ファーストステージ・第3節 マッチサマリー(NEC 34-33 サントリー)

NEC
グリーンロケッツ
NECグリーンロケッツ
34 合計 33
21 前半 12
13 後半 21
4 勝点 2
10 総勝点 12
サントリー
サンゴリアス
サントリーサンゴリアス

NECグリーンロケッツ 34-33 サントリーサンゴリアス

ファーストステージ・第3節 プールA
2013年9月14日(土)19:00キックオフ/東京・秩父宮ラグビー場

NEC、80分間集中力切らさず勝利。サントリーの連勝を「25」で止める

昨シーズンは17試合全勝(日本選手権含む)の王者サントリー。今年もこれまで2試合は順調な勝利を重ねてきた。一方、NECはこれまで1勝1敗だが、サントリーが相手でも十分勝利を狙える実力あるチームである。

試合はNECにとっては、願ってもないペースで始まった。
開始早々、ラインアウトからバックスで近場近場を攻めるフェイズを重ねた攻撃からFL浅野が抜け、PR滝澤がゴールラインに迫ったがトライにはならず5mスクラム。しかし2分、この5mスクラムからの攻撃で再びNECバックスがフェイズを重ね、ラックからのボールをSH櫻井からもらったLO村田がタックルを受けつつもゴールライン上にダウンボールしてトライ(ゴール成功)、7-0とリードした。

11分にもNECはラインアウトからポイントを作っていくフェイズを重ねた攻撃でSOウェブ、あるいはCTB田村に直接ボールを出し、敵陣22m付近まで迫ると、サントリーディフェンスがこれに耐えきれずノットロールアウェイの反則。SOウェブがPGを決め、10-0とした。さらに14分にはNEC陣10m付近でのサントリーボールのスクラムでサントリーがノットストレートの反則をすると、NECはFKから左サイドにクイックアタック。CTBブリューが抜けWTB釜池にパスし、その釜池からリターンパスをうけたCTBブリューが左中間にトライ(ゴール不成功)、試合開始15分で15-0のスコアとなった。NECは24分にもPGで3点追加し18-0とすると、5,382人の観客も「サントリーが負けるかもしれない」と、固唾をのんで見守る試合展開となってきた。

しかし、27分にNEC WTB吉廣がチームの「反則の繰り返し」でシンビンになると、試合の流れがサントリーへと変わった。NECゴール前でアタックフェイズを重ねたサントリーは31分、アタックの中でのこぼれ球をCTB平がうまくSO小野にパス、SO小野 - WTB竹本竜太郎 - WTB長野とすばやくつなぎ、長野がトライ(ゴール不成功、18-5)、サントリーの反撃が始まった。37分にはラインアウトからの連続攻撃でラックから出たボールをSO小野から内側に入ったCTB平につなぎ、中央に2つ目のトライを返し(ゴール成功)18-12とした。しかし、NECも前半終了直前にPGで3点を返し、21-12でハーフタイムとなった。

後半2分にNECがPGで3点加点し、24-12とリードを拡げたが、後半に強いサントリーの実力を考えると試合の結末はまだまだ分からない。サントリーは13分にゴール前ラインアウトからのモールをFWがよく押し込み、FLスミスがうまくボールをコントロールしトライ(ゴール成功)24-19とした。

19分、後半10分からWTBに入った巨漢ナドロのサントリーWTB成田への激しいタックルがハイタックルとなり、シンビン。NECは再び10分間、14人で戦わなければならなくなった。サントリーはこのPKから得た敵陣でのラインアウトからフェイズを重ねた攻撃で、SH日和佐からのボールをいいスピードでもらったFL佐々木がトライ。ゴールキックも成功し、とうとうサントリーが24-26と逆転した。サントリーは33分にもNECのスクラムでのアーリーエンゲージで得たFKからクイックアタック。ゴール前まで迫りラックから出たボールをもらったCTB平がインゴールに飛び込み(ゴール成功)24-33とリードを9点差に拡げた。

しかし、NECのフィフティーンは「9点差をひっくり返す」と自分たちを信じてプレーを続けた。残り4分、1トライだけでは逆転できない9点差ビハインドで、敵陣で得たPKから冷静に田村のPGで3点加えNECは最後の3分で1トライ+1ゴールで逆転可能の6点差とした。

その直後のキックオフからのボールを、後半24分SOウェブの交替後にSOに入った田村が大きく敵陣ゴール前にエリアを取るキック。サントリーはカウンターアタックでオフサイドの反則。この最後のチャンスのPKを、NECはゴール前ラインアウトからの攻撃に賭けた。このラインアウトから6次以上に亘る執拗なサイドアタックでゴール前でのラック攻撃を繰り返したNEC。最後にWTBナドロがラックから直接インゴールに突っ込んだ。
レフリーがアシスタントレフリーに確認を求めた結果、WTBナドロのトライが認められ、田村のゴールキックも成功し34-33でノーサイド。NECが1点差で勝利をもぎ取った。サントリーにとっては2012年1月の東芝戦での敗戦後からトップリーグと日本選手権で続けていた連勝が「25」でストップという結果となった。

この日のNECフィフティーンの80分間集中力を切らさなかった健闘に拍手を送りたい。サントリーも敗戦を糧に必ずさらに強くなってくるチームであり、はやくも2ndステージが楽しみになってくる。(正野雄一郎)

● 記者会見ダイジェスト ●

サントリーサンゴリアス


大久保直弥監督(右)、真壁伸弥キャプテン

大久保直弥監督

「今日はありがとうございました。久しぶりに負けて、少しサバサバしています。序盤で18-0になると、どうしてもこういう展開になります。この負けを引きずらないで、次に生かすことが重要です。自分たちのプライドでもある『アグレッシブ・アタッキング・ラグビー』はチームの拠り所でもあるし、変えるつもりもありません。良くなかったところは修正して次節に臨みたいと思います」

──予想外の展開だったと思うが?

