました」

──どの辺りから39点を意識し始めたのか?

「ハーフタイムの時点で、あと3本トライをとればという辺りからです。前半の感じでは、軽く行けるのではないかと思いました」

──九電全体が揺れ動いた1年だが?

「会社の大きな事はあまり分かりませんが、所属の上司や仕事の仲間に感謝しています。僕たちが、この状況の中でラグビーができるのは、当たり前のことではありません。僕たちの活動を理解して貰っていた、その人たちのためにもトップリーグに上がらなければと思ってやってきました。本当に感謝の気持ちで一杯です」

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