ここを見るとラグビーは面白い – #03: ラインアウト

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#03: ラインアウト

text by Hiromitsu Nagata

フォワード8人の総合力が問われるセットプレー

ラインアウトは1試合に両チーム合計で30回前後行われる重要なFW(フォワード)プレーだ。
その意義は、ずばり攻撃の拠点。
タッチラインに直角に1メートルの間隔を空けて並んだラインアウトの構成メンバー以外は、ラインオブタッチ(両チームが並んだ真ん中の架空の線)から10メートル以上離れなければならないから、バックスにとっては攻撃しやすい絶好のスペースが生まれる。
これが相手ゴール前5メートルのラインアウトになると、防御側のオフサイドラインはゴールラインとなるため、バックスは逆に相手との間合いが詰まって攻めにくくなる。つまり、味方バックスは10メートル後方にいるのに、相手は5メートル下がればいいだけだからだ。

ゴール前のラインアウトからモールを押し込んでトライを狙う場面が多くなるのは、こうした理由があるから。何しろFWには5メートル先にゴールラインが見えているから、そのまま押し込めば簡単にトライが奪えそうに思えるのだ。

とはいえ、そのカギを握るのが、当たり前だがしっかりとボールを確保すること。
現在ではジャンパーをサポートする行為が認められているので、マイボールの獲得率は上がっている。しかし、100%というわけにはなかなかいかない。
どのチームもジャンパーの数は限られているので、投げる場所が自ずと限られるからだ。
当然、相手はジャンパーの隣に対抗できるジャンパーを配置してくるし、それを前後の動きでずらしてボールを確保しなければならない。ラインアウトのたびに聞こえる「4、3、2、1」といった数字は、誰にどんなボールを投げるかを表すサインだが、防御側の反応を見ながら判断を下すので、かなり高度な読みが要求されるのだ。

しかも、単純にボールを獲得すればそれでOKというわけではない。
バックスに回して攻撃するなら、SOにすぐにパスできるようラインアウト後方に投げ入れる必要があるし、逆にモールを組むなら全員が結束しやすい中央部でボールを捕りたい。
そんな次を見据えた思惑があるから、相手もそれを読んで対応してくるわけだ。

そうした投入側の思惑がぴたりとはまって成功したもっとも美しいラインアウトからのトライが、先のW杯決勝でオールブラックスが挙げたトライだった。ジャンパーを前後に分割して相手のマークを分散し、後方のFLジェローム・カイノにボールを合わせて、ぽっかりと空いた真ん中のスペース走り込んだPRトニー・ウッドコックにパス。すべてのプレーヤーの意図が合致したスーパープレーだった。

逆に、ラインアウトでボールがすっぽ抜けて相手の手にすっぽり、観客は溜息……といった場面があると、投げ入れたHOが「スローイングが悪い」と標的にされがちだが、実は完璧なタイミングで投げたにもかかわらず、ジャンプのタイミングが遅れたのが原因というケースもある。
ラインアウトもスクラム同様、FW8人の総合力が問われるプレーなのである。

W杯でラインアウトを競い合う日本代表とトンガ代表
W杯でラインアウトを競い合う日本代表とトンガ代表
photo by Kenji Demura (RJP)

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