「受けてしまったのは、8割は気持ちの部分です。どんなに身体を鍛えても使うのは頭ですから。チームとして隙があったのかもしれません」

──ハーフタイムの指示は?

「プレーで外のスペースが空いていないのに無理してランさせていたので、そこを直すことと、ダイレクトにどこを攻めるのかということでした。ちょっとゲームの流れとして悪い入りでした」

──けが人も出たが?

「けが人も出た中で、それでも勝点2ポイント取っています。今はもちろん負けたことは悔しいですが、チームの成長のためには通らなければならない道かなと」

──若い選手について?

「これはもう、クラブとしての投資です。若い選手はミスもありますし、スクラムではトップリーグの洗礼を受けましたが、良い経験として生かしていかなければなりません。勝ちながら(世代交代を)進めればベストですが、負けることも選手の成長に必要です。彼らに二度とチャンスがないとか、そういうことはありません。大事なことはミスしたことを、どう次に生かすかということです」

──監督として初めての負けだが?

「(苦笑)ずっと勝ち続けることはできません。2年前、東芝さんに負けてからの初めての負けですが、次の試合が大事です」

真壁伸弥キャプテン

「お疲れ様です。NECさんの考えていたプラン通りに、試合を運ばせてしまったと思います。最初の入りも、後半の入りも受けてしまったと思います。すべての部分を修正して次の試合に向かいたいと思います」

──前半、ディフェンスがうまくいかなかったが?

「一人一人のコンタクトの部分で、完全に抜けられました。アグレッシブにディフェンスする意識でいかないと」

──後半、ショットでPGを狙えるところもタッチを蹴ったが?

「狙える部分でも狙わなかったのは、トライを獲りに行こうと。反省点です」

──逆転、リードして突き放せなかったのは?

「自分が良くないです。ナドロさんにやられたのも自分ですし‥‥」

──相手のキックオフでミスが目立ったが?

「リスタートでマイボールをキープしようと言っていたのですが‥‥。ちょっと分かりません。NECさんのものすごく良いチェイスもありましたので」

──監督は負けてサバサバしたそうだが、キャプテンは?

「していないですね」

NECグリーンロケッツ


グレッグ・クーパー ヘッドコーチ(右)、浅野良太キャプテン

グレッグ・クーパー ヘッドコーチ

「まず、サントリーさんに敬意を表したいと思います。昨年の1月21日に負けてからずっと負けていない、チャンピオンチームらしい良いチームだと知っていました。すべてのチームに強み・弱みがありますが、今日はしっかり準備をして、相手の弱みを狙うことができました。サントリーさんに致命的なスコアをされ厳しかったのですが、幸運なことにチャンスが何度かあって獲り切れました」

──シンビンも2回あったが?

「ビリヤードの試合みたいでした(笑)。とてもフィジカルな試合でしたが、相手の体格で、大きな男の腕の高さに来てしまいました。映像を見て、確認したいと思います」

──グラウンドを大きく使ったが?

「戦略のことは詳しくは言えませんが、ラインブレイクは戦略の一つでした。特に最初の20分間、プレッシャーの下選手が必死に戦ってくれたと思います」

──もう少し詳しく?

「サントリーさんは弱点の少ないチームです。確かに分析すれば、我々は近場を攻めていたと分かると思いますが、選手とコーチングスタッフの力のおかげです」

浅野良太キャプテン

「まず、NECのファンの皆様に勝利をお届けできたことを非常に嬉しく思います。勝利を共有できました。勝つことによって成長できるチームですので、今日は価値がある勝利でした。本当に今日は良いゲームでした。一人一人が80分タフに戦ってくれたと思うし、自分もやっていて楽しかったです」

──サントリーに過去も勝った歴史があるが?

「(苦笑)もう、残っているのは僕と窪田くらいしかいないし、それこそ若い選手の中には、まだラグビーを始めていなかったのもいるし(笑)。そういう意味では特別なことではないが、サントリーさんに勝つということはNECの歴史でも大事な試合だったかと思います。さらに若い選手と新しい歴史を作っていきたいですね」

── 一旦、サントリーがリードしたが、それでも逆転できたのは?

「残り10分切って9点差。まだ7点取っても足りないので、まず、3点取って点差を縮めようと考えていました。うまくスコアできて、攻めるだけでした。サントリーさんとは今シーズン練習試合含めて初めての対戦でしたが、日本代表も多くいるし、思っていた通りのチームでした」

──後半10分過ぎから動きが鈍ったが?

「もちろん、疲れもあったと思います。でも、今日は動き出しで勝とうと言ってきて、皆がやってくれたと思います」

──最後の時間帯は攻めるだけということだが?

「9点差つけられたインゴールで、僕たちは勝つためにここに立っていると確認しました。動き出しで勝とうと。まず、すぐペナルティを貰えたのも良かったし、6点差の時間の使い方としてイメージが作れて、僕らが明確に攻められるようになったのも大きかったと思います」

──最後の場面、キックで相手にボールを渡したが?

「良かったと思います。サントリーさんはゾーンに関係なくアタックしてきます。まず、こちらのアタックゾーンに入ることが大切でした」

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