3日、福岡レベルファイブスタジアムで、来季トップリーグでプレーする権利を賭けた入替戦が行われ、前半26分までに5トライを奪う強烈な先制パンチを見舞った豊田自動織機シャトルズが後半追い上げた福岡サニックスブルースを34-28で振り切って、昇格を勝ち取った。
豊田自動織機にとって、来季は3年ぶりのトップリーグでのプレーとなる。
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交錯する歓喜と落胆。豊田自動織機が福岡サニックスを34-28を破り、TL昇格を勝ち取る
photo by Kenji Demura (RJP) |
トップリーグ10年目のシーズン。史上初めて入替戦での下克上が現実のものとなった。
「ゲームフィットネスという面では、ウチが上回っていた」(豊田自動織機・田村誠監督)
1月5日から3週間にわたって繰り広げられたトップシリーズ1で、三菱重工相模原ダイナボアーズ、クボタスピアーズ、コカ・コーラウエストレッドスパークスという難敵相手との激戦を経験してきた豊田自動織機。
対する福岡サニックスは、1月6日にトップリーグ最終節を終えてから約1ヵ月、実戦から遠ざかっていた。
そんな試合勘の差を最大限生かすように、立ち上がりから豊田自動織機が一方的に攻めまくった。
5分に敵陣深くでのラインアウトからモールを一気に押し切って先制。
8分には自陣からNO8ライアン・カンコウスキーが突破して敵陣に入った後、判断良く左サイドのオープンスペースにキック。ボールを再確保したWTB朝見力弥がそのまま駆け抜けて2トライ目。
「ダイレクトプレーを心がけた。最初の30分間はゲームプランどおりだった」(田村監督)という豊田自動織機の勢いは止まらず、14分にFL小山田岳、21分にライアン・カンコウスキー、26分にCTB坂井克行とトライを重ね、29-0と大きくリードした。
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前半8分のWTB朝見のトライなど、26分までに計5トライを重ねた豊田自動織機の先制パンチが効いた
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ディフェンスギャップを突く思い切りいい走りで2トライを奪ったCTB坂井の貢献度も高かった
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「自分たちのアタックばかり考えて、ディフェンスが疎かになった」(HO永下安武主将)という福岡サニックスが一矢を報いたのは前半32分。
立ち上がりから、自分たちのミスからターンオーバーされて流れを失うケースの多かったサニックスの連続攻撃がようやく実って、WTB濱里耕平がトライ。
さらに、前半ロスタイムに敵陣深くのPKからLO野田忠がトライラインを超えて、後半での逆転に望みをつなぐかたちで、点差を15点に縮めて、ハーフタイムを迎えた。
福岡サニックスは多くのファンのためにも
可能な限り短い期間でのTLへの復帰を
「最初に取られ過ぎたのが全て」(藤井雄一郎監督)とは言うものの、前半最後の10分間で追い上げた福岡サニックスとしては、後半早めに追撃トライを加えて、逆転へ流れを作りたかったところだが、計7トライが乱れ飛んだ前半とは打って変わって、後半の20分間は全く得点なく試合は推移した。
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後半31分のWTBヘスケスのトライで6点差に追い上げた福岡サニックスだが、あと1歩及ばず
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当然ながら福岡サニックスは切り札WTBカーン・ヘスケスに早めにボールを渡して、突破口を作ろうとする場面も多かったが、豊田自動織機もグラウンド全体に網を張るようなディフェンスで福岡サニックスに決定的なチャンスを作らせない。
ようやく後半の得点ボードに変化が現れたのは21分。
先に得点を加えたのは、20分間を守り切ったと言っていい豊田自動織機だった。
敵陣でのラインアウトからFWで前に出た後、7人制日本代表でプレーしたことで「グラウンド全体を見てプレーできるようになったし、ギャップを突けるようになった」というCTB坂井が思い切りのいいランニングで福岡サニックスのディフェンスを突き破って貴重な5点を追加。
この時点で点差は20に広がったが、独自のアタッキングラグビーでトップリーグの中でも常にリスペクトされてきた福岡サニックスも、自分たちの存在意義を必死にアピールするかのごとく、ここから最後の猛攻を繰り広げる。
26分にWTB濱里耕、31分にはとうとうWTBヘスケスが豊田自動織機ディフェンスを突き破って点差は1トライ/1ゴールでひっくり返る6に。
奇跡の逆転勝利を信じて疑わない地元福岡のファンの歓声も一気に大きくなったが、最後まで今季の福岡サニックスを象徴するように、多くの時間を攻めながらも自分たちのミスで攻めきれずに、無情のタイムアップ。
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試合終了後、呆然と立ち尽くす福岡サニックスのメンバー。ファンのためにも1日も早い再昇格を
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トップチャレンジシリーズでの昇格がなくなった時点で、「練習でBチームにもボコられるほどチーム状態は落ち込んだ」(CTB坂井)という豊田自動織機が、もう一度立ち直って昇格を勝ち取れたのは、この2年間の「チーム全体でひとつひとつ積み重ねてきた結果」(田村監督)であるのは確かだろう。
一方、05-06年に昇格以来、初のトップリーグからの降格を経験することになった福岡サニックス。ある種、日本ラグビーの最も良質な部分を体現してきたとさえ言えるチームの復活は、多くの日本のラグビーファン全体が待ち望んでいることでもある。
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