7節 マッチサマリー(NTTコミュニケーションズ 30-23 福岡サニックス)

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 30-23 福岡サニックスブルース
【week7/2012年10月20日(土)/新潟・東北電力ビッグスワンスタジアム】

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス対福岡サニックスブルースの試合がここ新潟の東北電力ビッグスワンスタジアムで行われた。

このカードは昨年も同様に同会場で行われ、秋雨の降りしきる中での対戦だったことを思い出す。今年は爽やかな秋晴れの下で芝生の緑がまぶしく絶好のラグビー観戦日和となった。素早い展開と連続でいくつものフェーズを重ね、どこかで隙間(スペース)を突いて前進を図る、似たような両チームの試合運びを予想した。
今年から外国人枠が2名となったが、NTTコムの突破者(ぺネトレーター)はNo.8のT・クレバーとLOのアイザック・ロス、そしてCTBのA・ツイランギだろう。
対する福岡サニックスは両CTBのS・アヒホとT・イオアサ、そしてWTBカーン・ヘスケスだ。2011WC優勝メンバーのNZ代表ブラッド・ソーンは今節ではサイン会に集中といったところだ。ゲームの流れをひっくり返す個性を持ったヘスケスの後半投入は福岡サニックスの定石的攻撃パターンとなっている。

13:00大槻卓レフリーの笛でKO。序盤はPG戦だ。7分福岡サニックスSO田代(0-3)、14分NTTコムSO君島(3-3)、21分君島(6-3)、更に31分田代(6-6)と静かな点数争いに思えるが、グランド内はまさにこれがトップリーグのラグビーだと観客を魅了させるボールの動きが連続した。ミスが少なく選手やボールの動きに無駄がない。福岡サニックスの執拗で素早い横の展開と縦の突破の試みに対して、翻弄されずにNTTコム全員がひたむきに防御していた。ジャッカルの名手FL小林訓也選手の活躍が目立つ。彼はご当地西蒲原出身の選手であり、故郷の新米をいっぱい食べて活躍していた。

福岡サニックスはとにかくプレーが速い。ラインアウトやKOのセットでも相手の一息つく暇をつくらせないようにすぐさま戦闘開始する徹底した姿は特筆したい。
38分、前半終了間際である。福岡サニックス陣内22m付近だろうか、ペナルティを得たNTTコムはショットを選ばずスクラムを選択、誰もがNo.8クレバーのサイド仕掛けでFW攻撃を予想したが、あっさりBKSにボールを出し突破者CTBのA・ツイランギが内に切り込んだ。そこでラックを形成後SH鶴田-FL石神-LO馬屋原と密集を繋ぎトライ、ゴール(13-6)。前半を見て芝生の状況が見た目ほど良くなくスクラム形成時に芝がめくれ上がっていた。この夏の猛暑で芝の生育が悪かったという。クレバーがサイド攻撃を仕掛けなかった訳がうなずけた。

さて後半、予定通りWTBカーン・ヘスケスの投入で福岡サニックスの攻撃が面白くなってきたがいきなりKOノックオン、NTTコムは簡単にサニックス陣内へ入り込んだ。44分、ヘスケスのWTB友井川への首タックルでペナルティ。NTTコムはここでもショットを狙わずスクラム選択、今度はクレバーがサイドを突っ込んでラック形成、サニックスCTBイオアサのペナルティを誘いショット選択、君島PG(16-6)。

福岡サニックスは後半も盛んに幾つものラックフレーズを重ねるも両CTBの突破には至らない。逆にNTTコムに余裕が感じられる。50分、NTTコムCTB山下の切れ味鋭いカットインをはじめとする幾つかのラックフェーズでペナルティを誘った。すかさず素早くSH鶴田が突っ込み再度ラックとなりSH役になったキャプテンWTB友井川が一瞬の隙を突きトライ、ゴール(23-6)。サニックスのお株を奪うような攻撃を見せた。体が大きくもないのにWTBとして抜群なボールキープ力を備えた責任感の塊のようなキャプテン友井川は、NTTコムになくてはならない存在である。

54分、福岡サニックス、ヘスケスにトライが出た。NTTコムのツイランギから山下に繋がったボールをヘスケスが奪い簡単に独走して中央トライ、ゴール(23-13)。
相変わらず福岡サニックスは徹底してラインアウトをセットにせず直ぐ投げ入れており、NTTコムも適応して目を離すことができない時間が続く。64分、NTTコムの外国人枠の戦術交代。クレバーからアイザック・ロスへ、更にCTBのA・ツイランギを退かせB・カラウリアヘンリーへと交代した。

そして66分、NTTコムは福岡サニックス陣内ゴール前まで執拗に攻め込んだが攻撃の終りは伸びきったゴムのようにターンオーバーされ、ヘスケスにボールが渡り大きくゲイン、WTB濱里にパス、走りきった濱里は中央にトライ、ゴール成功(23-20)となる。このときサニックスゴール前にはNTTコムの選手が3人も起き上がれず倒れていた。攻撃はしていたものの明らかに人数不足だったためにターンオーバーされた瞬間にBKSに隙間が生じた。
70分にはサニックスの同点となるPG(23-23)。試合は振り出しに戻った。攻撃の流れがヘスケスの起用でサニックスに傾いてきた。NTTコムのアタッキングだ。中央付近でラックのフェーズが14回も出来、アイザック・ロスは実に7回も突破を試みるもすべて潰された。福岡サニックスも息を吹き返したかに思えたがNTTコムを抑えるのが必死状態だ。

ドラマは78分に起こった。サニックス陣内22メートルのところでNTTコムスクラムから右へ展開、SH鶴田SO君島と渡り、君島は両CTBカラウリアヘンリー、山下の後ろを走ってきた逆サイド左WTB友井川にパス、見事に前が空きゴール真下にトライ。鮮やかなバックライン攻撃だった。ゴールも決まり(30-23)。やがてノーサイドの笛。

この試合のマン・オブ・ザ・マッチは文句なしの友井川拓選手に決まった。
試合の流れは終始目まぐるしく緊迫した展開で、これぞトップリーグと言うべき迫力ある激突と稲妻のようなスピード感あるプレーに観客は大いに魅了され感動した。
ミスが少ない密度の濃いゲームであった。
両者とも生で見るトップリーグラグビーのすばらしい新潟開催であった。

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