セカンドステージ・第7節 グループA マッチサマリー(サントリー 22-19 ヤマハ発動機)
セカンドステージ・第7節 グループA トップリーグセカンドステージですでにプレーオフ出場を決めたサントリーサンゴリスに、4強入りの可能性をかけるヤマハ発動機ジュビロが5ポイント獲得を目指しての激しい勝負を挑んだ。 この季節は例年寒気の秩父宮だが、この日はほぼ無風。そして緩やかな日差しが差し込む中、ヤマハ発動機SO大田尾竜彦のキックオフでスタート。 開始5分にはゴール前でペナルティを得るが、ヤマハ発動機はショットで3点の選択を捨て、トライ獲得に執念を見せスクラムを選んだ。続く6分のペナルティにもスクラムを選択。しかし、この日注目のスクラムは安定しない。サントリーの揺さぶりからコラプシング。真っ直ぐに前を目指すスクラムが、サントリーの圧力から左に動き戸惑いを見せる。プレーオフ出場を目指し、5ポイントの獲得に勝負を賭けるヤマハ発動機の執念がこのゲームを支配しかけるが、経験豊かなサントリーはこの時間帯にセットプレーでの粘りから得点を与えない。 力むヤマハ発動機がうまく攻撃に入れない隙に、サントリーが少しずつ前進を始める。13分、23分とニコラス ライアンがPGを決め6点をリード。そして34分、SHフーリー・デュプレアがショートサイドを幻惑すると、ランナーが次々と空いたスペースに走りこんで突破。ヤマハ発動機のディフェンスが人数を使い内側に寄ったチャンスに、BKラインのループプレーからWTB村田大志がタッチライン際を快走してトライ。(G成功13-0) しかし、ヤマハ発動機の執念は後半開始6分に結実する。ショットを捨てトライにこだわるヤマハ発動機は、ここでもペナルティからキックで前進、ゴール前でのラインアウトに持ち込んだ。このモールが崩れかかるが何とか再構築し、縦長の固まりからNO8堀江恭佑がついにゴールに飛び込んだ。(G成功13-7) サントリーはこの時間帯にも安定した動きでチームのバランスを保ち15分、23分にニコラスのPGで得点を重ねて、再度5点をリード。(19-14) 同点で迎えたゲーム最後の5分。勝利を譲らぬ両チームは、真っ向から攻撃をぶつけ合う。リーグ上位のサントリーは、チームのプライドがゲームを切らせない。追うヤマハ発動機は、とことん5ポイントしか求めない意地だけの5分間。その最後の最後、誰もが予想しえないプレーで勝負は決まった。ターンオーバーから攻撃を開始したヤマハ発動機は、途中出場のSO曽我部佳憲がロングパス、自分が勝負と見せては横にエキストラマンを投入してビッグゲイン。そして掴んだ最後のチャンスフェイズで、曽我部は大外へのキックパスを放った。ヤマハ発動機がこれをキャッチすれば逆転での大勝利。しかし、このボールを、必死にスペースに戻るサントリーWTB塚本健太が先にキャッチして、逆に誰もいないヤマハ発動機陣に向かって激走。一気に大ピンチから、ヤマハ発動機ゴールポスト寸前にビッグゲイン。たまらず犯したヤマハ発動機のペナルティをニコラスが冷静に決めて、大歓声の中で試合はノーサイド。(22-19) 4強へ生き残りのポイント獲得という目標を明確に戦ったヤマハ発動機の意地が、このチームに輝きを呼び戻した一戦だった。そして、今年僅差の続くトップリーグの躍動がこの日の秩父宮にも大歓声を巻き起こし、両チームへの感動を誘った。 ● 記者会見ダイジェスト ●
ヤマハ発動機ジュビロ 清宮克幸監督(右)、大田尾竜彦ゲームキャプテン 清宮克幸監督 「結果、こういう点差でしたが、内容的にはチャレンジャーらしい、ヤマハ発動機に足りなかったところをしっかり表せた試合だったかと思います。つまり、この先につながる試合ができたと思っています。強いて言うなら、5ポイントが絶対に必要な状況でやりたくなかったですね。ヤマハ発動機はスーパーブーツを擁し、ペナルティでは得点してきたチームです。今日は5ポイント必要だったので、こういう試合になりました。引き分けも4ポイントの勝利もいらない状況だったということです ──キックパスの評価は? 「プレーの選択という意味では、あの時点はパスを選択すべきだと思いますが、あのプレーができるのは曽我部だけです。ラインブレイク、アシストがあって、トータルとして曽我部のプレーをしたということでしょうか」 大田尾竜彦ゲームキャプテン 「うーん‥‥。悔しいですね。東芝戦が終わって、この1週間、実質3回の練習をしましたが、その雰囲気が非常に良くて、勝つしかないという条件の下、試合の中でも、皆が身体を張ってくれました。非常に悔しいです」 ──5ポイント狙ったリスキーなキックパスは? 「5ポイント欲しいのは絶対でしたし、ヤマハ発動機のゲームのセオリーであるペナルティの選択を変えながら臨みました。試合の中でも5ポイントを取りに行くという芯が通っていて、最後の曽我部のキックパスもうちの形で、決してギャンブルプレーではなかったです。スキルが足りなかっただけです」 ──セカンドステージ、チームが疲れていたのか? 「疲れたということはなかったですが、やはりトライを獲らなくてはいけないエリアで、トヨタ自動車戦も東芝戦も獲れなかったので、足が止まって見えたり、身体が重く見えたりしたのでしょう。今日は22mラインに入ったら得点できたし、ロングゲインも得点できたので違った見方になったのではと思います」 サントリーサンゴリアス 大久保直弥監督(右)、真壁伸弥キャプテン 大久保直弥監督 「寒い中、ありがとうございました。本当に疲れる試合でした(苦笑)。前半は自分たちが意図するプレーができましたが、後半の立ち上がりは受けに回ったことが、この試合を難しくした要因です。勝てたことは嬉しいですが、(プレーオフトーナメントの)セミファイナルではブレインダウンもセットプレーもそんなに速いプレーはできないと思いますので、しっかり準備したいと思います」 ──ショットが多かったが? 「5ポイント欲しい状況で、いつでも攻める態勢に入りなさいと。日和佐が行くところ、相手にセットされたら、無理に行かないということで、選手が判断したことです。もっと速く攻めてほしかったところもありますが」 ──相手のキックパスは? 「相手チームの10番の選択をとやかく言う筋合いではないので。逆の立場だったら、相当怒っていますね(笑)。チームの決め事で、あそこでチェイスを掛けていたということでしょう。逆に僕らは運が良かったと思います」 真壁伸弥キャプテン 「お疲れ様です。前半の入りはすごく良かったんですが、後半のセットプレーのところ反省材料が多々あります。しっかり反省してセミファイナルに臨みたいと思います」 ──ゲームは珍しくショットが多かったが? 「ゲームの中の判断です。ショットも中盤でしたので。フーリー(・デュプレア)とも相談しながら決めました」 ──相手のキックパスの場面では? 「必死だったので。返るだけでした。相手の人数より上回りたいという思いだけでした」 ──サントリーとしては引き分けでも良かったのでは? 「まず、考えていませんでした。しっかりやらないと、プレーオフにつながりませんから」 マン・オブ・ザ・マッチはサントリーサンゴリアス、CTBライアン ニコラス選手
またニコラス選手はこの日「リーグ戦100試合出場」をも達成 |